1.位置づけ
どのように「グローバル・エデュケーション」を中学英語に関連付けていけるか?
1.位置づけ 2.学習目的 3.学習形態 4.指導計画 5.評価 6.実践例
Updated: 97/08/23 17:17:22
1.はじめに
1)平成元年改定−中学校学習指導要領
第2章−第9節 外国語の目標:
外国語を理解し、外国語で表現する基礎的な能力を養い、外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるとともに、言語や文化に対する関心を深め、国際理解の基礎を培う。 |
*改定に当たっての目標の重点は「積極的なコミュニケーション」と「国際理解の基礎」の2点であると言われてきた、にもかかわらず周知の通り後者の指導が中学教育の現場ではその具体策が見つからないと同時に、その研究も外国語科としては疎かであった。(学校教育課程全体での取り組みとして研究指定・委嘱校・団体は数多くあったが...)
上記目標を受けた指導要録(調査書等)における外国語科の評価の観点:
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コミュニケーションへの関心・意欲・態度 A表現の能力 B理解の能力 C言語や文化についての知識・理解 |
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グローバル・エデュケーション導入への位置づけは上記
Bold type体部「言語や文化に対する関心を深め、国際理解の基礎を培う」、
「C言語や文化についての知識・理解」
に深く関わって、指導要領(録)上には位置づけられると思う。
注:グローバル・エデュケーションとは学校活動全般、強いては地域ぐるみの活動であり単に1教科で実現されるべきものではない。しかし今その実現の必要性に迫られている(必要性については2.学習目的で述べる)と私は感じている。故に外国語科への’導入’奨めていきたい。ただし、中学入門期英語教育としては、その場合グローバル・エデュケーション実現への足がかりとして、または「生徒内面の国際化」「情意面の育成向上」への手がかりとしてあくまで『...導入』なのである。
2)平成5年文部省<中学校外国語指導資料>「コミュニケーションを目指した英語の指導と評価」:
(1)「言語や文化についての知識・理解の評価の意義」 「言語や文化についての知識・理解」は、国際理解を重視し、コミュニケ ーションを効果的に行うのを助ける視点から設定されたものである。 今回の学習指導要領においては,国際社会に生きるための必要な資質を養 うという観点から外国語を用いてのコミュニケーション能力や態度の育成 とともに、言語や文化に対する関心を深め,国際社会の基礎を培うことを目 標としている。この目標は,当然,外国語を学習することを通して,達成さ れることになる。すなわち、生徒徒は外国語を開いたり・読んだりすることを 通して,言葉とその底流にあるものの考え方や文化を理解し,また,話した り書いたりする際に、この知識を積極的に活用して自分の考えなどをより効果的 に相手に伝える活動を通して,この目標が達成されることになる。 また、国際理解は,相互理解の上に、お互いを認め尊重することから成り 立つものである。したがって,外国語学習にあっては、このような学習の上 に、自国の言葉や文化とともに外国の言葉や文化・人々を大切に思い,それ らを積極的に評価し、理解し,尊重することが大切である。 |
*国際理解教育の基盤として「相互理解」があげられている。その教育の上に成り立って行くと読み取れる、現状はどうか?。「相互理解」の学習も同時併行で成されていかなければならないと思われないだろうか。「開発のための教育」では「相互依存」としてその具体策が掲載されている。私はこの「相互依存」の精神や考えが生徒内面に身についてこそ真の国際理解につながると思っている。
3)「国際理解について」<英語教育−1990年4月号>(和田 稔 -- 当時文部省教科調査官、明海大学教授)
