「新釈白痴」創作ノート5

2010年5月

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05/01
四日市へ行く。今月に生まれる第2子のための父母教室が産院で開かれるので、その間、長男の守を頼まれている。しかし連休のピークだから高速道路は渋滞している。それで国道23号線で行ってみたのだが、蒲郡で渋滞していて3時間半ほどかかった。高速ののろのろ運転の方が早かったかもしれないが、知らない道を通るのは面白かった。こちらは運転をしていない。妻の負担は大きかったかもしれない。次男のマンションに着いて孫と遊ぶ。スペインの孫は女の子3人。いっしょに遊ぶといっても勝手がわからない。しかしこちらの孫は男の子なので、プラレールなどで遊ぶ。わが息子たちが遊んでいたプラレールが、甥のところからこちらに送られている。もちろん走っているのはトーマスでこれは最近買ったもの。部屋が埋め尽くされるくらいのレールがある。しかし列車が通るとカンカン鳴る踏切とか、最近はいろいろなパーツがあって面白い。夕方、産院の近くのショッピングモールに移動。車の中で孫は寝た。抱いていた次男から寝たままの孫を受け取る。ここで次男夫婦は姿を消す。起きたらどういうことになるのかと心配していたが、明るく脳天気な子どもなので、ジジババがいれば平気。回転寿司へ行く。この子はイクラとアサリが大好物なので、これを与えておけば嬉々としている。よく食べる。わたしがビール2杯飲んだが、3人で6000円だ。この寿司屋はやや上等の店のようだ。安い回転寿司だとイクラの軍艦巻きは半分キュウリが載っていたりするが、ここのはイクラが山盛りになっているだけでなく、べつにイクラだけの鉢が添えられている。そのあと子どもの遊び場で遊ばせる。一人でよく遊ぶ。孫の相手はスペインでいやというほど体験したが、日本の子どもの方が扱いやすい。男の子の方がわかりやすい感じがする。無事に役目を終えて仕事場に戻る。帰りの高速だと1時間半だった。

05/02
日曜日。昨日の疲れが残っているので本日はどこへも出かけず。

05/03
祝日。西気賀のレストランへ行く。ここのオーナーはわたしと同世代。仕事場のある別荘地内のレストランにいたのだが、天竜浜名湖線の西気賀の駅舎を借りて自分の店をオープンした。それが20年以上前のこと。別荘地内のレストランの頃から数えると30年近いつきあいになる。その頃からメニューも味もまったく変わっていない、オーソドックスな料理を作ってくれる。わたしはいつもビーフシチューを食べるのだが、本日はタケノコなど旬の野菜が入っていた。店は満席に近かった。繁盛しているようだ。柿入りのジュースをサービスしてくれた。奥さんの実家で柿を育てていて、いつもここで柿を買う。さて、『白痴』は7章がようやく終わった。1章が100枚くらいなので、これで700枚ほど。全体は1000枚くらいになりそうだ。まだゴールは先だが、ここまでくればゴールが先の方に見えてきた感じだ。

05/04
今日も祝日。明後日は大学の出講日なので一日の余裕を見て本日三宿に帰る予定にしていたが、テレビでは本日が渋滞のピークだと言っているので、一日ずらすことにした。7章が終わった。『罪と罰』にも出てくる捜査官との対決シーンで、ここは『罪と罰』からの連続したムードが出るところ。この山場が終わったので、少し気が抜けて、8章のあたまで少し停滞している。ポメラで打った少し先までのメモがあるし、スペインからの帰りのヒコーキの離陸前の座席で書いた紙のメモもまだ入力していないので、かなり先までのメモがある。これをすべて入力してしまえば、あとはエンディング直前ということになる。

05/05
昨夜はやや多めに酒を飲んで早めに寝た。それで6時半に起床。7時半には三ヶ日を出発。途中、富士のあたりで渋滞していたが、正午ジャストに三宿に到着。4時間半かかったわけだが、早朝に出たので、意外に早く自宅に着いた。正午というのは、ふだんのわたしの日常なら(午前に会議がある日を除けば)起きたばかりということになる。これから長い一日が始まることになる。

