尼将軍03

2020年10月

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10/01/木
さて10月になった。『尼将軍』というこのノートも3冊目になった。8月の頭から書き始めて二ヵ月が経過した。現在77ページを書いている。1ページを400字で3枚と考えると約230枚というところになる。第1章が50ページ150枚になったので、全体を200ページ600枚。全4章ということにしておく。もっと長くなるかもしれないが、やってみないとわからない。ここから先はできる限りコンパクトに書きたいとは思っているが、削りすぎるとただの粗筋になってしまう。ヒロインの万寿は魅力的に書けている。『光と陰の紫式部』から連続して強い女を書いているので、一貫して流れに乗っている感じでどんどん書けていく。道長の影がうすかったように、本作でも頼朝の影がうすいが仕方がない。道長は最後まで権力者として君臨するのに対し、頼朝は作品の真ん中で死んでしまう。そこからは二人の息子と弟の義時を陰で支える闇の将軍としてのヒロインの活躍が始まる。いまのところヒロインの夫に対する愛がうすいように感じている。頼朝にもっと魅力が必要だ。そこで少しずつ頼朝の聡明さといったものも描いていきたい。ということで10月が始まった。本日は何ごともなし。いつものコースを散歩。

10/02/金
テレビ中継でブロンコス対ジェッツを見る。ブロンコスはエースQBロックの負傷で、去年ドラフト外で入った練習生のリピンが先発するというので注目の試合。第3クォーターまではよくがんばって11点差でリードしていたのだが、第4クォーターに入って勝ちを意識したのか連続してインターセプト。逆転されてやはりダメだったかと思ったがディフェンスとキッカーが頑張って再逆転し、デビュー戦を飾った。まあ、及第点だがエースが戻ってくるまでのつなぎといった感じだ。Footballのシーズンが始まると週に3日は試合があるので昂奮する。試合がない日は気が抜けたようになってしまう。

10/03/土
何ごともない一日。『尼将軍』は見直しが終わって新たな領域に入っているが、まだ調子は出ていない。ここから先はなるべくプロットの展開を早くして、早めに頼朝を殺してしまいたい。頼朝が死んでからの方がヒロインの活躍の場面があるので、源平合戦みたいなものはまったく描かずに先にプロットを飛ばしていきたい。

10/04/日
渋谷ユーロライブで代島治彦監督『きみが死んだあとで』の上映とトークの会。53年前の羽田闘争で弁天橋で亡くなった山崎博昭くんの関係者に取材したドキュメンタリー作品。出演者の一人なので出かけていく。『文芸思潮』に書いた『遠き春の日々』にも出てくる人々が半世紀前の思い出を語る。ドキュメントだが話の展開に流れがあって、一つのストーリーを読み取ることができた。いい映画だった。終わって7人ほどの出演者がトーク。取り合いの人ばかりだが、舞台の上で一言ずつしゃべるのはおもしろい試みだ。順番が回ってきたので一言しゃべった。いい話ができたと思う。200分もある長い映画なので疲れるかと思ったが、なかみがおもしろかったので疲れは感じなかった。この時期なので打ち上げみたいなものはないのか、スタッフだけでやるのかわからないが、ぼくはすぐに帰ってきた。久し振りに渋谷の街を歩くのは、けっこう疲れる。映画館は昔の百軒店にある。昔そのあたりに「ありんこ」というジャズ喫茶があったのだが、どこにあったからわからない。ぼくが大学3年間住んでいたアパートが神泉の駅の近くにある。少し早めに到着したのでそのあたりに行ってみたが、同じサイズの新しい建物になっていた。何となく懐かしかった。

10/05/月
朝5時前に起きてDAZNでFootballの中継を見る。Footballはほとんどの試合が日曜日に開催される。半分以上が昼間の試合で、日本時間の午前2時から、数試合がアメリカの夕方で日本では5時半からとなるのだが、5時前から見ると、午前2時からの試合の最後の5分くらいが見られてはらはらする。アメリカ現地では、地元のテレビ局が地元の試合を中継するので、それ以外の試合はリアルタイムでは見られない。そのためネット中継を見る人も多いのだろうが、全国中継の試合として、日曜、月曜、木曜に1試合ずつナイトゲームが設定されている。日本では9時半くらいから始まる。それはスカパーで中継するのでテレビで見ることになる。DAZNの中継は英語の実況しかないので、日本語で解説してくれるのはありがたい。ぼくのリスニング能力では、耳で聴くだけではわからないことが多い。たとえばファーストダウンとフォースダウンが同じように感じられてしまう。これはえらい違いだ。だからDAZNは集中して見ていないといけないし、DOZNのレッドゾーンというチャンネルは、数試合を切り替えながら多元中継するので目が離せない。テレビの日本語の解説があると、耳で聴きながら資料に目を通したり、自分の仕事ができる。1試合だけの中継だと、Footballは野球と同じようにプレーが停止されている時間が多いので、かなり仕事ができる。夕方にいつものコースを散歩。聖橋を渡って蔵前通りから目白通りに折れ、後楽園遊園地の間を抜け、小石川後楽園の外周を回って水道橋から御茶ノ水に戻るというコース。これで7000歩くらいになる。ところが小石川後楽園の隣の小さな公園の敷地の半分にプレハブみたいなものが建っていて、何かと思ったらPCR検査場だという。感染の疑いのある人々がぞろぞろ集まってきたら散歩どころではない。コースを替えないといけないと痛感した。

