天海02

2021年4月

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04/01/木
月が改まり新しいノートになった。『天海』という表題の2冊目のノートということになる。まったく何のあてもなく『天海』とタイトルを決めて書き始めてはみたものの、何を書くか、どのように書くか、まったくの五里霧中であったが、1週間ほど経過すると霧が晴れてくる感じがした。1ヵ月が経過したいまは25ページ(75枚)のところまで来ている。最初は手探りだったがすでに何度も読み返して文体は確立しているし、テーマも方法論も固まっている。まあ、小説を書くというのはこういうことで、やってみれば出来るようになるものだ。戦国時代ということが、当初は大きな壁のように感じられていた。これまではわざと避けてきた。すでに多くの作家が多くの作品を書き残しているのだから、いまさら自分がその領域に参入することもないだろうと思っていたのだが、天海は僧侶なので、自分がこれまで書いてきた、聖徳太子、道鏡、空海、親鸞、日蓮という一連の仏教シリーズの最終ランナーとして、天海を描くことは必然であるようにも感じられた。廣済堂出版の谷口広寿くんと歴史小説を書き始めた時に、いずれは天海を、という提案を受けていたのだが、谷口くんは亡くなってしまった。それでそのプランは立ち消えになっていたのだが、死ぬまでには書きたいと思っていた。しかし疫病の流行もあり、いつ死ぬかわからない高齢者となっているので、いま書くしかないという気持になった。正直のところ恐れがあった。自分の知らない未知の領域に踏み込んで果たしてアイデアがわいてくるかと懸念していたのだが、考えてみれば司馬遼太郎の『国盗り物語』などは読んでいるし、大河ドラマはほぼ欠かさず見ているので、戦国時代のイメージはある。とくについ最近まで明智光秀をやっていたので、光秀から話を始める、ということにすると、すらすらと文章が流れていった。その大河ドラマには近衛前久という魅力的な人物も登場していて、調べてみるとこの人物は上杉謙信のもとで武将として戦っただけでなく、豊臣秀吉を猶子にして関白就任をお膳立てしているし、徳川家康を三河守に任じたのもこの人物なのだ。その子息や孫も魅力的な人物で、天海が亡くなる徳川家光の時代まで近衛家の人物は何度も登場することが予想される。天海そのものは謎の人物で、どんなに描いてもただの空想上のキャラクターにすぎないのだが、顕如、近衛前久、徳川家康と、存在感のある実在の人物を脇に配していけば、イメージ豊かな戦国絵巻が描けるのではという手応えをいま感じている。自分のライフワークと思って書き進めたいと思う。さて、いまはまだ浜松の仕事場にいる。先月の月末には孫2人が来ていたのだが無事に帰ってくれた。責任を果たせたのでこれからはこの作品に集中できる。改めて最初から読んでいるところだが、冒頭の明智光秀のシーンから甲府の武田信玄、恵林寺の快川和尚、石山本願寺の顕如と近衛前久まで、魅力的なキャラクターが次々と登場する。対話ばかりで動きがないのが難点だが、これから徳川家康を登場させ、三方原の戦いを描けば動きが出てくる。ちょうどいまは浜松にいるので、主人公は浜名湖の北岸を歩いているところを書いている。三方原については土地勘がある。広大な平地が広がっているのだがところどころに深い谷があってものすごい段差がある。ここを徳川家康が登っていくと、平原の上に武田軍が魚鱗の陣を敷いていて、山県昌景の赤備えの武者の姿が見える、というシーンがすでに自分の頭の中に浮かんでいる。いい感じで前進できそうだ。

