天海03

2021年5月

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05/01/土
5月になった。浜松三ヶ日の仕事場にいる。世の中は連休に入ったので公用のメールが来ないのでありがたい。自分にとっての公用とは日本文藝家協会とSARTRASで副理事長をしていて、その関係の雑用がかなりある。とくにいまはSARTRASの分配委員会およびワーキンググループが佳境に入っていて毎週会議が入る。ZOOMを使ったネット会議なので楽だが2時間くらい時間をとられてしまうし、日程調整などのメールが頻繁に入って対応しなければならない。他にも会議があり、この日程調整がけっこう面倒だ。連休中は事務局も休みなのでこちらも安堵できる。『天海』のノートも3冊目になった。ここまで発表のあてもなく書くという作業だったが、期待をかけてくれる編集者が一人いて出版の方向で進みつつある。自分としても『天海』はおもしいテーマだと思っている。天気予報では雨ということだったが、まだ降っていなかったので草刈り。駐車スペースから建物に向かう坂道に迫り出している雑木を少し刈り込んだ。作業が終わったころにちょうど雨が降り出した。夕方は雷の鳴る豪雨。北風だと雨漏りするのだが西風だったので大丈夫。牧ノ原では竜巻で被害が出たようだ。竜巻というのはどこで起こるかわからない。築40年の木造家屋なので心配。

05/02/日
主人公のキャラに少し幅をもたせたいということで用意したプリントを読み始めたのだが出だしのところはすでにしっかりとしたキャラクターが出ている。第2章の冒頭から回想シーンになる。少年から大人になっていくプロセスで、ピュアの少年が態度のでかい怪僧になっている経過をもう少しうまく描きたい。光秀、家康、近衛前久、信玄、快川和尚などの登場人物はしっかりと描けている。とくに近衛前久は魅力的だ。この人物は副主人公といってもいい。本日はリビングルームの前の庭の整備。雑草を引き抜く。鍬で掘り起こして根元から抜かないといけない。先月来た時に孫2人がかなり雑草を抜いてくれたので、隅っこに生えている草を抜くだけでいい。昨日の豪雨が嘘だったような晴天で浜名湖の眺めがうるわしい。主人公が浜名湖を眺めるシーンをちょうど読み返している。三方原の戦さのシーンは少し力が入りすぎているかもしれない。土地勘がありすぎる。東京や関西は戒厳令だが、静岡県はのんびりしている。浜松祭は中止だが、動物園や植物園などは入れるようだ。

05/03/月
昨夜は寒くて思わず石油ストーブを点けてしまった。本日は快晴で温暖。快適だった。プリントはチェックを終えて赤字入力も済ませた。主人公のキャラクターの幅を拡げたいという思いがあったのだが、やりすぎはよくないのであまり手をつけなかった。最終的に読み返して少し修正するというのと、今後書いていく過程で幅を拡げていけばいいと思う。むしろ明智光秀のキャラを少し修正した。気の毒な人ではあるが、性格のよくない人物にしないといけない。

05/04/火
世の中は5連休なのだね。こちらはリタイアした身だったが、大学の教員をやっていたころは、大学独自のカレンダーで動いていて、5月の連休は短かった気がする。まあ、夏休みとか春休みがたっぷりあるので大学の教員は楽な仕事だった。いまのぼくは会議がやたらと多いボランティア活動をやっているけれども、連休は会議がないのでのんびりできる。都田テクノにあるカインズホームに行って必要なものを買い込む。とりあえず玄関の切れていた電球をとりかえる。雨漏りの補修などは明日とする。自分の仕事はいよいよ織田信長が登場する。まだ何も考えていないのだが、ここは強いキャラの人物を描きたい。

