天海04

2021年6月

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06/01/火
6月。今週はなぜか会議が入っていないが、打ち合わせ1件。住んでいる集合住宅のロビーで1時間ほど話す。『遠き春の日々/ぼくの高校時代』のゲラが出ているので読んでいるのだが、1行読む度に胸が苦しくなる。『天海』を書いている方がずっと楽しい。しかしこれは死ぬまでに書いておかないといけないと思い、死ぬような思いで書いた作品だ。「文芸思潮」に連載した作品なので新たに書くわけではない。しかし読むだけでもこんなに苦しい。こんな作品をよく書いたものだ。いつ書いたのかも忘れてしまった。とにかく活字にしておけばよいと思って書いたのだが、周囲の人々のご協力で単行本が出ることになった。まことにありがたいことだが、それにしても読むのが苦しい。なぜ苦しいかといえばそこに十五歳くらいの自分がいるからだ。小説はフィクションではあるのだが、この作品はなるべく本当のことを書こうと思って書いた。とはいえ50年以上も前のことだから忘れてしまっていることもあるし、苦しい記憶だけが残っているということもあって、思い出すだけで胸が痛くなってくる。この作品は妻が先に亡くなったら書いてもいいかなと思っていたところもあるのだが、妻はまだ生きている。たぶん読まないだろうと思って書いたのだが、単行本になったらいつか読むかもしれない。とにかくこの苦しい作業を短期間で終わらせなければならない。終わったらまた『天海』に戻れるという思いで作業を進めたい。まだ手元にある『尼将軍』のことにまで頭が回らないが、それでも頭の隅には残っていて、必要ならば考えてもいいとは思っている。しかしいちおうこれでいいというレベルにまでは仕上がっていると思うので、このまま今週末くらいには担当編集者に送ってもいいと思っている。6月になったが、『尼将軍』『天海』『遠き春の日々』と3作の作業が同時に進んでいる。流行作家になったような気分だが、すでにゲラになっている『遠き春の日々』が最重要なので、今週はこの作品に集中したい。幸い会議がないので、週末まではこの作品に集中できるはず。

06/02/水
今週は会議がない。ZOOMの普及で自宅で会議に出られるのは、会場までの往復の時間や労力の節減になるのでありがたいことではあるが、そのせいかSARTRASなどは会議の回数が増えてきた気がする。が、SARTRASも今年度からは有料の領域に入り、順調に申し込みもあって、来年には補償金が入る見通しができてきた。分配に関する基本の方式もほぼ決まったので、そろそろ会議も減ってくるかなとは思っている。ただし、やってみないとわからないことも多いので、サンプル調査のデータが出てくると忙しくなるのかもしれない。さて、自分の仕事は『遠き春の日』の「あとがき」を書いた。これは叩き台で、校正が終わった段階でまた考える。『天海』も少し前進した。

06/03/木
妻とともに銀行2件と郵便局を回る。何やら手続きがあるらしい。そばにいて必要な署名をしただけ。何がどうなっているかわからない。若い頃は銀行にも行ったし、税金の申告なども自分でやっていたのだが、いつのころからかすべて妻に任せるようになった。昔は作家は優遇されていて、帳簿をつけなくても申告できたのだが、ある時期からはそれはダメということになった。で、青色申告するようになったので、妻に頼ることになった。お互いに高齢者になっているので、二人ともボケてきたらどうなるかとも思うのだが、なるべくボケないようにしたい。しかしシステムが変わっていて途惑うこともある。端末の画面にタッチペンで署名して、さらに画面にハンコを押すというのは初めての体験。『尼将軍』の修正原稿を担当者に送る。『遠き春の日々』は第1章が終わった。全体は3章なので、まだ半分も行っていないが、出だしのところが雑誌に書いた時も難渋したので、そこを通過したのでもう大丈夫だと思う。「あとがき」があるので第3章のエンディングのところは少し短くしたいと考えている。

06/04/金
担当編集者に送った『尼将軍』は入稿とのこと。これで9月くらいに本が出ることになった。いま校正をしている『遠き春の日々』に続いて今年は2冊の本が出る。去年は1冊も本が出なかった。一昨年も文庫本が1つ出ただけなので、久し振りの小説の新たな単行本が出る。まことにありがたいことだ。本日は週日雨。散歩にも出ず。校正は3章のうち2章が終わった。埴谷雄高さんのご自宅を高校生のぼくが訪問するくだりはなかなかなに盛り上がっている。この作品も自分にとっては大事なものだ。書いている時は苦しかったし、読み返すだけでも苦しいのだが、自分の原点ともいえる状況を一つの作品として書き遺しておくことには意義があると思っている。『尼将軍』も入稿が決まってほっとしている。作品社からもう一つ仕事を頼まれた。「北条義時」のアンソロジーの解説を頼まれた。といったも北条義時を主人公にした作品は皆無らしい。脇役として登場する作品を集めたものらしい。明日あたり掲載する作品のコピーが届くというので、読むのが楽しみだ。