04/02/金
都田テクノというところにあるカインズホームに行く。テーブルの上の電球を明るくしたいと妻が言うので電球を買う。ついでにウイスキーなども買う。ここは屋上に車を駐めるとワゴンで車まで荷物を運べるので重いものも苦にならない。妻がシャトレーゼはないかと言い出したのでスマホで調べると少し距離はあるが車ならすぐに行けるところにあることがわかる。カインズホームは台地の上にあるのだが、シャトレーゼは下にあって、坂を下ったり登ったりする。ここはまさに三方原で、武田信玄が魚鱗の陣を敷いていたのはこのあたり、というまさにその地点を通っていく。いよいよ家康が登場するのだが、家臣も一人か二人出したいところ。家康の家臣って誰なんだ。このあたりの歴史はまだよくのみこめていない。雑誌を何冊か手元においている。あとはネットで調べる。まあ、じっくりと調べて急がずに書いていきたい。

04/03/土
週末。といってもこの仕事場にいれば週末という感じはあまりしないのだが、メールをとると仕事関係のメールが入っていないので週末だなと思う。ひたすらパソコンに向かう。武田信玄が青崩峠を通って天竜川沿いに下ってくる。青崩峠は地図で見たことがある。この浜松の仕事場を使うようになって40年になるので、東名で東京に戻るのではなく、別のルートをとれないかと何度も考えた。東名を名古屋まで行って中央道というのはすぐに思いつくことだ。いまなら豊田から土岐に抜ける高速道路もできている。高速以外でということになると、三州街道で飯田に出るというルートがある。去年、星を見る会で転倒して肩を負傷した昼神温泉のあたりを通るルートだ。武田信玄は喀血で倒れたあとこの三州街道の途上で亡くなっている。三州街道は三河から豊川沿いに飯田の方に向かっている。三州街道から分かれて木曽川に沿って北上するルートもある。いずれにしても浜松から三州街道に出るには鳳来山寺に向かう国道を通る。木曽川沿いに北上して青崩峠を越えるというルートも地図上には記されているのだが、そこには×印のようなものがあって、ふつうの車は通れないようなところらしい。青崩峠という地名からして、大崩れで通れないという感じがする。そこを武田信玄が通ったというのだから、昔の人は偉い。まだ家康が登場していないのだが、家康のファーストショットはこの作品で最も重要な場面だ。心して慎重に書いていきたい。

04/04/日
日曜ごとのネット対談。テーマは精神医学の諸問題。もう必要な回数の半分は越えているので、ここからはまとめの方向を目指すべきだが、まあ、それなりに充実した対談になったと思う。明日は国会図書館の会議がある。会議がネットで出来るようになって、浜松にいても参加できるようになったが、移動はできないので、東京に戻るのは火曜日になる。水曜日も会議の予定が入っているのでここしかない。金曜日には編集者とリアルな打ち合わせが入っているし、その次の週にはリアルな講演も予定されている。また緊急事態宣言という事態も想定されるのだが、飲食を伴うわけではないので、収容人数の半分なら可能ではと思っている。午後から雨が降り出した。それほど強い雨ではないし風はない。雨漏りの箇所もいまのところは無事だ。

04/05/月
午前中に国立国会図書館の会議。まあ、黙って聞いていればいいだけの会議。『天海』はいよいよ三方原の戦いに入る。土地勘がありすぎて詳しく書きすぎて話が長くなる。削ぎ落としてテンポよく語りたい。明日東京に帰る予定だが、妻の体調がよくないので、延期するかもしれない。

04/06/火
妻の体調は回復したようで、9時半に三ヶ日インター。トラックが多かったが渋滞はなく、沼津で昼食、海老名で夕食の弁当を買って午後2時に御茶ノ水に到着。2週間留守にしていたので集合状宅の郵便受けが満杯になっていた。とくに問題はない。御茶ノ水での日常が戻ってくる。仕事場は大きな作り付けのテーブルがあって、食事も仕事もそこでする。大きなテーブルなのでパソコンやiPadや資料などが載っていても食事には支障がない。この御茶ノ水の自宅では自分の仕事用のテーブルがあって、戸を閉めれば個室にもなるような間取りになっているのだが戸を閉めたことはない。それでもキッチンやダイニングと少しだけ距離があるので、気分としては隔離された感じになれる。まあ、子どももいないのでどこにいても作業の邪魔になるということはないのだが、専用のテーブルがあるので集中力は上がりそうだ。ただ天気がいいとものすごく暑くなるのでそろそろ冷房が必要になってくるかもしれない。