05/06
連休が終わるとすぐに仕事が始まるサラリーマンの人々を対岸の火事のように眺める自由業の作家、というわけにはいかない。週に一度の大学出講日がこの日になった。講義の調子はいい。学生の反応もいい。まだ出席簿をもらっていないので何人いるのか正確にはわからない。『白痴』はちょっと行きづまっている。原典では作品の前半にナスターシャの名の祝いという宴会に主要登場人物が集まってくる場面があるが、わたしの作品では後半にアナスタシアの引越祝いの宴会が設定されている。コンセプトは同じで主要登場人物を一堂に集めてエンディングにむかうスタートラインとする。ただ宴会の模様をすべて書こうとすると、膨大な量になる。最初は準備の段階から書こうと考えていたのだが、物語はもうゴール寸前になっているので、ここのコンパクトに書きたい。宴会の終わり頃から話を始めるという思いきりが必要ではないか。まだ迷っているのだが、これしかないという気がする。そのためにはこれまでポメラで準備していた断片を大幅に書き直さないといけない。

05/07
姉の芝居を観る。新国立の小劇場『夢の泪』(井上ひさし作)。この作品は前に観たことがある。夢三部作の2番目。あねはすべてに出演していたから、わたしは全部見ているはずだが、一作目が紙芝居屋さんの話だったという以外は、すっかり忘れていた。今回は月がわりで三部作を連続してやるのだが、俳優の体調を考えて、3連続で出る人はいない。ということで、姉も2番目と3番目に出演する。第二次大戦の戦犯の裁判をめぐる理屈っぽい作品だが、ややこしいところはすべて刈り込んであって、口当たりのいいミュージカルになっている。こんなによくできた芝居だったかと思う。わたしが観たあとで、改変されたのではないかとも思うのだが、こちらの心境が変わっているのかしもれない。

05/08
土曜日。久しぶりに渋谷まで散歩。池尻大橋の手前の緑道の人工の水路にキルガモのヒナ8羽発見。今シーズン初。毎年、4〜5組のヒナが誕生する。カルガモが何を考えているのかわからないのだが、まだ寒いうちに産むのと、真夏に近くなってから産むのがいるので、ヒナの大きさにばらつきが生じる。本日見たヒナは生まれたてではない感じなので、連休中に生まれたのではないだろうか。すると卵の段階ではまだ寒かったはずだ。よく生まれたものだ。

05/09
日曜日。アナスタシアの引越祝いの宴会。ここも山場になるはずだが、もはやコンパクトに書かないと作品が終わらないのでなるべくテンポよく書きたい。しかし急ぐあまりにスカスカにならないようにしないといけない。とにかくとりあえずゴール地点に到達したい。あとで修正はできる。ここから先はエンディングに向けて、ずっと高いトーンで進まないといけない。こちらの精神も高いレベルを維持する必要がある。

05/10
精神が高揚したまま仕事に集中したいところだが、今週は多忙だ。土曜まで公用がつまっている。本日は文化庁の小委員会。三田会議所。今日は午後。午前中の会議だと妻が車で送ってくれるのだが、午後なので地下鉄で行く。麻布十番。以前に書いたことだが、麻布十番から池尻大橋は、永田町で1回乗り換えなのだが、溜池山王、表参道と、2回乗り換えの方がスムーズに移動できる。以前、帰途に麻布十番から乗って、疲れてぼうっとしていたのか、永田町だと思ってホームに降りて階段を昇ると、実は1つ前の溜池山王駅で、永田町の動く歩道に行くつもりが、いきなり銀座線のホームに出たので、ここはどこ、という感じになった。本日はそのコースを逆にたどる。確かにこの2回乗り換えはスムーズだ。永田町の乗り換えはどうしてこんなことになったとのかというくらいに複雑の経路をたどることになる。会議そのものは、聞いているだけでよかったのだが、そうもいかないので1回だけ発言した。少し言い過ぎたかもしれないが、重要なことを指摘したので、急に議論が活気づいた感じがした。

05/11
文藝家協会総会。総会の日の一日は長い。午後1時の少し前に会場の私学会館に到着。常務理事会。それから総会。中断して常務理事が集まって新理事の選手。それを総会で発表。今回は公益法人化の承認もあり、スケジュールが過密なので、わたしの報告は可能な限り短くした。その後、懇親会。招待客の大半は自分の関係なので挨拶回りが大変。終わった後、わたしのNPOのスタッフを慰労。長い一日がようやく終わる。

05/12
午前中、初台オペラシティーの著作権情報センターで「著作権と言論の自由委員会」に出席。いったん自宅に帰り、それから教育NPOとの協議会。本日は長い一日。

05/13
M大学。いい気候なので武藏境から往復歩く。帰りの徒歩の途中、突然、アイデアがひらめく。すごいアイデア。こうやって少しずつ作業が前進していく。

05/14
妻に渋谷まで送ってもらって銀座線で浅草へ。りょうもう特急で新桐生へ。桐生で講演。会場は満員。聴衆の反応もよかった。着た時と同じコースを逆にたどる。自宅からかかる時間からすると名古屋よりも遠い。しかし地べたをゆっくりと進む旅行は快適で、知らない街に数時間滞在してまた帰ってくるというのも楽しい。テーマは西行。西行は人気がある。

