谷中学校と早稲田商店会
建築学会東海支部都市計画委員会住宅部会事例視察/1999.12.11)

 住宅部会の事例視察第2弾として東京方面を訪れた。調査では下宿屋バンクも訪問したのだが、会議のため参加できず、後半のみの参加となった。

 谷中学校は、昭和60〜63年に東京芸大の大学院生と谷中界隈の地域有志で行った「上野谷中根津千駄木の親しまれる環境調査」のネットワークを母体に、調査成果を具体的に町に還元し、まちづくりに役立てたい、とまちと住まいの専門家や町の有志により、平成元年7月に発足されたもので今年で10年を迎えた。
 町家を改修した一部を借用している事務所を訪れ、中心メンバーの西河氏、中島氏の話しを聞いた後、子連れで駆けつけてくれた椎原さんとともに、町歩きにでかけた。3人ともこの町が好きで住み着いた人々で、長屋の1軒を借りている西河さんの家も見せてもらった。そこでは、まちの人が3人に話しかけてくる。まさに地域に密着しているという感じだ。毎年秋に行われる芸工展では、この西河さんの家もギャラリーとして利用されるという。
 谷中学校が手がけた保存、再生の事例や高層マンションの見直し運動の結果、9階建のマンションが6階建にボリュームをおさえ、地域にあうよう計画が見直された工事現場も訪れた。最後は、ちいさなレストランの前の道路で食事をした。ゲリラ的オープンカフェの出現である。
 話しを聞くと経営は大変でいろいろな苦労が偲ばれた。学生のノリですすめられてきた活動が10年をすぎ、地域にも認知されてきた中で、いかに経営していくか、転機を迎えているようだ。調査等の受け皿として設立した有限会社のNPO法人化も検討中という。大いに期待したい。

 早稲田商店会は書籍(スーパーおやじの痛快まちづくり/安井潤一郎著)で読んで刺激を受け、ついでだから訪問しようということになったもので、当初は見学だけでもよいと思っていたが、ちょうど小金井のPTAの人が見えるので、その人たちと一緒ならいいということで話しを聞かせてもらえることとなった。本来は我々の方が従となるところが、先に到着したことと、人数がこちらの方が多かったことから、小金井の人には悪いことをした。
 話しの内容については、本に書かれていることが多かったが、講演に引っ張りだこだと自認するだけあって、最初にこちらが目的などを話す前から、次から次へと話しがつきなかった。本を読んでいなかったメンバーはその内容に圧倒されたようだ。
 自ら「実際に商店街をみて、どこが活性化している商店街かと思ったでしょう」というように、見ただけではどこにでもある商店街となんら変わりはない。唯一、みるべきものとしてはエコステーションぐらいで、それも我々は最初に見たときは発見できなかったぐらい(本来の商店街から少し離れたところにあった)。活発な活動をやっているので、立派な事務所などがあるかと思いきや、話しを聞いた場所もスーパーの2階で、そこに昇る階段は商品でふさがれてしまっていた。思わず、どこで会議を?と聞いたらメーリングリストで打ち合わせするので集まる必要がないという。インターネットがいかにまちづくりに使えるかという点でもいろいろ話しが聞けてよかったというところだ。

 今回、住宅部会の調査で京都・東京の興味深い事例を視察・ヒアリングすることができた。コンサルタントの調査という形ではなかなか対応してもらえないようなところも建築学会や愛知県ということで貴重な話しを聞かせてもらうことができたようだ。東京では、NIFTYの都市計画フォーラムのオフにも参加。日頃、ネット上でしか知らなかった人と会うこともできた。これらの成果は、仕事でもいろいろ活用できそうだ。

(1999.12.16)

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