「日蓮」創作ノート1

2006年10月

10月 11月 12月 07年1月 2月 3月 4月 5月
10/01
ノートのタイトルを更新することにする。いつまでも孫の話はしていられない。といって、いまやっている仕事は「ダ・ヴィンチの謎、ニュートンの謎」という本だが、もう書き始めているので、創作ノートのようなものは必要ない。さらに某有名作家の伝記と、近代文学の文章のアンソロジーの仕事を並行させる。大学も始まるし著作権の仕事もこのところ急に増えてきた。つまり「いろいろと忙しい日々」とでも名付けたいような日々なのだが、それでは創作ノートにならないので、遠い将来のことだが、次の大作として準備している「日蓮」の創作ノートをここから始める。いま「遠い将来」と書いたが、それは3ヶ月ほど先のことで、雑用がすべて片付き、大学も終わり(今年までということになっている)、著作権の仕事も一段落する、という状況が予想されるので、その頃には「日蓮」に集中できるかと期待している。ただし、この種の仕事は、時間ができたから集中できるというものではない。行き詰まったり、資料の不足を感じることもあるだろう。生活のために細かい仕事を入れるということもあるので、どれほど集中できるかわからないが、とにかく「日蓮」を書くのだという決意はもっている。
なぜ日蓮か。という疑問を読者は感じるかもしれない。実はわたしも感じている。「空海」のあとだから、時代からすると「薬子」か、「承和の変」、少し先なら「在原業平」ということになる。「菅原道真」はすでに書いているので、崇神天皇(「角王」学研)から始まっているわたしの歴史シリーズは、「薬子」と「業平」を書けば、天神さままではつながる。それより前としては、「山幸彦」と「神武天皇」を考えている。そこからあととなると、「紫式部」「白河天皇」「後白河天皇」などがあるが、「清盛」と「頼朝」は書いているので、その次の「日蓮」を書いておけば、あとは太平記くらいを残すだけだ。戦国時代はすでに多くの作品が書かれているのでわたしの出番ではない。あとはずっととばして、自分の青春時代を歴史としてとらえることが最後の課題だと思っている。八十歳まで生きれば、上記の仕事はすべて達成できると思っているので、これは夢ではなく、計画である。というふうに考えれば、なぜ「日蓮」かということも見えてくる。
本日は日曜日。雨が降ってきたので散歩にも出ず、ひたすら仕事、のはずだったが、突然、見ていたテレビの画面が消えた。力尽きた、といった感じである。リモコンのボタンを押しても何の反応もなく、スイッチを切ることもできない。本体の電源を切ったので電源オンのランプは消えたが、どうもテレビの寿命だったようだ。20年前くらいのテレビだ。居間にあったテレビで、2年前にブラウン管式のハイビジョンを買った時に、まだ映っている旧いテレビを仕事場まで押していった。押していったというのは隣の部屋だし、テレビ台には車がついていたからだ。とてももって運べるようなものではない。そのテレビが壊れたので、はたと困った。妻が不在だし、いたとしても二人で運ぶのも大変である。しかしテレビがないと寂しい。で、テレビ台と似たような高さのテーブルを用意し、そこまでは車のついた台を押していき、少しずつずらしてテーブルに載せた。これでオーケーである。2年前まで見ていたテレビを運んできた。これは子供が大学生だった頃に、プレーステーション1を買い与え時に買ったもの。ということはこちらも10年ものだ。うちの子供にはゲーム機を与えなかった。当たり前のことである。最近、ゲームをやると脳の前頭葉が発達しないということが言われるようになったが、そんなことは言われるまでもなくわかることだ。大学生になったのでもういいかと与えたのだが、すると禁断症状みたいにゲームばかりやるようになったので、仕方なくテレビを別に買った。その息子たちもとっくに独立して、いつのまにかプレステもなくなった。で、テレビはわたしの専用となった。その懐かしいテレビである。これはハイビジョンも地デジも映らないだけでなく、衛星1と2も映らないが、衛星の映るビデオをつなげば衛星放送は見られる。そうでないとアメフトが見られない(そのぶん仕事がはかどりそうな気もするが)。小さなテレビだから端子が2セットしかなく、ビデオとDVDをつなぐと、前世紀の遺物のレーザーディスクがつなげないが、これはビデオにつなげば何とかなる。ここまでの作業で疲れ果ててしまった。やれやれ。20年親しんだテレビ、ご苦労さんでした。

