「新釈白痴」創作ノート4

2010年4月

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04/01
4月になった。この最初の一日は大変に忙しかった。まず文藝家協会でわたしが理事長をしていたNPO日本文藝著作権情報センターの解散に伴う手続きを書士の先生にお願いして、必要な書類を揃えた。それから文藝家協会の公益法人化委員会。いったん自宅に帰って着替えてから徒歩で渋谷の桜台へ。イタリア料理の店で、講談社の人々とさし絵の佐竹美保さんと、『青い目の王子』の打ち上げ。この店はなかなかよい店であって、アンチパストを一品ずつ出す。時間はかかるのだが、全員酒が強く話をうまいので、時のたつのを忘れた。『青い目』は自分の自信作であるし、さし絵も最高のものであったので、この打ち上げは充実感に満ちていた。さて次の作品と言われると、こちらとしてはやや逡巡があるのだが、プランはできている。いま書いている『白痴』が終わった時のこちらの精神状態がどうなっているかわからないが、『罪と罰』の直後に『青い目』を書いたように、ロシアの勢いのままインドに突入するということが体調などから可能なら、ベストの作品がもう一つ生まれるのではないかという期待がある。長い一日であったが、夜中は『白痴』。こちらもいま最高の山場を書いている。自分ではものすごいものを書いているという実感がある。去年は自分の人生の中で最高のシーズンであったと思っているのだが、今年に入っても充実した日々が続いている。

04/02
年度の初めというのは世の中がお正月みたいになっているのかとても静かだ。役所関係の仕事がないということで、自分の仕事に集中できる。妻が実家に帰ったのでしばらく一人になる。一人でもコンビニがあれば生きていける。妻がいないと深みに落ちていくような感じがする。夜中、ふだんは行かない家の一角、たとえば客を泊める二階の和室の窓から外を見ると、見たこともないような風景が見える。その胸の驚きみたいなものが、推進力になる。妻がいる時は、こういう不審な行動はとれない。いま書いている『白痴』というものが何なのか、自分でもわからない。自分が一番書きたいキャラクターが、たまたまドストエフスキーのノートの中にあったということなのだが、もしかしたらその先にあるのが、昔書いた『地に火を放つ者』なのかもしれない。だとすれば『白痴』をがんばって書いても、20年前の自分の作品を超えることはできないのかもしれないが、そんなことはないだろう。この作品には血と肉が描かれている。ドストエフスキーが書けなかったものを書いているのだというスリルを感じながら、これからの三ヶ月を楽しみたいと思う。

04/03
土曜日。高校野球を見ながら仕事。何となく沖縄の興南を応援していたがエラーが続出。だめかと思ったら日大三高にもエラーが出て結局、延長で沖縄の勝ち。チャンネルをきりかえると巨人が負けていたが、散歩から帰ってみると逆転していた。あとはネットで見守る。妻がいないので一人で自由に生きている。本日は蛇崩川を散歩。日本はいいなあとしみじみ思う。世田谷公園は花見客で上野みたいな盛り上がりだった。

04/04
日曜日。北沢川を散歩。淡島交差点から環七まで切れ目なく宴会をやっていた。ご近所の人というのではなく、学生や職場の同僚などが、日曜日にわざわざ集まってきたようで、日本人のお花見へのこだわりに感動する。こちらは妻がいないので、一人きりでひたすら仕事。はかどる。妻は大阪の実家から四日市の次男のところに回ったらしい。孫が駅まで迎えに来たというメールが届いた。う、うらやましいぞっ! (>_<) 

04/05
月曜日。ウィークデーが始まったが、世の中は年度替わりでまだ動き始めていないのか、公用はない。気になることが出てきた。冒頭の列車のシーンに出てきたレーベジェフがしばらく出てきていない。このキャラクターは狂言回しのつもりで設定したのにあまり活躍していない。最初から読み返して、出番を調整したいし、すでに半分以上書いたこの時点で、これまでの手探りで書いた部分のつじつまを合わせておいた方がいいと思った。しかし数百枚あるので一週間くらいかかるのではないかとも思うが、読み返しているうちに、エンディングまでに書くべきことが項目別に見えてくるのではないかと思う。するといま書いているところまで読み返しただけで、エンディングまでの道筋が見えるはずだ。

