(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)

 Chapter 29 環境教育学会,ふたたび(未定稿)

29−1 いざ,京都へ


 2005年の日本環境教育学会は,京都教育大学で行われる。エクスカーションやプレイベントを除いた,大会の「本体」は,5月21,22日の開催。既に3月末までにエントリーも講演要旨の入稿も済ませている。仕事上,関西の大学に行くことも多いのだが,京都教育大は初訪問となる。
 ありがたいことに,環境教育学会は,スーツ姿で参加する人がほとんどいない。学校の先生やNPOの人など,あまりスーツの似合わない人が多い(失礼!)のも事実だが,普段,スーツ着用が当たり前と言う学会に出入りしている身としては,かえって新鮮で,リラックスした気分で参加できる。荷物がひとつ軽くなるのも助かる。

 前回は,でっかいポスターを抱えて池袋を徘徊したが,今回は遠方の泊りがけなので,おとなしくOHPを使った口頭発表にした。タイムテーブルが郵送されてきたのは,学会の1週間前。事務処理が遅い。これをもらってから旅行予定を組んだのでは,間に合わない。せめて,自分の発表時刻のわかるプログラムは,2週間前には送って欲しい。実際私は,3週前にチケットも宿も予約していたのだ。この時期の京都は,春の観光シーズンで,ホテルも取りにくいし,観光シーズン価格だし,3週前でも予約が難しかった。結局,価格の安い大阪のホテルを取り,そこから電車で大学に通うことにしたのだから。

 さて,自分の発表時刻を見て,がっくり。最終日の最終セッション。いちばんしんどいパターンだ。しかも,最後のほうなんて,帰ってしまう人も多いから,何人聞いてくれるのやら……。前回も,ポスターの割り当て位置がひどかったし,発表要旨集も最後にされてしまっていたし,2年続けて待遇が悪い。まぁ,朝一番の発表とか,最後とか,過去にも何回か経験しているので,驚くほどのことでもないが,プレイベントも考慮して,大会前日に関西入りすることにしていたので,現地のスケジュールを良く考えなければ…。

29−2 発表前の過ごし方


 例年,大会前日の午後にエクスカーションが組まれる。それを見越して,前日のお昼前には関西入りをする予定を組んでいた。がしかし,今回はエクスカーション無しで,訪問先の紹介のみ。夜には関連シンポジウムもあるが,午後が空いてしまった。そこで,せっかくの関西滞在時間を無駄にしないよう,「自主エクスカーション」として,前から気になっていた博物館,科学館の中から,どこかを訪問することにした。
 選んだ先は,「善兵衛ランド」。貝塚市立の施設で,当地出身の,江戸時代の科学者にして望遠鏡職人であった,岩橋善兵衛の資料館と,天文普及教育施設を兼ねた施設である。平日でもあったので,非常に丁寧な案内を受け,小規模な施設でありながら,充実した普及活動をしていることを知った。
 さらに余った時間は,大阪で科学の普及教育活動を熱心に行っている知人を訪ねることとした。

29−3 新たな研究パートナー


 大会1日目。会場へのアクセスは京阪とJR奈良線が使えるので,1日目はJRの新快速を使ってみる。後で調べてみたら,京阪よりだいぶ運賃が高かった。
 大会初日の朝一番なので,さすがに受付が大混雑。ローコストで,かつ,環境に配慮したローエミッションな学会運営なので,コンベンションサービスの人が手際良くやっていると言う雰囲気ではない。手作り感覚も好感が持てるが,これで1000人近い参加者をさばけるのか? 休憩室のコーヒー,紅茶のセルフサービスでも,「使った紙コップはお持ちになり,大会中は1個の紙コップで済ませてください」と言う徹底ぶり。学会の趣旨からすれば妥当と思えるし,文句を言う人もいないから,毎年,このスタイルだ。

