1996年をふりかえる−まちづくり10大ニュース

 1996年を振り返ってみると、1995年が阪神大震災で明け、次々と新たな出来事が起こった年であったのに対して、1996年は、これまで話題になっていたものが、さらに進展した年であり、新たな出来事と呼べるものは少なかったように感ずる。

 昨年と重複するものもあるが、記憶にとどめておく意味も含めて列挙してみたいと思う。

【第1位:まちづくりにおけるインターネットの普及】

 昨年は2位に「マルチメディアと都市計画」としてとりあげたが、マルチメディアの中でもインターネットが大いに普及し、まさにインターネット元年と呼べる年になった。

 インターネットが出始めた頃は、情報の量に対して質が伴っていないことから、商用パソコン通信の方が価値が高いと感じていたが、今やそれは逆転したと言ってよい。インターネットの活用がまちづくり分野に大きな力になることは確実だ。まだまだ、使いこなせているとはいえないが、注目すべき活用事例について列挙してみたい。

(1)自治体の情報発信と市民参加への試み

 自治体でホームページを開設しているものが急増した。まだまだ、観光案内にとどまるものも多いが、豊富なデータをもとに、まちづくりに積極的に利用しようとする例も増加している。

 大和市の取り組み事例は昨年にも触れたが、大和市以外にも杉並区や中央区でホームページを活用して住民の意見を採り入れようとしている。

 名古屋市では「夢なごや21−わたしのアイデア」をインターネットを通じて応募できるようにした。電子メールで受け付ける例は他にも多くみられたが、ここではホームぺージに書き込めばよい。参加の方法がどんどん簡単になっている。

 愛知県でも「21世紀の愛知づくりへの提案」として公開テーマ討論をスタートさせている。

(2)国の情報発信

 中央官庁が開設しているホームページでも利用できるものが増加した。

 国勢調査の確定値がいち早くホームページに掲載され、データとしてダウンロードして活用できた。基本的な統計データについては、インターネットを通じて入手できる。

 まだまだ、情報公開は一部にとどまっており、掲載に時間がかかるとの批判もあるが、利用されることによって情報公開の幅は広がっていくだろう。

(3)個人ホームページの開設

 個人でホームページを開設するものも急増した。当初は、自己満足的なものが多かったが、価値の高い情報を発信するものも増えてきた。まちづくりに関する豊富な情報を掲載しているものもあり、仕事の上でも活用できる。

 都留文科大学の前田氏のホームページには、雑誌等に発表した論文が掲載されている。ここに掲載されていた住宅問題に関する論文については、公営住宅管理計画の仕事にも活用させてもらった。

 愛知県職員のToshi-shi氏のホームページは、NIFTYのフォーラムでの発言を整理したもので、愛知県の住宅まちづくりに関する様々な情報を提供してくれる。

 豊田高専から山梨大学で移った田中氏のホームぺージでは山梨県の住宅まちづくりに関する情報が提供されている。このほか、大学の研究室ではホームページでいろいろな情報を提供してくれるところが少なくない。

【第2位:公営住宅法の改正】

 2位とすることには異論もあろうが、今年は公営住宅法改正がらみの仕事が多かったことから、あえて2位にあげた。

 公営住宅法の改正は、住宅施策の転換期を象徴する出来事であり、今後の住宅問題に大きな影響を及ぼすだろう。しっかり、とらえていきたい。

【第3位:住専処理と土地活用】

 住専問題が残したつけは大きい。国民の大多数が税金がこのようなものに流用されることに大きな憤りを感じているのに、それが通用してしまうことの不思議さ。不良資産が都市再開発に有効に活用されるような仕組みが必要だ。

【第4位:官僚腐敗】

 中央官僚から地方自治体の市長、職員まで、これほどたたかれた年はないだろう。しかし、それもこれまでの膿がでただけのこと、97年はもっとひどくなるのかも。

【第5位:本当に実現するのか首都機能移転】

 遷都ではなく首都機能移転としているところに逃げ道がある。なぜ、東京都が反対するのか。中部では、首都機能移転がいつのまにか、新空港と万博とともに3大プロジェクトになっていた。本当に3つとも実現するのだろうか。

【第6位:21世紀万博】

 開催決定まで秒読みを迎え、ようやく国もとりあげるようになり、少しは知名度もあがってきた万博。開催がどうなっても、これまでの議論だけは無駄にしたくない。

【第7位:中部新空港はどうなる】

 具体的な絵が現れるにつれて、騒音を問題とする地元や、一元化に反対する名古屋空港周辺自治体の動きも活発化してきた。課題は多いが、せめてこれだけは実現したいもの。

【第8位:キャナルシティとナディパーク】

 久々の再開発の実現で話題になったもの。しかし、スケールの違いは感じるなあ。

【第9位:まちづくりにおけるボランティア活動の進展と橦木館の試み】

 阪神大震災でのボランティアの取り組みがさらに進展し、まちづくりにおいてボランティアが大きな役割を果たすようになった。

 名古屋における橦木館の試みも力強い。様々な取り組みがまちづくりの新たな展開を感じさせる。ナディアパークよりも意義は大きいかも。

【第10位:ワールドカップ、トヨタの敗退】

 3大都市圏がはずされるわけはないという考えの甘さ。これからの中部を予想させる出来事と言ってしまえば言い過ぎか。

(1997.1.5)

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