04/07/水
御茶ノ水での日常が始まった。浜松三ヶ日での生活は足が地についている。リビングルームの先にベランダがありそこから庭に下りることができる。別荘地の中を散策し^鼻湖の湖岸に出ることもできる。しかし歩いていける範囲は散歩のコースだけで、車に乗らなければスーパーにも行けない。歩いてコンビニにに行くのは不可能だ。この御茶ノ水の高層住宅では同じ敷地の中にスーパーもコンビニもレストランもあるのでここだけで用が足りてしまう。本日は牛乳とウヰスキーを買いにスーパーへ行った。午後からSARTRASの会議。留守にしている間に雑誌などがたまっている。「サイエンス」でファイザーとアストラゼネカのワクチンの違いがわかった。前者はコロナのメッセンジャーRNAに脂質の衣をまとわせているのに対し、後者は風邪のアデノウスルスの体内にコロナの遺伝子を植えつけている。スペインにいる長男がワクチン接種後に頭痛を感じたのは当然で、風邪のウイルスを体内に入れるので風邪の症状が出てしまうのだ。危ないワクチンだが、効果はあるのだろう。自分の仕事はまだエンジンがかからない。三方原の戦いの直前でストップしてしまっている。この作品で初めて動きのあるシーンが出てくるので少し緊張している。プリンターで名刺を作った。いま使っているのと同じものをプリントしただけ。リアルな会議も宴会もなくなったので名刺はほとんど減らないのだが、そろそろ講演の仕事なども入っているので100枚ほどプリントした。名刺は昔から自分で作ることにしている。名刺用の紙を買えば、その紙の番号を入れるだけで名刺が作れるようになっている。久し振りにプリンターを動かした。黒のインクを補充。こういう作業をすると日常というものが戻ってくる感じがする。

04/08/木
久し振りに湯島天神のあたりまで散歩。^鼻湖の湖岸の散歩と比べて、都心の散歩は空気がよくない感じがするが、花粉は少ないので、この季節は都会の方が安心できる。この時期はとくに興味を惹くものがない。アメリカンフットボールは今月末にドラフトを迎える。このゲームはQBと呼ばれる司令塔の能力が80%くらいを占める。今年は4人ほど有能なQBがいるので、4巡目まではQBを指名するだろう。ただこの3年ほどで毎年のベスト3くらいのQBを指名したチームは、他のポジションの選手を指名するので、6巡目くらいまではQBが残っている可能性もある。新人QBが入る可能性のないチームはトレードで有力なQBを獲得しようとする。去年はペイトリオッツのブレイディーがバッカニアーズに移籍したたちまちスーパーボウル制覇という劇的展開になった。今年はセインツのブリーズとコルツのリバースが引退した。コルツはイーグルスのウェンツを引き抜いた。セインツは控えのウィンストンで行くようだ。ライオンズのスタッフォードとコルツのゴフの交換トレードなど、大きな話題もあって、来シーズンの戦力は大きく変動するだろう。そんなことも考えながら日々を過ごしている。

04/09/金
近くの藪蕎麦で旧知の編集者と打ち合わせ。デッドストック3本のうちの1つをお渡しする。これでストックが1つでも減ればと期待している。

04/10/土
本日は何もない。小石川後楽園まで散歩。今日は遊園地のジェットコースターが動いていた。月曜からはマンボウという規制が敷かれるのでどうなるのか。

04/11/日
日曜日は池田健さんとの対談。あと1回で終わることになった。池田さんの実物とは1回しか会ったことがないのだが、毎週ZOOMでお目にかかっているので、充実した対話ができる。こちらもけっこう気を入れてしゃべっているので、2時間の対談を終えると一仕事終わった感じになってしまう。まあ、日曜日だからいいだろう。来週はけっこう厳しくスケジュールが入っていて外出することが多い。花粉はもう終わったようだが、自分の体調を維持しないといけない。

