<旧車シリーズ 830>


DAIHATSU CO13T型


 
1930年のHA型の試作以来、裕に四半世紀を越えるダイハツ・オート3輪の歴史の中で、1962年に登場した最後のニューモデルがCM/CO系である。最終進化形たるCM/CO系では、幌を排除した鋼製密閉キャビンと、パワフルな水冷4気筒エンジンが最大の特徴。2トン積みのCO系に搭載されたFB型・1862ccエンジンは、85psの最高出力と11.5kgmの最大トルクを発生する。ミッションは2〜4速シンクロメッシュの前進4段で、コラムシフトの採用により乗車定員は3名である。
 CO系の荷台長は8尺/10尺/13尺の3種類で、13尺車(CO13T型)の全長寸法はじつに6080mmにも達した。マツダT2000の13尺車も同サイズだが、ダイハツは最小回転半径が僅か5.02mで、5.93mのT2000を圧倒した。この全長でも小型車扱いとされたのはオート3輪だけの特例措置で、その昔、小型車の寸法制限を課さない三輪保護策をとった時代の名残りである。これは小型4輪トラック勢に対する唯一のアドバンテージとして最後まで残り、長尺物を運搬する一部業種で最後まで支持され、近代オート3輪が細々とながら'70年代まで延命した最大の要因となった。
 1967年にはディーゼル車(DO13T型)も追加された。DE型・2270ccエンジンは最高出力65ps/最大トルク14.8kgmというトルクフルなスペックで、「世界初のディーゼル三輪車」と謳われている。


 
絶滅寸前だったオート3輪を最後まで重宝した業種とは、もちろん材木商です。奥深い山道を分け入り、長い長い材木の切り出しを行うには、小回りの利く13尺車が欠かせない存在だったわけです。私の現役オート3輪の撮影台数は40台余りですが、写真のダイハツをはじめ、その約3分の1がこうした材木屋さんの車両です。ただ、中国地方はT2000のシェアが著しく高かったようで、最後まで凌ぎを削ったライバルだったわりにダイハツ号に遭遇する機会は少なく、5台に1台程度の確率でした。

推定年式:1966
撮影時期:1980年11月
撮影場所:山口県大津郡三隅町にて