「新釈白痴」創作ノート6

2010年6月

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06/01
今週は3日連続の会議がある。本日はその2日目。三省デジ懇の利活用WT。学術センターという会場は初体験。時々使用される如水会館の隣。りっぱな建物だけど、どうも独立行政法人みたいなものの施設のようだ。これって仕分けの対象に入っているのでは。とにかく必要な発言をした。このメンバーだとわたしが言わなければ誰も言わないようなことがいくつかあるので発言しないわけにはいかない。午前中の会議なので昼には自宅に戻る。午後は自分の仕事ができる。夜中までがんばる。

06/02
3日連続の3日目の会議。技術WT。総務省。この建物はこのWTが始まって通うようになった。割りと入りやすい。文化庁は開催通知のプリントが必要。昨日の学術センターは身分証明書が必要。総務省は登録してあれば身分証があればオーケー。で、ICタグをくれる。一昨日の経済産業省もタグをくれるのだが、帰る時に中のカードだけ出して、ホルダーは箱に、カードは機械の中に入れないといけない。総務省は出口でもカードでタッチしてから、箱に入れればいいので、わずかな差だが楽。三田会議所は会議に出ると口頭で言うだけでいい。一番楽なのは半蔵門グランドアークとか、霞ヶ関ビルの東海大学、虎ノ門パストラルなどの貸し会場の場合。こういうところは誰何されることがない。わたしの場合、早稲田の客員教授(専任扱い)の時は顔写真つきの身分証をもっていたのだが、いまは顔写真が必要な場合は、文藝家協会の会員証または武蔵野大学の職員証(武蔵野女子学院と書いてあるので少しはずかしい)と、運転免許証を同時に見せることになる。作家というのは永遠のフリーターなので、運転免許をもっていてよかったと思う。教え子の学生たちにも免許(原付でいい)をとるように勧めている。

6月/03
木曜はM大学の出講日。3日連続の会議でやや疲れ気味だが、大学の日になるとほっとする。会議というのは相手のある議論であるし、流れの中で発言の機会をうかがうためには、発言者の言うことをちゃんと聞いていないといけない。反論しなければならないこともあるし、逆に反論されたらさらに反論しなければならない。しゃべっている時間を考えると、90分授業が2コマの大学の方が圧倒的に疲れるはずだが、大学では一人でしゃべっていればいいし、学生たちはちゃんと聞いてくれるので、気分的にはまったく疲れない。爽やかな日で武藏境からの往復の散歩が楽しい。

06/04
文藝家協会でデジタル教科書(教師版)の説明を聞く。便利なものだが、便利すぎて子どもをスポイルする可能性もある。IT産業の育成という大きな波に乗って学校に電子黒板が置かれると、その黒板を利用しないといけなくなる。そういう流れの中でより便利なものが開発されるのだろう。本日はもう1つ会議がある。移動の時間がないのであらかじめ遅参するとは報告してある。タクシーに乗るのは嫌いなので電車で行く。永田町から麻布十番へ。いつも行く三田会議所は二の橋を左折するのだが、本日は右折。行ったことのない道を行くのは楽しい。有栖川公園内にある都立中央図書館。図書館の著作者の協議会。途中から参加したが、ちょうど発言せねばならぬテーマをやっていたので、それまでの経緯がわからないまま発言。必要なことは問題提起ができ、解決したのでよかった。この二ヵ月でデジタル化についての議論が急速に深まったのでこの協議会の進路も少し変わることになるだろう。1つの問題が解決してもすぐにまた別の問題が起こる。賽の河原の石積みのごとし。

06/05
土曜日。今週は3日連続の会議のあと大学、それから文藝家協会に図書館と、公用が連日続いたので、週末になるとほっとする。渋谷まで散歩。来週の名古屋での講演のための新幹線の切符を買う。渋谷駅の自動販売機で買うのだが、クレジットカードを使えるので、お金を入れなくていい。これはありがたい。銀行にあるお金は自分のお金という感じがしない。手持ちの現金が減らないというのは、トクをした気分だ。妻が風で倒れているので、東横のれん街で弁当を買って帰る。夜中に仕事。会議中にポメラで書いた部分の修正が終わる。ゴールが見えている感じもするのだがまだ遠い。一歩ずつ近づいていくしかない。