04/06
最初から読み返す作業。1章はほぼパーフェクトだ。まだ主人公の白痴が出てこないのだが、それでも緊迫感のある展開になっている。1章では原典の最大の山場、イッポリートと白痴の対立のシーンを、わたしの作品の狂言回し役のイッポリートと、白痴の弟の対決シーンに置き換えて展開している。原典の最大の山場を1章に置くことによって、この評論(小説のスタイルをとった)は原典よりも先に進んでいくのだということを読者に提示している。わたしの期待する読者像というのは、この1章の最後のところまで読むと、もはや眠ることもできずに最後まで読み切ってしまうという、それくらいに《点火》するような仕掛けがここに設定されていることになる。引き続き2章を読み返している。ここには白痴とともにミニヨン、および二人の女主人公が登場する。ミニヨンというのは原典には登場しないが、創作ノートにはそもそものプランの主役として書かれている人物だ。つまり原典よりも話が複雑になっている。わあ、面白い小説だなあ、という感じが読者に伝わればと思う。このペースで毎日1章ずつチェックしていけば、週末には元に戻れるのだが、明日から毎日、公用がある。明日はM大学の懇親会なので、酒を飲み過ぎないようにしたい。それと妻が帰ってくる。集中力を持続させたい。全然関係がないことだが、パソコンで民放ラジオが聞けるようになった。いつからこんなことが可能になったのか。わたしがスペインに行っている間ではないか。これはたいへんに便利だ。テレビを見ないので仕事がはかどる。

04/07
武蔵野大学の懇親会。昨年からこの会に参加しているのだが、この前はご馳走がいっぱいあったのに、今回はいやにしょぼい。早稲田の文芸の懇親会よりもしょぼい感じで、しかもジュースとウーロン茶しかない。これで乾杯するのかと思ったら、誰かの差し入れの越乃寒梅を発見。このビンのそばにはりついて飲む。わたしと、早稲田からの仲間の評論担当の先生と二人で、半分以上は飲んだ気がする。さて、妻が疲れ果てて帰ってきた。四日市の次男のところに寄って、孫を保育所につれていったりした。スペインでの疲れがとれていないのに、また孫の世話ということで、疲れがたまっているようだ。話を聞いただけでこちらも疲れがぶりかえした。会議中のポメラで少し前進。さて、今シーズンもM大学の講義が始まる。新しい学生に会えるのが楽しみ。

04/08
ペンクラブ言論表現委員会。この会はなぜかとても楽しい会になっている。笑いながら、ポメラでしっかり仕事もした。

04/09
文化庁著作権分科会小委員会。三田会議所。文化庁の会議はよくここを利用する。三田会議所といっても三田や田町ではなく、最寄りの駅は麻布十番。いつも行きは妻に車で送ってもらう。会議はのんびりしている。とくに論争することもない。しかしこののんびりしたムードのままでいいのかという危機感を感じている。もっと深く議論すべきことがあるような気がする。

04/10
土曜日。北沢川を散歩。まだ桜が咲いている。今年は寒いので咲いた桜がなかなか散らない。夕方、もう一度、妻といっしょに散歩。下北沢で生ビールを飲んで帰る。外食というのはいいものだ。スペインの人は外食することが多い。安いレストランがあるからだが、下北沢あたりには安い店がある。日本もデフレで住みやすい国になりつつある。

04/11
日曜日。まだ花見をやっている人々がいる。風が強くすごい花吹雪。初夏のような気温。季節の変わり目を感じた。「白痴」は最初から読み返す作業を続けている。ゴールまでの手順が見えてきたこの段階で登場人物のキャラクターをチェックする。3章までのチェックを終えたが、1つの章が約100枚なので、ここまで300枚。本1冊ぶんくらいの分量だが、これで物語の第1日が終わる。ものすごく長い1日だ。それだけでもこの作品の異様さがわかるだろう。すごいものを書いているなという実感があるのだが、誰が読むのだろうという不安もある。ドストエフスキー愛好家にとっては読み応えのあるドストエフスキー論と感じられるだろうが、『白痴』を読もうとして途中で挫折した人にぜひ読んでいただきたい。