 さて,一般講演のほうは,やはり,実践報告的なものが多い。「やってみました。こんな感じでした。」と言うだけの報告では,よほど興味がない限り,説得力に欠ける。きちんと成果を分析,考察して,今後どうしたいのか,と言った展望が見えないと,「研究報告」たり得ないのでは?
 そんな中で,毎年,精力的で面白いのが,旭山,千葉市,日本平の3つの動物園の報告。動物園は博物館の活動にも還元出来そうな話題が多く,動物を扱う施設だから,獣医学的にも私の仕事との関連性が高いので,より興味を引く。
 さらに興味を引いたのが,学校飼育動物に関する獣医さんの調査報告。兵庫で臨床の現場に立つ廣瀬獣医師。実は,私も学校飼育動物の衛生管理や教育効果について,興味を持っていたのだが,研究所から学校へのパイプが無くて,なかなか手を出せないで口惜しい思いをしていたのだ。しかも,2004年の鳥インフルエンザ騒動で,学校飼育動物をめぐる情勢は,大揺れに揺れた。すかさず,講演後に発表者を捕まえて,名刺を出して,ざっと話を聞いてみる。そうしたら,私の演題にも興味を持っていてくれたことが判明。ラッキー!……と言うより,類は友を呼ぶのだな。あまり引き止めていると,次のセッションにも影響するので,後ほど再連絡をすると約束して,その場は別れた。

 後日,廣瀬さんとは,一緒に学校調査をして頂けることになった。さらに驚いたことに,私と同様,科学教育関係にも興味を持っているとのことで,研究調査のみならず,科学教育実践のほうでも,情報交換をすることに……。自分の仕事だけでなく,鳥の博物館の活動にも還元出来そうな「つながり」が,またひとつ,増えた。

 その日の午後は,総会などがあり,一般講演は無いので,総会をサボって(ハイ,不良学会員ですから……),大阪の友人たちと会うことにする。長居緑地と植物園を歩き,いきなり「自然解説」をしたり,移動中の電車で「鉄道ネタ」のほうにに転がったり,あれやこれやの賑やかな大阪散歩。初訪問の地で,しかも初対面の人も混じっていたのに,気楽にホイホイ自然解説している私って……。

29−4 やっとこ発表


 環境教育学会2日目。ちょっと雨模様。朝から真面目に,あちこちのセッションを見て回る。昼休みも外に出る気が起こらず,大阪で買っておいたサンドイッチをかじりながら,休憩室で発表原稿に目を通す。口頭発表は,何回やっても緊張する。聞き手が20人ぐらいしかいなかったこともあったが,それでも,壇上に上がると,冷や汗をかく。観察会で100人を相手にしても,そんなにあせることもないし,数十万人が見ているであろう某TV番組でも喋っているのに,どうも学会発表だけは,慣れない。
 さて,長いこと待たされて,やっと自分の発表が回ってきた。環境教育学会なので,鳥インフルエンザ騒動の際の風評被害行動の分析と,鳥インフルエンザに対する知識量の比較を軸に,野外活動,特に野鳥観察への影響などを加えた考察をしてみた。
 しかも,ここは,2004年の鳥インフルエンザ騒動で最大の被害の出た京都府。

 反応は上々。質問も多かった。だが,あまり,リスクコミュニケーションに絡みそうな話は出なかった。「教える側」に立つ人が多いはずの環境教育学会で,質問者はすっかり末端消費者の立場の質問に終始していた。学校の先生など,指導的立場の人でも,あまり鳥インフルエンザの情報を持っていないようだ。その情報普及不足が,風評被害を生んだのも事実なのだが……。
 もうひとつ,これは……と思ったのは,私の所属する研究所の知名度の低さ。講演会場で,私の仕事場を認知していた人は,一人もいなかった。理科系の科目を教える大学教授クラスの人が何人もいるのに……。情報普及の道のりは遠いと実感。この惨憺たる認知度の低さ,うちの研究所の管理職にも知っておいて欲しいところだ。

(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)