06/06
日曜日。久しぶりに北沢川を散歩。ウィークデーに休みがなく、先週の週末は日曜日に四日市に行き、その前日は切符を買いに渋谷に行ったので、考えてみると北沢川の散歩は実に久しぶりだ。世の中は総理大臣が代わって民主党の人気はV字回復ということらしいが、三省デジ懇というものに関わっている身としては、大臣の大幅な入れ替えがないので安心した。三省デジ懇は三省の副大臣が連合で推進している。トップが代わるとプロジェクトが瓦解するおそれがある。民主党の新たな布陣を見ると松下政経塾のメンバーが増えた。わたしは松下出身の政治家はみんなパナソニックの回し者だと思っている。つまりIT産業推進派だ。学校への電子黒板の普及を仕分けした蓮舫さんも、デジタル教科書(教師版)を見れば考えが変わるのではないか。

06/07
文藝家協会理事会。理事長の交替。公益法人化の実務を担当されていた篠さんが理事長になった。適任だと思う。さて、自分の仕事。ミニヨンという登場人物がいる。3人のヒロインの内、最も重要な人物といっていいのだが、他のヒロインを追いかけているうちに影がうすくなっている。最初から読み返して、ミニヨンのイメージを増強させたい。こういう時にパソコンは便利だ。「ミニヨン」で検索をかければ、ミニヨンの登場シーンをくまなくチェックできる。いまだに手で書いている作家がいるようだが信じられない。作品を練り上げるということをそういう作家はやっていないのではないか。

06/08
三省デジ懇の親会議。この会議は2つのWTで実務的なことを検討するのが主題で、親会議は結論だを受け取ればいいのだが、2つのWTと親会議のすべてに出席しているわたしとしては、その特権を活かして、WTの報告書では総花的に書かれている項目のうち何が最重要かを大声で主張しなければならない。で、報告が終わると最初に手を挙げて、重要なポイントを指摘した。最後にもう一度、締めの発言ができたので、こちらの意図は充分に伝わったと思う。会のあとたまたま隣の席になった某出版社の副社長をつかまえてこちらの要望を伝えることができたいので、有意義な会となった。さらに某メーカーの副社長として出席していた高校の同級生とも旧交を温めることができた。同窓会ではよく会う人だが、もとは官僚だった人で、仕事の席で会うことになるとはまったく意外であった。
終わってからメンデルスゾーン協会の運営委員会へ。新橋のサロンに協会事務所を置いているのだが、いつもは虎ノ門から行く。三省デジ懇はホテルオークラだったので、歩いた方が早いのではと思って行ってみたら、思いがけないほどの短距離で到達できた。ただいつもとはまったく反対の方向からサロンに向かうことになるので、街の眺めが違って見えた。知らない道を歩くのは楽しい。
さて、本日から妻は四日市。5番目の孫が生まれたので、4番目の孫の世話のために派遣されたのだ。3番目の孫が生まれた時も妻は1カ月くらいスペインにいた。2番目の孫の時はまだスペインの嫁さんのお母さんが元気だったので任せきりだった。今回は四日市だから日帰りも可能だ。実際にわたしは先月の末に日帰りで孫を見てきた。その後は、嫁さんのお母さん、妹さんが交替で行ってくれて、3週間目が妻の担当ということだが、次男は3週間に1度、徹夜の残業が続く作業があるとのことで、今後も時々は出向くことになるかもしれない。わたしとしては、1人でも大きな支障はない。午前中の会議に妻の運転で送ってもらうことができないのだが、幸い今週は奇跡的に午前中の会議がない。で、自宅に帰ると1人きり。とにかく仕事に集中したい。

06/09
寺田博さんを偲ぶ会。寺田博は『文芸』『作品』『海燕』の編集長を務めた偉大な編集者。戦後派から、吉本ばなな、角田光代まで、長大な歴史の中で新人作家を育てた伝説の人物でもある。わたしの『僕って何』が芥川賞になった時の『文芸』編集長でもある。ただしわたしの担当は、寺田さんの次に編集長になった金田太郎さんだった。学生時代、持ち込み原稿の大半がボツになったのだが、金田太郎の関門をくぐっても次に寺田博の関門があった。だからあまりいい印象はない。しかしずっとあとになって文壇バーで出会うと、わたしのことを高く評価してくれた。カラオケで歌の勝負をやったこともある。個人的にとても懐かしい人だ。寺田博の最大の功績は中上健次に『枯木灘』を書かせたことではないかと思う。中上さんも金田太郎もすでに亡い。寺田博が亡くなったことで、何か大きなものが失われたような気もするが、いま書いている『新釈白痴』の担当編集者T氏は、寺田、金田のあとを受けて『文芸』編集長になった人で、脈々と何かが伝えられているのだ。本日の会では実に懐かしい人々に会った。まだ生きていたのかというような人々だ。わたしはもう文壇などはどうでもよくなっているのだが、自分を育ててくれた場所などで、懐かしいと思い、それなりの恩義は感じている。しかしまあ、一夕のことで、自分の仕事を先に進めるしかない。昨日の協議会では、電子書籍という黒船に対抗するための最高レベルの人々と議論をした。いわば「いま」という時代を支えている人々だ。その翌日の本日は、はるかな過去の人々と語り合った。まるでタイムマシンだね。