04/12/月
本日は以前から約束していた我孫子での講演。千代田線に乗ることが多いので我孫子行きの電車にはなじみがあるのだが、我孫子駅で降りたことはなかった。大学の仲間の依頼なので改札口で待ち合わせをして会場に向かう。我孫子なので志賀直哉の話をした。大学では90分×16回で日本文学の歴史について語ってきたので、すべての情報が頭の中につまっている。それから自分の仕事についても少し話した。あとは我孫子駅から千代田線直通の電車に乗るだけで自宅に帰り着く。電車に乗っている時間は50分。三鷹よりは少し遠いが、電車が空いているので快適だ。帰って雑文2本書く。

04/13/火
文藝家協会理事会。天気予報は雨だったが傘をさすことはなかった。

04/14/水
本日はマッサージの日。月に一度くらいのペースで新宿三丁目のマッサージに通っている。通常は肩こりを治してもらうだけだが、昨年11月に肩を負傷してからは、リハビリを主な目的となった。20年前に左肩を負傷した時は、しばらく動かしていないと50肩になったのだが、自分で痛みをこらえてストレッチをやっているうちにすぐに治った。今回は70肩なので治りが遅い。浜松の仕事場は木造家屋で室内に梁が出ているところがあって、そこに手をかけて伸ばしているうちにほぼ完治した気はしていたのだが、マッサージで要所を押さえてもらうとまだ硬いところが残っている。本日はかなりの荒療治で硬くなったところをもみほぐしてもらったが、とても痛かった。しかし完治というゴールに近づいたと思う。

04/15/木
武蔵野大学の三鷹サテライトで講座。桓武天皇と空海というテーマ。話すことが多すぎて時間がぎりぎりりになってしまったが、月一度の4回講座なので話したりなかったことは次回に追加することもできるのだが、次回も宇多天皇の菅原道真の話なのでこれも90分では語りきれない。まあ、時間が足りないくらいの話の方が内容が濃くて受講者の緊張感が持続するのではと思っている。

04/16/金
本日は公用なし。午前中に近所の医者。妻が車検に出した車をとりにいったので、こちらは御徒町まで散歩してついでに弁当を買う。本日の仕事はそれだけ。

04/17/土
渋谷のユーロスペースで代島監督の『きみが死んだあとで』の公開初日。少しだけ出演しているぼくがゲストとして招かれた。天気予報は雨だったが、映画の始まる時間はまだ降っていなかったので、予想以上に人が入っていた。蔓延防止の期間なので入場制限をかけているのだろうが、客席の半分近くが埋まっていた。30分ほどのトーク。想い起こせば昔、『いちご同盟』の封切りの時にもゲストで招かれたことがある。まあ、楽しく話ができたと思う。今週はハードだった。昨日は休みだったがあとは毎日、電車に乗っていた。我孫子での講演、三鷹での講座、本日の渋谷でのトーク。話す仕事が週に3回もあるのは、実に久し振りのことだ。大学の教員をしていたころは週に3日は授業でしゃべっていたので、話すことに抵抗はないのだが、久し振りのことなので少し緊張したし、終わるとほっとした感じになった。話すというのは脳の活性化につながるので、適度に話す仕事があるのはいいことだ。

04/18/日
日曜ごとの池田健さんとの対談。本日が最終回。あとは池田さんと編集者にお任せする。散歩に出ていつものパン屋でパンを買う。『天海』も少し。三方原の戦いで第1章が終わるのだが、2章の冒頭については何も考えていない。主人公の生い立ちをどこかで入れたい。若松城の稲荷堂について少し考えてみたい。あまり意味のあることとも思えないが。

