<旧車シリーズ 829>


MAZDA T1500 (TUB81N)


 
東洋工業は1957年、「鋼製キャビン+丸ハンドル」の近代的なオート3輪として、2トン積みのHBR型を登場させたが、2年後の1959年にはこのモデルの搭載エンジンを空冷V型2気筒から新開発の水冷直列4気筒1484ccのUA型へ換装し、2トン積みのニューモデルとして「T1500」のネーミングを与えた。UA型にはオート3輪初のトリプルベンチュリーキャブレターを採用、オイルはフルフロー型濾過形式とし、冷却水管内にベロース型サーモスタットを備える最新式ユニットである。その後、小型車枠の拡大措置に伴ってマツダのオート3輪は再編され、1962年4月から2トン積みにはより強力なVA型1985ccエンジンが与えられ、T2000へ移行する。これと同時に、UA型エンジンは1〜1.5トン積みの旧T1100に移植され、新たにT1500の名前を受け継ぐことになった。
 2トン積みの時代には8尺から13尺までのワイドな荷台長を揃えたT1500も、1トン〜1.5トン積みとなってからは8尺のみで、標準車と低床三方開き車の2種類というシンプルな荷台バリエーションとなった。UA型のスペックは最高出力60ps/最大トルク10.4kgmと変わらないが、ファイナルギアを高速型として燃費の向上が図られている。リアブレーキはダブルアクティングの2リーディング式へ変更された。


 
T1500は最終的に’70年代初めまで生産が続けられましたが、T2000と比較すると、その残存数は圧倒的に少ないようです。写真は隣町の石材屋さんで使用されていた個体で、撮影当時は「山 6」のシングルナンバー付きでした。ところが数年後にお店の前を通るとその姿がなく、すぐ裏手の空き地で埃を被った廃車体となっていました。これも時代の流れとはいうものの、やっと巡り会えた貴重な現役車の退役の過程を目の当たりにして、私はとても切ない思いをしました。最初から廃車体として出会った車両なら、そんな感情は毛頭抱かないのですが・・・。

推定年式:1968
撮影時期:1981年1月
撮影場所:山口県佐波郡徳地町島地にて