10/02
月曜日。先週はまったく休みがなく、一日に2件以上仕事のある日もあって落ち着かなかったが、今週はわりあいヒマ。こういう時は自分の仕事に集中しないといけない。とりあえずは「ダ・ヴィンチの謎」の出だし、この本は何についての本なのかというところが見えてくるまでは書いておきたい。その後、他の仕事も並行させることになるだろうが、哲学の本なのでできれば一気に書いてしまいたい。書いているうちに気がついたのだが、この本は内容の濃いものになる。ただ新書サイズということで、あまり分量が増えてはいけない。説明不足になるかもしれないが、あまり深入りせずに面白いところだけをピックアップした方が読みやすいものになるだろう。
近代文学アンソロジーという仕事も依頼されている。塗り絵のかわりに文章を筆者する本が売れているのでそれで何か、という注文であった。近代文学から20編ほどピックアップすることにした。代表作または出だしの部分が面白いものを選んでみた。作家の青年順に並べてみると意外に思うことがあった。作家の年齢と文体が必ずしもシンクロしていない。樋口一葉がその代表だが(若いのに文語で書いている)、同じ口語でも、旧い感じのものと若々しいものがある。考えてみると谷崎潤一郎の源氏物語は、与謝野晶子より古くさい感じがする。ただ並べるだけでも発見がある。面白い本になるかもしれない。

10/03
本日も何ごともなし。夏の集中豪雨の時に壊れたドアホン、ようやく新しいのをつける。半日、工事の人が悪戦苦闘していた。ついでに壊れたテレビをもっていってもらった。まだ使い方がわからない。要するに、チャイムが鳴れば玄関に出ていけばいいのだろう。いままで荷物を届ける度に電話をかけてくれた宅急便のお兄さん、お手数をおかけしました。

10/04
大学の後期が始まった。2月半の夏休みがあったので自分が大学の先生をしていたことも忘れていた。久しぶりなので90分の講義は声が疲れた。2コマ目は少し慣れてきた。明日は新しい教室なので、声の出し方が難しい。これから1月半ばまで、ハードな日々が続く。10月前半のスケジュールはきっちり埋まってしまった。これで自分の仕事ができるかと心配であるが、「ダ・ヴィンチの謎」は順調に進んでいる。時間さえあればいくらでも書けるという状態になっているが、本日も学生の宿題を見ないといけない。大学の先生も今年限りで引退したい。

10/05
生命保険の機関誌のインタビュー。「父親が教えるツルカメ算」の宣伝。取材記者が同世代なので、必要事項を話したあとは雑談。夜は大学。第二文学部は前後期制なので、教室も変わるし、学生の顔ぶれも変わる。同じメンバーもいる。少し人数が増えたのは、前期の学生はそのまま残って、新規の学生が登録したのだろう。わたしより年上の人もいるので、緊張して話をする。最後の授業の教室はマイクが常備されていない。教員室でカギとマイクを借りて、自分で機械を操作しないといけない。老人に機械の操作をさせるのは酷である。まあ、何とか音は出たが、ピンマイクを胸につけたのでは音が小さい。結局、手でもって口にあててしゃべった。これではピンマイクの意味がない。

10/06
大雨。昨日から降り続いている。次男が出張の帰りに泊まりにきた。最近はわりと頻繁に次男と会っている。が、まあ、夕食の人数が多いのは楽しい。

10/07
三ヶ日(浜松市)の仕事場へ。本当は昨日出発するはずだったが、次男が泊まりに来たし台風みたいな風雨だったので中止した。今日にしてよかった。風は強いが晴天。気持ちの良いドライブだ。運転はすべて妻に任せた。妻に任せると仕事のことなどを考えることができる。連休のせいか厚木の手前まで少し渋滞していたが、そこから先は快適だった。9月にも来たので大掃除の必要はない。明日は藤枝で講演がある。今日は仕事をせずに軽くのんで寝ることになる。夕方、少しだけ仕事。「ダ・ヴィンチ」いまはスピードが出ている。パソコンを膝に抱くと、その間だけ止まらずに指が動く。頭がオーバーヒートしないように、時々、ソリティアなどをする。三ヶ日の仕事は景色がいいので気分がいい。この仕事場は電話がかかってこないので落ち着く。ただ風が強い日はうるさくて眠れないほどだ。本日はその風の強い日。朝までこの風が続くのだろうか。