10/06/火
本日もDAZNでマンデーナイトの試合を見る。なぜか火曜の朝はスカパーの試合がない。昔、ぼくがスカパーと契約した当初は、日テレG+とガオラというチャンネルでFootballの放送があったのだが、ガオラが放送しなくなり、日テレG+もマンデーナイトを中継しなくなった。DAZNがあるからとにかく見られる。そのDAZNも今年はFootballの中継をやめるのではとネットのチャットなどで騒がれていた。何しろ開幕の前日まで放送予定が発表されていなかったのだ。ぼくは頭にきてDAZNを解約しようと思ったのだが、解約の仕方がわからず途惑っていて、まあ日本の野球もやるしたまにはスペインのサッカーも見ると解約しなかったら、突然、放送予定が発表されたのだった。そもそもFootballがちゃんと予定どおりに開幕するかもわからなかったのだから、仕方がないことかもしれない。患者が出たとのことでタイタンズ対スティーラーズの試合が7週目に延期された。Footballは各チームが16試合をこなすのを17週のスケジュールで実施する。つまりすべてのチームがシーズンのどこかで1週の休みが入る。延期された試合もこの休みのところにうまくはめこんだようだ。チーフス対ペイトリオッツ戦も日曜の試合が月曜に延期されただけで済んだ。そのため本日はマンデーナイトゲームが2試合ある。ペイトリオッツはQBのニュートンが罹患した。野球でいえばエース投手がいなくなったわけでチーフスの楽勝かと思っていたら、油断したのかロースコアの接戦になった。最後はペイトリオッツの控えQBがミスを連発して差が開いてしまったが、途中までははらはらした。本日は散歩のコースを替えて上野の不忍池まで。このコースだといつもの定番コースより少し歩数が短くなるのだが、歩いているうちに解決法がわかった。池を2周すればいいのだ。

10/07/水
今日は不忍池を2周してみた。同じところを2回まわるというのはバカみたいだが、公園の中なので車が来る道よりは快適だ。浜松の仕事場の^鼻湖の湖岸を歩くのに比べれば快適さは劣るけれども、まあ、適当な散歩コースだ。2周できるなら3周してもいいはずだが、疲れて足に負担がかかるとこちらは老人だから、自宅に帰り着けないかとも思う。しかし湯島の地下鉄駅まで歩けば電車に乗れる。まあ、湯島まで行けば天神様の階段をゆっくり上がって、あとは車の少ない快適な道だし、一直線に御茶ノ水まで進むだけだ。年末年始に長男が泊まっていた宿舎の近くを通る。あの時は疫病が世界的に流行するなどとは思ってもみなかった。長男は何か感じることがあって、いつもの夏休みに来るのに無理をして年末年始に来て、家族だけのコンサートを開いてくれた。単に自分の都合とか、子どもたちの進学の都合などがあって、この時期を逃すとしばらく日本に来れないと算段したのかもしれなかった。まあ、来てくれてよかった。この疫病はいつ収まるともしれない。日本は無難に乗り切っているが、ヨーロッパは第2波が来ている。長男は音楽院の先生をしているのだが、生徒に患者が出たとかで1週間仕事に出られなかったようだ。

10/08/木
SARTRASの理事会。午後5時からという変な時間。発言せねばと思ったこともあったのだが、他の人が先に指摘してくれたので、一度も発言せずに終わった。楽といえば楽だが。台風が接近しているとかで一日中雨。散歩にも行かず。『尼将軍』は源平合戦を飛ばしていきなり10年後ということにしたので、話の展開が早い。丹後局とヒロインの対話をしっかり描いたら、次は頼朝の死へと移る。実朝暗殺から承久の乱のあたりが尼将軍の活躍の場なので、そちらに話の重点を置きたい。