06/05/土
作品社から資料が届く。「北条義時」というアンソロジーの解説を頼まされ。ざっと目を通したが義時そのものを主役として描いたものではなく、脇役としてちらりと出てくるだけ。考えてみれば影のうすいキャラクターだ。解説というほどのことはできないが、義時の立ち位置みたいなものを説明できるだろう。車を動かすために深川ギャザリアへ行く。スーパーで買い物をしただけ。『遠き春の日々』の校正完了。「あとがき」をつけることにしたので、連載時の最後の部分は削除することにした。これでスッキリする。「あとがき」と「著作リスト」をプリントしてゲラにつけ、レターパックに入れて準備完了。これで明日からは『天海』に集中できる。

06/06/日
雨が降り始めた。まだ小雨なので昨日用意したレターパックをポストに投函。担当編集者にメールで「あとがき」と「著作リスト」のデータを送る。これですべての作業が終わった。

06/07/月
近くの医院にていつもの薬を貰う。夕方散歩。何ごともなし。午後はSARTRASの理事会。一度も発言せず。

06/08/火
日本文芸家協会理事会。いまどき珍しいリアル会議。ZOOMでも参加できるのだが、副理事長としての報告があるので仕方がない。ZOOMの方が顔がしっかり映っていいのではないかと思うのだが、会議前後の雑談にも意味がある。

06/09/水
昨日、妻は予防接種に行った。スペインにいる長男は予防接種のあと激しい頭痛に苦しんだと報告があったがこれはアストラゼネカ製。大阪にいる妻の妹はまったく何事もなかったと言っていたのだが、その妹は血液型がABで妻はO。顔も性格もまったく違う。悪い予感がしていたのだが、昨晩妻は発熱して、腕の痛みで一晩中眠れなかった。本日は朝から不調。こちらは元気なので散歩の帰りに神田駅で焼売弁当を買ってきた。ぼくは会議のスケジュールを空けておくために週末の予約をとったのでまだ先だ。ぼくと妻は体質も性格も正反対なので、ぼくは大丈夫だろうと勝手に楽観している。ぼくはまだ昨年負傷した右肩に痛みが残っているのでいつも左を向いて寝ているのだが、これで左腕に注射を打ったらどうなるのか。痛まないことを願っている。

06/10/木
妻はようやく回復した。ワクチンの後遺症については聞いてはいたが、思ったよりひどい状態になった。ともあれ回復したようで安心した。今週はNET会議はないので自分の仕事に集中できる。猛暑。散歩もつらくなってきた。なるべく人のいない道を歩き時々マスクを外している。去年の夏はもっと堂々とマスクを外して歩いていた気がする。今年になってから変移ウィルスの出現によって感染の危険が増し、マスク装着の義務感が増したように思われる。こちらはまだ注射を受けていないので、あとしばらく用心しなければならない。来週は日本点字図書館でリアルな会議がある。一回目の注射の前の外出はそれだけなので、散歩の時に人に近づかないようにしたい。

06/11/金
猛暑が続く。作品者に頼まれた作品社の原稿、ようやく終わる。15枚という注文だったが、何となく15ページ書くようなつもれで、詳しく書き始めて途中で15枚なら5ページでいいことに気づいた。短くするのがたいへんだった。プリントして読み返してから送付つもりだが、締切はかなり先なのでしばらくはこのまま置いておきたい。ようやく『天海』に戻れる。早く本能寺を描きたいのだが、その前にいちおう主要登場人物をしっかり描いておきたい。とくに信長と光秀は、これで出番がなくなってしまうので、ラストショットを心をこめて書きたい。

06/12/土
本日も猛暑。『天海』を最初から読み返す。画像の横書きなのであまり集中できないが、もはやいじれないくらいの完成度になっている。まあ、大丈夫だと思う。

