常滑のやきもの散歩道

 住宅部会では中心市街地の居住支援をテーマに事例研究を行っている。今回は常滑市。中部国際空港の建設をまちの活性化に結びつけようと検討が進められている。中心市街地活性化基本計画もまとめられ、8月にも国に提出される予定となっている。その中でも重要な地区として位置づけられているのが、やきもの散歩道周辺地区。常滑の基盤となった産業の地であるととともに、現在では多くの観光客が訪れる地区となっている。
 これまでの見学会では商業地が中心であったが、今回は商業よりも工業、さらにそこから派生した産業観光の地を見学した。商業型ではない中心市街地としての事例といえる。地元でやきものを営む方に案内していただいたおかげで、普通に歩いていただけでは気がつかないことを教えてもらったり、工場の中までいろいろ見学させてもらった。その感想を一言でいうと「迷宮のまち・常滑」。意外性があり、いろんな魅力に満ちたまちがそこにあった。

変わりいく散歩道
  以前やきもの散歩道を訪れたのは4年前。たった4年間の間にやきもの散歩道は大きく変化していた。一番の変化は焼き物を扱う店が増えたこと。観光客もずいぶん増えたそうだ。
 絵地図が2種類販売されている。1つは1997(H9)年8月23日発行の「常滑散歩道」。もう1つは1999年9月制作の「常滑やきもの散歩道マップ」。前者で「やきもの散歩道」という名称が使われていないところをみると、それ以降に命名されたということだろうか。この地図を見比べるだけでも違いがわかり、おもしろい。


若い作家達の共同アンテナショップ


とこなべ


ギャラリー

名古屋芸術大学常滑工房

 窯のギャラリー 窯をギャラリーなどに利用しているところが4カ所あるという。INAXの窯のある博物館は有名で随分前に訪れたことがあったが、窯をギャラリーとして使っているところが4カ所もあったのは知らなかった。それぞれの窯で色が微妙に違うという。
 残念ながら、1カ所は休みで「ギャラリー共栄窯」と「金太郎」、登釜広場の隣にある展示工房館の3カ所を見学。味わいのある色と雰囲気が魅力的な空間をつくりあげている。


ギャラリー共栄窯

ギャラリー共栄窯の内部


金太郎

金太郎の中にある窯のギャラリー

飲食店
 散歩道の中にも飲食店ができた。その1つ「たに川」で昼食をとった。ここには隣接して、「たんぽぽ」という喫茶店、「十三蔵」という居酒屋がある。これまで、散歩道の途中にはこのようなところがなかったので、歩くものにとってはうれしい。観光客が増えて採算がとれるようになったということなのだろう。
 位置的には散歩道のルートから離れているのがやや残念。
 西側の幹線道路に面する「常滑屋」でも飲食が可能だ。ここは、まちづくりを考える人々のたまり場にもなっているという。今回も歩き終わった後、ここで意見交換を行った。営業時間が終わっても文句を言わずに見守っていただいた店の方に感謝である。


たに川


常滑屋

廻船問屋瀧田家
 やきもの散歩道の拠点として2000年4月に新しくできたのがここ。老朽化していた建物を市が寄贈を受け、土地は市が購入。建物を復元・整備して、常滑船の歴史を感じられる場所として公開している。
 修復前の写真が休憩スペースに飾られているが、ボロボロの建物。修復はさぞ大変だっただろうと思わせる。
 ここの主屋の玄関について、普通なら外に開くのが普通だが、内側に開くようになっている。その理由はどうもわかってないらしい。知っていれば教えてと言われてしまった。


散歩道から瀧田家をみる

土蔵

主屋


主屋の玄関
通常は外側に開くのが内側に開いている

登釜と登窯広場
 登釜は昭和48年まで実際に使われていたもので、昭和57年に国の重要有形民俗文化財に指定されている。それに隣接する形で登窯広場が設けられており、やきもの散歩道の休憩拠点となっている。広場内にある展示工房館では、出入口の2つある倒焔式角窯が見学できる。
 前回、訪問した時に、この広場を設計したのが、私が以前勤めていたコンサルタントであることを知り、こんな設計もするのだと驚き。ただし、少し違和感を感じていただけに気になっていたが、現在もそれは変わらなかった。特に、オブジェの色や展示工房館の外観が気になったが、やはり地元の人の感覚もそうらしい。やきもの散歩道の拠点と位置づけられるところだけに、少し残念だ。


登窯


登窯の後ろにある煙突


登窯広場
中央のオブジェの色はなんで青なの


展示工房館

製陶所と煙突
 散歩道の地区の中で今でもやきものが行われている山文製陶所を見学させてもらった。建物の中に入ってびっくり。3階建で思ったより広い、工場の中も迷路みたい。今までは建物の外だけしか見学していなかっただけに新鮮だ。誰でも見学できるといいのにと思って聞いたら、希望者は見学できるとのこと。やきもの散歩道を見学される際には、ぜひ工場をのぞいてみることをおすすめする。
 やきものの煙突は常滑の風景であったが、今では随分数が減ってしまったようだ。使われていない煙突は、安全のため途中で切り取って短くなっている。中には緑がまきついているものもある。これは別の意味で風情はあるが…。このような風景を絵に描いている人も多い。
 「煙突屋」という店がある。ここには煙突をテーマとしたものが一杯。常滑の風景として、煙突はぜひ保存したいものだ。


山文製陶所
今も使われている煙突

いくつかの煙突がみえる
昔はもっと多かったらしい

写生をしている人も多い
絵になる風景ということだろう


煙突屋の内部
えんとつをテーマとしたものが一杯

やきものがいっぱい
 散歩道にはいろんなところにやきものがある。おもしろさ一杯である。


焼酎瓶

焼台の小径


土管坂

ここにも土管が

ここにも

子達の作品も飾られている


同左

同左

登窯広場の周辺、小物が一杯



民家にもやきものが

表札もやきもの

 ここでは、やきものと坂道が一体となって立体的な迷宮を作っており、次から次から魅力的な空間に出会うことができる。観光客が増えてるということも頷ける。しかし、地域としては人口が減っており、いろいろな課題を抱えていることも事実である。いかにして住んでいる人を増やすか。やきものに魅力を感じ、やきものをめざす若い人が住めるようなまちにすることが1つの方向だろう。住民の活動もいろいろ行われているという。
まちの魅力とそれを生かす人の存在、人口減少時代でも生き残れるのはこんなまちに違いない。

(2001.8.12)

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