民事訴訟法 平成10年度第1問

           問  題

 境界確定訴訟について論ぜよ。
 

           答  案

一 境界確定訴訟とは、土地の境界の確定を
 求める訴訟をいう。
二 境界確定訴訟については、その法的性質につき
 土地の所有権の確認を求める確認訴訟か、公法上の
 境界を定めることを求める形式的形成訴訟かと
 いう問題が存する。
  この点、私は、公法上の境界を定める形式的
 形成訴訟であると解する。なぜなら、公法上の
 境界と土地の所有権の範囲は必ずしも一致
 しないので所有権確認訴訟と別個の訴訟類型を
 認める必要があるし、公法上の境界は公図等の
 記載の基準となる公益的色彩を有するものであるので
 裁判所の裁量を広く認める必要があるからである。
三 このように境界確定訴訟が土地の公法上の境界を
 定める訴えであることから、請求棄却判決は
 許されないこととなる。境界を定めないと
 紛争の解決につながらないからである。
四 また、土地の公法上の境界を定めるという
 公益的色彩を有する訴訟であることから、
 訴訟物の画定及び訴訟の終了における処分権
 主義の適用は排除される。
  すなわち、裁判所は当事者の主張に拘束されずに
 境界を定めることができるし、また、請求の放棄・
 認諾及び訴訟上の和解は許されない。
  ただし、訴えを取り下げる(二六一条)ことは許される。
五1 ところで、境界確定訴訟を土地の公法上の境界を
  定めることを求める訴えと解すると、当事者の一方が
  境界を超えて相手方の土地を時効取得した
  場合には、境界をめぐって相争う者と
  いえなくなり、当事者適格が欠けるのでは
  ないかとも考えられる。
 2 しかし、相手方の土地の一部を時効取得したに
  過ぎない場合には、時効取得した土地の分筆の
  ために境界を定めておく利益があるので、
  当事者適格を失うものではない、と解する。判例も認めている。
 3 これに対し、相手方の土地の全部を時効取得
  した場合には分筆の必要がないので、当事者適格は
  なくなるものと解する。

以 上


所  感

 前日にざっと民訴全体を見渡したのですが、境界確定訴訟については条文もないし、よもや出るまいと思って飛ばしていました。問題文を見たときはひぇ〜っという感じです。97年時の予想答練ではよく出ていたようで、その時覚えたうろ覚えの知識を基に書きました。橋本先生のテキストでも触れられていたのを一度読んでいたのも役立ちました。
 でも、弁論主義との関係は落とすし(というか、自信がなかったので書かなかったのですが)、どれだけ項目が挙げられたかが勝負になりそうなこの問題でちょっとしか書けなかったのはすごく気になりました。とにかく守ることだけを心がけた答案です。
 法的性質論から各論に流すことにして、法的性質をまずきちんと論じることを重視しました。

憲法1

民法1

商法1

刑法1

民訴1

破産1

憲法2

民法2

商法2

刑法2

民訴2

破産2


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