Sea Eagle

世界一大きな海鷲

世界一大きな海鷲 オオワシそして一部、北海道でも繁殖するオジロワシこの2種の大型ワシをロシア極東部と日本で撮る

Kings of the Sea of Okhotsk

オホーツク海の王者たち

ユネスコ自然遺産の知床半島は、千島列島、カムチャツカ、マガダン州、ハバロフスク州、サハリンに囲まれたオホーツク海の最南部にあたる。 だから、ロシア側のオホーツク海の生き物や自然環境との繋がりを断ち切って、知床半島のみに限定して捉えると、知床の自然を卑小化してしまう。 僕はシベリア取材17年目を迎える。そろそろ新たな視点で日本の自然を撮り直したいと考えていた。オホーツク海の自然は、 そんな僕にとって絶好のテーマだ。

ここには魅力的なスターがたくさん揃っている。例えば食物連鎖の頂点に立つ大空の王者オオワシ、闇の世界を支配するシマフクロウ、海の巨獣トド、 陸の王者ヒグマ…。そして、彼らがこの地に君臨できるのは、オホーツク海の豊饒な自然が食物連鎖の頂点を支えていること、 そして何よりも自然が健康であることの証だ。
僕一番のお気に入りはオオワシだ。世界最大の海ワシで、もっとも美しいと定評がある。オオワシは日本人よりも、 むしろ海外のワイルドライフ・フォトグラファーに人気がたかい。彼らが日本で撮りたいもの、それはスノーモンキー、タンチョウ、 そしてオオワシだ。ワイルドライフ・フォトグラファーが憧れるオオワシを撮る世界最高の地は、間違いなく冬の知床半島羅臼だ。 流氷が押し寄せてくる2月上旬~3月初旬、オオワシの数はピークに達する。

“最後の秘境”といわれた知床半島で

オオワシが身近な存在になったのは四半世紀前。スケソウダラの価格が高騰したこと、 流氷が押し寄せても鉄船で出漁が可能になったことで、スケソウダラの漁獲量が飛躍的にのびた。すると、漁船の取りこぼしを狙って、 たくさんのオオワシが集まってきた。この頃、漁の最盛期には、数百羽のオオワシやオジロワシがひとつの谷に集結して“ワシのなる木” と呼ばれる名所さえあった。 しかし乱獲でスケソウダラが激減すると、オオワシの姿も羅臼から減った。その当時、漁業に見切りをつけた男がいた。その船長は「 オオワシが漁船に警戒心を持たない」ことから、沖合の流氷で餌付けをはじめた。すると、羅臼にオオワシが戻ってきた。

羅臼のオオワシ

羅臼でオオワシの姿を見ると、僕は「遙かシベリアのアムール河が流氷と植物プランクトンを発生させ、さらに動物プランクトンを育んでサカナを呼び寄せ、 そしてオオワシを知床半島に招いている壮大な自然のドラマ」に感動せずにはいられない。

BBC Wildlife誌

この特集により、 知床半島はオオワシの越冬地として世界に知られるようになり 、海外からも多くのバードウォッチャーそしてネイチャーフォトグラファーが集まってきた。 これもゴジラ岩観光小林広幸社長や写真家広木忠雄氏の地道な 努力の賜物である。