寺・蔵・露地と港のまち−碧南・大浜地区−
建築学会東海支部都市計画委員会住宅部会(2001.1.27)

 中心市街地すまい研究会の現地調査の第7弾。
 碧南市を訪れたのは初めてだが、その歴史のある街並みに驚いた。東海道から離れたこの町にこんなに歴史がつまっているとは…。まだまだ、知らないまちが多いことを思い知らされた感じである。

 城下町でもないこの街に何故、こんなに立派なお寺が数多くあるのだろうか。港まちで味噌、醸造の製造業が発達したというが、裕福なまち故なのだろうか。不思議だ。
 一方でこんなに立派な寺があるのに、観光案内などが少ないのにも驚き。歴史が浸透しているが故に知らせる必要がないのか、それとも価値を見いだしていないのか。 


称名寺

大銀杏のある本伝寺

 西方寺

西方寺の社楼

林泉寺

 碧南駅前から左手の道をいくとそこが「大正通」。大正時代に作られたことから名付けられたという。名前の付け方は安直だが、それを逆手にとって、大正ロマンの雰囲気にする通りにするのも手だ。ここに立派な蔵が続く。蔵があっても使われていないところが多い中で、ここの蔵は、みそ、たまりの仕込み倉庫として今も現役だ。
 別の通りには、九重みりんの立派な蔵がある。九重みりんは丁寧な修景が行われており、地域の景観形成に貢献している。地場産業が生きているまちの強みといえよう。


大正通りにあるみそ・たまりの仕込倉庫

九重みりんの蔵
露地

 細街路が実に魅力的だ。雰囲気のある塀に囲まれた道。車が通らない道は子供達の絶好の遊び場になりそうだ。








 まちの発展のもとになったのが港だ。雨天のため、港までは行かなかったので、写真がないのが残念。歴史的な雰囲気のある冷蔵倉庫が残されているという。
 昔は海岸が近くまであり、海水浴もできたというが、今は埋め立てられ、臨界工業地帯になってしまった。おかげで、市の財政は豊かであるが、市民が海に近づけないようになってしまった。
「海を売って金をもらった」という言葉が印象的だった。

「歩いて暮らせるまちづくり」に思う

 碧南市では、「歩いて暮らせるまちづくり」を進めている。「歩いて暮らせるまち」というのは裏返せば「車では暮らしにくいまち」といえそうだ。スポット的に駐車場を整備することができても、そのような生活ができる人にないと(家の前に車がないと生活できない人ではなくて)、住むことは難しい。だとすれば、車を利用しない人か、その不便な生活を我慢できる人をターゲットにする必要があるのではないだろうか。

 前者は子どもと車を利用できない高齢者。大浜地区の資産である、社寺、港、倉庫、露地などは、子どもにとって魅力的な遊び場となる。しかし、子どもには親がつきもの。親が不便な生活を子どものためにどこまで我慢できるかだ。
 不便な生活をがまんできるかどうかの鍵のもう1つは、「地域に誇りを感じているか」ではないだろうか。すばらしい資産を将来に残したいという思いがあれば、少しぐらいの不便さも我慢できるのではないだろうか。
まちづくりの方向としては、観光をねらうのではなく、住民にとってのまちづくりを進めることだと思うが、外から多くの人が訪れることが、住民の誇りにつながる。碧南のよさをどんどんPRしていくことは重要だと思った。

 雨の中の大変な見学会となってしまった。こんな時にまち歩きをしたのは初めてだったが、地元の建築士会の人たちと一緒にまち歩きをし、意見交換することができ、その熱心な取り組みに感服した。
 雨の中でまちのよさを十分見ることができなかったと思う。機会があれば、ぜひ、再度参加訪問したいものだ。


街並み


 旧大浜警察署

(2001.2.20)

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