06/13/日
猛暑が続いているが真夏の暑さを思えばまだましだ。人通りの少ないところでマスクを外せば風も吹いていて、快適な散歩といっていい。しかし考えてみると、たまのリアルな会議、週に何度もあるNET会議で人の顔は見ていても、雑談というものがまったくない。雑談とか宴会とかは無駄な時間のようでいて、そういう無駄の中から得られるものがあるということを、いまさらのように痛感する。小説を書くということに関しては、編集者との打ち合わせや打ち上げのほかは、無駄な時間なのだが、疫病が流行する前は、何かにつけて飲み会があった。大学の先生方であったり、文藝家協会関係であったり、ただの知人であったりするのだが、飲み会というのはなかなかいいものだ。ただ高齢者になったので、昔のように夜中まで飲むというのは難しくなってきたが。『天海』の読み返しが続いている。近衛前久が登場するところはけっこう長い。しかしこのキャラクターはなかなかに楽しいので、いい展開になっている。

06/14/月
ABJの委員会。同じ日に著作権情報センターの総会があったのでこちらは欠席届と委任状を画像で送っておいた。ABJの委員会はマンガの違法サイトの調査摘発のための機関。被害の大きいのはマンガだが、以前は中国に巨大な違法サイトがあって書籍も流出していた。しかし当時大きな問題となったのはファミコンソフトの流失だった。NETとかWEBといったものが世界を網羅するようになって、本屋さんに本があるという、物が人から人に流通していくのとはまったく異なる流通が実現するようになり、誰でも簡単に違法サイトを開設できるようになった。音楽は安価な合法サイトの普及で違法サイトはなくなったようだが、マンガはいま厳しい状況に置かれている。ただ海外のサイトが多く、対応が難しい。それとポータルサイトにマンガの表紙をずらりと並べるといったわかりやすいサイトではなく、ホームページにはグーグルと同様の検索の窓だけがあるようなサイトもあり、仕組みは複雑になっている。野放しにすると一般の人々がこれを愛用するようになって、著作権そのものが崩壊してしまう。ということでぼくも有識者として参加している。SARTRASの分配委員会のような利害の絡んだ会議ではないので、まあ、のんびりと出席者のお話を拝聴した。

06/15/火
猛暑が続く。『天海』は最初から読み返しているが、緊張感のあるシーンがテンポよく進行している。この時代の知識のない人にはわかりにくいだろうが、大河ドラマくらいは見ている人がいるだろうから、むしろ説明しすぎない方がいいのだろう。といっても、必要なことは説明しないといけない。天海の出身地は会津らしいので、芦名の殿様が出てくるが、ぼくもこの作品を書き始める前は知らない人だった。自分が知らないだけなのかもしれないが、どの程度説明するかが難しい。ただのちに天海が江戸崎に行くのは芦名氏の本拠がそのあたりになったからで、描かないわけにはいかない。

06/16/水
本日は雨模様。ワクチン接種のあと熱と腫れが出て、後遺症なのか耳の調子が悪くなった妻は一昨日耳鼻科に行ったのだが、漢方薬をくれただけで適切な対処がなく、本日はマッサージ。片方の耳管がつまっているようで、飛行機に乗ったような状態になっている。これはワクチンの後遺症ではないのか。ぼくの接種は今週末。どこへも出かけたくないが明日は日本点字図書館のリアル会議がある。来週には三鷹サテライトの講座も予定されている。何とか体調を調えたい。花粉の春先は花粉のせいか調子が下降していたのだが、いまはわりと元気だ。仕事も『天海』だけになったのでストレスもなく機嫌より執筆に取り組んでいる。ただまだ物語の序盤を書いている段階だ。半分を過ぎたくらいまで行かないとゴールが見えてこないのだが、終わり方はわかっている。天海が死ねば終わりだ。家康が死んでから天海が死ぬまでかなりのタイムラグがあって、そこでは天海が独裁的に活躍することになる。そこが作品の山場となるだろう。そのあたりで吉田神道との対決がある。吉田兼右は近衛前久と親しいので早い段階で出しておきたかったのだが、チャンスがなかった。前久の二条邸で酒を飲むシーンがあってここに兼右を呼ぼうと思ったがプロットの流れでうまくいかない。ただこの人物はわりと早く死んで息子の代になるのでプロットを少し考えてみたい。

