寝屋川市東大利地区と門真市カルチェ・ダムール
(1998.7.24)

 再開発プランナーの更新講習のついでに、大阪の2つの共同建替の事例を見学した。

 地理関係がよくわからなかったが、訪れてみると2つの地区は京阪電車で1駅のところにあり、市は異なるものの同じ生活圏にあるといってよい。しかし、印象は大いに異なった。

●寝屋川市東大利地区

 県耐震の報告書に参考事例として紹介していたが、本での紹介だけをもとに書いていたので、不安なところもあった。しかし、東の上尾に対比されるだけあり、周辺とも調和し、良好な住環境を形成しているようであった。3階建で住棟が小規模に分割されており、共同建替の住棟の間に位置する公園がコミュニティの場としても機能しているようだ。

 共同建替といっても敷地はそれぞれが所有し、その上に各自の建物があるのだが、それぞれに名前がついているのも、住棟としての個性を示しているようで楽しい。ゾーンごとに基調となる色も変えている。

 周辺でも住宅更新がすすみ、3階建が多くなっている。共同建替では4階建以上を建設することも可能であったと思われるが、低層で抑えたところがいい。周辺の建替えのモデルともなっているようだ。

●門真市カルチェ・ダムール

 延藤先生の本では共同建替の成功事例としてあげられていたが、塩崎先生の本では「そして誰もいなくなった」として問題点が指摘されており、興味を持っていた。

 ここは敷地が一体的に活用できることから、東大利地区以上に高層建築も可能であるにもかかわらず、3階建に抑えられおり、周辺への配慮が伺えるのだが、閉じられた空間という印象を受けた。

 入口に「関係者以外の立入禁止」という大きな看板が周辺との交わりを拒絶しているようである。広い敷地でありながら、作られた公園は小さく、かつどのように利用するのかがよくわからない空間となっていた。敷地内通路は広いのだが、そこが路上駐車の場所となってしまっては、魅力が減退してしまう。

 住棟に囲まれた空間は殺風景で、住戸も表情を作っていない。このような空間は住戸から緑などがはみ出ることによって、魅力的な路地が形成されることが期待されるのが、残念ながらそのような事例は皆無であった。

 また、全体としては「カルチェ・ダムール」と少し変わった名前がつけられているのだが、その中がAブロックなどとして分割されているだけで、東大利地区のような個性が感じられなかった。地区への入り口となる部分に、団地の名称が書かれたものがないことも寂しい。

 従前居住者が住まずに全く新しい居住者で作られたことが、このように味気ないまちにしてしまった原因であろうか。一見しただけでこのような評価をすることは問題があるかもしれないが、塩崎氏の評価が正しいような気がした。

(1998.7.24)

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