ホテル花更紗(岐阜県中津川市)

○はじめの訪問(1998.10.31)

 中津川市は木曽路の入口にあたるところであり、市内にも落合宿という宿場町が残されているが、観光的には有名ではない。宿泊客はほとんど見られないようなところであったが、ふるさと創世資金を活用した温泉掘削を契機に作られたのがこの施設だ。クアリゾート湯舟沢というのが全体の名称であり、健康温泉館とホテルからなっている。健康温泉館が1995年2月、ホテルが95年8月にオープンしている。
 健康温泉館は、温水プールとバーデゾーン及び温泉で構成されており、入館料は1700円。温泉だけだと1000円で楽しめる。ホテルの宿泊客は無料で何度でも利用できる。温水プールは屋内と屋外があり、屋外も11月下旬まで利用可。流水プール、スライダーなど一通りのものは揃っている。バーデゾーンも各種充実しており、温泉も広く、露天風呂もある。子供が楽しんだこともあり、2日間ともここで楽しんだ。温泉だけだと料金的に少し高いような気がしたが、日曜日は高齢者が朝から多く、訪れておりにぎわっていた。中津川市民は200円の割引があるが、それがきいているのだろうか。結構、近所に人々にも活用されているようだ。温水プールとバーデゾーンの方は宿泊客の利用が中心みたいで空いていた。採算的にどうなるのか気にはなるが、利用する側にとっては十分楽しめた。
 ホテルの方は日経トレンディの公共リゾートチェック(98年8月号)で4つ星をもらっているだけあり、料金(休日前日、和室1泊2食 15,000円)からみて、食事の質は高く、サービスも充実していた。ただし、施設的には、部屋からの眺望が温泉館で遮られたり、廊下がやや狭かったり、部屋のバス・トイレが後から設置したみたいに段差があったり、窓際の板間のスペースが窮屈だったり、廊下の声が響いたりと問題は多い。
 特に、部屋のバス・トイレについては、無理にバス付きにしたがために、トイレと洗面の空間がとれずに窮屈になっており、段差が高くでつまづきやすいことと併せ、きわめて利用しづらい。温泉があるところでは、わざわざ部屋にバスを設置しなくてもよいと思うのだが。また、ホテル専用の温泉があり、岩風呂と桧風呂ということで特徴を付けているのだが、桧に滑り止めと腐りどめの特殊加工がしてあり、桧の臭いが全くしない。これではタイルの風呂と同じで桧の意味がないように感じた。
 ハード面でもうちょっとした気配りがあれば、もっと評価が高かったのにと思うと残念であるが、子供づれで楽しむ分には充実した施設であるとことは間違いない。周辺に、ふれあい牧場というのがあり、無料でポニーやヤギ、羊、ウサギなどに触れられるのがよい。子供の乗馬体験もできた。
 馬籠や妻籠にも近いことにも驚いた。木曽路散策の拠点としての活用できそうだ。身近に楽しめる公共リゾートとして、うまく活用していきたいと考えている。

【基礎データ】
  • 敷地:市所有
  • 健康温泉館:市建設−22.8億円
  • ホテル花更紗:クアリゾート湯舟沢(第三セクター)建設−13.1億円
  • 運営:クアリゾート湯舟沢
  • クアリゾート湯舟沢の設立時の資本金:8100万円(うち4100万円が中津川市)

○2度目の来訪(1999.5.1)

 手近で楽しめる場所として再び訪れた。
 GW中ということもあり、健康温泉館は大賑わい。昨年10月に訪れた時には宿泊客しかいないように感じたが、天気がよかったこともあり、プールもバーデゾーンも利用者が多かった。
 今回は、ここから馬籠から妻籠を経由して安曇野へ。馬籠は10年以上ぶりに訪れたが、観光客の多さには驚き。町並みもきれいに建て替えられたものが多く、違和感を感じる部分も。馬籠から妻籠の道路も大渋滞。やはり、ここは歩かないと意味がないかも。  (1999.5.1)


○3度目の来訪(2000.9.23)

 楽しいはずの旅がプールのウォータースライダーでの事故によって台無しになってしまった。幸いにも軽傷ですみ、事なきを得たが、もしこれが子供でなく、大人だったらと考えると恐ろしい。