05/05/水
午後から雨という予報なので起きるとすぐに雨漏りする窓の補修にとりかかる。これがなかなかに大変だ。窓の場所が1階の玄関横から階下に下りる階段に面している。階下に下りるといっても斜面に建った建物なので、階下にも窓があり、まだかなり高い位置にある。その窓の外側は急な階段になっている。外側からサッシの上部と壁の境目におそらく亀裂が入っていて雨漏りがするのだろう。そこに補修用のテープを貼るだけの作業なのだが、外側の階段は急でハシゴをかけるわけにはいかない。そこで内側から窓枠に座って身を乗り出して手を外側に回してテープを貼る。窓枠に立って身を乗り出せばいいのだが、そこはもう外階段の上の方で落下すれば命がないくらいの落差だ。ということで窓枠に座った状態で手を伸ばす。テープを貼るところは見えないので手探りの作業となる。糊のついたテープを貼り付けていく。窓の右側は階段の上から乗り移れるのだが、左側はハシゴが必要だ。こちらはさらに不安定な作業となる。妻にテープを一定の長さに切って手渡してもらうのだが、貼ろうとすると手にくっついたりねじれたりしてうまくいかない。何度か失敗したがどうにか貼ることができた。まあ、何もしないよりはましだという程度の補修だが、作業を終えたあとで雨が降り出した。風がないので補修の成果を試すことはできないが、長く不在にする建物なので、作業が成功していることを祈りたい。自分の仕事は織田信長が出てきたのだが、何となく言葉に重みがない感じがする。どうすればいいかわからない。しばし試行錯誤を重ねることになりそうだ。

05/06/木
暦の上の連休は終わったがまだ緊急事態宣言は続いている。疫病の流行は収まっていないようだ。ぼくはジュニア高齢者なのでまだ注射の順番は回ってこないようだ。本日は網戸の貼り替えを手伝った。前にも手伝った記憶があるが、網戸というのは便利なものだ。70年近い以前の幼児のころ、大阪府寝屋川の祖母の農地で暮らしたことがある。夜は蚊帳をつった。めんどうなものだった。蚊よりも蜂が怖い。この仕事場の玄関の手すりにミツバチが巣を作ったことがあって、出入りの大工さんにとってもらった。そうしたら脱出した蜂が本気になって攻撃をしかけてきた。網戸では不安なのでガラス戸を閉めていたのだが、ガンガン体当たりしてくる。ともかく蜂は怖い。信長との対話は何とか終わりに近づいた。それほど盛り上がっていないがあとで修正できる。「カラマーゾフの兄弟」の続篇を書いていた時は、作品の終盤にアリョーシャとイワンの対話があることを想定していた。作品の最大の山場となるはずで、ずっと先にその山場があることがプレッシャーになっていた。この作品では信長がイワンのようなものだが、多くを語らない人物なので出ただけで存在感がなくてはいけないのだが、暗闇の中での対話なので姿を描写するわけにもいかない。難しいところだ。後半は近衛前久が狂言回しになってくれると思うので、信長の登場シーンはさらっと通過したい。

05/07/金
昼から雨。散歩にも出ずにパソコンに向かっている。世の中は動き始めたようでドッとメールが来る。この週末も浜松で過ごすつもりだ。織田信長との対話が終わり、ついでにフロイスを登場させることにした。フロイスは記録が残っているので、どこにいたかが特定されている。安土城にいた時期に主人公と会うことにした。ここではやや抽象的な議論をさせてもいいと思う。

05/08/土
晴天のはずが黄砂のせいかどんよりした曇り空。夕方、鷲津のホームセンターで土や肥料、除草剤などを買う。帰りに五味八珍というなじみの中華で担々麺を食べる。外食は久し振り。静岡県は緊急事態も蔓延防止でもないので、酒を飲んでもいいのだが寝酒を飲む習慣ができているので夕方は控える。体調を気遣うようになったのは老化のせいか。ぼくが幼児のころは父方の祖父が子守をしてくれた。三歳の時の記憶がある。ぼくと祖父はエトが6周離れている。5周で還暦だからそれより1周多いので、ぼくがゼロ歳の時に祖父は72歳だった。ぼくが3歳なら祖父は75歳ということになる。あと3年でぼくもその年になるが、祖父は毎日、昼から日本酒を飲んでいた。あんなにおいしそうに酒を飲む人を見たことがない。それを3歳で見たので、酒を愛する心が育ったのだと思う。酒は一人で飲むもの、というのも祖父から学んだものだ。その75歳の祖父はかなりヨボヨボだったという記憶がある。頭髪がゼロだった。いまのぼくはまだしっかりと頭髪があるし、少し足腰が弱くなった感じがあるけれどもいたって元気だ。長生きをして仕事を続けていきたいと思っている。

