8月16日(土) [惣流アスカラングレー]


昨日さ、ファーストからばかシンジに電話がかかってきたのよ。

シンジったらファーストが名乗りもしないのにファーストからだって当ててさ。

え、何でそんな事を知ってるのかって?

いいのよ! 聞こえたの!  べ、別に聞き耳を立ててた訳じゃないんだから。



そんな事はどうでもいいのよ。

頭に来るのは、あのばかシンジの態度よね。

ばかシンジの奴、ファーストから電話が来たのがそんなに嬉しい訳?

嬉しそうな声なんか出しちゃってさ。

まったく、あたしがいるのを忘れてんじゃないの?



だから今日は、昨日に引き続いて機嫌が悪いの、あたし。

仕方ないじゃない。 悪いのはばかシンジなんだし。

でもあのばかシンジは、何であたしの機嫌が悪いのかに気付いてないのよね。

まったく、鈍いにも程があるわよ!


え、何であたしの機嫌が悪いのかって?

そんなの知らない!!





          8月17日(日) [碇シンジ]


こんにちは。碇シンジです。



おとといの夜から、アスカの機嫌が悪いんだ。

どうしてだか解らないんだけど・・・

なに言っても、 『ふ〜ん』 とか、 『あっ、そう』 とか、

まともに答えてくれないんだ。


僕、何か悪いことしたかなぁ・・・

思い当たることはないんだけど・・・




う〜〜〜ん。

一昨日って言えば、何があったっけ?

えっと・・・・



あ、そう言えば、綾波から電話がかかってきたっけ。

でも、本当に、ただ電話がかかってきただけなんだよね。

綾波、何が言いたかったんだろう。



・・・・もしかして、アスカの機嫌が悪いのってそのせい?

でも、アスカが機嫌を悪くする理由なんて、ないよね?

綾波が僕に電話をかけてきたって、アスカがむっとするわけないもんなぁ。



だったら、どうしてだろう。

あの日の晩御飯が不味かったとか・・・

いや、アスカは不味かったら不味いって言うもんな。

そんな事を言ったことはないけど。



アスカに聞いてみようかな。

でも・・・ やっぱりできないよ。



そうだ、今日のデザートに何か作ってあげようかな。

ゼリーかなんか作ってみようかな。

アスカ、機嫌直してくれればいいんだけど・・・





          8月18日(月) [洞木ヒカリ]


こんにちは。洞木ヒカリです。



昨日ね、アスカから電話がかかってきたのよ。

別にアスカから電話がかかってくるのは珍しいことじゃないんだけど、

でも昨日のアスカの様子はちょっと違ってた。


初めはね、すごく怒ってたのよ。

何のことでって? そんなの、碇くんのことに決まってるじゃない。

何でも綾波さんから碇君に電話がかかってきて、それだけならいいんだけど、

綾波さんが何にも言ってないのに、碇くんが綾波さんからの電話だって当てたんだって。

もう、すごく怒ってたのよね。



でもね、ちょっとしたら様子が変わったのよ。

電話じゃよくわからなかったけど、誰かがアスカの部屋に入ってきたみたい。

誰かって、碇くんしかいないけどね。

しばらく   『ちょっと待っててね』   って保留になってたんだけど、

何分かして電話にまた出たときのアスカったら、さっきまでとは別人みたいにご機嫌だったのよね。

あの間に何があったのかしら?


アスカに聞いても教えてくれないのよ?   『別に何もないわよ』   って言って。

でも私には、アスカの紅い顔が見えるようだった。

きっと、碇くんと仲直りできたのよね。

よかったね、アスカ。



でもアスカったら、そのあと   『そう言えば、鈴原とはどうなってるの?』

なんていきなり聞くのよ?

そして   『応援してるんだから、がんばんなきゃ駄目よ』

だって。



まったく、アスカったら・・・

でもアスカ、ありがと。

私も頑張るね。





          8月19日(火) [綾波レイ]


私、最近毎日考えてることがあるの。

それは、碇くんに電話をしようかということ。

電話がしたいのに、なかなかできないの。

どうして?