06/10
木曜日はM大学。少しリラックスした。しかしもう10日だ。まだゴールは少し先だ。がんばろう。武藏境から大学に向かう25分ほどの散歩の途中、ゴールまでの道筋が見えてきた。これでゴールにたどりつけそうだが、時間がない。べつにシビアな締切に追われているわけではないが、自分で設定した大家スケジュールは守りたい。そうでないと次の仕事に取りかかれない。

06/11
Wカップが始まる。で、自分なりに予想をしてみた。わたしは孫がいるスペインを応援するので、スペインは全勝するものと考える。問題なのはG組だね。ブラジルとポルトガル。今年のブラジルは守備的なのでポルトガルと引き分ける可能性がある。すると得失点差ではポルトガルが上回るのではないか。そうなると恐ろしいことにトーナメントの初戦でスペイン対ブラジルになってしまう。準々決勝の組み合わせと勝者を記すと、フランス対イングランドはイングランドの勝ち、オランダ対ポロトガルはポルトガルの勝ち、アルゼンチン対ドイツはアルゼンチンの勝ち、イタリア対スペインはスペインの勝ち、決勝はイングランド対スペインでスペインの勝ち、三位決定戦はポルトガル対アルゼンチンでポルトガルの勝ち。以上。日本はカメルーンと引き分け、オランダに負け、デンマークに勝つ。これで勝ち点は4だが、カメルーンがデンマークに負けるか引き分けで、日本は2位通過可能。デンマークに勝つというのが絶対条件だが、カメルーンがデンマークに勝つと、ほぼ絶望だろう。カメルーンと引き分けるというのも絶対条件。ここで負けると即敗退と見ていい。つまりカメルーン戦はトーナメントの準々決勝のようなもので、負ければ敗退、勝てば準決勝(オランダ戦)に進み、そこで負けても3位決定戦(デンマーク戦)に勝てば先に進める。やっぱり初戦のカメルーン戦だね。フォワードなしで闘った練習試合の布陣に賛成。ミッドフィルダーばっかりで全員守備、全員攻撃でがんばるしかない。カメルーンが先に点を入れて引き気味になったら森本を入れればいい。

06/12
土曜日だが仕事。名古屋で講演。切符を買ってあるのでその時刻に東京駅へ。寝不足でぼうっとしている。昨日の南アはメキシコ相手に善戦した。フランスはぼうっとしていた。同じ引き分けの試合でも密度が違う。名古屋。駅から徒歩圏内のビル。少し早めに着いてポメラを叩く。1時間の講演のあと、夜の宴会までの間もポメラを叩く。一日ぶんの仕事ができた。宴会もさまざまな人と話ができて楽しかった。

