京都の町家倶楽部と西新道錦会商店街
(建築学会東海支部都市計画委員会住宅部会事例視察/1999.12.3)

 住宅部会では中心市街地の居住支援をテーマに愛知県内の事例をもとに意見交換を行っていたが、施策展開の事例として県外視察を行うこととし、京都の町家倶楽部と西新道錦会商店街の視察とヒアリングを行うこととした。
 これらの事例は有名で以前から興味を持っていたのだが、中心市街地の居住支援という点でも、前者は空家のストック活用、後者は地域に住み続けることを支援する生活サービスということで、研究テーマと一致することもあり、事例として推薦したことから、私がその窓口を努めることとなった。

 町家倶楽部は今年の7月26日に発足し、ホームページでも情報発信が行われており、そこに詳しいが、一言でいうと京都の町家に増えてきた空家とそこに住みたいという人々の仲介役である。空家なのに大家が居住権が発生するのをおそれて貸したがらない現状に対して、住み手の顔がわかるようにし、退去の際の条件をとりまとめることで、お見合いを成立させている。
 町家倶楽部設立までには4年間の取り組みがあり、30件程度の人が住みはじめたという。これはアーテーストなどが多く、単に住むだけでなく、そこに仕事場を抱えている。この取り組みがマスコミで報道されることによって、個々への問い合わせが多く、窓口を一本化するためもあって町家倶楽部を設立したという。
 西陣という立地条件があり、京町家に住んで、仕事場にしたい需要が高い中でこそうまくいっているようなところがあり、このままを愛知県の地方都市にあてはめても成功するはずはないが、貸し手と住み手の顔が見える関係を作りだすことをの重要性という点では一致しているような気がした。

 ヒアリングの後、町家をインドのチャイの店として利用しているところで、カレーを食べた。土間を入ると2間の和室があり、その奥には土間に舞台のような空間が作られていた。和室の上には2階があり、そこで居住しているということであった。舞台の部分は高い天井で、そこには機械に機織りで模様を作るための板に穴をあけたようなものを再利用して、デザインのようにしていた。昼時なのに、客は我々グループの他は1組しかなく、経営的に成り立つのだろうか、といらぬ心配をしてしまった。が、本業はアーティストでこちらは副業でしかすぎないのだろう。営業も週に数日であった。
 地図を頼りに利用されているのをいくつか回ってみたが、工房として利用していても看板を出していないところもあり、どこがそれかわからないところも多かった。観光客向けの店をやれば、それなりに客は来るような気がするが、商売気のない店が多い。住むにはきわめて住み難い町家に住むという人はやっぱり変わった人が多いのだろうか。

 西新道錦会商店街は、西の商店街活性化の事例として有名でNHKの未来派宣言でとりあげられたこともある。テレビの印象ではもう少し大きな印象があったが、実際に訪れると道幅は狭く、そこに商品があふれており、雑然とした、でもどこか懐かしい雰囲気のあるところであった。
 この商店街が有名なのは日本初のICカードを導入したり、ファックスネットで情報を発信するとともに注文を受け付けたり、地域の高齢者を支えるような活動をしているところである。テレビにもでていた原田氏に応対してもらったが、テレビで計画中であった高齢者のための食事サービスは11月中旬から始まり、ICカードを利用したインターネットによる情報発信はそのシステム開発に通産省の補助を持ち込むことにより、商店街の持ち出しゼロで導入できる予定だという。
 話の端々に自信が伺えた。多くの視察訪問やマスコミ取材に応えると同時に、ファックスネットの注文の配達にも応える、そんな気軽な姿がそこにあった。

 研究会のテーマに対する事例としては、それぞれの立地条件だから成立しているという面があり、どこまで参考にできるかはわからないが、個人的には自分の興味に応えてくれた有意義な視察とヒアリングであった。

(1999.12.4)

街・歩・考
メニュー
まちのお気に入りスポット
まち点描ギャラリー
見聞記
公共の宿・宿泊記
旅・雑感
旅・リンク
論文・講演
エッセイなど
まちづくりの参考になる図書
リンク集
プロフィール
気になる出来事
作者へのメール

関連ホームページ
(社)都市住宅学会
中部支部
Copy Right tomio.ishida Since 1998.1