05/09/日
週末。外階段の下に配管が露呈しているところがあって、そこに土をかけた。余った土を適当にまく。御茶ノ水の集合住宅はまったく快適だが、この仕事場は土地を所有しているのでいろいろとなすべきことが多い。それも楽しみではあるのだが、あまり楽しめない。しかしこの場所は気分転換になるので、体力の続く限りは維持に努めたい。下の庭と上の庭に1本ずつ梅の木がある。こちらは梅に興味がないのだが、妻が実をとるというので、脚立を出して支えてやる。下からは見えなかったがけっこう実がなっていた。ぼくは梅酒は飲まないし、梅干しも食べない。梅というものに恐怖を感じている。『天海』と児童文学を並行して作業をしているので集中力がない。締切が近づいているので明日からは児童文学に集中する。

05/10/月
蒲団を干し、片づけてから除草剤をまく。これで今回の滞在で必要な作業はすべて終わった。この2週間で『天海』は織田信長、フロイスらが登場し、これで出番のある人物が羽柴秀吉を除いて揃ったことにある。あとは明智光秀と近衛前久、それと家康を純ぐりに登場させてプロットを進めていけばいい。2日前から児童文学を書き始めたがまだそれほど進んでいない。30枚の作品でいま6枚は書けているので、週末までには完成するだろう。昨日、以前に仕事をしたことのある編集者から企画がメールで送られてきた。これから企画会議にかけるのだろう。OKならばやってみたいテーマだ。「まえがき」みたいなものを少し書いてみたが行けそうな気がする。だが読者のニーズがあるかどうか。その判断は版元と編集者に任せて、やれといわれればやるというくらいのスタンスでいようと思う。もう新書の類は書き尽くした感じがするのだが、よいテーマがあれば気分より書けるので、これからも可能な限りは試みてみたい。明日は東京への移動日。疫病がさらに蔓延しているようで大丈夫かなと思うが、東京に戻らないことには予防注射も受けられない。

05/11/火
浜松から東京への移動日。午後2時には御茶ノ水到着。道路がすいていて、途中で3回休んでもこの時間に帰れた。郵便物の整理など、けっこう雑用があるが、パソコンの設定も問題なし。本日から週末までは児童文学に集中する。今週は文藝家協会の総会の予定で、もちろんリアルな総会や懇親会はないのだが、理事長と副理事長は事務所に出向くことになっていたのだが、それも中止になった。ということで今週はネット会議が2件あるだけ。

05/12/水
医者に行って薬をもらう。スーパーに行ってウィスキーなどを買う。それだけだと2000歩。夕方散歩。久し振りに御茶ノ水、水道橋、神保町のあたりを歩く。仕事は児童文学に集中。親が離婚して子どもが苦労する話だが、江戸時代末期に設定したので、軽いユーモアをまじえながらテンポよく語っている。もう半分を越えたので予定どおり週末には完成するだろう。

05/13/木
文藝家協会総会。当初の予定では理事長と副理事長は協会事務所に出頭する予定だったが、緊急事態宣言下、急遽全員がリモート会議に出席することになった。かえってよかったと思う。40名以上の参加者があり、皆さんのお顔が見えてよかった。本日は朝から雨。散歩にも行かず、会議の他は児童文学に集中する。後半の山場となる父の会話も何とかのりきれそうで、あとは静かにエンディングということになるが、枚数の調整が必要。いまの感じだとちょうどいいくらいの枚数で終われそうだ。明日には完成すると思われるが、一度プリントして赤字を入れながら修正したい。

05/14/金
SARTRASのWG。これはいつも紛糾する会議。同じところをぐるぐる回っている。まあ、いつかは時間切れになって決着がつくのだろう。夜中に児童文学完成。明日が締切だが、週末だから月曜日に送ればいいと考えていた。が、出来たので明日送ろう。これで『天海』に復帰できる。