06/17/木
SARTRASの総会、理事会。ぎりぎりまで出席してから自宅を出る。日本点字図書館の理事会。会議が多い。まあ、浮き世の義理だ。『天海』は読み返しが終わりようやく新たな領域に進んだ。備中高松から京に戻り、いよいよ本能寺に向かって話が進んでいく。このあたりからパラグラフを短くして話のテンポを早くしたい。一つの作品は半年で草稿を書く、というのを一つの目標としている。このノートは4冊目なので、8月末に草稿完成ということになるが、この作品は200ページでは収まらない。作品社では『新釈悪霊』という、738ページ2200枚の本を出したこともあるので、長さは大丈夫だ。定価が高くなるのは心配だが、ライトノベルではないのでしっかりと書いていけば分厚くなるのは仕方がない。9月草稿完成、10月完成。そんなところを目標にしたい。企画を任せているフリー編集者から提案のあったアインシュタインの本はどうやら小説みたいなものになりそうだ。それならば楽しい仕事になりそうだ。主人公は空海ということになるか。『空海の時空を超えた旅/アインシュタイン幻想』というようなものではないか。まだ何も考えてはいないのだが。

06/18/金
『遠き春の日々』の再校ゲラ届く。雑誌連載のデータが版元に送られたのでタイプミスはない。連載から少しタイムラグがあるのでわずかな心境の変化があり赤字を入れたところがあるし、削ったところもある。そこでうまく収まっているかを確認するだけでいいだろう。本日はまだ『空海』に集中していたので、梱包を解いただけ。まあ、明日は作業に取り組みたいと思う。日曜に注射なので、当日や翌日はのんびりしていたい。

06/19/土
再校ゲラは昨夜寝る前に1章を終えた。午前中に2章と3章を完了。これですべての作業が終わったが、何か思いつくこともあるので、あと2日ほどは手元に置いておきたい。妻の運転で深川ギャザリアへ。本日は混んでいた。週末で雨が降っていたので、車でスーパーに来た人が多かったのだろう。

06/20/日
ワクチンの1回目。会議のスケジュールをあけておくために週末限定で妻に予約を頼んだので遅くなってしまった。妻はすでに1回目は終えてもうすぐ2回目だというのだが、当日の夜は痛みで寝られず、2〜3日は不調が続き、いまも耳の変調という後遺症が残っている。こちらは到って健康なので楽観している。ただ妻は近くの病院だったのに、こちらは千代田区役所まで出向かねばならない。御茶ノ水は数多くの病院が林立している。自衛隊がやっている大規模接種は自宅の窓から見えている。千代田区役所は遙か彼方だ。徒歩圏ではあるが熱中症のおそれもあるので地下鉄を2駅乗って九段下から歩く。区役所の1階エントランスが会場。15分ごとに受付があり各10人程度の小規模な会場だ。何ごともなく接種完了。筋肉は痛みを感じないことは承知している。皮膚表面の痛点を針が直撃しない限りは痛みがないはず。幸いにもまったく無痛だった。ぼくは注射の威力を信じているので教員をしていたころは必ずインフルエンザの予防をしていた。区役所がタダ券をくれた肺炎予防の接種も受けたし、1万円払って帯状疱疹の予防接種も受けた。これはかなり痛かった。帯状疱疹は水疱瘡が神経に入り込んだもので、数年前に仕事場に遊びに来た孫が水疱瘡にかかって浜松の病院に行ったことがあって、大丈夫だろうとは思ったが、あの病気はかなり痛そうなので予防をした。病気になることを思えば注射の痛みなど何ほどのこともない。ただ知らないところへ行くのは少し緊張する。2回目は近くの出張所なので問題はない。

06/21/月
オーファン委員会。いつも司会をつとめる写真家協会の瀬尾さんがダウンしたというので、文藝家協会の平井さんに司会を頼んで、こちらもいつもよりたくさんしゃべった。こちらはぜんぜん元気。昨日の注射の影響はまったくない。針を刺した腕のあたりが押すとまだ痛みがあり、やや腫れている感じもするが、日常生活にはまったく支障がない。それでも会議がNETになったのでありがたい。代島治彦監督の『きみが死んだあとで』が送られてきたので少しずつ読んでいる。1968年の羽田闘争で亡くなった山ア博昭くんの思いでを同世代の十数人が語ったドキュメント映画の、映画ではカットされた部分を収録した完全版で、なかなか面白い。ちょうど『遠き春の日々/ぼくの高校時代』の校正を終えたばかりなので興味深い。ぼくの小説では「岩城」「黒沢」という名前で登場する高校時代の友人が、「岩脇」「黒瀬」という本名で映画にも登場しているのだが、映画ではカットされた部分もあるので、50年前の高校時代が目の前にうかびあがる気がする。