10/08
一晩中風が吹いていた。でも少しは眠れた。早朝に目が覚めたので仕事をする。わずかな時間だがかなり進んだ。ガリレオ・ガリレイの話に入った。妻の運転で藤枝に向かう。藤枝は小川国夫さんの小説の舞台。わたしが尊敬する作家が3人いる。ドストエフスキー、埴谷雄高、そして小川国夫だ。わたしにとって藤枝は聖地だ。それだけに一度も行ったことがない。三ヶ日に仕事場があるのでこの25年間、往復を続けてきたのだが、つねに素通りだった。が、今回は小川さんと二人で講演するという催しなので、断るわけにはいかない。小川さんもご高齢なので、生きているうちに言葉を交わしておきたいという思いがあった。これまでも何度かお目にかかったことはあるのだが、じっくりお話をうかがったことはなかった。で、藤枝である。妻の運転で会場に向かう。いまはカーナビがあるので迷うことはない。立派な建物で駐車場も完備している。会場は満席で、楽しく講演できた。ふつうの文学講演と違って、自分と小川文学の関わりといった話をした。初めて語る話だ。改めて青年時代の自分と向き合う気がした。寿司屋で打ち上げ。小川さんのお言葉を直接うかがうことができた。今日は緊張した。疲れたがいい気分だ。帰りの車の中で、ケータイが鳴った。スペインの長男からだ。スペインの親族に不幸があったとのこと。思いがけないことなので、虚を突かれた。去年の夏、次男の嫁さんのところに不幸があった時も、報せは三ヶ日で聞いた。三ヶ日にいる時はこちには非日常の世界にいるので、突然、現実の問題が起こると虚を突かれる。といってスペインにすぐに駆けつけるわけにはいかない。地球の裏側からご冥福を祈るしかない。

10/09
本当は明日三宿に帰るはずだったが、東名が工事をするというので、今日三宿に戻った。途中、7台くらいの衝突事故があって渋滞した他はスムーズに流れていた。朝も夕方も仕事をする。「ダ・ヴィンチ」の後半、いまはガリレオ・ガリレイの話を書いている。難しい宗教の話は終わったで、ここからゴールまでは一直線に進んでいける。

10/10
本来は今日、三ヶ日から帰る予定だったのを昨日帰ったので、今日はぽっかり何もない日ができたのだが、よく考えてみると三ヶ日でやる予定だった文藝著作権情報センターの機関誌の原稿を書いていないことを思い出した。著作権に関するもので、ふだんから何度もじゃべっていることだが、これを文章に書くとなると量的に多いので大変である。仕方がない。朝からパソコンのキーを叩き続ける。

10/11
大学。2コマとも核爆発の話ばかりしていた。文学なんてやってる場合じゃないよ。そういいながら、自分はひたすら自分の仕事をしている。「ダ・ヴィンチ」は半分を越えた。いまはニュートンの話になっている。ダ・ヴィンチもニュートンも結婚していない。グノーシス的なホモ集団に所属していたということは充分に考えられた。さて、エンディングをどういうふうにまとめるか、これから考えないといけない。

10/12
大学。今日も核爆発の話もしたが、コンパクトにまとめたので大江健三郎の話もできた。2コマ目はキリスト教の話。いまちょうど「ダ・ヴィンチの謎」を書いているので頭の中に情報がつまっている。今日はひどく暑い。10月半ばというのに、まだ真夏と同じ格好をしている。

10/13
旺文社で伝統的工芸品作文コンクールの選考。何だかよくわからないが阿刀田さんから頼まれた仕事。旺文社に着いたら委員長だといわれて司会みたいなこともしたが、まあ、作文の内容がけっこうよかったので、いい仕事だった。終わってから大学まで歩く。少し休憩してからまた高田馬場まで歩く。地下鉄を1区間だけ乗るのはもったいないという気がする。しかし大学から高田馬場まで、学生時代は20分で行けたのに30分以上かかった。岳真也さんとの対談の2回目。これで本になるのかという気もするのが、ただの飲み会だと考えれば充実した飲み会だった。さて、これから夜中の仕事。「ダ・ヴィンチの謎」、エンディングをどうするか何も考えずにここまで来たが、ニュートンのあとは、ハーシェル、ラグニンジェ、ラプラスと、その後の展開を少し語って、神の時代から科学の時代への移行の幕開けを暗示してから、エンディングではパスカルについて語ろうと思う。ダ・ヴィンチからガリレイを経てニュートンというのがテーマなので、パスカルに触れるゆとりがなかったのだが、最後に短く触れると全体がまとまると思う。というアイデアを今日思いついたので、もはやこの本は完成したのと同じだ。あと数日で草稿は完了するし、文字の訂正程度で手が離れるだろう。近代文学アンソロジーも片付けて、「日蓮」をいよいよスタートさせたい。

