新城のまちづくりと山湊
建築学会東海支部都市計画委員会春の交流会(1999.3.5)

 新城市の山湊はNHKの未来派宣言にもとりあげられるなど、様々なメディアで紹介されている。「人口3万人のまちで市民が出資してまちづくり会社を作った」ということはすごいことだと思う。

 何故、新城市でこんなことができたのか。今回の視察ではそこまでの分析はできなかったが、中心となった山湊社長の福田氏が「いいかえれば1人100万円まで出してやるつもりはなかった」との言葉がその理由を示しているようにも感じた。つまり、長浜のようなポテンシャルのないところでは商業者としてそこまで力を入れるのはリスクが大きかったこと、昔からのつきあいのしがらみが10万円ぐらいならだしてもよいと市民に考えさせたのではないだろうか。今回、新たに50人の募集をしたそうだが、結構苦労もあったようだ。

 取り組みそのものとしては3つの施設があるだけで、規模も小さくもの足りない感じがする。山湊の名前がブランドとして売れてきているので、既存の施設も山湊ブランドで売り出した方がよいのではと感じた。「黒壁○号館」のように、「山湊料亭:清藤」とネーミングすれば、利用者が増えるでのはないだろうか。

(料亭清藤は今回、懇親会を開いた木造3階建の料亭。瀬口先生は、木造和風3階建に興味を持っており、JIA機関誌にも自筆のスケッチ付きの解説を掲載中。木造和風3階建のあるまちはいいまちだと力説)

 ただ、ねらいが観光客にはないということないので、効果はあまりないのかもしれない。それよりも、都市住民との交流をねらった酒づくり企画の募集や温泉の宅配などのアイデア商売の方が重要で、それに力を入れていこうということだろうか。

 商業活性化の取り組みとしては興味深いが、これがまちづくりとどう関わるのかというところが課題だ。新城市の古市氏は、「住民の意識改革をするためには、何か目に見えるものがいる。それが山湊のとりくみのきっかけ」と話されていたが、中心市街地活性化はそこに住む人の居住支援という側面が重要だ。ここも例外ではなく、中心市街地からどんどん人口が減少している。商店街の停滞していく理由は、そこに住む人が減ったということが大きい。

 意見交換の場で、駅前の25m都市計画道路の整備が問題となった。既存のアクセス道路の拡幅ではなく、ほとんど新設のような道路で360m50世帯が対象となる。新城市のようなところで、こんな道路が必要なのか。古市氏は「一旦決定したものをやめるわけにはいかない」というが、整備によってこれらの人々が郊外に転出してしまっては、ますます中心市街地が停滞してしまう。いろいろ検討もされているようなので、十分な検討もなしに述べるのは失礼ではあるが、懸念は大きい。今後、駅周辺の区画整理や再開発もやりたいということだが…。

 新城市は中心市街地活性化基本計画を策定済みで、今年度は山湊がタウンマネージメント計画を策定するという。これに基づけば、空き店舗活用などに補助金が活用できるので、もっと展開していきたいとか。大いに注目していきたい。

 

○余談:オリエンタルコンサルタントがISO14001を取得

 コンサルタントには無縁かと思っていたISO14001であるが、コンサルタント業務の技術提案の中でゼロエミッションなどの環境施策を盛り込んでいくということで認定を受けたようだ。土木工事ではかなり大きい意味を持つという。

(1999.4.15)

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