06/22/火
『尼将軍』の初校が届いた。これは初校の控えで、本当の初校は校正担当の人が見ている。歴史小説なので校正の人はいろいろと資料を見てチェックするはずで、著者校正では校閲の人の意見/異見に対応しないといけない。ということでこの控えの校正では、文章の流れなどを見て、最終的な仕上げを試みたい。冒頭部を読んでみたが、担当の高木有さんのチェックは入っていて、こちらのタイプミスの指摘がある。このようなミスは何度もプリントしてチェックし、そのプリントを読んだ高木さんがチェックし、それをさらに自分でチェックしながら最終稿のテキスト文書を入稿したはずなのだが、まだミスがある。校閲の人は専門家だから、さらに見つけるかもしれない。まあ、校閲の人との勝負みたいな感じで、タイプミスは自分でも見つけておきたい。全8章のうち1章はチェックを終えたが、文章の修正はまったくなかった。導入部からテンポよく展開することと、さりげなく歴史的状況がわかるような時代背景の説明を展開の中に組み込んでいくという、両立が難しいことがうまく書けている。冒頭の1章がほぼ完璧に書けているので、これはいい作品だと思っていいだろう。ワクチン接種から2日目になったが、昨日はまだ少し腫れていた左腕もいまは正常に戻った。押しても痛くない。ということで、ぼくの場合は後遺症はゼロだといっていいだろう。

06/23/水
昨日は『尼将軍』の初校控えが届いたのだが、本日は日大文芸賞の候補作が届いた。歴史時代作家協会賞の候補作も決まり随時作品が送られてくる。そろそろ「まほろば賞」の候補作も届くころだ。この時期は文学賞の選考が三種あるので読む仕事が増える。パソコンに向かってやる仕事の他に、読む仕事が増えるのだが、椅子がかわると腰が少し楽になるので、随時場所を移動しながら作業を進めたい。やることが多いと何から手をつけていいか困ることもあるが、とりあえずいまはパソコンに向かっている。明日と明後日のNET会議の資料が届いている。明日はマッサージの日で、明後日は三鷹サテライトの講座があり、外出から帰って夕方は会議ということになる。やれやれ、何だか忙しくなってきた。

06/24/木
本日はマッサージ。月に1度の体を補修する試み。去年傷めた右肩がまだ完治していないのだが、毎朝目覚めた時にベッドの上でストレッチをするようになって、ようやく完治に近づきつつあるという感触を得ている。今日はぐるぐる回されても痛くなかった。しかし肩がカチカチになっていると言われた。確かにこのところよく仕事をしている。しっかりキーボードを叩いている。『天海』はいつ果てるとも知れない作業になりつつある。まだ本能寺が始まらない。もうすぐ100ページになる。本能寺が終わったら一気に関ヶ原に飛ばないといけないが、そういうわけにもいかない。秀吉が死ぬところまで話を飛ばしてもいいか。しかし淀君のことも少しは書いておかないといけない。頭の中が混乱しているけれども、とくに逼迫しているわけではない。老人の仕事だから、のんびりやればいいと思っている。煮詰まってきたら、アインシュタインの話にでも逃避することにしたい。さて、マッサージから帰ってもネット会議が1つある。これはオブザーバーとしての参加なので聞いているだけでいい。iPadで聞きながら、パソコンで自分の仕事を続けた。秀吉の妻が出てきてやたらとしゃべっている。ページを無駄にしているようだが、関ヶ原の戦いで東軍が勝てたのは高台院の力が大きい。だからこのあたりで顔を見せておく必要がある。明日は三鷹サテライトで講座。菅原道真の話をする。まあ、系図1枚あれば話が出来るだろう。

06/25/金
武蔵野大学三鷹サテライトで講座。70歳定年まで勤めていた大学の社会人向けの講座。非常事態宣言のために先月は休みだったので、本日が2回目。菅原道真がテーマだが、なぜ宇多天皇が即位することになったかを話すためには『伊勢物語』の話から始めないといけない。90分で語りきれるかと懸念していたのだが、何とか時間どおりに収めることができた。久し振りの講座なので疲れた。電車がけっこう混んでいた。ワクチン接種から5日目なので、ぼくの体内ではコロナウイルスのトゲトゲが大量生産され、抗体も量産されているはず。2回目が終わらないと充分ではないが、少しは役に立つ抗体が出来ているだろう。ZOOMの普及で会議のほとんどが自宅で出来るようになり電車に乗ることが少なくなった。とくに中央線に乗るのは久し振りだ。昨日と同様、帰ってきてからZOOM会議がある。昨日はオブザーバーだったし、本日の理事会でも発言することはないのでただ聞いていただけ。明日は週末だがもう1件、会議がある。それでしばらくは一切のスケジュールがない状態になる。来週と再来週、何もアポが入っていないのは気持がわるいくらい。ただ文学賞選考の仕事が3件あるので作品を読む作業が入ってくる。