「国際理解」で何を達成するか 「国際理解の基礎を培う」ことは.どのようにして行い.何を達成しようとしているのだろうか。 「外国の人々の生活やものの見方などについて基礎的な理解を得させる」にしても「国際理解の基礎を培う」にしても,教材(題材)の役割が中心となる。現行学習指導要領では題材について次のよう に述べられでいる(「第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」)。 <題材は,その外国語を日常使用していろ人々をはじめ広く世界の人々の日常生活,風俗習 慣、物語,地理.歴史などに関するもののうちから変化をもたせて選択するものとする。 なお、題材の形式は、各学年とも説明文及び対話文を主とし、第2学年以降においで物 語形式,劇形式,手紙形式などのものを加えるものとする。> ここでは,題材の種類と形式についてだけ述べており.これらを通して何を具体的に目指すのか は述べられていない。これらの通して,言語に対する関心を深め,外国の人々の生活やものの見方 などについて基礎的な理解を得させる」ことと結びついていく,と解釈を暗示している。 しかし.「国際理解」を考えるとさに,「国際理解の基礎を培う」ことによって,どのような生徒 を育成するのか,ということは大切な観点である。なぜならば,「中学校及び高等学校を通じて,国際 理解の進展に対応し,国際社会の中に生きるために必要な資質を養う」(教育審議会の「答申」)こ とが外国語(英語)の重要な使命だからである。その資質とは何であり.それをどのように養うの かということを明確にすることが求められているのである。そこで.新学習指導要領においては. 教材(題材)について詳細で具体的に示されている。少し長くなるが,次に示す。 <教材は.その外国語を使用している人々を中心とする世界の人々及び日本人の日常生活 風俗習風 物語、地理、歴史などに関するもののうちから.生徒の心身の発達投階及びそ の興味や関心に即して適切な題材を変化をもたせて取り上げるものとする。その際には, 外国語の理解力と表現力を育成することをねらいとしながら、次のような観点に配慮する 必要がある。 ア、広い視野から国際理解を深め、国際社会に生きる日本人としての自覚を高めるとと もにに、国際協調の精神を養うのに役立つこと。 イ、言語や文化に対する関心を高め、これらを尊重する態度を育てるとともに、豊かな 心情を育てるのに役立つこと。 ウ、世界やわが国の生活や文化についての理解を深め、国際的な視野を広げ、公正な 判断力を養うのに役立つこと。 また,題材の形式としては、説明文,対話文、物語,劇、詩、手紙などのうちから適切に 選択すること。 (第3 指導計画の作成と内容の取り扱い) ここに述べられていることで,「国際理解」で何を達成すべさかという点から考えて重要な箇所は, 「観点」として示されているア.イ及びウである。 これらは教材選定の「配慮すべき観点」であるが,結果は達成すべき目標ということになると考える のがよい。 「国際協調の精神」.「豊かな心情」,「公正な判断力」−− −これらの資質がこれからの外国語(英語) 教育において養われなければならないことが.ここにはっきりと示されている.これらの資質も抽 象的で具体的でないと考えられるが,それを具体的にするのは教材との関連を踏まえて実際の授業 においてである。 まとめ 新学習指導要領に「国際理解」という文言が入れられたのは,時代の流れを反映しているのであ り.それは「相互理解」のことであり.一方的に外国の文化などを取り入れることではないことを 示していることがわかったと思う。AETなど外国の人々と日常生活の場で直接接する機会が増え ていく現状において.「国際理解の基礎を培う」ことはますす求められていると同時に.そのこと が十分に可能となっているのである。 (文部省教科調査官) |
*「国際社会の中に生きるために必要な資質を養う」、「国際協調の精神」.「豊かな心情」,「公正な判断力」−− −これらの資質がこれからの外国語(英語)教育において養われなければならない」とあるように、題材を中心に生徒の内面の変革をねらっているように感じられる。そしてこのことが何よりも「グローバル・エデュケーション」との関連が深い言葉なのである。
題材重視の英語教育を通じて、国際性豊かな心情を育み強いては英語学習への関心・意欲といった情意面の向上につながっていかないだろうか。題材−−それはそれ自体の内容の深まりや豊かさも大切だが、授業・学習形態と複雑に絡み合って生徒内面の葛藤や心の成長が見られる活動と結びついていく必要があるだろう。 |