<那古の浦>
(なごのうら)富山県射水市(旧・新湊市)

旅行日 '95/12 '97/7

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 那古の浦(なごのうら)は万葉の歌枕の地。天平を代表する歌人であり万葉集の編者のひとりである、大伴家持(おおとものやかもち)は国司として越中の国に赴任しましたが、ここでも彼は歌を残しています。

あゆの風 いたく吹くらし なごの海士(あま)の 釣する小舟 漕ぎかくる見ゆ
大伴家持

 北には能登半島を望み、南には立山連峰をあおぐ景勝の地として、かつては讃えられたそうです。
 そして現在は・・、ありゃりゃ・・、テトラポットの海なのでありました。


 那古の浦に至った芭蕉は、さらに同じく万葉の歌枕の地である有磯海(ありそうみ)、擔籠の藤浪(たごのふじなみ)を訪れようとします。しかし土地の人から「ここから五里もあるし、行く先には泊めてくれる宿もない」とおどされ、断念。そのまま高岡の街へ向かい、ここで一泊。
 翌日、その気があれば巡り歩くことも可能だったのでしょうが、高岡を発った芭蕉はまっすぐ金沢へ向かうべく、倶利伽羅(くりから)峠へと足を進めるのでありました。曽良の日記には「翁、気色勝(すぐ)れず」とあり、芭蕉は相当疲れていたようです。



 新湊の対岸、伏木(ふしき)は越中国の国府が所在した地。大伴家持ゆかりの地です。万葉の世界に接するならこちらへ。

高岡市万葉歴史館
 開館時間 午前9時から午後6時まで
 休館日  毎週火曜日(祝日にあたる時はその翌日)
 入館料  大人200円
 交通 JR氷見線伏木駅から徒歩20分
   



加越能鉄道(現・万葉線)
富山新港の渡船
 高岡から新湊(那古の浦)まではチンチン電車(万葉線・旧加越能鉄道)が健在。また、富山新港(昔の方生津潟)の開口部と、小矢部川河口の伏木には渡船(如意の渡し)が運行されています。これらを使えば旅もいっそう楽しくなるかも。
<追記>如意の渡しは、2009年に廃止となりました。


続いて、芭蕉の句(↓)へ。



<芭蕉の句>

 金沢へ向かう途上、行くことを果たせなかった有磯海、擔籠の藤浪への思慕の情を句に詠みます。

 わせの香や 分入右は 有そ海

(わせのかや わけいるみぎは ありそうみ)

<句意>
早稲の香りのすることよ。(その一面の稲田の中を)分け入って進んでいくと、右手の方に(行くことを断念した)有磯海がみえる。

三省堂・新明解シリーズ「奥の細道」(桑原博史監修)より

 右写真は新湊の放生津(ほうしょうづ)八幡宮に建つ句碑。


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