06/13
日曜日。今週は土曜に講演が入ったので休みは本日だけ。雨が降りそうなので短い散歩をしただけでひたすら仕事。もはやエンディングに向けてのエピローグ的な展開になっているのだが、破局に向かう白痴とラゴージンの対話が残っている。ここから一気にカタストロフに向かうので、その前に美しいシーンを置きたい。書き始めた時は予想もしなかったのだが、ここに離宮での結婚式を置く。小説としてはエンディングの直前に素晴らしいシーンを描くことができる。とにかく美しく書きたい。
さて、Wカップはかなり試合が進んだ。ここまではほぼ予想どおりだ。韓国の勝利は想定していた。意外だったのは初日が2試合とも引き分けだったこと。すべてのチームが慎重になっている。スロベニアの勝利は驚き。ガーナの勝利は相手の反則によるラッキーなPK。しかし結果としては大きな番狂わせといったものはない。強いチームは強い勝ち方をする。ここまでで強いと感じたのはアルゼンチンとイングランド。イングランドはキーパーの凡ミスで引き分けたが、勝って当然の試合だった。
いよいよ明日は日本対カメルーンだが、ここは一か八かで勝ちに行く試合だろう。わたしの当初の予想では引き分けなのだが、それではカメルーンが次にデンマークに勝ってしまうと、日本がデンマークに勝っても得失点差になる。カメルーンの3戦目はオランダが相手。2勝して勝ち抜けが決まったオランダが主力を休ませると引き分ける可能性もあるので、カメルーンが断然有利になる。もう一つ考えるべきは2位で勝ち抜いても初戦はイタリアになるということ。ここは1位で勝ち抜けして、イタリア以外の3チーム(パラグァイ・ニュージーランド・スロバキア)と当たりたい。まあ、そこで勝ったとしても、その次はブラジルかポルトガルが相手。また2位抜けで奇跡的にイタリアに勝ったとしても相手はスペイン。どちらにしろ4強というのは絶対無理。むしろ韓国に期待したい。すでに1勝しているので2位抜けは間違いない。すると初戦は覇気のないフランスでこれは勝てる。その次の相手はイングランドだが、米国と引き分けたイングランドならPK戦に持ち込める。4強も夢ではない。
わたしが本当に応援しているスペインは、トーナメントの初戦が事実上の決勝戦になるだろう。順当ならポルトガルだが、防御重視のブラジルがリーグで2位になる可能性もあるからだ。このポルトガルとブラジルとスペインが、今回のビッグ3ではないだろうか。
と思っていたら、何だかドイツが強そうだ。日本が歯が立たなかったオーストラリアに対して、朝の5時現在、4対0だ。ドイツは準々決勝でアルゼンチン、準決勝でスペインに当たる。逆に言えば反対側のゾーンは楽勝だ。ポルトガルとブラジルは1位で勝ち抜けるべきだし、韓国は2位通過でいい。日本はできれば1位通過が望ましいのだが……。本気でベスト4を狙うのなら、1位通過でトーナメントも勝ち抜いて、準決勝で韓国と闘いたい。ということで、カメルーン戦は引き分けではなく、勝たないといけない。玉砕してもいいから得点を取りに行くべきだ。ところでこのドイツ対オーストラリアはテレビでは放送していない。ケーブルテレビではやっているのだろうが。仕方がないのでネットの文字による実況を見ているのだが、英語だから何だかよくわからない。ネットの野球中継は野球ゲーム盤みたいなものに選手の動きが表示されてわかりやすのだけれど。何とかならんか。いま調べたらサンスポコムというところで日本語の中継をやっていた。これを見ているうちに試合が終わった。4対0のまま。こんな得点差は初めて。ドイツは強いぞ。オーストラリアはどうしたの。こんなチームに負け続ける日本はとても弱い。カメルーンに勝つのは難しいか……と弱きになってしまう。さあ、寝よう。それにしても「はやぶさ」の帰還はすごい。一時は行方不明になっていたし、エンジンは停止したし、太陽電池も機能しなくなったし、それでも奇蹟の生還を果たしたのだからすごい。カプセルもヘリコプターから確認らしい。小惑星の岩石が入っているらしいが、カプセルを開けて何も入っていないということも考えられる。それってとてもがっかりする。何か入っていてほしいね。
というようなことを書いているうちに、9章が終わった。次は終章。ここからは一気にエンディングに向かう。ゴールがはっきり見えてきた。

06/14
本日は著作権情報センター理事会。ここはとくにもめることもない場所で、行って帰ってくればいいだけだ。で、帰ってきて、カメルーン戦に備えて体調をととのえる。前半、理想的に1点がとれて、あとは防戦一方だったが、よく守りきった。疲れた。

06/15
ペンクラブ理事会のあと岳真也さんの会。あき時間があったので高田馬場で時間をつぶす。ここは点字図書館があって、評議員会と理事会の間にいつも1時間あるので、近くの喫茶店でポメラを叩く。いつもはコーヒーを飲むのだが、本日はペンクラブでコーヒーを飲んだので、レモンスカッシュでも飲もうかと思ってしみじみとメニューを見たら、「バドワイザー」というのがあるじゃないか。知らなかった。さて岳真也さんの会は、数名のしょぼい会だと思って行ったのだが、店に入りきれないほどの盛会。時代小説作家の親睦会みたいなもので、文庫書き下ろしというスタイルでけっこう売れている作家たちが結集していた。聞いてみると若い頃から純文学を試みていたような人が多いみたいだ。いい会だと思った。定期的に飲み会をやるのはわるくない。

