「草野球の窓」
第4章
「汗の科学」

 草野球人にとって、汗は友達みたいな存在です。汗をかくということが、我々野球人の、いや全ての運動愛好家の勲章であり、また身体の発する言葉でもあります。
 この章では、その汗について詳しく触れてみることにします。

汗腺とその調節
 汗はご存知の通り、汗腺から分泌されます。その汗腺は全身に約200万〜500万個あります。しかし実はその全てが働いている訳ではなく、約180万〜280万個しか働いていません。また均一に存在している訳でもありません。すでに経験からお分かりでしょう。一番密に汗腺が存在しているのは「手掌」です。次に密なのは「足の裏」、その次に「額」です。

 汗が出る理由については、(1)体温調節、と(2)精神的な興奮、の2つが挙げられますが、それは汗腺によって異なります。ほとんどの汗腺は体温調節のために働きますが、前述の「手掌」と「足の裏」は精神的な興奮が理由で汗を出します。つまりこの2ヵ所の汗腺は体温を下げるためではなく、緊張した時にのみ汗を出します。緊張した時に汗を出すと、身体にどういうメリットがあるのかはよくわかりません。

 さて、発汗をコントロールしているのは脳の視床下部と呼ばれる部分です。大脳の裏側に様々なホルモンの中枢である脳下垂体がぶら下がるように付いていますが、視床下部はそのすぐ上に当たる部分です。この視床下部が体温の上昇を感知すると、神経系を介して皮膚血管を拡張させ、皮膚での熱放散が促進されます。同時に汗腺が刺激されて発汗が盛んになります。脳がコントロールしているといっても、これらは自律神経系ですから我々の意識に関係なく機能します。つまり眠っていてもきちんと体温調節されるわけです。

汗の成分
 最後に汗の成分について触れておきましょう。汗の大部分は水です。水以外の成分では、NaCl(塩化ナトリウム)が約0.65%、尿素0.08%、乳酸0.03%です。NaClはつまり塩分そのものです。
 しかしこの成分は常に一定ではなく、運動して大量に汗をかいたときは、NaClが0.9%に近づいていきます。つまり血液の浸透圧とほとんど同じになるわけです。普通の発汗では、一度汗腺で作られた汗は、体外に分泌されるまでの導管の部分で、塩分が再吸収されてなるべく塩分を節約しているのですが、汗の量が大量になるとその再吸収が追いつかなくなるのです。
 さて、では塩分は身体にとってどのような意味を持っているのでしょうか。NaClはナトリウムと塩素の化合物ですが、身体にとってどちらも重要というわけではありません。再吸収してまで確保したいのはNa(ナトリウム)の方です。ナトリウムは血液の浸透圧を調節する道具として使われています。つまり、我々の身体は、水を直接調節しているのではなく、ナトリウムを加減することで水を間接的に調節しているわけです。

 このようにナトリウムは身体にとって非常に重要な成分ですから、大量の汗をかいた時は、水分のロスだけではなく、ナトリウムのロスも十分意識しておく必要があります。

(初版2000.5.5)

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