10/14
土曜日。今週も多忙だったがようやく休みだ。昨日、岳さんと飲んで早く寝たので、8時すぎに起きてしまった。たっぷり仕事をした。夕方、妻と下北沢まで散歩。ユニクロでベストを買った。朝からとても寒かったから。真夏と同じ格好をしているから寒いのだが。

10/15
日曜日。ご近所を散歩。「ダ・ヴィンチ」はゴールに向かって進んではいるのだが、ニュートンについては材料が尽きた。ゴールまでまだ少し何か書かないといけない。エンディングにパスカルのことを書くというアイデアはあるのだが、そこに行く前に多少のレトリックが必要である。「まとめ」といったものだ。これは難しいものではないが、論理に揺らぎがないように、一直線に論理を追いかけていきたい。文体のキレが要求される。ここ数日、集中して仕事をしたい。

10/16
またウィークデーが始まる。作家は本来は毎日が日曜日のはずだが。文藝家協会で日本図書教材協会と協議。互いに理解はできているが、細部を煮詰めるまでに到らず。ペンディング。しかしあとは数字の問題だけなので、メールで確認すれば、事務局レベルでもまとまると思う。夜は上野で妻とコンサートを聴くことになっている。仕事ではないので気持ちは楽で、あとは時間をつぶすだけだ。上野まで歩いてやろうと思ったが力尽きて九段下から地下鉄に乗った。湯島からまた歩き始めた。アメ横などをぶらぶらした。いい運動になった。徳永二男と梅村祐子さんのデュオ。徳永さんはまだN響のコンサートマスターだった頃、お兄さん(チェロ主席)といっしょに拙宅に来られたことがある。経緯は忘れたが一緒に飲んだことは間違いない。アンサンブル・ピアニストの梅村さんがご近所なので、練習のあとで寄られたのだと思う。うちのピアノで練習したのかもしれない。ずいぶん前のことで、わたしも年をとったが、徳永さんはわたしより少し上だと思うから、年齢は重ねているはずだが、若々しい演奏はまったく変わらない。指がよく動く。繊細なところもあるのに、勢いがあって、エネルギッシュだ。指が速く動くところは、すらすらと動くのではなく、パワーでねじふせるような感じがあって、そこが感動を呼ぶのだろう。超満員で、客席に熱気があった。とくにラヴェルのツィガーヌはすごかった。さて、自宅に帰ると仕事が待っている。「ダ・ヴィンチの謎」はいま山場に来ている。ゴール直前だが、ものすごく難しいことを考えている。この部分だけはわたしのライフワークといっていいほどだ。まあ、あと数日でクリアできるだろう。

10/17
自宅にてネット番組のインタビュー。あまりこの種のものを見ないので、どういうものかよくわからないが、とにかく10分しゃべれと言われたので10分しゃべった。あとはひたすら仕事。「ダ・ヴィンチの謎」たぶん最終章に入った。

10/18
水曜は大学の日。喉が疲れている。まずい。金曜に講演があるので、明日の授業は力をセーブしないといけない。

10/19
新聞の取材一件。その後、大学に行くまでの短い時間があわただしかった。わたしが作ったNPO文藝著作権センターの機関誌の校正が送られてきたのだが、空白ができている。とくに何も考えずに原稿を書いたので、何ページになるかもわからず、結果的にこうなったのだが、これではみっともないので原稿を追加する。今日中に郵便ポストに入れたかったので、作業を急いだ。時間との戦いというのは久しぶりだ。どうにかぎりぎりで完成。やれやれ。大学へ着くまではぼうっとしていたが、教壇に立てば自動的に言葉が出てくる。矯正協会の文芸コンクールの応募作を読んでいる。一年でこの仕事がいちばん心が洗われる。いい仕事をさせてもらっている。

