我々の身体を動かしてくれるのはもちろん筋肉です。しかし、筋肉の他にも腱と靱帯がそれを補う役割を果たしています。この章では身体を動かす3つの要素、「筋肉」「腱」「靱帯」について解剖学的・組織学的な観点から整理しておきましょう。
筋肉は、伸縮性の高い細胞である筋細胞とその筋細胞を接着する結合組織から構成されています。筋細胞は直径10〜100μm、長さは最長35cmにもなる細長い線維状の細胞で、「筋線維」とも呼ばれています。ATPは筋線維が収縮する際に必要となります。 さて、我々が酷使している骨格筋は、その名の通り、骨格を動かす働きをしています。つまりそのために骨格筋は骨に付着する必要があります。しかし、柔らかいままでは硬い骨にしっかりと付着することは不可能です。そのため骨格筋と骨の間を仲介する腱が存在します。筋肉が筋細胞と結合組織からできているのに比べ、腱は結合組織だけでできていますから、伸縮性はあまりありません。よって、無理に引っ張ってしまうと切れてしまう場合があります。最も知られているのはご存知のアキレス腱(踵骨腱)です。アキレス腱はふくらはぎにある腓腹筋が、かかとに接続するための仲介をしています。このようにほとんどの大きな筋肉は腱を仲介として骨に接着し、動かしていると考えていいでしょう。 靱帯は構造的には腱とよく似ていて、結合組織で構成されていますが、腱よりもさらに密度が濃くなっています。靱帯の役割は筋肉と骨の仲介ではなく、骨と骨の仲介です。つまり関節において骨と骨が離れてしまわないように位置関係を保持する役割を果たします。我々が使うグローブも革ヒモがなければグローブとしての形が保持できません。この革ヒモが靱帯をイメージするのにぴったりでしょう。また靱帯は、関節が変な方向へ曲がらないように関節の動きを制限するという役割も果たしています。関節の許容範囲を越えて無理に力を加えると、靱帯が引っ張られ、重度であれば断裂してしまいます。いわゆる「野球ヒジ」は、本来内側にしか曲がらないヒジ関節が、投球動作によって外側に反り返る力を受け続けることで内側側副靱帯が損傷した状態を指します。 今回は特に組織学・解剖学的な観点から「筋肉」「腱」「靱帯」について述べました。それぞれの障害についての各論は後日、項を改めて触れたいと思います。 (初版2000.4.27)
【参考文献】 |
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