わからない。  わからないの。



昔の私だったら、そんな事で悩まなかった。

いいえ、そんな事、考えもしなかった。

碇くんに逢う前の私は、ただ生きているだけだった。

エヴァに乗ることしかなかった。



今も、私にはエヴァしかないのかもしれない。

でも、きっと違うの。

私の中のどこかに、碇くんがいる。

  『笑えばいいと思うよ』   って言ってくれた碇くんの顔が、目に浮かぶ。



そう、いつのまにか、私の中に碇くんが住み着いてしまったのね。

それはとても痛い。

でも、気持ちいいの。

これが人を好きになるって事なのね、きっと。

葛城三佐が教えてくれたことなのね。



だから私、いつも電話の前で悩んでしまうのね。

そう、これが恋ってものなのね、きっと。





          8月20日(水) [碇シンジ]


こんにちは。碇シンジです。


最近涼しい日が続いてたんだけど、今日は暑かったね。

アスカはこういう日は家の中でグテーっとしてるって相場が決まってたんだけど、

今日は違った。

   『シンジ! 買い物に行くから、付き合いなさいよ』

だって。

何でも、夏物のバーゲンがあるんだって。

洞木さんと行けばって言ったんだけど、アスカは当然のように言ったんだ。

   『アンタばかぁ? 荷物持ちがいないと困るじゃない』



何だよ、僕は荷物持ちなわけ?

まったく・・・

断れない僕も僕だけどね。


でも、出かけたらそんなことはどうでもよくなっちゃった。

だってアスカが楽しそうだったから。

アスカはいちいち着替えて、僕に見せるんだ。

   『ねぇシンジ、これどう?』

って。



僕はファッションのことなんかわかんないんだけど、でも最後にアスカが着たのだけは、いいと思った。

チャイナドレス風って言うのかな、それを崩したみたいな奴なんだけど、普通のチャイナドレスとは違って

スカートがミニのフレアになってるんだ。

色は、白。

それがアスカにとても似合っていて、僕は素直に  『それ、似合ってる』 って言ったんだ。

そしたらアスカは、

   『じゃあ、これ買う』

って言って、さっさと買っちゃった。 僕の見立てなんかでよかったのかな。



でも、やっぱりアスカの荷物は持たされた。

アスカは   『あんたが選んだんだから、あんたが持つのは当たり前でしょ』   だって。

・・・・・



まぁいいや。 アスカが楽しそうだったから。

喫茶店でオレンジジュースをおごってもらったしね。



今日はいい日だった、かな?





          8月21日(木) [惣流アスカラングレー]


今日も暑い日だったわね。

こういう日は空調の効いた部屋の中でごろごろしてるに限るわね。

リビングで寝ながら映画なんか見てるのって最高よ。

最高の贅沢よね。


しかも、あたしには腕利きのシェフまでいるんだから。

黙っててもお昼には、おいしいランチを用意してくれる最高のシェフがね。

美味しいお料理に静かな時間、これ以上望んだらバチが当たるわよね。


今日のランチはオムライスだったの。

オムライスって、結構作るの難しいのよね。

あたしもこの前挑戦してみたから解るんだけど、すぐ形が崩れちゃうし、

味付けだって単純なようでなかなか奥が深いのよ。

シンジってどうやって作ってるのかしら。


そう思って、今日は手伝う振りしてよくよく観察してみたのよね。

でも、シンジも特別なことはしてないのよ。

じゃあ、なんであんなに出来上がったものが違うのかしら。


シンジに聞こうかとも思ったけど、でもやめた。

だって、なんか悔しいじゃない。

あたしだって、シンジくらいには作れるようになりたいし。


シンジ、待ってなさい。

今に、泣くほど美味しいオムライスを作ってあげるから。





          8月22日(金) [鈴原トウジ]


久しぶりやな。 まぁええけどな。わしは。


そや、今日はケンスケから、久しぶりに電話があったんや。

何の電話かやて?

