新しい年創作ノート04

2016年4月

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04/01/金
有明キャンパス。辞令交付式。すでに定年の年齢を過ぎているので一年ごとの更新で、学部長と大学院研究科長の辞令を毎年受けるので、出席しないといけない。午後からは教員全員集合で説明会。長い一日だった。終わってから、『親鸞』の本ゲラを受け取り、担当編集者と神田で飲む。よい作品を書いたので慰労されるのだろうと思っていたが、続篇というか、スピンオフの作品を続けて書けというオファーを受けた。飲んでいるうちにやる気になった。たいへんに疲れる仕事だったので、早く親鸞のことは忘れたいという思いもあるのだが、まあ、しばらく休憩してから取りかかってもいいといまは思っている。神田から歩いて帰った。いい気分で飲めたように思う。

04/02/土
今週は大学の仕事がハードだった。週末は休み。妻と花見に行く。飯田橋から中央線を見下ろす土手沿いの桜。市ヶ谷で折り返して靖国通りの桜。それから靖国通りに入った。街宣車が広瀬中佐を流していた。実は軍歌はわりと好きだ。全体主義もわるくないと思っている。ゲラの最初の数ページを見る。フリガナの付け方などだが、けっこう細かいところをチェックしないといけない。

04/03/日
日曜も休み。妻が買い物に出かけたが、こちらはひたすらゲラの突き合わせ。細かいチェックがかなりあるので、神経が疲れる作業だ。丸一日やっても捗らず。

04/04/月
大学入学式。今年は武蔵野キャンパスの体育館が再建中だが、おりよく卒業式で慣れている有明コロシアムが空いていた。いつも入学式の時期がテニスの試合があって使えないのだが、今年は使えたらしい。終わって有明キャンパスに全員で移動。卒業式の時は、一人、群衆を離れて反対側に進み、ゆりかもめで喫茶店に出向くのだが、入学式は保護者へのガイダンスがすぐに始まるのでスケジュールがタイトだ。だが半地下の高速道路を越える跨線橋が満員なので、テニスコートのわきを抜けていくわずかな人の流れについていってみると、森の中を突っ切り、石垣からジャンプして跳び降りるという、ワイルドなコースだった。有明の先生らしい年輩の人々だったので安心してついていったのだが、いつもこんなところを通っていたのだ。最近の大学入学式には両親が参加する。用意した部屋が満杯になった。学部長の挨拶をしてから、一人で移動。4号館という、今年度から使用するキャンパス外のビルにある教室で学生たちのガイダンスをやっているところに合流。とにかく必要なことを話したし、元気で明るい学部だということが伝わったと思う。

04/05/火
大学院の入学式。これはいつもの武蔵野キャンパスの講堂。例年なら、体育館で午前と午後、2部に分けた入学式のあと、あわただしくガイダンスで挨拶をしたあと、学部長一人だけが大学院の入学式に移動するのだが、今回は別の日になったのでゆとりがある。とはいえ結局2日つぶれることになったので、例年の方がよかったかもしれない。入学式のあと、事務のガイダンスに出向いて学生たちの顔を確認。今年は全員が女子。その事務のガイダンスのあと、演習室に集合して、新入生、在校生、教員の顔合わせ。全員が自己紹介。新入生の研究テーマを確認してから、とりあえずの担当教員を決める。今年は近現代志望の学生が多く、2名を担当することとなった。これで入学式の行事が終わった。ちょっと疲れたが、すべて無事に終わった。学部長としては、少しほっとする。しかし明日は学部の1年生のための教科の説明会がある。ハードなスケジュールが続く。