 まずは事の顛末を記載したい。
 3度目の訪問でようやくスライダーのできる身長に達した大樹(7歳)。最初は私と2人で台に登り、大樹を滑らした後、私がすべった。次からは、子供1人でも大丈夫と、私は拓海(3歳)の面倒を見、大樹が1人でスライダーを滑るのを妻が下から見ていた。
 大樹の前を小さな子供づれの親子がすべった。下から見ていた妻は、そのあまりにも遅いスピードに「やばい」と思ったという。そのときにぶつかる音。後から滑り出した大樹が追いつき、ちょうどカーブのところで前の親子を追い抜いてしまったのだが、その際に頭をぶつけてしまった。
 私は、泣きながら出てきた大樹を見て、途中で壁にぶつけたのか、と思った。すると、後から降りてきた人が何か言っているので、滑りはじめの時にぶつけたのを教えてくれているのかと思った。ところがそれは大違いだったのだ。

 目の周りに擦り傷があり、少しはれていたが、少したてば痛みもやわらぐだろうと、しばらく様子を見ることにした。せっかくやってきて遊びはじめたばかりだったこともあった。しかし、30分ぐらいたっても、頭の痛みはおさまらないという。心配になり、医者にみてもらうことにする。
 それまで、プールの隅に座りこんでいたが、係の人に医者をよびたいというと、とりあえず、救護室に入ってという。救護室があるなら、早く言ってくれよ…。
 病院の位置を聞くと、遠くて道順も複雑。これは1人で送っていくのは難しいと思った。すると、ホテルは「救急車を呼ぶこともできます」という。けがをさせた人も救急車にきてもらった方がよいのではというので、救急車を頼むことにした。
 病院までは救急車でも15分近くかかり、大樹は途中で寝てしまった。寝たのがよかったのか、痛みも少し和らいだよう。レントゲンの結果も「特に異常なし」ということで、ホテルに戻れることになった。

 しかし、ここからまだ後があった。病院に警察の人が来て、事情聴取したいので警察に来てくれという。時間はとらせないから、ということで行ったのだが、近くという警察まで10分近くかかり、事情聴取にも30分以上かかってしまった。
 ここまでは、結果として救急車をタクシーがわりに使ってしまった自分たちの責任、仕方がないと思った。
 事故があったのが3時50分頃。警察の事情聴取が終わってホテルに戻ったのは7時すぎだった。

 それまでは、子供のことが心配だったこと、何人もの警察の人に話を聞かれ、驚いたこともあり、事故原因について十分考えていなかったのだが、ホテルに戻り、冷静に考えてみると、だんだんホテル側の対応に腹がたってきた。
 最初は、120cm以下の人の利用禁止、2人乗り禁止と書いてあり、それを無視して小さな子供と2人で載っていた人が全面的に悪いと思っていたのだが、聞いてみると、利用者からの要望で、利用者の責任でホテルとしてはそれを容認していたというのだ。
 それなのに、スタート地点には係員はおらず、信号が青になってスタートするしくみ。それも出口のセンサーで青になるシステムではなく、時間が経てば自動的に青になるシステム。ホテルの説明では体を起こして滑るとスピードが落ちる、体の大きい人はスピードが落ちるということで、その遅い人に併せたという。しかし、体重の重い人が子供かかえながら、体をおこしてすべったらどうなるのか。2人乗りの親子は、途中で失速してしまったので、手でこいでいたともいう。そこに後ろから来た大樹がつっこんでしまったのだ。
 考えてみると、子供だから、うまくすれ違いできたのかもしれないのだ。もし、後ろからすべっていたのが、大人だったら、コースが直線のところだったら、前の人が大怪我をしていたのかもしれないのだ。このようなことを容認していたホテルにも問題があるのではないだろうか。

 警察に行く途中の車の中で、ホテルの支配人が「これまで何度か救急車を呼んでいるが、警察で事情聴取をうけるのは初めてだ」というようなことを言った。その言葉には「こんなことで救急車を呼ぶから、警察沙汰になってしまった。ホテルに傷がついた」と言っているようにもうけとれた。
 その印象を強くしたのは、夜、支配人が話があるからというので出向いた時。今回の事故についてのホテル側の見解があり、今後の対策をどうするのかという話を聞かせてもらえるのかと思ったら、話の内容は「ホテルでかけている保険が使えるがどうしょうか」という話だった。思わず、そんな話よりも、今後、このような事故がおこらないようにするためにどうするつもりかと聞いたのだが、設置した時にヤマハがどうのなど、本質とはかけ離れたことを言うばかり。こんな事故は本来おこるはずはない。原因は、大樹が信号を無視したためではないかと考えているようにも受け取れた。
 ハード面でセンサー設置も考えたいという言葉はできたが、私はまずはルールを徹底すべきと主張した。しかし、それについては否定的で案の定、翌日も2人乗り、120cm以下の子供の利用が横行していた。

 今回の事故は不幸中の幸いだったと思う。ホテルはこれをよい教訓にしてほしいと思うのだが…。安易な対応が大事故につながらないことを祈るばかりである。

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