それがな、  『明日、河原でバーベキューをやらないか』   ってことだったんや。

確かにここのところ、その手の話はなかったわな。

わしは即座に  『おっ、そらええなぁ』  って返事をしたんや。

そしたらケンスケの奴はえらく乗り気で、もう準備はすべて終わってるらしい。

あとは材料を買うだけやて。

確かにケンスケの奴は、この手のイベントになるとめちゃくちゃ張り切りおるからな。

思えば、去年の林間学校のときもケンスケは妙に盛り上がっとったわ。


そうやな、あのころはシンジも惣流も綾波もおらんかったんや。

ずいぶん長いこと知っとるような気がしとるが、あいつらと知り合うからの時間は短いんやな。

それだけ印象深いってことやろうな。



そや、明日のバーベキューのことやった。

誰が行くんやって聞いたら、まだ誰も誘ってないんやと。

あのなぁ、ケンスケ。準備よりそっちが先やろうが。 ケンスケらしいけどな。


それで、ケンスケの奴はシンジに電話するから、わしはいいんちょーに電話してくれやと。

な、何でわしがいいんちょーに電話せにゃならんのや。

でも、ケンスケには押し切られてもうた。

なんでも、  『いいんちょーはトウジが誘えば絶対に来るから』  やて。


惣流はどうするんやって聞いたら、  『シンジが来るなら来ないわけ無いだろ』

まぁ、そのとおりやな。

綾波には、シンジに頼むそうや。

ま、それがええな。



でも、みんなちゃんと来るんかいな。

わしはそれだけが心配や。



ああ、いいんちょーにどうやって電話しよ・・・・





          8月23日(土) [相田ケンスケ]


本当に久しぶりだよね。 あ、僕、相田ケンスケです。


今日はみんなで、河原でバーベキューをやったんだ。

もちろん発案者は、この僕。

河原でバーベキューなんて、なかなかいいだろ?


参加者は、シンジにトウジ、惣流にいいんちょー、そして綾波までちゃんと来たんだ。

綾波が来たのは正直言って驚いたよ。

綾波って、以前はこういうのにまったく興味を持ってなかったみたいだし・・・

でも最近の綾波は、やっぱり変わったみたいだな。

ちょっと、嬉しいね。

相変わらず肉は食べられないみたいだけどね。


ミサトさんも来るかなって思ってたんだけど、やっぱり仕事が忙しくって駄目みたいだ。

う〜〜ん、残念。



バーベキューは、やっぱり僕が仕切った。

僕はこういうのって慣れてるから、飯盒でご飯を炊いたり、火の加減を見たり、結構忙しかった。

でも、いつもみたいにひとりでやるんじゃないから、すごく楽しかったね。



で、そろそろお開きにしようかって言ってたころ、いきなり空が真っ黒になってきたんだ。

これはまずいかなって思う間もなく、雨が降ってきた。

それに雷も。

いい雨宿りの場所を探したんだけどなくって、

結局橋の下で雨が通り過ぎるのを待つことになっちゃったんだ。



30分くらいかな、激しい雨が降り続いたあとに、いきなり雨が止んだ。

そしてさっきまでの雨が嘘みたいに、また晴れ出したんだ。



僕たちはなんだか呆気に取られて、誰ともなしに笑い出したよ。

ホント、何がおかしかったんだか解らないけど、みんなで大笑いしちゃったんだ。

なんだろうね。

綾波まで、笑ってたように見えた。


そう、みんな楽しかったんだ。

また、こういうのってやりたいよね。

今度はキャンプがいいな。





          8月24日(日) [洞木ヒカリ]


こんにちは。洞木ヒカリです。


おとといね、鈴原から電話がかかってきたの。

それをコダマお姉ちゃんが取ったんだけど、鈴原ったらお姉ちゃんを私だと間違えて

いきなり話し始めちゃったのよね。

私はお姉ちゃんが笑いながら呼ぶのを聞いて、ちょっといやな予感がしたんだけど、

その予感は見事に適中しちゃったの。

お姉ちゃんたら   『彼氏からよ』   なんて言うんだもん。

   『そ、そんなんじゃないわよ』   って私は言ったけど、お姉ちゃんは

   『ふーん、そうなんだぁ。 じゃあ、私が貰っちゃおうかなぁ』   なんて言うのよ?