04/12
書籍検索制度協議会。9時からの会議。朝6時に就寝するわたしにとっては驚異的なスケジュール。マスターズの中継を断念して4時半に寝て7時半に起きる。まだマスターズの中継をやっていたので最後のところが見られた。妻の運転で丸ノ内の森濱田法律事務所へ。この協議会はこれで最終回。これがスタートした昨年秋の段階で、この問題(国会図書館のデータ配信)について考えているのはわれわれだけだったが、その後の半年間に、経済産業省、総務省、文部科学省などが意欲的に取り組むようになって、会議がやたらと増えた。全部で4つの協議会やワーキングチームができた。そのすべてにわたしは参加することになっているのでスケジュールが満杯になっている。とにかく1つが最終回になるのはまことにめでたい。この協議会で結論が出たわけではないのだが、われわれが話し合いを始めたということが契機となって他の4つの協議会が生まれたのだから、そのことが最大の成果だといえる。
激しい風雨。午後は自宅で日経新聞のインタビュー。テーマはエコロジー。専門外だが、専門外のことについてやたらと見識をもっているのがわたしの特技。まあ、楽しく語ることができた。朝7時半に起きても、1日のスケジュールは変わらない。夕方から明け方までひたすら仕事。「黙示録」について言及しなければならないので4章の半ばに追加。ただしこの場面は主人公の白痴がいないので、べつの場面でもう一度、主人公が「黙示録」に言及しなければならない。もはや作品は仕上げの作業になっているので緊張する。必要なエピソードや言及をもれなくちりばめていかなければならない。疲れるけれども楽しい作業だ。

04/13
本日は1時からの会議。文藝家協会で新しくできた電子書籍に関する委員会と従来からの知的所有権委員会の合同の会議。ネットに詳しい新戦力を入れて少し視野が広くなった感じがする。

04/14
本日は公用はないが役所とのメールのやりとりで午後がつぶれた。「白痴」のチェックは5章に入っている。最大の山場だ。スペインで書いた部分でうまくできているか心配だが、いい感じで進行している。

04/15
M大学今シーズン第一回の授業。新しい学生との出会い。教室がぎっしり満員。まるでW大学みたいだ。これだけ人数がいるとレポートを採点簿につけるだけでも手間がかかる。2時間の授業を終えて外に出るとまだ空が明るい。これはありがたい。外が暗いと気分が重くなる。これから夏に向かってどんどん明るくなる。武藏境から往復歩く。ここの駅は線路は高架になったものの、駅舎はもとのまま。早く改善してほしい。

04/16
文藝家協会理事会。寒い。都内のどこかではみぞれが降っているらしい。「星の王子さま」の10版届く。サン=テグジュペリ先生、お世話になってます。

04/17
土曜日。まだ寒い。冒頭からのチェックを続けてきた『新釈白痴』。ようやくチェックを終えた。ここから先はエンディングを目指して未知の領域に踏み出すことになるが、ポメラを活用してかなり先の方までメモもできているし、スペインからの帰りの飛行機の、離陸直前でポメラが仕えなかった時に書いた紙のメモ帳にも、さらにずっと先の方のメモがまだ残っている。そこまで進めばゴール直前といった感じになるはずだ。

