第1そだち保育園とトム・ソーヤプロジェクト
撞木塾第一土曜建築学校(2000.4.23)

 学童保育をセルフ・ビルドで建設中というトム・ソーヤプロジェクトに興味があって参加したが、第1そだち保育園も建築的に優れたもので興味深かった。建築雑誌でもとりあげてほしい作品だ。

○第1そだち保育園
 春日井市高蔵寺ニュータウンにある0〜1歳児のための共同保育所。
 昭和49年設立。当時500万円の補助を受けて工事費2000万円で182uの保育所を建設。老朽化に伴い、1996年より建て替えを検討。理事や父母を含む建設委員会で面接を行い、設計士を選ぶ。アトリエ修羅の西尾さんとリブ設計の川口さんのジョイント。小規模な施設でジョイントは非常に珍しいが、委員の意見が分かれたこと、ジョイントを両者が受け入れてくれたことから実現。1999年5月にようやく国の補助を受けることができるという内示があり、99年10月に着工し、今年3月末に竣工。こんな短期間でできたのは驚き。補助金行政が工事の工期にしわ寄せを与えたという。総工費1億円。うち3/4が補助。残りは借金だが、借金返済の1/2に補助がある。
 30名定員を建替に伴い45人に増加。産休明けから子供を預けることができるよう、4月当初は定員いっぱいにしていない。経営を考えれば、定員いっぱいでスタートした方がよいのに決まっているが、そこが共同保育所の意味。以前は入りたいという要望があっても入れない上児湯があり、父母の間で「うちは公立に移ろうか」などという話し合いもされたという。公立保育園ができたため、廃止しようとしたが、公立は産休明け保育が行われなかったことから継続。ここを卒園した2歳時以上の園児が入るために「第2そだち保育園」がある。敷地は公団からの無償貸与。

 木造建築で木の香りが気持ちよい。木造で作りたいという先生や父母の願いがあって木造としたが、準耐火にすることが求められたため、内装制限から木造の上にプラスターボートを貼ることが求められた。できるだけ、木造の感じをだすため、内装制限を受けない腰壁の部分や建具の部分の部分に木造をふんだんに取り入れ、さらに屋外のデッキ部分も木造にしたという。
 1階のほふく室は当初、。ホールとして計画されたが、補助金を得るために名称は「ほふく室」としてある。補助金をできるだけ多くもらいながら、豊かな空間を作り出すきめの細かい演出が行われている。
狭い敷地をうまく活用している。色はすこし派手な気がするが、時間とともに落ち着いてくるという。これは、ぜひホームページで紹介したいと思った次第だ。

○トム・ソーヤプロジェクト
 第1そだち保育園の卒園生の通う学童保育所。現在はビルの1室を借りているが、今年の2月からセルフ・ビルドによる建設がすすめられている。中心になっているのは住工房の小栗さん。3月の連休に上棟式を行い、今は窓や庇を取り付け中。7月に完成予定だという。
 工事費は給排水の45万円を含めて250万円。延べ床面積20坪+ロフトもあり、超ローコスト住宅だ。聞いてみると、こんな価格でできるのは、小栗氏のつてで、力を貸してくれる大工さんがいたり、無償で窓などを提供してくれる業者がいたからだという。実は、うちの学童でも建替の話しがあり、その参考にならないかと思ったが、まずは人的ネットワークが重要だと思い知らされた。ローコストで素人ができる工夫も各所で行われている。床は4cm×9cm×4.8mの木を320枚もうちつなげて作っている。厚さ9cmの床が出来上がり。床面はでこぼこだが、子供達が歩くことで自然に平らになっていくだろうという。このヒントは天理教本部の廊下にあったという話しも興味深かった。
 見学の後、工事をしていたお父さん達も交えてビールで乾杯。第1そだち保育園の完成を祝う会(お昼に行われたらしい)の残り物のおつまみもあって話しが弾んだ。小栗父さんだけではなく、小栗母さんも良くしゃべる人で学童や子供をとりまく環境についての話しをしてくれた。学童は子供だけじゃなくて、親も楽しめるというあるお父さんの話しも印象的だった。なんとか、うちの学童でも建替を実現したいものだ。

(2000.4.24)

街・歩・考
メニュー
まちのお気に入りスポット
まち点描ギャラリー
見聞記
公共の宿・宿泊記
旅・雑感
旅・リンク
論文・講演
エッセイなど
まちづくりの参考になる図書
リンク集
プロフィール
気になる出来事
作者へのメール

関連ホームページ
(社)都市住宅学会
中部支部
Copy Right tomio.ishida Since 1998.1