04/06/水
大学。会議。ガイダンス。また会議。夜中はゲラの突き合わせ。今週はハードだ。『星の王子さま』25版届く。ありがたい。

04/07/木
本日は大学は休み。夕方、歴史時代作家クラブ賞のノミネートの選考会。わたしは選考委員長なので参加しているが、ノミネートに関しては何の知識もないので、大衆小説の評論家の方や編集者の方などのご意見をただ聞いているだけで、アドバイスを求められた時だけ発言する。新人賞と本賞があるので、新人かどうかの判断が必要な場合がある。めでたく5篇ずつのノミネート作品が決まる。この10冊は必ず読まないといけない。終わってから軽く飲んで帰る。ゲラの突き合わせは7章まで完了。3分の2が終わった。明日と明後日で完了するだろう。

04/08/金
釈迦の誕生日だな。近くのかかりつけの医者に行く。あとはひたすらゲラ。夜中に完了。これですべてが終わった。

04/09/土
ゲラを宅急便で送る。これで完了。目の前からゲラがなくなるとほっとする。また再校が届くのだろうが。夕方、マッサージに行くと全身が痛かった。ゲラのストレスでいろんな筋肉がこわばっていたようだ。

04/10/日
日曜だが大学。新1年生のためのオリエンテーション。在校生たちが自主的にプログラムを組んで、大学内でレクリエーションをやる。学校案内にゲーム感覚を採り入れたようなもの。入学前の宿題の読書感想文のコンテストもあって、これの選考と選評、および学部長の挨拶が主な役目。以前は模擬授業もあったのだが、時間がタイトなので、図書館での本探しのゲームに変えた。それで先生は少し楽になったが、終わってから在校生たちへの慰労会がある。昨年は学食での宴会だったが、盛り上がりに欠けたので、近くのしゃぶしゃぶ屋で慰労することになったようだ。ここはわたしも時々、学生をつれていくところ。というか、大学の近くの店はここしかないという状況だ。飲み放題なのでかなり飲んだ。終わったらどういうわけか先生方だけで二次会という話ができていた。やや飲み過ぎた感じになった。

04/11/月
ちょっとだけ宿酔。本日は3限のオムニバス授業1コマだけ。研究室にも寄らず帰ってきた。

04/12/火
本日は2年生全員必修の「小説の歴史」。一学年は200人だが、今回は半分の100人だけ。残りの学生は9月からの3学期ということになる。去年は2限と3限に分かれて、同じ授業の内容だったので、2限で書いた黒板の文字を残しておくことができたが、逆に同じことを続けてしゃべるのはモチベーションが持続しなかった。今回は1学期と3学期なので、まあ、同じことをしゃべるわずらわしさはない。が、週2回の授業になったので、明日はすぐに続きの話になる。話の途中でも、続きは明日と言えばよいので、よい面もある。昨日、新しいカードが支給されて、機会にあてて出勤の記録を残すことになった。やってみたが、GOODという表示が出ただけでとくに反応はないが、まあ、これでいいのだろう。1コマの授業に研究室にも寄らずすぐに帰った。これでもまあ、出勤したことになるのだろう。

04/13/水
「小説の歴史」2回目。同じコマを2日連続でやるのは初めての体験だが、昨日のことなので皆、ある程度は記憶があり、反応がいい。来週になるとどうなるか。本日は1コマだけなのですぐに自宅に帰った。歴時クラブの候補作が届いた。本を10冊読むというのは重労働だ。

04/14/木
木曜は2限から6限までぎっしりコマをつめている。なるべくこの1日でゼミを済ませようという配慮で、だからこの1日は長い。さらに本日は2限の前に会議が入った。会議のあと2限。2年生ゼミ。初めての学生たちとの出会い。3限は3年生、4限は4年生……わかりやすい。5限は修論指導で、6限は大学院。この大学院のゼミは留学生が多いので、日本について何もかもを説明しなければならないのだが、まあ、しゃべるのは楽しい。さすがに疲れて自宅に帰る。のんびりとテレビを見る。