04/18
日曜日。少し温かくなった。のどかな休日。『白痴』は新たな領域に進んでいる。しかし前半部分を書いている時のような手探りの状態ではない。ここまでを書いてきてかなりの山場となるシーンを書いてきたし、これから先はゆっくりと収束に向かう過程だが、エンディングへの道筋も見えている。最後に殺人事件が起こるところは原典を踏襲しているので、その方向に向かっていけばおのずと場面は盛り上がっていく。原典ではエンディングで殺人が唐突に起こるのだが、わたしの作品は伏線を置いているので必然性が感じられるだろう。この作品はドストエフスキー批判であり、ドストエフスキーを超えようという意図のものに書かれているので、完成度が高くないといけない。本日も北沢川を散歩。歩いている途中ですごいことを思いついた。アグライア(原典ではアグラーヤ)の長いモノローグを置く。そんなことは散歩に出る前には考えてもいなかったのだが、散歩の間に内容がほぼ完成した形で思い浮かんだし、そのモノローグなければ作品そのものが成立しないということにも気づいた。『青い目の王子』の母親の物語も北沢川緑道で思いついたのだが、散歩はアイデアの宝庫だ。
テレビで立松和平の追悼番組を見た。よく出来た構成だった。福島泰樹や重松清が出てきた。重松が『早稲田文学』の学生編集者をしていた頃のことを思い出した。あの頃は中上健次さんもいた。いろんなことがあって、長い年月がたったと思った。が、とにかくいまは『白痴』を先に進めなければならない。一つ一つ、やれることをやっていくしかないのだ。いま自分がなぜ『白痴』を書いたいるのかわからない。いや、わからないという言い方は正確ではない。20歳くらいの頃、小林秀雄の『白痴について』を読み、河出版の全集で『白痴』の創作ノートを読み、完成された作品とはまったく別のプランがノートに記されていることを知った。この「書かれざる物語」の方が面白いのではないかと思い、いつかこれをもとに作品を書けないかと考えてみたが、それは夢ともいえない思いつきにすぎなかった。その夢のまた夢のような作品をいま書いているのだ。だからモチベーションははっきりしている。「わからない」と思わずくちばしってしまったのは、読者が少ないだろう、話題にもならないだろう、版元に迷惑をかけるのではないかといった配慮が働いたからで、そんなことはある意味ではどうでもいいことだ。書きたいから書くのであり、それをサポートしてくれる版元に恵まれているという幸福な状況にあることを、何ものかに感謝したい。

04/19
ウィークデーが始まったが本日は公用は休み。自分の仕事に集中する。

04/20
三省デジ懇の利活用ワーキングチーム。トップバッターでプレゼンテーションすることになっていたので一枚物のレジメを用意したのだが、与えられた時間が短いので半分のところで時間が来てしまった。まあ、これから事あるごとに同じ提案をしていくことになるので、とりあえずこの一枚物のレジメがビラのような効果をもつだろう。同席しているメーカーやネット業者と、文学との間には、住む世界が違うというくらいの隔たりがある。これは短期間で埋めるのは難しいが、こちらは直接、国に対して問題提起しているので、そちらに情報が届けばいいと考えている。

04/21
《三省デジ懇》という言葉を辞書に登録した。今日は2つあるワーキングチームのうちのもう1つの方。技術関係の会議。わたしは作家としてはネットについてある程度の知識はもっていると自負しているが、今日の会議は慣れない業界タームが多く、外国にいるような感じ。たとえばPGCとUGCなどという用語は、とっさには何のことかわからない。聞いているうちに文脈から「プロによる商品」「ど素人のたわごと」ということだとわかったが、ならばそう言ってほしい。ネット上にはチャットやブログやツイッターのように、単なる情報発信が多い。わたしはプロの作家だが、いまわたしが書いているこの文章は無料の情報発信だ。しかしこれから「電子書籍」として配信されるコンテンツは、元手がかかっている商品ということになる。こういうふうに説明すればわかりやすいのだが、ネット業界では独特の用語ができてしまっているので、これを用いた方が話は早いのだが、それでは業界外の人と交流するためには通訳が必要だ。わたしはたとえばOCNと言わずに解析ソフトといった言い方をする。PDFと言わずに閲覧ソフトなどと言う。しかしこの会議では、専門用語で話さないとついていけないようだ。うーん、疲れる。昨日も今日も、朝の会議。自宅で昼食のあと、ふだんと同じように自分の仕事ができるのがありがたい。

04/22
M大学。2回目。前回よりも少し減ったがほぼ満員。W大学では2回目は半分くらいに減ってしまうのだが、この大学の学生は熱心だ。冷たい雨。いつまでも春にならない。『白痴』は将軍が突然に戻ってくるところが終わった。将軍は脇役にすぎないが、ストーリーの中心にいる。この人物が破産しそうになっているところがこの作品のストーリーの推進力になっている。とても明るいキャラクター。ドストエフスキーのノートにはそんなことは書かれていないのだが、何となくそんな気がした。ミニヨンとは血のつながりがない。そうでないとノートに書かれているような、将軍がミニヨンに迫っていってひっかかれるといったことは起こりえない。将軍のシーンでは不在だった白痴が久しぶりに現れる。主人公なのでいないと寂しい。

