我々草野球人には日光が似合います。日光の降り注ぐグランドを見るだけで我々の野球意欲は高揚し、太陽に感謝しつつ試合に興じることができるのです。 しかし、そのありがたい日光も度を過ぎた量であれば、かえって有害なものとなり得ます。第7章ではその一つの有害例として太陽熱を取り上げましたが、今回は日焼けについて考えてみることにしましょう。
ご存じの通り、日焼けを起こすのは紫外線です。表では3,900Å以下となっていますが、このうち2,900Å以下の紫外線は大気中で吸収されるため、問題となる紫外線は実質2,900〜3,900Åの紫外線ということになります。驚くことに、この部分の紫外線は日光全体のわずか0.2%にすぎません。
つまり、真夏に我々の皮膚に有害な日焼けを起こすのは2,900〜3,200Åの紫外線ということがわかります。我々の紫外線対策の対象はこの部分の紫外線なのです。
ただし、日焼けはすべてが体に悪影響を及ぼすものとは限りません。メラニンが増加し単純に皮膚が黒くなるだけの日焼けは sun tanning と呼ばれ、体に負担はかかりません。
日焼け止めクリームには、sun burn を防ぐための二つの大きな機能が備わっています。一つは2,900〜3,200Åの紫外線を吸収する働きで、このために紫外線遮断剤(パラアミノ安息香酸化合物、サリチル酸化合物、桂皮酸化合物など)を含有しています。もう一つは、紫外線を散乱させ減弱化する働きで、クリーム中に含まれるパウダーがその機能を担います。パウダーが多いほどこの機能が高いことになります。 また、ビタミンB、特にB2が不足すると、皮膚の日光に対する抵抗力が低下します。よって、真夏にはビタミンBの摂取を心掛けることも予防の一つとなるでしょう。 すでに日焼けした皮膚には sun burn はあまり起こりません。すでにあるメラニンが紫外線を吸収するためです。これは逆に、色白な人ほど sun burn を起こしやすいことを意味します。
クリームを選択する際のもっとも目安になるものは、SPF(Sun Protection Factor:日焼け止め指数)です。これはクリームを塗って日焼けを起こすまでの時間が、塗らない時より何倍かかるかを示したものです。真夏の海岸(千葉県)で日光に当たると、平均的な日本人では20分で日焼けを起こしますから、SPF値が15のクリームを塗るとその15倍の時間(300分)で日焼けを起こすということになります。 市販されている日焼け止めクリームのSPF値での分類は下の表のようになります。
草野球の場合、試合前後合わせて3時間と仮定すると、SPF値が9以上のものを選択する必要があります。レジャー用のクリームであればどんなものでも理論的には間に合うことになります。ただし、これは平均的な場合ということですので、個人差があることを承知してください。また地域の紫外線量の差も考慮する必要があります。沖縄では北海道の2倍の紫外線量であるといわれています。レジャー用のタイプ I、もしくはタイプ II の選択が無難なところではないでしょうか。 SPF値とは別にPAという表示もあります。これは sun tanning の防止のための指標で、+、++、+++の3段階で表示されます。主に美容という観点での指標ですから、我々の場合は、SPF値を指標としてクリームを選択するのがよろしいかと思われます。
(初版2002.7.7)
(改訂2003.8.7) 【参考資料】 (1)「美容のヒフ科学」安田利顕, 南山堂 (2)「日焼けとスキンケア」川田 暁, からだの科学, 2002.5, p75,日本評論社 |
前章へ戻る | 「草野球の科学」メニュー | ------------ |