私は慌てて、   『あんなの、駄目よ駄目!!』   って思いっきり言っちゃった。



そしたらお姉ちゃんは笑って、   『ははは、ジョーダンよ、冗談』   だって。

しっかり、からかわれちゃった。



そうそう、鈴原からの電話なんだけど、みんなでバーベキューをやるから来ないかって事だったの。

私はすぐさまOKって言ったんだ。



そしてそれが、昨日のこと。

アスカや碇くん、それに綾波さんも来たのよね、昨日は。

発起人は、相田くん。

相田くんて、こういうときに凄く頼れるのよね。 私、驚いちゃった。

私もお料理はちょっとは自信があるけど、こういう外でやるものはまた違うのよね。

アスカも、相田くんのことを見直したって言ってたし。



今日になっても、昨日のことはホントに良く覚えてるんだ。

本当に楽しかった・・・



相田くんは、今度はキャンプに行こうって言ってたけど、それもいいよね。

すごく楽しみ。





          8月25日(月) [惣流アスカラングレー]


そろそろ夏休みも終わりになっちゃうわね。

一年中暑いのに夏休みも何もないような気がするけど、でもやっぱり夏休みは夏休みなのよ。

始まる前はいろいろ考えてたけど、でもなかなか実行できなかったわね。



そうよ、ばかシンジともあまり出歩いてないじゃない。

買い物の荷物持ちなんかには引っ張って行ったけど、でもやっぱりねぇ・・・

せっかくの長いお休みなんだら、どこか遠いところに行きたいわよね。


別にシンジなんか連れて行きたい訳じゃないんだけど、でもこのあたしがひとりで出歩いたら

うるさいハエどもが群がって大変じゃない?

だから、シンジをお供に連れてってあげるのよ。

ああ、シンジってなんて幸せ者なのかしら。 このあたしとふたりだけで旅行できるなんて。



そうと決まったら、さっそく行くわよ。

明日には出かけるからね。


ほら、シンジ! ちゃんと聞いてるの!?

なによその顔は。 あんたまさか、嬉しくない訳じゃないでしょうね。

・・・そうそう、解ればいいのよ。



なに? なんであたしがそんなに嬉しそうなのかって?


・・・・そんな事、知らないわよ!  ぷんっ。





          8月26日(火) [碇シンジ]


こんにちは。碇シンジです。



・・・・ 今日からなぜか、アスカとふたりで旅行することになったんだ。

どうしてこういう事になったのか、良くわからないんだけど・・・

アスカがすっかりその気になってて、いきなり決まっちゃったんだ。



僕は、嬉しいって言うよりもびっくりした。

だってアスカとふたりだけだよ?

それもアスカの方から言い出したんだし・・・ どういう風の吹き回しだろ。

ミサトさんがなんて言うか気になったんだけど、相変わらずのんきに

   『あらん、いいわよ〜〜、行ってらっさーい』

だって。 いいのかな? ほんとに。




そんな訳で、今日から4日間、旅行に出ることになったんだ。



今日は、とりあえず電車に乗って、北の方に向かったんだ。

アスカったら、どこに行くかも決めてないって言うんだよ。

   『そんなの、行った先で決めればいいじゃない』   だって。

僕はもっと計画的にやった方がいいと思うんだけど、でもアスカが楽しそうだったからいいや。


今日は、とりあえず仙台市まで来た。

この街も、結構いい感じだね。

昔からの風情があるって言うか、やっぱり第3新東京市なんかとは全然違うよ。



いろいろ回って、それからホテルに向かった。

でも、そこでちょっとした事があったんだ。


いきなり行った僕らが悪いんだけど、部屋がなかったんだよ。  ツインしか。

僕は他を回ろうって言ったんだけど、アスカは

   『別にいいわよ、それで』

だって。  僕は、アスカがいいならいいんだけど・・・

いつも一緒の家に住んでるんだし。



その夜は、夕ご飯を食べたら急に眠くなって、すぐに寝ちゃったんだ。

アスカがすぐそばにいるからどうしようって一瞬思ったけど、でも眠い方が強かった。


夜中になって、ふと目を覚ましたら、アスカがまだ起きてたんだ。

   『どうしたの? アスカ』


僕は心配になって聞いたよ。

そしたらアスカはこう言ったんだ。

   『ううん、何でもない。 ちょっと寝るのがもったいなくて』

そして窓に向かって歩いて、外を見た。

   『ほらシンジ、奇麗なお月様』


僕もアスカの隣に立って、一緒に月を見た。

時間の経つのも忘れて・・・





          8月27日(水) [惣流アスカラングレー]