05/15/土
昨日の夜に完成させた児童文学を児童文学者協会に送る。30枚。本になるのは来年らしい。いままでにも児童文学のアンソロジーに3つの作品を出したことがある。これで4作目。歴史小説はデッドストックがたまったままなので、児童文学の注文はありがたいのだが、『天海』が佳境に入ったところだっので、この1週間ほどの中断は時間が惜しかった。それでもおりにふれてプランは練っていた。次は徳川家康が信長の命令で長男を殺す話になる。その前に主人公と信長の対話が必要だ。これは重要なプロットとなる。この作品はすべてが重要なプロットといってもいい。やはり戦国はおもしろい。だが天海ほどおもしろい人物はいないので、他の人物を主人公にして書くつもりはない。というか、司馬遼太郎がおもしろい人物をみんな書いてしまっている。暑くなった。わが住居は日当たりがよすぎるので、晴天の日は暑くなる。エアコンを入れる。夕方散歩に出ると外は涼しい風が吹いている。自宅に戻ると温室に入ったような感じだ。まあ、エアコンを入れれば快適なので問題はない。

05/16/日
『天海』を最初から読み返している。児童文学のために1週間中断したが、改めて最初から読み返してみると、展開はスムーズだし、密度の高い仕上がりになっている。第1章はほぼ完璧だ。まだ主人公が何ものかわからないオープニングから、武田信玄との対話で主人公の個性が見え始める。快川和尚との対話で作品のテーマが見えてくる。そこから近衛前久という個性的な人物が登場し、副主人公としての魅力を見せる。そこで徳川家康の紹介があり、いよいよ家康が登場して三方原の戦さに突入する。そこで第1章が終わるのだが、そこまでの展開で戦国末期の時代背景と、主人公の目指すもののイメージが見えるようになっいる。1週間という中断があったので、文章を客観的に見ることができる。冷静に判断して、これはわかりやすく奥深い作品になりそうな予感がする。読者にもそういう予感をもってもらえるものと思う。来週は編集者とのREALな打ち合わせ1件、NET会議が2件。あとマッサージに出かける。それほど忙しくないので作品に集中できるだろう。

05/17/月
担当編集者と神保町の喫茶店で会う。『尼将軍』の原稿、編集者のチェックが入ったプリントが戻ってきた。要望は3点。そのうち2点は簡単に修正できるが、1点は作品の流れに関するものなので、たやすくは修正できない。とりあえず読み直して修正できるかを検討する。とりあえず検討すると答えてプリントを受け取った。いずれにしろこの作品については今年中に本になるだろう。これでデッドストックが1つ解消される。いま書いている『天海』も同じ担当者で進行している。再来年の大河ドラマが徳川家康なので読者のニーズはあると思う。天海は資料がまったくないので誰も主役としては書けないのではと思っているが、少し早めに出したいと自分では思っている。『紫式部』もチェックの入ったプリントを受け取ったが、これについてはまだいつ出るかわからない。『天海』が少しは売れてくれないとストック一掃ということにはならないようだ。まあ、いま書いている作品だから努力したい。ともあれこれから半月くらいは『尼将軍』を読み返すことになるので『天海』は中断するのだが、いま書きかけのところだけは終わってしまいたい。