06/26/土


歴史時代作家協会賞の予選通過作品の第一陣が到着。作品賞候補5篇、新人賞候補4篇、文庫新人賞候補2篇と、合計11冊読まないといけない。まあ、予選通過作品なのでレベルの高いものばかりで読むと勉強になる。

06/27/日
日大文芸賞の候補作を読み終える。これは他の選考委員のご意見を聞き、その場で決めればいい。歴史時代作家賞も読み始めた。『尼将軍』の控えゲラも3章が終わった。『天海』も少し進んだ。4つの仕事を並行させるのは厳しい。日大文芸賞が終わって1つ片付いた。床屋に行く。しばらく行っていなかった。ワクチン接種から1週間たったので、少しは免疫が出来ているのではないかと思った。散歩で床屋の前を通ったらすいていたので反射的に店に飛び込んでしまった。

06/28/月
車を動かすために深川ギャザリアへ。ウィークデーなのに混んでいた。本日までのキャンペーンがあったようだ。明日、妻の2回目の接種があるので、当分車の運転が出来ないと想定して早めに買い物に行ったのだが。『天神』は本能寺の直前で手間どっている。ちょうど100ページ。400字にすると300枚で、全体を600枚とすると半分だ。ここから先は関ヶ原の他には大きなドラマはないはずだが、それでも家康が死んでから天海は活躍するので、全体は800枚くらいになるのではないか。まあ、作品社だから出してくれるだろう。

06/29/火
昨日『文芸思潮』が届いた。「まほろば賞」の候補作が掲載されている。これの選考を8年前から担当している。同人誌掲載の作品の年間最優秀作を選ぶ。ぼくの見るところ、最近の芥川賞よりはレベルが高い。ただし書き手は高齢者なので新しさはない。古き良き時代の純文学を書き継いでいるのはもはや同人誌の書き手しかいないのだろう。例年6作ほどが候補になるのだが今年は5作。1日ですべて読み終えた。どれもレベルが高い作品だが、傑出してこれを推したいと思うものはない。選考会までまだひとつきほどあるので、そのうち評価が変わるかもしれない。選考会が近づいたらもう一度読み返すつもりだが、とりあえずは作品に目を通して、今年もある程度のレベルを保っていたので安心した。妻は本日が2回目の接種。1回目ではやや重篤な後遺症が出たので心配。

06/30/水
作品社からアンソロジーの解説のゲラが届いた。すぐに読んで散歩に出た時に投函。妻は解熱鎮痛剤を早めに飲んだので後遺症は出ていない。熱が出る前に解熱剤を飲むのが正解のようだ。前にも書いたが、スペインにいる長男は「必ず飲むように」という注意書きとともに薬をもらったのにその紙をよく読まずに、1回目では熱が出たとのこと。妻も1回目の時は熱が出てから解熱剤を飲んだのだが、それでは遅いのだ。ぼくは1回目の時から、熱が出る前に解熱剤を飲んだので、それで後遺症が出なかったのだと思う。妻はこれで2回目を終えたのだが、どういうわけかぼくの2回目はだいぶ先だ。『空海』。いよいよ本能寺だ。
さて月末なので今月の仕事を振り返ってみよう。『空海』は100ページを超えた。書き始めてから4ヵ月もかかっている。大作なので8ヵ月くらいかかることを想定しているので、まずまずのペースだと思っている。作品社からアンソロジーの解説を頼まれて仕上げた。『尼将軍』関連なのですぐに書けた。『遠き春の日々/ぼくの高校時代』の校正。『文芸思潮』に連載したもので、編集部の五十嵐勉さんのご厚意で印刷データを単行本の版元に送ってもらったので、ほとんど校正の必要はなかった。ただ書き終えてからタイムラグがあるので、少し書き換えたところもある。短いあとがきをつけた。担当編集者のアイデアで年譜のかわりに出した本のリストをつけたのだが、これはなかなかのものだ。自分の作家としての軌跡がこれを見るだけでよくわかる。何だかいつ死んでもいいような気分になってきた。





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