昨日からシンジと一緒に旅行してるんだけど、やっぱりいいものね、旅行って。

いつもの日常から離れるって、なかなか出来ない事だもんね。



昨日なんか、ただのお月様がすごく神秘的に見えて・・・

思わずシンジと一緒に、見つめちゃった。

いつまでも、いつまでも・・・



でも、気がついたらちゃんとベッドに寝てたのよね。 不思議。

いつの間に・・・


昨日の晩はシンジと同じ部屋で寝る事になっちゃったのよね。

別にいいんだけど、やっぱりちょっと・・・ううん、かなり意識してた。

正直、どうしようかなって思ってたもん。

でも昨日の夜は、そんな感じじゃなかった。 すごく気持ちのいい夜だった。

どうしてかしらね。



あ、昨日の事ばかり書いてちゃ駄目よね。


今日はね、ずっと日本海側を列車で走ってたの。

特急とかじゃなくて、ゆっくりした列車でね。

海って、場所によって色や形が違うのね。 初めて知ったわ。

シンジに言ったら、

   『そうだよ。 海とか山って、場所によって全然違うんだ』

って言ってた。 シンジはシンジなりに、いろいろ考える事があったのかしらね。



そうそう、今日は結局、青森まで来て泊まる事になったんだ。

部屋はまた、同じ部屋。

なんか別々にするのも変な気がして・・・

今日泊まったところは、本当に日本的な旅館なのよ。

露天風呂まであって、それでここに決めたようなものよね。

ふふふ、ミサトやペンペンが聞いたら、悔しがるだろうな。



明日は、北海道に上陸する予定。





          8月28日(木) [碇シンジ]


こんばんは。碇シンジです。


今日はいよいよ、北海道に着いたんだ。

僕、北海道って来た事なかったから、すごく楽しみにしてたんだよ。

でも、まさか初めて来るときに、アスカと一緒に来るとは思ってなかったな。


まずは函館の街をゆっくり見たんだ。

うん、なんか風情があるよね。 ここも好きな感じだな。


もっとゆっくり回りたかったんだけど、でも時間もないから次の目的地の札幌に向かったんだ。

札幌に着いて驚いた。

札幌って、すごく大きい街だね。

それに活気があって・・・ 人も多いね。

なんか、すごく力強い感じがした。

もちろん、いろいろな観光名所も回ったけどね。



結局、今日は札幌で泊まる事になったんだ。

またまたアスカと一緒の部屋。

一昨日は一応、別の部屋を探してたけど、昨日はアスカはもう、最初から同じ部屋に決めてたみたい。

確かに、旅行に来たのに別々の部屋って淋しいもんね。


でも、僕はいいんだけど、アスカはいいのかな・・・?



明日は、北海道最北端を目指す予定。





          8月29日(金) [惣流アスカラングレー]


あたしたちの旅行も、明日で終わりね。

本当は今日帰る予定だったんだけど、でもやっぱりここまで来たんだからってシンジと相談して、

もう一日延ばしたんだ。

シンジは反対するかなって思ったけどむしろ乗り気になってて、あたしはびっくりしちゃった。

   『たまにはいいよね』    だって。

いつものシンジとは、ちょっと違った感じだったな。



そして今日は、北海道の最北端を目指したの。

最北端って、宗谷岬って言うところなのよね。

でも、ここに来るまでにもいろんなところを周ったわ。

北海道って、本当に広いわね。

それにとても奇麗なところばかり。

日本にも、こういうところがあるのね。

シンジも感激してたみたい。 いつもよりいろいろおしゃべりしてたもんね。

   『ほら、アスカ! あれ見て、あれ!!』

とか、いつもなら絶対に言わないような事まで言ってたしね。



そしてついに、宗谷岬に着いたの。

あたしはもっと派手な場所をイメージしてたんだけど、そういう場所じゃないのね。

むしろ、地味な感じ。

でも、それが逆にいい感じだったんだ。


でね、その後ろの方に小高い丘があったんだけど、なんとなく登ってみたんだ。

そしたら・・・・

もう、言葉に出来ないくらいのいい眺めが広がってたの。

ホントに、素晴らしい景色だった・・・

シンジも何も言わなかった。

この前じゃ、何を言っても無駄なような気がした。

だからあたしたちは、ただ手を繋いで・・・眺めていたの。



ホントに、来て良かった。





          8月30日(土) [碇シンジ]