10/20
徳島へ日帰りで講演。うーん、疲れた。体を運ぶだけの仕事。しかし夜中は自分の仕事をしないといけない。「ダ・ヴィンチ」の草稿、ゴール直前。早く終わって、「星の王子さま」のゲラに取り組まないといけない。
明け方、草稿完了。しばらく寝かせておいてから、再チェックする。ということで届いたばかりの「星の王子さま」を見る。出だしのところの文章。何と麗しい文章からと思うが、これはサン=テグジュペリのもとの文章がいいからだ。しかし日本語としてもとてもいい。類書が15種ほど出ているはずだが、文章のわかる人なら、この違いがわかるはずだ。それと、子供には読みやすく、同時に、子供には少し難しい深い意味をはらんでいるという仕掛けが随所にほどこされている。ずっと読んでいたいのだが、PHP「文蔵」の締切が来ていることに気づいた。とにかく出だしだけ書いてみた。これは締切だから、とにかく先へ進まないといけない。

10/21
土曜日。三軒茶屋で大道芸フェスタをやっている。これは面白いので毎年行く。途中の緑道でもクラフトの市をやっている。こういう催しが街を活性化させる。ブラスバンド、ジャグリング、踊りながら絵を描くパフォーマンスなどを見た。彫像のようにじっと立っている仏像もいた。このパフォーマンスはヨーロッパに行くとどこでも見られる。とくに年始年末のバルセロナのカテドラルの近くにはたくさんいた。しかし三軒茶屋の仏像は、時に激しく痙攣したり、ぴょんぴょんはねたりする。キャロットタワーの4階で子供に仮装をさせていて、小さい子供がたくさんいたので、本気で怖がっていた。怖いけれども面白いので、募金箱にお金を入れにいくのだが、また動くと怖いので、おそるおそる近づいていく。子供たちをとりこんで全体がパフォーマンスとして機能している。バルセロナより三軒茶屋の方がレベルが高い。お菓子の太子堂で顔が銀色の人がアメを買っていた。道行く人に一個ずつくれる。わたしのあとからずっとついてくるので怖かった。
さて、草稿が完成した「ダ・ヴィンチの謎」は明日にでもプリントはするが、少し寝かせておく。いつものことだが、何を書いたか忘れてしまった頃に読み返せば、読者の立場で客観的に文章を見ることができる。その間に「星の王子さま」のゲラを見る。が、その前に、まず矯正協会の原稿。矯正しつつある人の作品は胸を打つ。選評も心をこめて書いた。この仕事のあとで学生の宿題を読むと、拍子抜けになる。が、宿題は明後日くらいに読む。まずPHPの「文蔵」の連載だ。明日までに完成させないといけない。わずか10枚だが、毎月苦労する。これも心をこめて書かないといけない。

10/22
日曜日。「文蔵」の連載原稿完了。で、これから何をすればいい? 「星の王子さま」のゲラが最優先か。次に「ダ・ヴィンチの謎」の草稿をチェックする。近代文学に関する原稿はその次だな。「聖徳太子」について講演を録音する仕事があるので資料を頭の中にインプットする作業。これはぎりぎりでいい。矯正協会は本日メールで原稿を送った。まだ世田谷文学館の選考が残っているが、これはもう少し先。これで全部か。すべてが片付いたら、いよいよ「日蓮」だ。早くスタートしたいが、まずは目先の仕事を片付けないといけない。で、本日はこれから「ダ・ヴィンチの謎」の草稿をプリントして、「星の王子さま」のゲラと並べて手近なところに置いておく。わッ、重大なことを忘れていた。学生の宿題を読まないといけない。これが一番先だ。

13/23
本日はウィークデーだが公用がないので母のところに行く。夏頃、もう死ぬのではと心配されたのだが、嘘みたいに元気になった。前日、「星の王子さま」半分見て、直すところが一つもなかった。完璧な翻訳である。わたしの訳では、王子さまの花に対する恋心が、小学生にもわかるようになっている。すごい名訳である。サン=テグジュペリの元の文章よりも、わかりやすくなっている。正確に翻訳しているのだが、文章のトーンを微妙に変えることで、デリケートな部分が強調されるようになっている。しかし読んでいるとものすごく疲れたので、半分でやめて、「ダ・ヴィンチの謎」を読み始めた。これも名文である。新書サイズの本にしては少しトーンが高いかもしれない。しかしテーマが要求するので、これでいいと思う。神について語るわけだから、読者も姿勢を正して読んでほしい。