06/16
本日は公用はないが、姉の三田和代さんの芝居を見に行く。先月見た井上ひさしさんの『夢の三部作』の三つ目。実にまとまったいい芝居だ。初演を見ているはずだが、初演よりもはるかにまとまっている感じがする。帰りに車で姉を送ったのでそのことを言うと、初演の時は直前に届けられた台本を暗記するだけだったとのこと。今回は演出家や音楽関係者や役者がじっくりと練って作っているので、まったく違う作品のような印象を与える。井上さんの作品は再演する度に面白くなっていくということだろう。
おいおい、スペインが負けてしまったぞ。でも、それがサッカーだ。スペインは初戦に負けても、あと2試合、連勝する力がある。スイスが残りの試合に勝って1位通過になると、日本がスペインに当たらなくていいので、かえってよかった。日本とスペインがともに2位通過になると、トーナメントの反対側になるので、決勝戦まで当たらない。まあ、日本とスペインが決勝戦で当たるということはまずないだろうが。いや、そういえば10年前くらいに、ユースの世界大会でスペイン対日本の決勝戦があった。こてんぱんに負けたのだけれど。
さてグループリーグの初戦が終わった。「死のリーグ」という言い方があるが、8つのグループは適当にバラけている。もともとトップクラスのチームはシードされているのだが、FIFAの最新ランキングのベスト8を見ると、ブラジルとポルトガルが同じGグループに入っているのが目をひくけれども、2位までがトーナメントに行けるのだから問題ではない。むしろ開催国の南アがシードされたAグループの方が「死のリーグ」ではないか。トーナメントに進めるのは16チームだが、そのうち3チーム(クロアチア・ロシア・エジプト)が出場していないので、19位までのチームのバラけ具合を見ると、実はAグループの南ア以外の3チームはすべて19位以内で、どこかが落ちることになる。楽勝なのはFで、イタリア以外の3チームはいずれも30位以下。ここがラッキーグループだ。それ以外のグループは19位内の国が2つずつ入っているから順当にバラけている。で、この19位以内チームの初戦の勝敗をチェックしてみよう。Aはすべて引き分け。Bのアルゼンチンは勝ったが、ギリシャは韓国に負けた。番狂わせその1といえるだろう。Cはイングランドと米国が引き分けたが、あとの2つが弱いのでここも楽勝。Dはドイツは勝ったがセルビアがガーナに負けた。番狂わせの2。Eはオランダは勝ったがカメルーンは日本に負けた。番狂わせの3。Gはブラジルは勝ったが、ポルトガルは引き分け。しかしここも楽勝グループだ。Hはチリが勝ったがスペインはスイスに負け。番狂わせの4。ということで、番狂わせが4回起こった。ここで負けたチームが挽回できるかどうかが注目。ということで注目のグループは番狂わせが起こったB、D、E、Hと、「死のリーグ」のAということになる。

06/17
大学。超暑い。帰ると妻がいるのはありがたい。妻のケータイには刻々と次男の次男の写真が届く。もうちゃんとした人間の顔になっている。次男の赤ん坊の頃にそっくりで凶暴そうな目つきをしている。Wカップの第2ステージがはBグループまで終わった。Aではメキシコとウルグァイが勝ったが、この2チームは最後に直接対決がある。引き分けで両チームともオーケーだから引き気味でスコアレスドローになるだろう。仮にどちらかが負けて、フランスが南アに大勝すると、得失点差の争いになるけれども、フランスの逆転は難しいのではないか。前回準優勝チームがはやばやと消えることになる。Bはアルゼンチンが連勝で安全圏、連敗したナイジェリアは脱落。意気消沈したナイジェリアが相手の韓国は断然有利だ。ギリシャはがんばってはいるが、最終戦は余裕で控え選手を出すであろうアルゼンチンが相手なので苦しい。控え選手は本気でがんばるだろうから。

06/18
公用なし。何ごともなし。

06/19
コーラス。二次会を終えて電車に乗ってテレビを見る。0対1で負けている。最後に15分くらいを見る。オランダ相手によくがんばった。さて、カメルーン対デンマーク。どちらが勝てばいいのか。まあ、引き分けだろうと思って見ていた。カメルーンが勝ってしまうと、さらにカメルーンがオランダに大差で勝つようなことがあると、その時点でカメルーンが2位になる。カメルーンは次はオランダ戦だが、もし勝つようなことがあると、日本がデンマークに勝っても3チームが2勝1敗になって得失点差の争いになる。だからカメルーンが勝つのはまずい。引き分けになるかと思っていたがデンマークが1点リードする展開。あと1点追加されると、デンマークが2位になってしまう。すると最終戦、引き分けならデンマークがトーナメントに進むことになる。はらはらしながら見守るうちにタイムアップ。やれやれ。1点差の勝ちなので、得失点差で日本が上回り、これで引き分けでもよくなった。オランダ戦で1点しか失点しなかったことが効いた。朝までサッカーを見ていて疲れたが、仕事も進んでいる。いよいよエンディング直前のシーンになった。