こんにちは。碇シンジです。



僕たちの旅行も、今日でいよいよ終わり。

今日は、昨日泊まったサロベツの温泉旅館を朝早く出て、富良野を目指したんだ。

何でも、アスカがこの前見た、昔のドラマの舞台だったんだって。

アスカって、結構ミーハーなところがあるんだよな。

でも、実は僕もそのドラマはアスカと一緒に見た(正確には見させられた)から、

どんなところなのかな、っていう興味はあったんだ。



行ってみて・・・

なんとも言えない、気持ちになったんだ。

景色から何から、みんな僕が想像してた以上にすごく良くって・・・

北海道って、やっぱり大きいね。

こんなところがあるんだ。

結構、感動しちゃったよ。



アスカも感動してたのかな。

口数が少なかったもんね。



そうそう、あのドラマの舞台になった場所にも行ってきたよ。

さすがにロケに使った小屋なんかはもうなかったけど、

でも大平原に立つ、あの大きな木はしっかりあったんだ。

どうしてこれは一本だけ立ってるんだろうね。

奇麗な景色なんだけど、ちょっと淋しそうだったな。

やっぱりひとりじゃ、淋しいと思う。 木だって、そうなんじゃないかな・・・



そうこうしているうちに、時間もなくなってきちゃったんだ。

僕たちは、後ろ髪を引かれる思いで富良野を後にして、千歳に向かった。

そしてそこから、第3新東京市に戻ったんだ。



第3新東京市に戻ったら、僕は・・・  とても懐かしい感じになったんだ。

たった5日間しかここを離れていなかったのに。

そして解ったんだ。

僕は、やっぱりここに住んでるんだって。

僕の街は、やっぱりここなんだって。



いろいろあるけど、この街には僕の大切な何かが・・・ あるような気がする。

そんな気がしたんだ。

そして、ミサトさんやトウジ、ケンスケ、そして綾波にも、急に逢いたくなった。

だから僕は、アスカに言ったんだ。



   『アスカ、帰ろう。僕たちの家へ』





          8月31日(日) [葛城ミサト]



お久しぶりね♪  葛城ミサトです。



昨日までの5日間、シンちゃんとアスカは旅行に行ってたのよね。

きっかけはアスカの気まぐれだったみたいだけど、でもシンちゃんも楽しんでたみたいね。



エヴァパイロットが5日間もネルフ本部を離れるなんて、以前だったら許されないことだったけど、

最近はずいぶん融通が利くようになってきたのよね。

リツコだって、前だったら絶対に反対してただろうけど、今回は

   『あら、いいわね』

の一言で終わりだったもんね。



一応、毎日3回は連絡を入れなさいって言っておいたけどね。

シンちゃんって真面目だから、きっかり3回、朝に旅館を出るときと、お昼と、夕方にチェックインしたときに

連絡をくれてたのよね。

正直言って、助かったわ。

まあ、何事もなくって良かった。



何事もなかったといえば、シンちゃんとアスカにも何もなかったのかしらね。

はっきりは言わないんだけど、どうやらずっと同じ部屋に泊まってたみたいだし・・・

それに、帰って来たときのシンちゃんとアスカ・・・

なんか、雰囲気が違うのよね。

どこか大人びたって言うか・・・



う〜ん、これは保護者としては、はっきり突き止めないといけないわねぇ。



ま、それは冗談としても、この旅行でふたりが成長したのは間違いないみたいね。

やっぱり私の判断は正しかったわね。

昔から言うでしょ?

   『かわいい子には、旅をさせろ』

って。





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