10/24
学研の編集者と三宿で飲む。少し飲み過ぎた。

10/25
大学。やや宿酔。短めに切り上げる。次男の嫁さんとお母さんが来る。こちらはひたすら仕事。「ダ・ヴィンチの謎」の草稿チェック。半分を過ぎた。ここまで大きな問題はない。キリスト教の説明は少しだるいかもしれないが、まあ、仕方がない。科学の話になるとがぜん面白くなるのだが、一般読者にはやや難しいかもれしない。しかし何となくわかる、という状態にはなっていると思う。

10/26
昨日から自宅の屋根の工事をやっている。何とかしてくれ、というぐらいの騒音。寝ていられない。しかし自分の仕事は夜中でないとできない。うーん、寝不足が続きそうだ。寝ていられないので午前中に起きて少し仕事。昨夜、草稿チェックが終わったので打ち込みに入っている。あまり直すところはないので、明日くらいには完了しそうだ。そのあと何をするんだろう。もしかしたら「日蓮」がスタートするのかな。心の準備はできている。冒頭、親鸞と対決する。それから父親を出す。全部フィクションである。「空海」も青年期まではフィクションでひっぱった。このフィクションの部分でどれだけ主人公のキャラクターを確立できるか。楽しみだが緊張する。午後、日本点字図書館理事会。大学の研究室で聖徳太子の資料を読む。講話の録音の仕事が来月予定されている。まあ、どんな人なのか頭の中には入っているが、細部を確認。授業は快調だった。昨日は不調だったが、今日は別人みたい。「ダ・ヴィンチ」が完了して元気になったのだろう。

10/27
前夜の明け方、打ち込みも完了。とりあえずこれで手が離れた。「ダ・ヴィンチの謎、ニュートンの謎」。これはいい本になる。神と科学が対決する物語だ。で、本日はいよいよ「日蓮」スタート。しかしまだ情報が頭の中にインプットされていない。親鸞と日蓮が対面するところからスタートするのだが(史実ではない)、何年の話で、二人が何歳なのかもわからない。しかしとにかくスタートする。まあ、片方が老人で、片方が若者だ。それで充分だ。これはすごい小説になる。

10/28
コーラスのパート練習は妙蓮寺のH氏宅。ここは斜面に建っていて別荘みたいな感じ。簡単に練習して、近所に飲みに行く。最終電車に近くなった。学芸大学で降りてタクシーで帰る。明け方まで仕事。「日蓮」順調に進んでいる。

10/29
日曜日。メンデルスゾーン協会理事会。なぜこんなものに入ったのかよくわからないのだが、とにかく理事会である。昨日会ったH氏とまた会う。そうだ、何年か前、コーラスの練習の帰りの電車の中(めじろ台男声合唱団は全員めじろ台の住人だったのだが、わたしとH氏は引っ越したのでいつもいっしょに電車で帰る)で勧誘されたのが事の発端である。で、どういうわけか、今シーズンからわたしが理事長ということになってしまった。これで理事長2、副理事長1、理事2と、役職が増えた。むろん全部ボランティアである。帰って学生の宿題を見る。これから明け方まで「日蓮」に取り組む。明日はまた屋根の工事が始まるのか。

10/30
ウィークデーだが本日は公用なし。細かい原稿もないので「日蓮」に集中する。出だしの部分、いきなり親鸞と日蓮が対決するのだが、いい感じになっている。オープニングなので教義をぶつけあうのではなく、穏やかに対面して、老僧と若者との対比を描きたい。信徒の方には申し訳ないが、理屈っぽくなると小説にならないので、思いっきり思想は簡略化してしまう。本日の散歩、烏山川緑道を若林の手前で右折。山を越えて北沢川緑道の某有名シンガーソングライターの家のあたりに出て引き返してくる。わたしの自宅は烏山川と北沢川が合流するポイントに近いので、どちらかの川に出ればそのまま自宅に帰ってこられる。1時間歩き続けたのでちょっと疲れた。さて、明日は「謎の空海」のゲラが届くので、「日蓮」はしばらく中断だ。

10/31
「謎の空海」のゲラ届く。気持ちがまだ「日蓮」から切れてないので、きりのいいところまでやってからゲラに集中したい。


11月へ進む 9月へ戻る

ホームページに戻る