AmurTiger

北国の密林の奥深く、偉大なる王の下へ

この作品は、世界最大のネイチャーフォト・コンテスト
Wildlife Photographer of the Year 2013 で絶滅危惧種
Gerald Durrel Award 特別賞受賞

野生のアムールトラを目視で撮る

いったいどうすれば、野生のアムールトラを撮れるだろうか

半世紀にわたるネイチャーフォト人生で、一枚の作品に、もっとも時間、体力、気力を注いたのが、野生アムールトラの目視撮影。

AmurTiger

アムールトラ

アムールトラは、世界最大の野生ネコ、しかも最強の陸上肉食獣といわれながら、 あまりにも正確な情報がすくない。現存する最大の野生ネコ。 アムール川中・下流域、沿海地方、中国東北部(黒竜江省と吉林省)、朝鮮半島にひろく 分布していたが、現在は生息地が縮小している。 総個体数は320頭から390頭。 おもにロシアのシホテ・アンリ山系に生き残っている。

広大なタイガで、

アムールを追う

かつて自然保護区職員のメドヴェージェフがテレビ取材のために十四か月も追いかけて。 アムールトラの親子をビデオにお。 さめた。当時は若かったしアムールトラも多かった 「あんな危険で、つらい仕事はもう二度とやらない」と宣言していた。 広大なタイガでアムールトラを探すのは容易ではない 選択肢はひとつだけ・・・ アムールトラがあらわれる確率が高い場所で、ただただ、 ひたすら待ちつづける。

アムールトラ

狭い撮影小屋でひたすらアムールトラを待ちつづける。

危険な湾で撮影小屋を建てる

場所はここ以外に考えられなかった。 監視小屋からバギーを走らせ危険な湾へ、岬の斜面からは足跡が頻繁にみられる砂浜が 眼科にひろがってた。長期戦に備えじっくりとアムールトラを待つことができるように 斜面の中腹に穴をほってそのなかに小屋を組み立てる。 完成した撮影小屋は長さ2.3メートル 幅1.5メートル高さ1.4メートル

撮影小屋をつくる
Award

Wildlife Photographer of the Year 2013

絶滅危惧種 Gerald Durrel Award 特別賞受賞
撮影福田俊司

50日目の夜明け…ついにアムールトラがあらわれた

At last ... After 50 days

撮影舞台となった湾内の砂浜・・・12月から3月まで、ひたすら待ちつづけた。

― タイガの帝王 ―

野生アムールトラは、フィールドで目視撮影したあともぼくのこころに留まっている。 現在、ぼくはラゾ国立自然保護区の三ヶ所にカメラ・トラップを11台設置している。 2013年の正月、ラゾ国立自然保護区に再訪して一部を回収した33,000枚の膨大な タイガの情報は多くのことを教えてくれ、さらにうれしい便りも届けてくれた。 次代の若トラの成長に一筋の光明をみいだすことができた。 まず、ぼくが目視撮影した雌トラは無事だった。しかもこの雌トラには、生後18ヶ月から19ヶ月 の子供がいた。 つまり、ぼくが撮影小屋でアムールトラを待ちつづけていた頃、この雌トラは、5ヶ月から9ヶ月 の幼い子供たちを育児中だったのだ。母トラの均整がとれた体格にくらべて、若トラたちは 頭部がおおきく、幼さをのこしている。若トラたちは2年間で、母親の庇護のもとから旅立ち、 自らの力で生きていかなくてならない。若トラが無事、タイガの帝王となり、つぎの世代に 生命をつないでいくことを心より祈らずにはいられない。