06/20
日曜日。久し振りに北沢川を散歩。イタリアが苦戦している。ブラジルは強い。さて『白痴』。半年かかると思って今年の正月から書き始めたのだが、その半年が目前に迫っている。エンディングが見えているので、今月中に草稿は完了しそうだが、書いているうちに登場人物のキャラクターがかなり揺れ動いているので最初から読み直して修正しないといけない。この作品はドストエフスキーの創作ノートをもとにしているのだが、前作『罪と罰』のように、視点を変えただけといった小手先の技術的変換ではなく、ノートのプランをもとにしているとはいえ、ほとんどオリジナル作品といっていい。1200枚くらいの作品になるのでこれくらいの期間がかかるのは仕方がない。とにかく今月中に草稿を完成させたい。三省デジ懇もようやく終わりそうなので少しはひまになりそうだ。

06/21
月曜日。本日は公用なし。渋谷まで散歩。久し振りにヤマハに行く。20年以上前、この三宿の土地に引っ越した時、渋谷のヤマハまで歩いて行けるというのが嬉しかった。ジャズやミュージカルの楽譜を買った。その後、頻繁に通ったわけではないが、時々行く。今回は、スーザン・ボイルが歌っている「夢やぶれて」の楽譜があるかと思ったのだが、日本はすごいね。ミュージカルの楽譜がいっぱい揃っている。もちろん「レ・ミゼラブル」もあった。ついでに「ラマンチャの男」も買った。
スペインが勝った。よかった。これで第2ステージがすべて終わった。Aはメキシコ対ウルグァイが引き分ければ双方がトーナメント進出。ただアルゼンチンと当たりたくないだろうから双方とも勝ちにいくだろう。どちらかが負けても得失点差でフランスは及ばない。Bはアルゼンチンは決まり。2位は韓国がナイジェリアに勝てば決まり。ギリシャは及ばず。Cはイングランド、米国、ともに勝つだろう。負ければ大番狂わせだ。Dはドイツが勝つだろうが、セルビア対オーストラリアは微妙。オーストリアは勝ってもガーナに得失点差で及ばない可能性が大。するとモチベーションがうすくセルビアが有利か。引き分けた場合、ガーナとの得失点差が微妙。どうなるかはわからない。Eはオランダは決まり。2位は日本が勝つでしょう。Fは2試合とも引き分けの可能性あり。すると1勝しているパラグァイは決まり。イタリアとニュージーランドは3引き分けだから得失点差も同じ。何点で引き分けるかの勝負か。Gはブラジルとポルトガルで決まり。Hはスイス、スペインが勝つと、チリを加えて3者が2勝1敗になる。スペインはとにかくチリに勝てば得失点差でチリには勝つ。スイスはホンジュラスが相手だが2点差で勝たないと危ない。日本が2位になった場合、相手はパラグァイになりそうだ。その次の対戦相手はスペインがグループ2位になると、たぶんポルトガルが相手ということになるだろう。まあ、そこまでだね。とにかくデンマークには勝ってほしいが、デンマークは予選でポルトガルに勝っている。デンマークに勝てるならポルトガルにも勝てるはずで、するとベスト4まで行ける。逆に言えばデンマークに勝つのはそれほど難しいということ。まあ、1勝でもできてよかったね、ということになるのだろうか。

06/22
三省デジ懇。本日で最終回かと思ったら、まだまだ続くらしい。まあ、夏休みはあるのだろうね。午後は文藝家協会で知的所有権と電子書籍の合同委員会。電子書籍の契約書についての意見交換。まとまりそうにないテーマだったが、意外に話がまとまった。不思議。
南アが2対0でフランスをリードし、メキシコがウルグァイに1点差で負けているという時点で、南アがあと2点とればメキシコを上回るという希望が出てきた。一瞬の夢だったが、そこまで。韓国対ガーナ。韓国が勝てば文句なくトーナメント進出。だが先制したのはガーナ。2連敗しているので、希望はないように見えるのだが、ギリシャがアルゼンチンに負けると、ガーナを含めた3チームが1勝2敗で並ぶ。すると得失点差でガーナが2位になるのだ。韓国はとにかく引き分けに持ち込めば希望は残る。ギリシャがアルゼンチンに勝つことはないだろうから。韓国同点! ギリシャがアルゼンチンと引き分けても、このままなら韓国が上回る。後半、韓国が得点。これで韓国はトーナメントに向けて一歩を踏み出したといっていい。やや、韓国はPKで追いつかれた。それでもまだ生き残っている。ぎりぎりだ。ギリシャかガーナが得点すれば希望は消滅する。アルゼンチン得点。これで韓国はほぼ安全圏。アルゼンチン2点目。これで韓国のトーナメント進出がほぼ決まった。アジアの出場枠を存続させるためにはこの韓国のトーナメント進出は喜ばしいこと。

