3月1日(日) [惣流アスカラングレー]
あたしよ。
…ったく、頭に来るわね。あのばかは。
このあたしが居るのに、ファーストなんかと楽しそうにしてさ。
あたしをなんだと思ってるのよ。
でもあのばかは、ぜんぜん気付いていないのよね。
まったく、ニブイにもほどがあるわよ。
どうせ、
「僕、なにか悪い事した?」
とでも思ってるんだわ。
ホントに…
あたしがなんでわざわざスーパーなんかに行ったのか、少しは考えてるのかしら。
…考えてないわね、あのばかは。
あたしの気まぐれくらいにか考えてないわね。
それはそれで助かるところもあるんだけど、でもねぇ……
なーんにも気付かないって言うものちょっと頭にくるわね。
せっかくあたしがもう少し料理の腕を上げようと思っているのに。
少しは出来るようになったけど、でもまだまだシンジにはかなわないもんね。
前時代的かもしれないけど、でも、やっぱり男のシンジの方が料理がうまいのって
ちょっと悔しいじゃない。
それに、やっぱり… ねぇ。
本当に美味しく作りたいし…
あーーーもう、それなのにあのばかシンジときたら!!!
謝ったって許してやらないんだから!
態度で示しなさいよね!!!
3月3日(火) [綾波レイ]
綾波レイです。 こんにちは。
日曜日に、スーパーで碇くんに会ったの。
碇くんもちょうど、買い物に来てたところだった。
でも、碇くんの隣にはあの人がいた。
あの人、今まで買い物に来たことなんかなかったのに…
どうして?
あの人は、私と碇くんが話していたら怒ったみたい。
そして、碇くんはあの人を追いかけて行ってしまった。
私を残して…
私、淋しい。
そう、淋しいのね。
これを淋しいっていうのね。
私は昨日はネルフに行っていたから、学校には行かなかった。
今日、学校に行ったら、碇くんとあの人は喧嘩をしているみたいだった。
それは良くあることだけど…
でも、いつもの喧嘩とは少し、違う気がするの。
どうしてかしら。
そんな気がする…
私はなぜか、落ち着かなかった。
碇くんになにか話したかったけれど、でも、出来なかった。
私も、いつもと違う。
碇くんは時々私の方を見るの。
私は気付かない振りをしているけど、でも、いつもわかっている。
碇くんのことは、いつも気にしているから。
だから余計に、気になるの。
なにが、どうなっているの?
3月4日(水) [碇シンジ]
碇シンジです。 こんにちは。
…アスカが… ずっと口をきいてくれない…
日曜日に買い物に行ってからずっとなんだ。
あの日、僕は確かに綾波に偶然会ったから嬉しくって、綾波と話してたけど…
でも、それだけだよね。
あの後すぐに綾波とは別れたんだし。
僕、そんなに悪い事したのかなぁ。
わかんないよ。
アスカはこういうとき、何を言ってもだめなんだ。
僕が何を言っても。
でも、今回は特別だよ。
いつもだったら、こんなにずっと怒ってないもん。
やっぱり、せっかくアスカが手伝ってくれるっていうのに
綾波と喋ってたのがいけなかったのかなぁ。
でも、少しの時間だったんだけど… 綾波と話してたのは。
それに、どうしてアスカはスーパーに行こうなんて言い出したんだろう。
今までそんな事は言った事がなかったのに。
もしかして、それかな? アスカが怒ってる訳は。
うーーん…… どうしよう。
そう言えば、綾波の様子もちょっと変なんだ。
綾波も、ちょっと素っ気ない感じがする。
もしかして… 綾波も怒ってるのかな?
あのとき、アスカを追って綾波を置いてっちゃったし。
……困ったな…
僕、どうしたらいいんだろう……
3月5日(木) [相田ケンスケ]
こんにちは。 相田ケンスケです。
まったく、ああいうのって犬も食わないなんとかって言うんだよなぁ。
え、なんのことだって?
そんなの、シンジと惣流のケンカに決まってるじゃないか。
まったく、飽きもせずに良くやるよな。
もう、だーれも心配なんかしてないって。
でも、今回のケンカはなかなか長いぞ。
シンジの話だと日曜日からだって言うから… もう5日目か。
惣流も頑張るよな。
怒りを維持するのって、結構大変だと思うけど。
ま、惣流の場合、相手がシンジだからなんだろうけどさ。
惣流も、シンジの出方を待っている感じがあるからね。
ほら、シンジ、さっさと仲直りしちゃえよ。
なにも悩むことなんかないだろ。
自分の気持ちを素直に言えばいいんだよ。
それでさ、たまにはお前からどこかに行こうって誘うんだよ。
どうせ、シンジの方から誘ったことなんかないんだろ。
え、綾波も気になるって?