05/18/火
ついこのあいだまで、発表のあてもなくのんびりと書きたいものを書いてデッドストックを増やしていた「注目の来ない作家」だったぼくだが、何だか急に忙しくなってきた。最新作の『尼将軍』の出版が決まり、入稿前の書き直しを命じられた。去年まで『文芸思潮』に連載していた作品の出版も決まった。池田健さんと日曜ごとにNETで対談していた企画も、原稿をまとめる方向で進んでいる。いままた新たに企画書を書けという注文が入ったので、いま書いている。これが何と相対性理論がテーマで、すでにぼくは「アインシュタインの謎を解く」という本を出しているし、「原子への不思議な旅」「数式のない宇宙論」というのも書いている。すでに書き尽くしているのだが、死ぬ前にもう1回くらい書いてもいいかという気持もあるので、いまレジメみたいなものを書いている。いま緊急にやらなければならないのは『尼将軍』の最終チェックなのだが、その前にやりかけの『天海』を区切りのいいところまで書いておきたい。その前にこのレジメということで、頭の中が混乱している。昔は年に5冊くらい本を書いていたので、複数の本を並行して書いていたこともあった。某大学で学部長をやっていた時は、ドストエフスキーについて考える一方で、就職率を上げるための戦略とか、学部に博士課程を設けるための申請所とか、そんな大部のレポートを書いていたこともあるので、まあ、できないことはないと思うものの、頭が少しだけ老化しているのではという懸念もあり、やや困惑しているのだが、この困惑を楽しんでいるようなところもある。本日は多忙につき散歩を省略。

05/19/水
新宿三丁目のマッサージ。帰宅すると同時にSARTRASの分配委員会が始まる。問題山積。何度も発言する。まあ、仕方がない。少しずつよくなっていくだろう。『尼将軍』は石橋山の闘い。ヒロインが尼将軍なので、ヒロインのいないこの場面は、草稿の段階で大幅にカットしたのだが、編集者の提言によって少し描写をすることにした。3ページ10枚くらい増やしてもいいだろう。『天海』も少し書いている。近衛前久が出てきた。この人物には愛着を感じている。出番を増やしたい。

05/20/木
SARTRASの理事会。もちろんNET。いろいろ紛糾していたようだが、こちらにとってはどうでもいいことばかりで、本日は一度も発言しなかった。開始前に雑談しただけ。発言しないのでマイクはミュートにしていたのだが、会議中に妻が、郵便受けを見に行くと言って部屋から出ていった。どうやらワクチン注射の案内が本日届くらしい。居住している共同住宅の郵便受けは20階のエントランスにある。妻の話では、そこに同世代の高齢者が何人も集まって「密」状態になっていたらしい。待つうちに案内が無事に届いて妻はただちにスマホで予約をとってくれた。すでにシニア高齢者が予約を入れているので少し先になるが2回とも週末がとれたので、これから会議などのスケジュールが入っても大丈夫。会議のあとまだ雨が降っていなかったので散歩に出た。明日は雨らしいので小石川後楽園まで遠出。もちろん庭園は休業しているのだが、遊園地のジェットコースターはしっかり動いていた。

05/21/金
車を動かすために深川のスーパーへ。本日の仕事はそれだけ。『天海』も少し。『尼将軍』も少し。このペースであと2週間ほど、がんばって作業を続けたい。

05/22/土
妻と散歩。常盤橋が渡れるようになったというので行ってみる。ついでに渋沢栄一の銅像を見て、三越で弁当を買って帰る。三越は混んでいた。

05/23/日
『尼将軍』について担当編集者からの注文は、1、章を4章から8章に増やす。2、石橋山の合戦のようすを描く。3、ヒロインが頼家と公暁を殺すシーンはカットする。以上の3点だ。章を増やすことについては編集者が章を改める箇所に付箋をつけてくれているので、章のタイトルを考えるだけでいい。これはすぐにできた。石橋山については最初の草稿では詳細に書いていたのだが、ヒロインの登場しないシーンが長く続くのもいかがなものかと思い削除した経緯がある。しかしヒロインが信頼している弟の宗時がここで死ぬので、宗時の姿はしっかり書いておくべきだろう。第3点については、ヒロインのキャラクターに関わることなので簡単には削れないのだが、確かに公暁を斬り殺すところは、少しやりすぎという感があるし、ストーリーの流れからしても無理がある。そこを削るためには、少し前後を書き換える必要があるかなと思っている。