04/15/金
金曜は大学は休み。が、文藝家協会の理事会がある。まあ、わりと早く終わったから、休みみたいなものだ。いつも飲む岳真也さんたちが原発反対の集会に出向いたので早く帰れた。わたしは原発に賛成ではないが、反対でもないので、反対の運動には加わらない。なぜ反対運動に加わらないかというと、ドイツのようにすべての原発をただちに廃止するということになると、技術者が育たないからだ。廃止されるものの技術を学ぶ若者などいないだろう。日本は壊れた原発をかかえているし、稼働年数の過ぎた原発もたくさんかかえている。これを安全な状態にするものでに、百年単位の時間がかかる。技術者を育てていかなければ、誰が福島の後始末をするのか。そういうことを考えずに、ただ反対を叫ぶ人たちの運動には加われない。

04/16/土
阿佐ヶ谷の小さな喫茶店で、松橋登さんと三田和代さんの朗読会。森鴎外と山本周五郎。文学はいいなと思った。午前中に床屋に行くとけっこう混んでいた。いつも週末の夕方に行く。夕方はすいているのだが、午前中は混むということを学習した。しかしこの床屋は回転が速い。あっという間に整髪が終わるからだ。最低限の作業しかしないので時間がかからない。床屋はこれでいい。

04/17/日
大学は金曜から休みなのだが、外出はしていたので、本日がほんとの休み。そう思っていたが、プリンターが急に壊れたのでヨドバシカメラまで見に行った。研究室のレーザーが使えるので自宅のパソコンは最低限でいいが、名刺や年賀状を刷るし、コピー機、スキャナーとしても使いたいので、複合機で最もシンプルなもの。見に行くとサイズはいま使っているのより小さく、価格はびっくりするほど安くなっている。これで大丈夫かと思うのだが、主力商品は写真をプリントする6色のタイプになっていて、4色の顔料は選択肢が少ない。まあ、おもちゃみたいなサイズだが、これでも使えるのだろう。ついでにマッサージ機も見に行く。すぐには買わず、少し考えてみる。

04/18/月
大学。武蔵野学の2回目。先週と同じことをしゃべる。が、同じことをしゃべるのは難しい。夕方、教授会、研究科委員会、学科会。長い1日になる。

04/19/火
大学。小説の歴史の3回目。明日もある。今年度から週2回の授業になったのでどんどん先に進んでいく。これの方がやりやすい感じがする。研究室で仕事。新書を1つ、書くことになりそうだ。これは時間つぶしのようなもので、その間に、次の小説のプランを練りたい。大学も2週目に入って落ち着いてきた。能楽資料センターの会議。自宅に帰って歴時クラブの候補作を読む。候補の過程はここに書けないし、わたしは選考委員長なので、個人的な意見を言うつもりはないのだが、いい作品と出会えた気がした。

04/20/水
大学。小説の歴史4回目。学生のレポートをチェック。本日は学部長会議。議題が多く時間がかかった。

04/21/木
長い1日。2限から6限まで、ゼミがぎっしり。2年と3年は自己紹介のプレゼンテーション。今年の2年生はしっかりしている。3年生はやや低調。4年生は人数が減ったので研究室で雑談。修論指導は先週で目途がついたのでアキ時間。大学院1年は留学生が多いので、日本の神話を紹介した。歴時クラブの選考、新人賞に1つ、本賞で2つ、推薦したいものが見つかった。ただ有力な対抗馬があるので選考は難渋するのではないかという気がする。委員長は行司みたいなものなので、委員の皆さまにお任せすることになるだろう。

04/22/金
本日は大学は休み。大学も2週目に入ったので少し楽になってきたが、休みになるとほっとする。大学は休みだが、内閣府に出向く。障害者週間の作文とポスターの審査の打ち合わせ。1時間もかからない会議。夕方はイーブックジャパンの担当者と飲み会。少し飲み過ぎた。午前中に『親鸞』の再校が届いたのだが、連休明けでいいようなので、本日は目次と登場人物のページを眺めただけ。