04/23
本日は公用なし。小雨をついて短い散歩。

04/24
土曜日。コーラスの練習。飲み会。

04/25
日曜日。少し温かくなったか。散歩の途中、またすごいアイデアがひらめいた。イッポリートの結婚式をするというのはどうか。「余命半年の花婿」といった感じになるが、ただ寂しく死んでいくだけではあまりにも気の毒ではないか。父親が登場するのは将軍家ではなく、アナスタシアの新邸ということにしよう。これも散歩の途中で思いついた。散歩はアイデアの宝庫だ。

04/26
自宅にて取材を受ける。PR誌のインタビュー。自分のことを語るだけでいいので楽な仕事ではあるが、頭の中がドストエフスキーになっている時に、急に自分のことを語るというのも奇妙な感じだが、まあ、私小説やエッセーの類もずいぶん書いてきたので、自分にまつわる物語もできている。高校の時に引きこもりになったとか、そういう「伝説」みたいなものだ。このフィクションではなく事実ではあるのだが、その時の心境などはもう忘れてしまっている。インタビュアーやカメラマンなど五人もいたので、聞いてくれる人がたくさんいるとこちらも元気が出ていろんなことを語った。

04/27
三省デジ懇の技術WT。総務省の建物に入るのは2度目。午前中の会議は妻に車で送ってもらうのだが、今日は夕方5時からの会議なので地下鉄で行く。ここはゲートがあって、ICカードみたいなものを首からぶらさげてゲートを通ることになる。30人くらいの会議。どういうメンバーなんだ。これも一期一会と思って、出席者の顔をじっくりと眺める。それなりの見識をもっている人なのだろうとは思うのだが、出版関係の数人を除いては、自分とは縁のなさそうな人だ。ネットの普及によって、文学とネット業者がクロスオーバーすることになる。たいへんな時代になったものだ。明日は仕事場に移動するので必要なものをバッグにつめる。スペインに行くわけではないので、それほどの緊張感はないが、手元にないと困るものがいくつかある。パソコン、手書きの当用日記。『白痴』に関する資料。仕事場のカギ。車のカードキー。ケータイ、およぴ充電器。ポメラ、およびパソコンにつなぐヒモ。常用の薬。スペインと違って、スーパーもコンビニも近くにあるから、そこで売っているものなら、忘れても買えばいい。そうだ。今日は『なりひらの恋』の見本が届いた。思わず手にとってみたくなるような美しい装丁。パラパラとページをくってみると、シンプルな文章が目に入る。これは教養に満ちたライトノベルです。文学の新しいジャンルでする。その内容と装丁がぴったり一致しているので、売れそうな予感がする。

04/28
仕事場に移動。本日は移動日なので仕事は1ページほど。いよいよ白痴の妻が死ぬところまで来た。わたしの書いている『白痴』は、ドストエフスキーの本編よりも動きが激しい。密度が高い。ここまでにも山場といえるシーンがいくつもあるが、ここからエンディングに向けて、さらに山を高くしていかないといけない。いよいよ書き手としても緊張感の高まるところだ。

04/29
昨日は早めに酒を飲んで寝た。明け方、ものすごい雷雨。雨の音で寝られないわど。三宿の家はりっぱな家なので雨の音など聞こえないが、ここは木造で天井がないので雨の音がもろに聞こえる。食料の調達のために、三ヶ日農協、鷲津のイオン、遠鉄ストアと回る。夕方、散歩。ここを散歩するのは正月以来。久しぶりなので目に映る風景が新鮮だ。

04/30
志都呂イオン。このあたり随一のショッピングモール。妻が買い物している間にこちらはいつものように「銀だこ」の前のテーブルでポメラを叩く。重要な部分が書けた。こうやってポメラでかなり先の部分の会話を入力しておく。少し先の見通しが立っていると、細部を煮詰めていきやすい。4月も月末になった。半年のスケジュールを立てているので全体の3分の2が経過したわけだが、実際の作業もちょうどそれくらいだ。それでは完成してからの見直しの期間がとれていないのだが、ここまでのところを何回も見直してきたので、キーの打ち間違い程度の修正で済むと楽観している。メモはかなり先の方までできているので、いいペースで来ていると思う。


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