05/24/月
NET会議のダブルヘッダー。まずオーファン委員会。まずは委員長の挨拶。あとはほぼ雑談。次の会議まで30分しかないので、iPadの充電が充分ではない。このアイパッドは妻からのおさがりなので電池が消耗しているのだろう。充電に時間がかかる。iPhoneの充電を確認する。いざとなればiPhoneに切り替える。iPhoneで会議に参加した経験があるので大丈夫だ。ということで、SARTRASのWGに臨む。最初にやや長く発言したのだが、こちらの要望はすでに事務局がわかってくれていて、あらかじめ対応してくれていた。言いたいことはそれだけだったので、あとはパソコンで資料を見ながら、時々ワードに切り替えて『天海』を書く。『尼将軍』は石橋山に関しては2箇所に挿入。公暁が死ぬ前後にも2箇所の挿入ということになる。

05/25/火
本日は会議はない。挿入箇所のメモが完了。パソコンに入力。いよいよ最終章だが、問題となる箇所の修正は終えているので、タイプミスの指摘だけ確認して、いよいよ全体の入力作業に入れそうだ。明日はフルに作業をしたいところだが、久し振りにリアルな会議がある。ワクチンの予約はとれているがまだ一月ほど時なので、それまでに感染しないように気をつけたい。

05/26/水
『尼将軍』の入力。編集者のチェックの入ったプリントに赤字を入れていった。編集者に渡したデータは何度も読み返したものだったが、それでもタイプミスがある。とくに頼盛と範頼の交雑がある。ややこしい名前で出てくるなと思う。この二人はほとんど出番がなく話に出てくるだけなので、頭にキャラクターが入っていないので、途中でどちらかわからなくなったのだろう。とはいえタイプミスはごくわずかなので入力は簡単。4章を8章に改めたところはプリントに赤字で書き込んだのでこれも問題はない。新たに挿入した原稿が4箇所あって、これは別のファイルに入力してあった。4ページに及ぶものが1つ。1ページが1つ。残りの2箇所は数行。これを挿入していく。これで完了だと思うが、少し時間を置いてからパソコン画面で読み返してみたいと思う。ともあれ午前中に作業は終わった。夕方、日本点字図書館の理事会。久し振りのリアル会議。文藝家協会もZOOM会議に切り替えたので、これはもう最後に残ったリアル会議だ。理事長も館長も障害者なので、こればかりはZOOMというわけにはいかないのだろう。この会議ではぼくはいつも議長を担当するので終わるとほっとする。大きな議論はなかった。夕食のあと、妻と外に出て聖橋の上まで行く。やや密になっている。月食が見えるはずだが薄雲がかかっていて何も見えず。自宅の戻って窓からのぞいてみたが何も見えず。ネット中継では完全月食を確認。各地からの中継がある中で、日本の中継はただ画像があるだけなのに、香港や台湾からの中継は解説者がしゃべりまくっていく。中国人は黙って月を見るということができないのか。

05/27/木
一日雨。散歩にも出ず。昨日の久し振りのリアル会議で少し疲れたので、のんびりと一日を過ごした。といっても『天海』は少し進めたのだが。のんびりし過ぎて、本日も1件NET会議があったことを忘失していた。夜中に気づいてお詫びのメールを出す。

05/28/金
NET会議は今日だと思い込んでいたので、本日は何もない日になった。児童文学を書いたあと、『尼将軍』のチェックに入ったので、しばらく『天海』に集中できなかった。出だしの部分はほぼ完璧に仕上がっているので、三方ヶ原のあとくらいから読み返してみる。フロイスとの会話のところで黒人の弥助を従者として登場させていたのだが、セリフを増やした。フロイスは流暢な日本語を話すのだが弥助はカタコトしかしゃべれないのでカタカナで表記。あまり長くはしゃべれない。フロイスと主人公の対話も仏教とキリスト教の存在論みたいな会話にした。こういうところに哲学を盛り込まないと類書と差が出ない。自分にしか書けない戦国時代、というのも一つのコンセプトにしている。