04/19/月
オーファン委員会。あとは居住している集合住宅の地下のスーパーで酒と牛乳を買っただけ。『天海』も少し進んだ。そろそろ第1章が終わる。2章の始めは主人公が故郷の会津に帰るところから始めたいと思う。

04/20/火
読売新聞の取材。道鏡について。1時間ほどしゃべった。ずいぶん前に出した本だが興味をもって読んでくれる人がいてありがたい。『天海』は第1章が終わった。スッと終わってしまった感じだが、1章にいろんなことを盛り込みすぎたので、これでいいと思う。また回想などで1章で書いたことについて触れることがあるだろう。

04/21/水
本日は公用はない。散歩のついでに物置にしている部屋の郵便受けのゴミを捨てる。『空海』は第2章に入っている。主人公が故郷の会津に戻ったところから回想に入る。天海の青年期については資料がまったくない。すべてはフィクションとして捏造するしかない。それは楽しい作業ではあるが、それらしき信憑性が必要なので慎重に描いていきたい。

04/22/木
SARTRAS理事会。理事会は重要な会議で発言する人も多く、とくに企業を代表して参加している人は命がかかっているという感じになっている。作家の場合、教育利用は二次利用なので、そこまで命がかかっているわけではないのだが、フェアーな分配ができればいいと考えているので、アンフェアーな要望が出ないか注視はしている。が、細かい規定などについてはどうでもいいので、こちらの集中力がうすれることもある。ZOOMに参加する時は書見台(昔息子がバイオリンを習っていた時に使っていた楽譜立てを代用)にiPadを載せ、それでZOOMにつないでいる。仕事で使っているパソコンに資料を表示させているのだけれども、作業中の『天海』のワード文書の横に資料が並んでいくことになるので、議事がどうでもいい領域に入った時は『天海』を出して戦国時代に思いを馳せている。ZOOMは内職をするには便利だ。

04/23/金
SARTRASのWG。これは困難な作業をやっているのでなかなか前に進まない。2時間の白熱の議論の末に半歩進んだ気がするが次回の討議のようすによってはまた後戻りするかもしれない。

04/24/土
週末になった。日曜ごとにやっていたZOOMの対談は終了したのでこの週末は何もない。SARTRAS関係の会議は5月の連休の先まで入っていないので、しばらくはスケジュールが空白になっている。毎日が日曜日のリタイアした身ではあるが、会議のスケジュールが入っていると自由を奪われる。来週には仕事場に移動して、浮き世のことをしばらく忘れて、自分の仕事に集中したい。首都圏や関西圏には戒厳令が布かれるようだが、静岡県はいまのところ無事なので、ホームセンターなどには行けると思われる。休日は混むかもしれないので連休の隙間にどこかに行きたい。仕事場の周囲は散歩のコースには事欠かないが、気分転換にどこかの公園に行きたいと思っている。持っていくものは『天海』の資料だが、大した量ではない。ここまでのところのプリントも用意したい。日本中世史の最後のところをプリントしてあるが、天海は長生きしているので近世史にくいこんでいる。連休中はまだ戦国時代なので、この年表で事足りるだろう。仕事場の窓が雨漏りしていた。自力で修復できるかやってみたい。前回仕事場に行った時は孫が来て夏ミカンを収穫してくれた。今回は草刈りが必要だが、除草剤をまくことも検討している。

04/25/日
夕方雨の天気予報に早めに散歩。火曜日には浜松に行く予定なので、御茶ノ水周辺の散歩も本日と明日だけ。仕事は第二章に入っている。何も考えずに第二章を書き始めた。故郷の寺の住職が亡くなり引き継ぎで故郷に帰るという設定で、ここで少年時代を解雇。コンパクトに生い立ちを書いて比叡山で修行を始め、覚恕法親王の側近となって越前に赴き、そこで明智光秀と初対面で意気投合するという段取り。こういう展開について事前には何も考えていなかったのだが、すらすらとプロットが出てきた。もうすでに天海が憑依していて、自分を語るような感じでいくらでも回想シーンが出てくる。何とか本能寺まで展開できればあとは歴史的事実を追って書いていけばいいので、軌道に乗ることになる。ここまではうまく書けていると思う。