05/15
土曜日。新宿のホテルで風花30周年パーティー。風花は最後の文壇バーと言われるところ。わたしは三宿に越してきてからは編集者とは三宿で飲むので新宿へはめったに行かない。それでも何かの会合のあとで誘われて風花に行くことはある。中上健次さんと最後に語り合ったのも風花だった。大群衆の中で知人を見つけるのは大変だったが、とにかく数人には挨拶できた。

05/16
日曜日。今週はハードで休みなのは今日だけ。渋谷まで散歩。セルリアンタワーの裏にほどよい散歩道がある。これまでは道玄坂を通るかマークシティーを抜けていたのだが、246の裏手を行くのもなかなかいいと思った。

05/17
またウィークデーが始まった。本日は三田会議所で午前中の会議。自宅に戻って少し仕事をしてから出版クラブで貸与権センターの宴会。わたしはこの組織の「相談役」をしている。しかし相談を受けたことは一度もない。この宴会に行って胸につける名札を渡された時に「相談役」と書いてあるので、そうだったのかと思う。ここで軽く飲んで夜中も仕事。主人公の父親が登場するシーン。ここが終わると物語は急速にエンディングに向かうことになる。まあ、1000枚以内に収まりそうな感じがしてきた。

05/18
本日は夕方5時からの会議。総務省。終わると7時。エレベーターで1階におりるとフロアが真っ暗になっている。電気代を節約するのはいいことだが、一瞬、目の前が真っ暗になる。8章の終わりの方。ヒロインの引っ越し祝いの宴会がようやく終わった。だがまだこの章は終わらない。ここから哲学議論が始まる。これを書くためにこの小説を書いているので、こういうところはしっかりと書かないといけない。

05/19
本日はめずらしく公用なし。雨なので散歩も省略してひたすら仕事。哲学議論への導入部。動き始めた。ここを通過すればゴールが見えてくる。

05/20
大学出講日だが、午前中の会議が入った。月曜にやったばからの利活用WT。前回かなり発言したので、もう言いたいことはない。少し質問しただけでおしまい。さて会場は半蔵門グランドアーク。ここからどうやって武藏境に行くのか。一見遠回りだが東京駅から特快で行くのが時間的には速いだろう。特快は乗ってしまえば駅の数が少ないので快適。大学に着くとほっとする。この大学にも慣れてきた証拠。往復歩くつもりだったが、途中で雨が降ってきたのでバスに乗ってしまった。長い一日だったが、大学で若い人に接すると元気が出る。

05/21
本日も会議があったらしいが、どういうわけか予定表に入っていなかった。あまりにも会議が多いので記入するのは忘れたようだ。終わった頃に文化庁から電話がかかってきた。え、今日も会議があったんですか、などとまぬけな答え方をしてしまった。少し疲れ気味なので今回のパスは自分にとってはよかった。夜、PHPの担当者と三宿で飲む。「なりひら」は装丁がいいので売れるのではないかと期待しているのだが、とくにまだ動きは出ていないようだ。これが売れたら次の展開を考えようと思うのだが、本日はとりあえず本が出たことを喜びたい。ご近所のカウンターのイタメシ。10時くらいまで飲んでいたが、客はわれわれ2人だけだった。夜中に込む店なので大丈夫だとは思うのだが、この店をひそかに愛しているのでなくならないかと心配だ。

05/22
土曜日。久しぶりに北沢川を散歩。今月はおしつまってきた。そろそろエンディングが見えてきてほしいが、今月中にいま書いている哲学的な部分を書き終えれば先が見えてくる。

05/23
日曜日。雨だがいつもの北沢川散歩。前夜、明け方までサッカーを見ていたのでやや寝不足。インテルの快勝。ずっとバイエルンミュンヘンが攻め続けていたのだが、インテルのイタリア的な守備は安定していた。キーパーからのロングキックを2タッチくらいでゴールに結びつけた先取点はすごい。しっかり守ってちゃっかり得点。ロッペンも完全に押さえ込まれていた。しかしロッペンはすごい。すねをわざと蹴られて転倒してもすぐに立ち上がる。不死身だ。本日、仕事をしながらテレビをつけていたら、オークスの同着。馬は首を上下させて走っている。肩が並んでいても鼻の位置はたえず前後している。にもかかわらず鼻の差もなかったというのはすごいことだ。馬には興味はないのだが、とりあえずすごいことだということはわかる。