06/23
今週はわりとヒマ。イギリスは何とかスロベニアに勝ってすべりこんだ。それよりもすごいのは米国。引き分けなら脱落というところを、ロスタイムにゴールして生き残った。生き残ると同時に1位通過という奇蹟だ。明け方のD組。前半戦終わったところで2試合とも0対0。ガーナ対ドイツ。このままなら引き分けで両チームがトーナメントに進む。しかしセルビアがオーストラリアに勝てば、ドイツは引き分けではダメだ。ガーナに勝たないと先に進めない。オーストラリアはドイツ戦に大敗したために、大量点をとって勝たないとトーナメント進出の可能性がない。このまま0対0が続いてタイムアップが近づくと一気にモチベーションが下がる。米国がロスタイムでアルジェリアに勝ったのと同じ状況になる。つまりドイツは後半に得点を入れて勝たないと、先に進めないことになる。ガーナがもちこたえることができるか。テレビ中継がないので、ネットの表示を右端の方に掲示した上で、左側にワードの画面を出して仕事をしている。左側というか、全体の8割ほどはワードの画面なのだが、右端に百科事典や国語事典のアイコンがあったり、マイクロソフトのペットの犬の動画を置くスペースのために、少し隙間をあけてある。そのにFIFAのホームページを出して、2試合の得点表示が見えるようにしてある。後半も10分ほどたったが、以前として2試合ともスコアレスのまま。ガーナががんばって引き分けにもちこむのか。これでセルビアが勝つとドイツが消える。この組は1位になるとトーナメント初戦がイングランドだし、次はアルゼンチン、ということで、できれば2位になりたいところなのだが、そんなことは言っていられない。ドイツとしてはとにかく勝つしかないだろう。勝ってしまうと1位通過になってしまうのだが。といっているうちにドイツが得点した。ガーナは1点差負けならまだ可能性がある。セルビアが引き分けなら得失点差は並ぶが総得点でまだガーナが上に行く。しかしそろそろオーストラリアのモチベーションが下がる頃だ。ここは同点を狙うしかないだろう。うわっ、オーストラリアが1点入れたぞ。これでセルビアは絶望。オーストラリアはあと3点必要だ。これでガーナも生き残りそうだ。やや、オーストラリアが2点目を入れたぞ。これでガーナが失点してオーストリアが加点すると奇蹟が起こる。時間はまだ10分以上ある。アジア枠の確保のためにオーストラリアにがんばってもらいたい。と思っていたらセルビアが1点返した。あと1点で引き分けになる。2対2の引き分けだと総得点でガーナに勝てる。時間はあと5分しかないがオーストラリアのモチベーションは下がっている。こういう瞬間が一番面白いのにどうしてテレビ中継をしないのだ。
結果として1位ドイツ、2位ガーナになった。これで驚くべきことに、トーナメントのアルゼンチンと同じゾーンにメキシコ、ドイツ、イングランドと強豪がひしめくことになった。これは死のゾーンというべきだ。反対側のゾーンはウルグァイ、韓国、米国、ガーナということで、これで韓国はベスト4に出るチャンスが広がってきた。

06/24
M大学。本日が作品提出の締切なのだが、去年のこの大学の雰囲気からして、本気で作品を書く学生はあまり多くはないと予想していたのだが、今年は熱意のある学生が多いみたいで、リュックサックがずっしり重くなった。嬉しいが、負担でもある。それでもW大学(マンモス大学)の頃の受講生の人数からすれば大したことではない。自分の仕事がゴール直前になっているのだが、とりあえず草稿を完成させてから、学生の作品を読みたいと思う。
さて、サッカーだ。イタリアが敗退した。だがそんなことはどうでもいい。引き分けでもいいという日本の状況はマイナスに働くかと心配したのだが、出だしでデンマークに攻められて守りを厚くする布陣にしてもちこたえるうちにフリーキックのチャンスがあり、これを本田が決めて有利な状況になった。一つの歯車が前向きに動き出すとすべてがうまくいくようで、次のフリーキックは遠藤が決めて、2対0で前半を折り返し、後半は耐えに耐えて、PKで1点とられたあとに1点を追加したので、危なげなく勝ちに到達した。よかった。全体として選手のモチベーションが高まっていて結束力が感じられた。出だしに攻められたのだが、守ると決めて守れば安定しているところが強みだ。さて、自分の仕事もゴール直前で少しは進んでいるのだけれども、まあ、今日はいいだろう。