04/26/月
月曜日になったが、自分の気分も世の中は連休ムードになっているようでメールも来ない。本日は上野公園まで散歩。不忍池の前のベンチで若者が缶チューハイを飲んでいた。コロナが終わってもこういう飲み方が定着するのかもしれない。明日は仕事場への移動。荷造りをする。天海の資料はごくわずか。常備薬の類。日記帳。旅行ではなく仕事場なので、常備薬なども少しは置いてある。ルーターもあるのでパソコンとiPadさえもっていけばいい。電気掃除機の充電器と電池。血圧手帖など。いつものことなので問題はない。これまで書いたところをプリント。

04/27/火
浜松の仕事場に移動。横浜インターのあたりで事故がありやや渋滞したが予定通りに到着。爽やかな風が吹き渡っている。とにかく無事に移動できた。ZOOMの会議の予定も入っていないので、自分の仕事に集中できるだろう。夕方、浜名湖の対岸から満月が昇った。大きな月で夕陽のように赤かった。4月の月はピンクムーンというらしいが、まさにそんな感じだった。

04/28/水
浜松市三ヶ日の仕事場に昨日移動して、本日は三ヶ日で目覚めた。御茶ノ水にいる時は10時起床だがここでは9時に起きる。庭仕事などが必要な場合があるし、天然の風が入る木造建築にいるので早く目が覚めてしまう。本日は午後から雨模様ということで三ヶ日のスーパーに行っただけ。あとはパソコンに向かって仕事をしている。浜松にいると浮き世の動きから離れているような気もするのだが、メールは届くので、自分の仕事についてもやりとりがある。いい方向に進んでいる。さて、明日の4月29日はアメリカンフットボールのドラフト会議初日。明日で今年のシーズンの命運がほぼ決定する。というのもフットボールはサッカーなどと違ってQBというプレーヤーによってチームの戦略やパフォーマンスが決まってしまうからだ。野球の4番バッターは9人の打順の一人にすぎないし、エース投手も6人くらいのローテーションの一人にすぎない。しかし週に1試合しかないFootballの場合は怪我がなければすべての試合に一人のQBが出場してチームの攻撃の起点になる。もちろん守備陣とかキッカーとかも大事だが、チーム戦力の8割方がQBで決まるといってもいい。どのチームにも先発QBが一人ずつ配置されている。Footballのドラフトは成績ビリのチームから順番に指名する。成績ビリとチームは要するにQBがダメだったのでビリになっているわけで、当然、ナンバー1のQBを指名する。Footballはこのビリからのドラフト制度と、選手のギャラの総額に限度を設けたサラリーキャップ制で戦力の均等化が図られる。新人選手はギャラが安いので、大学ナンバーワンQBをチームの中心に据えた上に、サラリーキャップに余裕があるのでトレードで他の選手を補強することも可能で、2年か3年後には地区優勝の候補になることは間違いない。ということで明日(日本時間だと明後日)のドラフト会議で、勢力図が大きく書き換わることになる。ドラフト1番目のビリのチームがナンバー1QBを指名するのは明らかだが、今年は有力なQBが5人いる。ビリのジャガーズの次のジェッツは3年前にナンバー2のQBを指名したのだが、成績が上がらずビリから2番になったので、その選手をトレードに出し新人QBにかける。Footballではドラフト順と既存のプレーヤーとセットで交換することも可能で、ドラフト3番目はトレードでランクアップした49ナーズだが、明らかにQB狙いだ。4番のファルコンズ、5番のベンガルズは優秀なQBがいるのでQBを指名しないと見られる。残った2人のQBがどの順位で指名されるかが今回のポイントとなる。9位のブロンコスがQBを必要としている。15位のペイトリオッツもQB獲得を狙っている。5番手のQBがそこまで残っているかどうか。QBは怪我で欠場することもあるので、当面QBを必要としないチームでも、ベスト5のQBが残っていれば、とりあえず指名しておくということも考えられる。しかしディフェンスの大物を指名したいと考えるチームは多く、チーム事情によってはワイドレシーバーやタイトエンドを必要とするところもある。本当はQBを守るオフェンスのラインが重要で、今年のスーパーボウルでチーフスが完敗したのもオフェンスのラインが弱かったからだ。しかしオフェンスラインはある程度の力量の選手の人数が揃っていればいいので、ドラフト順の下位でも充分に指名できる。人気があるのはディフェンスのラインで、一人でも傑出した選手がいれば、一人で敵のQBを粉砕することができる。ということで、ペイトリオッツの順番までナンバー5のQBが残っているかどうか。大いに楽しみだ。ぼくはペイトリオッツが嫌いだったがそれはブレイディーがあまりにもパーフェクトだったからで、ブレイディーのいなくなったペイトリオッツは気の毒で見ていられない。そこに新人QBが入って活躍するところを見たいという気もする。ということで何となくこの一両日は落ち着かない気分だ。