05/24
本日は公用なし。散歩から帰ったら妻が電話で誰かと話していた。次男だったようで、生まれたとのこと。次男の次男。わたしにとってはスペインの3人娘を含めて5人目の孫である。次男の長男の時は、2年前、後楽園で開幕戦を見ている時に電話がかかってきた。翌日すぐに見に行った。今回は妻がウイルス性の口内炎にかかっているし、こちらも公用があるので、すぐには見に行かない。週末くらいに行こうと思っている。

05/25
ペンクラブ理事会、総会、懇親会。わたしは文藝家協会では副理事長だが、ペンクラブでは単なる理事なので、とりたてて責任はない。理事会と総会とその間の休み時間の間、ひたすらポメラを叩いていた。8章の終わりまで行ったように思う。これはあくまでも下書きなのでチェックしないといけないが、8章を終わって9章の出だしも書いた。大幅に前進。さすがに懇親会ではポメラは作動せず。人と話し酒を飲んだ。知人2名と二次会。楽しく飲んだ。その時点で夜中の仕事は諦めていたのだが、とりあえずポメラをつないで入力はした。これだけでも大幅な前進。ゴールがはっきりと見えてきた感じがする。

05/26
文藝家協会で知的所有権委員会と電子書籍委員会の合同委員会。アマゾンの担当者に来ていただいてキンドルの説明を聞く。よくわかった。いったん自宅に帰ってから徒歩で渋谷へ。3月に解散したわたしのNPOのスタッフの打ち上げ。諸手続がようやく終了し、月末に最後の支払いを終えて、残金を文藝家協会にお返しする。とにかく終わった。このNPOでは充実した仕事ができたしスタッフの皆さんとの友情が生まれた。渋谷のフランス料理。今回はスタッフの招待。このメンバーとは今後もつきあっていきたい。

05/27
M大学。先週は会議のあとで大学に向かった。大学だけの日は楽だ。本日は小説の書き方の基本中の基本を語る。毎年同じことをしゃべっているのだが、そのつど語る内容が微妙に違うから面白い。しゃべる度に新たな発見がある。暑い。今年は天候が不順だ。一昨日の会議中にポメラで叩いた内容をチェック。8章はうまく終わっている。ただ最後にミニヨンが出てくるところが唐突。これまでのミニヨンの描写をチェックして伏線を張らなければならない。引き続き9章の冒頭。ペンクラブの総会の最中に打ち続けたのだが、大丈夫か。少しトーンが変わっているのだが、それもいいのではないかと思う。8章の終わりで900枚になっているので、9章の終わりで1000枚になる。短い終章をつけるくらいで終わりたい。

05/28
日本点字図書館。評議員会、1時間の休みのあと理事会。理事会は議長をつとめたのだが、評議員会と休み時間はポメラを叩いた。これは9章の半ばくらいのところ。その前に、ザリョージェフという人物と白痴の対話が入る。ここはスペインからの帰りの飛行機の中で紙のメモ帳に書いたところ。ポメラももっていたが離陸直前の段階から書き始めたので、電子機器は咎められるかと思い紙のメモ帳に書いた。『罪と罰』の時は紙のメモ帳を駆使したので問題はないが、パソコンに入力する時はすべて打ち直しになるのでやはりポメラは便利だ。

05/29
土曜日。妻が四日市に出かけた。5人目の孫(次男の次男)を見に行った。こちらは明日行く。渋谷まで散歩。明日の新幹線の切符を買う。それから原宿のキディランドへ。孫への土産。キディランドへ行くのは何年ぶりか。次男が私立中学に合格して、ホッケーゲームを買ってやった。それ以来ではないか。その中学生がいまや二人の子どもの親になった。うーん。キディランドは賑わっていたがもはやオモチャ屋ではないみたい。地下室だけが少しオモチャ屋の感じになっているだけで、全体はファッショングッズの店になっている。

05/30
日曜日。新幹線で名古屋。近鉄で四日市。生まれて7日目の孫を見る。5人目の孫である。2歳になった4人目の孫に昨日キディランドで買ったプレゼントを渡す。いっしょに遊ぶ。疲れる。夕食後、妻と東京に戻る。長い一日であった。

05/31
またウィークデーが始まった。先週は役所の会議が1つもなかった。今週は目白押しだ。本日は電子出版協会の人と経済産業省に出向いて打ち合わせ。ここのセキュリティーは何かへん。出る時、ICカードをケースから外して機械の中に入れて出る。どういう意味があるんだろう。わずからタイムラグで斜め向かいの文化庁へ。著作権の小会議。まあ楽しく議論できた。今週はとにかく多忙だが、自分の仕事を前進させないといけない。月末だ。6月末が完成目標なので何とか達成させたい。


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