綾波も怒っているみたいだ?
…そうか?
僕にはわからないけど、でもシンジが言うんならそうかもしれないな。
なに、どうしたらいいのかって?
…そんなこと知らん!
自分で考えろよ、この幸せ者!
3月6日(金) [惣流アスカラングレー]
あたしよ。
まったく、あのばかはどうしようもないわね。
いつまでたっても、肝心なことに気付かないんだから。
ホントにねぇ。
でも、そろそろ許してあげようかなって思ってるんだ。
いつまでも怒ってるのも疲れるし。
それに…
なんてったって、あのシンジの方からデートの誘いがあったもんね。
そのときのシンジの様子が…。
思いつめた顔をしてあたしのところに来たと思ったら、
『アスカ… ごめん。
僕ってニブイみたいだから、アスカがどうして怒っているかわからないんだ。
だから、全部謝るよ。
アスカ、ゴメン。
……あの… それでさ…
もし、もしアスカがよかったらなんだけど……
明日、どこかに行かない?
もちろん僕が全部おごるから。
あ、いやだったらいいんだ。
ほんと、ゴメン。』
なんて言うのよ。
まったく、謝ってばかりなんだから。
だけどね、許してあげようと思ったの、そのとき。
でもね、すぐに許すのも待ってたみたいでいやじゃない。
だからそのときはなんにも言わなかったんだけどね。
さて、そろそろあのばかの顔でも見に行こうかな。
そしてこう言ってやるんだ。
『ばかシンジ! 明日の行き先は決まったの?!』
3月8日(日) [碇シンジ]
こんにちは。 碇シンジです。
昨日はアスカと一緒に出掛けたんだ。
アスカをいろいろ怒らせちゃったから、そのお詫びも兼ねて、
僕の方から初めて声をかけたんだよ。
今だから言うけど、アスカに声をかけたとき、僕はすごく緊張してた。
それに、怖かった。
アスカは断るだろうと思ってたから。
絶対に駄目だと思ってたんだ。
だって、アスカだよ?
アスカってさ… ほら、やっぱり可愛いし… 黙って大人しくしてればだけど。
それに、なんでも出来るしね。
だから、僕なんかとは釣り合わないってずっと思ってたんだ。
アスカの方から誘ってくることも多かったけど、でもそれは、きっと僕のことを
なんとも思ってないから、軽い気持ちで荷物持ちにしてるんだと思ってた。
だけど、最近ちょっと気になることもあるんだ。
この前だって、面白くもなさそうなスーパーの買い物に付いてきたがったり…
それに……
うーん、やっぱわかんないや。
どっちにしても、僕の誘いにアスカが応じるなんて、夢にも思わなかった。
でも、アスカはOKしてくれたんだよ。
僕は信じられなかった。
そして、すごく嬉しかったんだ。
昨日の予定のことはいろいろ考えたんだけど、やっぱりいい案が浮かばなかった。
でも、やっぱり僕が決めなくちゃ駄目なことだから、一生懸命に考えたんだ。
おかげで徹夜になっちゃったけどね。
もしかしたら、ううん、もしかしなくても、ありきたりな、どこにでもあるような
計画だったかもしれない。
それでもアスカは、今回ばかりは全然文句を言わなかった。
僕の目には、結構楽しそうに見えたな…。
アスカが楽しんでくれたんなら、僕はそれだけでいいんだ。
そして家に着いたとき、アスカが僕の顔をじっと見て言ったんだよ。
『シンジ、今日は結構楽しかったわよ。あんたにしちゃ上出来ね。
次も楽しみにしてるからね。』
3月11日(水) [綾波レイ]
綾波レイです。こんにちは。
碇くんと弐号機パイロット、この前までずっと仲が悪かった。
喧嘩していたみたい。
でも、一昨日から、様子が違うの。
もう、喧嘩してないみたい。
私が知らない土曜日と日曜日。
あのふたりに、なにか、あったのかしら。
私が知らないところで、なにか、あったのかしら。
……あの人はずるい。
私が碇くんと一緒にいられるのは学校とネルフにいるときだけなのに、
あの人はずっと一緒にいる。
碇くんと話が出来る。
碇くんとご飯を一緒に食べられる。
……碇くんの側にいられる………
私、羨ましい。あの人が。
今日も私は、独りで家に帰る。
誰もいない家に、帰る。
そして、あの人は……
碇くんと一緒に帰る。
同じ家に……