04/29/木
朝から雨。時々激しい雨。雨漏りのする窓があって心配しているのだが、いまのところ無事。北風で豪雨という状態でなければ大丈夫のようだ。芦名盛氏との対話を終えて、ここで数年、時間を飛ばすことにした。じっくり描いていると戦国末期の全体を書くことになり、大長篇になってしまう。天海は百歳を越えて生きているので生涯を丹念に描くわけにもいかない。時々時間を飛ばさないといけない。一刻も早く本能寺に行きたいのだが、まだ信長を描いていないので、安土城の天守閣が完成したころに、信長との対話を入れることにした。このあたりは少し幻想的に展開したい。

04/30/金
本日はFootballのファンにとっては、SUPERBOWLに次いで熱くなる日だ。ドラフト会議。日本のプロ野球のドラフトは抽選などというアホらしいものが介入するので魅力がないのだが、アメリカのFootballの場合は完全ウェーバー制で、昨年の成績のビリから順番にドラフト順が決定される。ただしこのドラフト順を、ドラフトの順番が回ってくる直前まで、トレードで交換することが可能だ。そこでは本番のSUPERBOWLを上回るほどの戦略ゲームが展開される。ぼくは大学のFootballについてはほとんど情報をもっていないので、ただ驚きをもって見守るばかりだが、有力なQBが5人いるということくらいは知っていた。すでに本番前に12位の49ナーズが3位のドルフィンズと交換でトレードアップしている。このドルフィンズの3位というのは去年のドラフトでテキサンズの1順の権利をゲットしていたのだが、プレーオフ間違いないと思われたテキサンズがまさかのビリから3番目の順位だったので、ドラフト全体3順というポジションが転がり込んできた。しかしドルフィンズは昨年に2番手QBのタゴバイロアを採っているので、今年はQBは必要ない。ということで3番の地位を譲ったのだろう。トレードアップするくらいだから、49ナーズはQBを狙っている。ということで、上位3番まではQBが指名されることは間違いない。ただ5人の有力選手のうち、ぼくが得た情報ではトレーバー・ローレンス、じゃすてぃん・フィールズ、ザック・ウィルソン、マック・ジョーンズ、トレイ・ランスの順だったのだが、直前情報ではザック・ウィルソンの株が上がっていた。また49ナーズはすでに5番手のトレイ・ランスに決めているとのこと。とにかく1番のジャガーズの指名が注目された。去年に続いて、今年はスカパーの中継があったのでぼくはテレビの前で固唾をのんでいたのだが、結局ジャガーズは前評判1位のとればー・ローレンスを指名。人気の選手なので、地味な地域のジャクソンビルにあるジャガーズとしては、実力よりも人気を優先したのだろう。で、2番手のジェッツは株が上がっていたザック・ウィルソンを指名。ジェッツは3年前に2番人気のQBダーノルドを採っていたのだが、直前にこの選手をパンサーズに放出して、新人QBにかけていた。このためパンサーズは昨シーズンの先発QBブリッジウォーターをブロンコスに放出。予想では9番目のブロンコスはQB指名だったのだが、これでブロンコスのQB指名はなくなった。そこで俄然注目されていたのが、15番手のペイトリオッツのところまで有力QBが残っているのではないかということだった。問題は4番手のファルコンズが、4年前にSUPERBOWLに出場して惨敗した先発QBライアンを見限って新人を指名するのではと懸念されたのだが、ここは実力1位のタイトエンドを指名。