06/25
サッカーを見たあと祝杯を挙げてうたたねをしていたら、寝過ごしてしまった。時計を見たら会議が終わりかけている。そのまま飛び出してタクシーをつかまえたら、道をよく知っている運転手で、とくに指示をしなくてもいつも徒歩で行く路を車で行ってくれたので5分で到着(ジャスラックまで徒歩だと30分)。ちょうど話がまとまりかけたところに参加できたので、結果オーライ。これで今週も終わった。とにかくこの週末は『白痴』の草稿を完成させたい。
と上には書いたのだが、テレビでブラジル対ポルトガルを見ているうちに完成してしまった。もはや哲学的議論などはなく、最後に捜査官を登場させて事件をまとめるだけなので意外に簡単だった。ただし登場人物のキャラが揺れているので最初から読み返して修正しないといけない。M大学の学生の宿題が今週は最大値なのでまずそを片づけてから次に進みたい。
明け方スペインの試合をネットで確認。スペインがチリに勝ち、スイスも勝つと3チームが2勝1敗になるのだが、とにかく勝てばチリに対して得失点差で上回れる。スイスが大勝すると1位になり、スペインは2位で日本と当たらないゾーンに回るのだが、何と、スイスは引き分けてしまった。ということで、スペインが日本のゾーンに来てしまった。これで日本の4強はなくなったね。予選がすべて終わりトーナメントに進む16チームが決まった。わたしは事前にその16チームを予想していたのだが、当たったのは13チーム。意外に番狂わせは少なかった。落ちたのはフランス、イタリア、オーストラリアの3チーム。代わりに入ったのがウルグァイ、パラグァイ、ガーナ。前回大会の優勝、準優勝チームに、南米がくいこんだことになる。オーストラリアはドイツ戦の大敗が響いて得失点差でガーナに負けた。南米2チームはもともと歴史のある国だから、番狂わせとはいえない。ドイツのいるD組はもともとドイツ以外の3チームはドングリだったから、これも番狂わせとはいえない。ということでこの16チームはほぼ順当といっていい。初戦の注目は韓国と日本が、南米2チームと対戦すること。ここはアジアにがんばってほしい。韓国のいる山はシード国がいないので、4強にいく可能性は強い。ベスト4の予想は、韓国(対抗は米国)、ブラジル(オランダ)、アルゼンチン(ドイツ)、スペイン(ポルトガル)ということになるか。スペインとポルトガルはいきなり初戦で当たる。勝った方と日本が当たる(パラグァイに勝ったとして)。日本はそこまでだろう。

06/26
お中元が届いた。集英社の「ナツイチ」の増刷。毎年、夏休みになると『いちご同盟』が増刷される。ボーナスのない文筆業者にとってはありがたいお中元である。これで47版。すごいね。今年は『永遠の放課後』もワンコイン・セールというものに加えていただいて増刷になった。定価500円だからワンコインということらしい。こちらは6版。よくがんばっている。さて『新釈白痴』は草稿が完成して最初から読み返している。冒頭の汽車の場面は完璧。1章ではまだ主人公は登場しないのだが、狂言回しのイッポリートの個性はよく出ている。重要人物のセルゲイ・ペトローヴィッチや息子のアレクサンドル、それから原典にも登場するラゴージンら、重要人物が次々に出てくる。ドストエフスキーのファンにとっては楽しい読み物になっていると思う。

06/27
日曜日。何事もなし。

06/28
著作権情報センター総会。四日市の次男のところに行っていた妻が戻ってくる。『新釈白痴』を最初から読み返している。細かいチェックだけ。登場人物のキャラクター、少しずつ修正しているが、大きな直しはない。1日に1章のペースで進めれば10日で完成する。

06/29
ついにその日が来た。パラグァイ戦。試合巧者のラテン国を相手にどうかと思っていたが、引き気味に相手にボールを持たせて、延長戦まで凌ぎきった。スコアレスドロー。この結果は仕方がない。得点のチャンスはほぼなかった。PK戦も仕方がない。川島の見事なダイビングの手の先に2本決められた。アジアレベルなら2本とも止められたタイミングだった。そこがWカップだ。この結果は受け入れるしかない。PKで勝ってスペインかポルトガルに完敗するよりは、引き分けに等しい結果で負けずに帰ることでよかったと思うべきだろう。さて、わたしとしては、孫3人のいるスペインに期待をかけたい。

06/30
ヒロイン3人が出てきた。ミニヨンという薄幸の少女がシューベルトの歌を歌う場面。ここで初めて、すごい作品だという実感を得た。この「すごい」というのはわたしの基準なので読者がどう感じるかはわからない。それでいい。わたしは自分が読みたい作品を書いている。もう1冊、ドストエフスキーの長篇があれば、というわたし自身の欲求に従って、ドストエフスキーの創作ノートで構想のみが記されてすぐに廃棄されたプランをもとに小説を書いてみたのだ。だからここにはドストエフスキーの魂みたいなものがこもっている。もう1冊読みたいというドストエフスキーのファンにはわかっていただけると思っている。


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