<旧車シリーズ 831>


MAZDA T2000 (TVA32S)


 
昭和初期から続く東洋工業のオート3輪の歴史の中で、最後のニューブランドとなったT2000が登場したのは1962年のこと。小型車枠の拡大措置に伴い、2トン積みクラスのエンジンを従来のUA型・1484ccからVA型・1985ccに換装したのがその発端である。このT2000には丸ハンドル、鋼製独立キャビン、水冷4気筒エンジン、全輪ブレーキ等、昭和30年代から始まったオート3輪の高級化・高性能化の全ての要素が備わっており、いわば日本のオート3輪の最終完成形ともいえるモデルであった。1965年の商品改良では全車ハイドロマスター付となり、ハンドルチェンジのシフトパターンが変更される。同時にサンバイザーや燃料計などの装備が新たに加わった。
 最も全長の長い13尺車の価格は68.0万円で、同クラスの4輪トラックに対する価格の優位さはすでに10万円以下に縮小していたが、小型車扱いで4m超の荷台が得られる三輪車特有のアドバンテージが材木業者を中心に根強い支持を得て、T2000は最終的に1974年の受注生産打切りまで、10年以上の長期にわたって生産が続けられた。
 写真のT2000は、1969年以降の保安基準強化に対応し、運転席ヘッドレストやサイドマーカーが追加装着された最終型モデルに相当する。


 
T2000は日本で最後まで生き残ったオート3輪であり、その意味では最も親近感の湧くモデルといえるでしょう。たぶん、街中で三輪を見かけた最後の記憶が、このT2000であるケースも少なくないのではないでしょうか。私もこのクルマは大好きなのですが、あえて難を言うなら、モデルライフが長かった分、外観からの年式推定が非常に難しいことと、全長6.1m×全幅1.8mの堂々たるサイズでは簡単に収まるガレージが見つかりそうにないということでしょうか。

推定年式:1971
撮影時期:1981年1月
撮影場所:山口県防府市大字仁井令開出にて