04/23/土
日曜日にヨドバシカメラで見たプリンターが届いていたのだが、設定する時間がとれずにいた。本日は朝から設定に取り組む。これまで使っていたプリンターは5年以上使っていたので耐用年数だろう。ほぼ同じ機能なのにずいぶんコンパクトになっている。無線LANが使える機種だが、わたしのパソコンは無線が使えないのでケーブルでつないで設定する。まずはドライバーをダウンロード。それだけでもけっこう時間がかかる。それからプリンターにつなごうとしたのだが、ケーブルに反応しない。プリンターの電源を落として入れ直すと反応した。テスト用のプリントもうまくいって、これでとりあえず仕事には支障がなくなった。が、問題は無線LANだ。妻のパソコンは無線を出せるし、がiPhoneとiPadももっているので、無線LANが必要だ。これらの機器が自分のスマホの設定では、ずいぶん長いパスワードを入力しなければならなかった。またそういう作業が必要だろうと思ったのだが、このプリンターは自動認識できるようで、ボタン操作だけでルーターにつながった。妻のiPadにアプリを入れて試しに写真をプリントさせると、ちゃんとプリンターが反応した。すごいものだ。とにかくこれですべての作業が終わった。これだけでけっこう疲れた。ゲラは数ページ見ただけ。

04/24/日
せっかくの日曜日なので妻と散歩。千代田線で根津まで行って、根津神社のツツジを見たあと、東大の三四郎池などを見ながら歩いて戻った。1万歩を越えた。

05/25/月
月曜だが学科会がないので休み。自宅で再校のゲラを見る。著者校で直したところを付き合わせるだけでいいかと思ったが、歴時作家クラブ賞の選考で作品を読んでいるうちに、自分の文章と比べてみたくなった。読み始めて安心した。自分の文章は最高だ。そのまま通読することにしたら、修正点が見つかった。これは本腰を入れて熟読しないといけない。

05/26/火
2限の授業のあと打ち合わせ1件。その後、研究室で少し作業をしたあと、文藝家協会へ。オーファン勉強会。話がかなり盛り上がってきたが、前途は多難。

05/27/水
2限の授業。火曜と水曜は連休で来週は授業がない。そこできりのよいところまで話をするため、かなり早口にしゃべった。いささか疲れた。打ち合わせ一件。このところ打ち合わせが多い。打ち合わせをするとそれに付随する作業がついてくる。自宅に帰って編集者と新書の打ち合わせ。

05/28/木
2限から6限までぶっ続けの授業。終わった。これで連休だ。しかし大学は次の木曜(世間では子どもの日)から始まる。疲れる木曜が連続する感じがする。

04/29/金
仕事場に移動。連休初日なので渋滞が予想されたが、予想以上だった。6時間ほどかかった。運転は妻だが、横にいるだけで疲れた。本日は早めに寝る。

04/30/土
仕事場は35年前に建てた。まだ八王子にいたころだ。その後、自宅は三宿に移転し、いまは御茶ノ水にいる。自宅が変わると、想い出のない場所にいるという感じがする。この仕事場に来ると想い出がつまっている。15年つれそった犬との想い出がある。いまは40歳を越えた2人の息子の幼い日の想い出がある。ここの柱には息子たちの成長の記録が柱に刻まれている。それに次男のところの2人の孫の記録も加わっていて、年月の重みが感じられる。本日は田舎の国道沿いの「しまむら」とか「オレンジ」といった、東京にいたらけっして行かないような店を巡回した。再校ゲラをもってきている。10章の半ばまで来た。10章は長く中身がつまっているのだが、明日には完了させたい。新書の出だしのところも少し入力した。4月が終わった。まだ次の小説の構想はまったくうかばない。ただ『親鸞』の再校のゲラがほぼ完了のところまで来ているし、新書の企画も決まって、とりあえずこれからの2ヵ月は新書を書くことが決まった。この期間、おりにふれて、次の小説のことを考えていきたい。


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