百年草(愛知県足助町)<

○3度利用してみて(1993.7.24/1995.9.23/1997.11.1)

 足助町は紅葉で有名な香嵐渓を有し、伝統工芸品の制作現場を見せる三州足助屋敷が作られている。第1回の町並みゼミが開催されたところでもあり、観光とまちづくりの面でも注目を集めている。このような町で、様々な地域活性化施策の1つとして設置されたのが、百年草である。ここは宿泊施設というよりも、福祉施設として設置された。老人福祉センター、在宅老人デイ・サービスセンター、高齢者生きがい活動促進施設(足助ハム「ZiZi工房」)として1990年10月に開所し、93年1月に宿泊棟を開業している。さらに、95年8月には足助町農林漁家高齢者婦人センター(ベーカリー「バーバラはうす」)を開設している。

 宿泊施設は、高齢者の施設に外から若い人を呼ぶことで活気をつけることをねらっている。ZiZi工房やバーバラはうすで作られるハムやパンの人気は高く、働く高齢者にとって遠くから買いに来てくれることが喜びになっているものと思われる。もっとも、宿泊客以外、地元住民の購入もかなり高いようだ。

 部屋は10室しかなく、ホールなども狭い。浴場は近隣住民も利用できるのだが、これも大きくはない。宿泊施設としてはもの足りない面もあるが、それをカバーするだけでなく、人気の要因となっているのが、10室の部屋がすべてタイプが異なり、オリジナルなイメージにあふれていることである。これまで3度宿泊しているが、今度はどの部屋に泊まろうかと考えることも楽しみの1つとなっている。設計は倉敷で個性ある建築を作っていることで有名な浦辺建築事務所。この足助でも地域の個性を引き出す建築を創造している。

 また、もてなしの心にあふれる気遣いも心にくい。部屋には和紙に手書きの歓迎の言葉が書かれており、宿泊した後にもお礼のはがきが届く。レストランではもみじが入った和紙がテーブル台として置かれており、それを持ち帰えるための紐も用意されていた。レストランのウエイターなどは、素人みたいなところがあったが、そこが自然なもてなしを感じさせるようでもあった。変にホテルの運営に慣れてしまうのではなく、いつまでもこのような素朴な味を残しておいてほしいものだ。

 周辺の観光地としては、まず三州足助屋敷がある。最近、ここに亜細亜交流館が設置されたそうだ。また、歴史的町並みも見所の1つで、マリリン小路とよばれるところは写真スポットとしてよく紹介されている。さらに、復元された足助城もある。自動車で入口まで行くことができるが、カーブの連続で我々は運転が下手なこともあって車酔いしてしまった。

 ここも近場で気軽に訪れることのできる施設。長男が生まれて4カ月で初めて外泊したのがここ。次男も6カ月で連れていった。その意味でも思い出深い施設である。ここに泊まったついでに大正村や小原の和紙の里なども訪れた。地域の身近な施設をまわる拠点として、今後も利用していきたいと考えている。



【基礎データ】
  • 事業主体:足助町
  • 運営主体:足助町百年草協会(任意団体)
  • 事 業 費: 12.5億円
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