その後も順調にQBの指名はなかったのだが、突然20番手だったベアーズがトレードで11番手に上昇してQBジャスティン・フィールズを指名した。前評判では2位だったジャスティン・フィールズがここまで残っているというので、急遽トレードアップしたのだろう。ベアーズには3年前のSUPERBOWLのMVPのニック・フォールズにトラビスキーというQBがいたのだが、事前にトラビスキーを放出してベテランのダルトンを入れていた。とにかく充分に先発できるQBが2人いるのだが、ジャスティン・フィールズの前評判に心が動いたのだろう。これで有力QBの5人のうち、残っているのは前評判4位で即戦力と評価されているマック・ジョーンズだけになってしまった。しかし12、13,14と、QBを指名するチームがなかったので、15番手のペイトリオッツはめでたくQBを指名することができた。ペイトリオッツはブレイディーという最高のQBがいたので、ドラフト上位でQBを指名することは久しくなかった。そのブレイディー自身が確かチーム内の6巡目の指名だったはずで、だから全体では150番よりもあとの指名だった。ということで実にペイトリオッツが1巡目でQBを指名するという珍事が生じた。ペイトリオッツはブレイディーを失った去年はニュートンという走るQBをトレードで獲得していたのだが、チームの雰囲気に合わなかった。今年も1年契約で残留しているのだが、ただちに放出されることだろう。といってもニュートンを希望する他チームはいないかもしれない。どこかが控えQBで引き取ってくれれぱいいのだが。このニュートンも5年前くらいのSUPERBOWLに出場していた。ともあれ今年は事前のトレードで大幅にQBの移動があった。去年もブレイディーの移籍があって、移籍1年目にSUPERBOWL制覇というすごいことが起こったのだが、9月から始まるシーズンがますます楽しみになってきた。5人の新人QBのうち、ビリやブービーのチームに指名された場合は、チーム力が整っていないのですぐに活躍できるわけではないだろう。その点ではトレードアップで上位指名できた49ナーズのトレイ・ランス、同じくトレードアップしたベアーズのジャスティン・フィールズ、それに残り福という感じのペイトリオッツのマック・ジョーンズ、この3人は1年目から活躍してチームをプレーオフに導くことだろう。その間に実力をアップさせればSUPERBOWL出場も夢ではない。チーフスとバッカニアーズものんびりしてはいられない。SUPERBOWLに出場したチームはドラフトでは最後に置かれるため有力な新人が入らない。だから連続出場するのが難しい。この完全ウェーバー制のドラフトはよく出来たシステムだと思われる。
ところで自分の仕事の話。昨日、寝酒を飲みながら、何となく仕事がうまくいっていないと思っていた。主人公の随風(のちの天海)のキャラクターがうまくいっていない。天海といえば家康の死後に政治的にのしあがってきた怪僧というイメージがある。逆手をとってピュアな人物に設定する予定でいたのだが、最後までピュアなままだとだんだん嘘くさくなってくる。やはり怪しいところも必要で、だとすると前半部分ではピュアな若者として描かれる随風にも、少し幅が必要だと気づいた。本日はプリントを読み返して、できればその怪しい感じを加味できればと思っている。


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