05/29/土
緊急事態宣言が延びたので、三鷹サテライトの講座が5月に続いて6月もキャンセルになった。しかし熱心な聴衆がいるので中止にはできない。代替の候補日を調整。こちらはまだワクチンを打っていないのであまり動きたくはないのだが。石山本願寺の和議の場面が完了。これで予定していたプロットはすべて終了した。ここで章を改める。次はもう本能寺に行かないといつまで経っても話が先に進まない。何しろ天海は家光の時代まで生きているので、関ヶ原の戦いが真ん中くらいという感じだ。本能寺は序の口なのだが、導入部では明智光秀を活躍させる必要があった。天海というと、明智光秀が変身して天海になったという、長く続く風評を信じている読者も少なくないと思われるので、明智光秀はしっかりと描いた。さて、いきなり本能寺に行きたいのだが、ここまで秀吉が一度も出てきていない。登場させておかないとイメージがわかない。ということで秀吉を描きたいのだが、秀吉が何をしていたか。大返しの直前は備前あたりにいたはずで、そこに主人公が訪ねていくということにしたい。とすると黒田官兵衛も近くにいるのではないか。まあ、そんなことを考えている。

05/30/日
ここまでで第四章が終わった。第五章の冒頭は備中高松城。有名な大返しの出発点だ。その二ヵ月前。水攻めが始まったころに主人公が秀吉を訪ねる場面。石山本願寺の落城から高松城まで少しタイムラグがある。主人公が秀吉と始めて対面する時点をどこに設定するかは何も考えていなかったのだが、本能寺の直前に設定した方が次の展開がスムーズになると考えた。そこからのプロットは何も考えていなかったが、高松城の地勢について書き始めると、ひとりでに話が先に進んでいって、たちまち会話が始まった。秀吉という人物が明るいキャラクーなので一度しゃべり始めたら、どんどん話が進んでいく。作者としては、勝手にしゃべらせておけばいいという感じになっている。

05/31/月
午前中にゲラが届いた。「文芸思潮」に短期集中連載した『遠き春の日々/ぼくの高校時代』が、みやび出版から出ることになった。みやび出版の伊藤雅昭さんとは一度くらい面識がある気がする。雑誌の原稿を何度か頼まれたのでメールのやりとりはしていた。信頼のできる人なので安心している。「文芸思潮」の五十嵐勉さんが雑誌のデータを送ってくれたようなので、オペレーターが打ったわけではない。校正すべきところがあるとすればぼく自身のタイプミスだけだ。しかし雑誌掲載の時期から現在まで少しタイムラグがあるので、心境の変化みたいなものはある。最後の部分を少し書き換えるくらいのことはするだろうと思っている。『天海』がいいところまで来ているので、並行して仕事を進めたいと思っている。さて、5月も月末になった。今月は前半の連休中は浜松三ヶ日の仕事場にいた。庭の雑草を抜いたり雨漏りの補修などの作業をしながら、『天海』を進めていたが、児童文学の締切が近づいてきたので作品を書き始めて、終わったところで編集者と話をして『尼将軍』の入稿前に手直しをすることになった。その手直しはほぼ終わっているがまだ手元にある。何か気づくことがあれば修正しようと思っている。『天海』は並行して少しずつ書いてきた。この作品は随風と呼ばれた若き日の天海が主人公だが、この人物はまだ歴史と関わるようなことはしていない。つねに傍観者として、歴史的な重要人物のそばにいてただ眺めているという立ち位置にいる。そこで重要となるのは、歴史に関わるキャラクターだ。信長、秀吉、家康、そして明智光秀だが、もう一人、重要人物として近衛前久を登場させた。一回しか出て来ない脇役もしっかりと個性をもった人物として登場させた。武田信玄、快川和尚、覚恕法親王、顕如と教如、フロイスと弥助、それからこれから登場させる黒田官兵衛と石田三成。ここまでの展開はうまくいっている。本能寺の変は前半の山場ではあるが、長久手の戦い、関ヶ原の戦いなど、まだ山場はたくさんある。家康が死んでからもまだ天海は生きているので、かなり長いエピローグが必要だろうと考えている。ここまで女性が一人も出てきていない。ちょっとだけ出たのは秀次の母のお愛の方、教如の母の如春尼、これだけでは弱い。淀君ら三姉妹を出せないか、春日局をいつ登場させるのか、ガラシアは……。このあたりは正直のところ何も考えていない。とにかく場面の緊張感を維持しながら、手探りで一歩ずつ進んでいきたい。


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