10/09/金
今日はフットボールのある日。バッカニアーズに移籍したトム・ブレイディーとベアーズに移籍したニック・フォールズの対戦。3年前のスーパーボールの再現。またニック・フォールズの勝利。ぼくはニック・フォールズのファンなので1点差の勝利に酔う。今日も一日中雨。明日も終日雨らしい。月曜の試合は多元中継なので目が離せないが、金曜は1試合だけのテレビ中継で日本語の解説があるので、テレビの前で仕事をする。Footballはサッカーやラグビーと違ってプレーが寸断されるのでノートに文章を書く時間がとれる。かなりメモが進んだ。

10/10/土
3日連続の終日雨。台風はどうやら南の海に去っていくらしいが秋雨前線が停滞している。この「前線」というの、小学校では「不連続線」と習った記憶があるのでネットで調べたらぼくの小学校時代は過渡期で両方使っていたらしい。ぼくは小学校で習ったことはたいてい記憶している。

10/11/日
ようやく雨が止んだ。御徒町まで散歩。弁当を買って帰る。『尼将軍』はいきなり10年飛ばしたので頼朝の死も軽く通過し、次は頼家の死に向かっている。頼家が死んで2章が終わる。そこまでで全体の半分というふうに考えている。

10/12/月
月曜日はFootballの日。5時に目覚ましをセットしたのだが、4時前に起きてしまった。隣で寝ている妻を起こしたくないので目覚ましが鳴る前に起きたらそのまま起きることにしている。この時間だと、午前2時からの試合がまだ前半終了直前といった感じで、どの試合も接戦になっている。DAZNのレッドゾーンというチャンネルをセットすると、次から次へと多元中継で切り替わっていく。チーフスが負けてしまった。ブリッジウォーターのパンサーズは勝った。スティーラーズも強い。ブラウンズも勝った。2時からの試合の後半と、5時からの試合を見たあと、スカパーの中継でバイキングス対シーホークス戦を見ると、嫌いなバイキングスが勝っているので、妻とインフルエンザの予防注射を受けに行った。帰ってテレビをつけるとまだ13対0で負けていたが、そこからの5分間でタッチダウンが3つ決まって13対21と大逆転。そこからバイキングスも盛り返して、残り15秒のところまで1点差で負けていたのだが、10ヤードほど第4ダウンでパスを受けたら勝ち、落としたら負けという最後のパスが決まって大逆転。ああ、疲れた。Footballは面白い。サッカーではこういう逆転はない。と書いて、そうでもないと気づいた。ホーム&アウェイの2試合合計で競う場合、同点の場合はアウェイでの得点を倍にして計算するので、1点とるかどうかで、勝つか負けるかが決まるという状況はある。野球のプレーオフでも引分ならホームチームの勝ちとか、そんな計算をすることがある。が、まあ、こういう逆転劇があるのはFootballとバスケが多い。『尼将軍』は頼家と安達景盛の対立の話。景盛は頼朝の落胤という風評がある。これは事実かもしれない。

10/13/火
本日はFootballがある。テレビ中継がないのでDAZNを開いて、仕事をしながら英語のアナウンスが盛り上がったところだけ画面を見る。チャージャーズの新人QBハーバートが頑張っている。どんどん点が入っていく。しかしセインツのブリーズも頑張って、ついに同点。それでも1分ほど時間が残っていて、ハーバートのロングパスが決まり、35ヤード地点まで到達した。ゴールポストはゴールラインの10ヤード先に立っている。スナッパーからホルダーまでの距離が5ヤードほど。つまり50ヤードのロングキックとなるのだが、入らない距離ではない。ハーバートの初勝利になりそうだと思ったのだがキッカーが失敗。延長戦に。ハーバートはチーフス戦でも延長で負けている。懸念したとおり、セインツがキックで3点とったのに、ハーバートは前進できず。セインツの勝ちが決まった。よくがんばっているのに報われない。しかしこの経験が次に生かされることだろう。本日は車を動かすために深川のショッピングモールに行く。『春のソナタ』の10版が出るとのこと。新刊がまったく出ない状態になっているので文庫の増刷はありがたい。

10/14/水
日大文芸賞の授賞式。いつもは懇親会があるのだが今回は表彰だけ。講評でやや長めのスピーチをする。本日の仕事はそれだけ。疫病の影響で延期になっていたビルズ対タイタンズ戦は帰って結果を確認しただけ。全勝同士の対戦はタイタンズが圧勝した。このチームはヘンリーというランニングバックでもっているチーム。対戦相手に恵まれているだけだろう。

10/15/木
今週の公用は昨日の授賞式だけなので自分の仕事に集中できるはずだが、妻と傘を差して御徒町まで散歩したあと、何となく気持が停滞してしまった。『尼将軍』は100ページに到達して、2章から3章への切り換えをしないといけないのだが、まだ頼家が死なないので困っている。戦略が必要だ。3章に備えて今後の展開を考え、重要人物が集まって、これからのことを語り合う、という場面を設定したい。尼御台の万寿、北条義時、阿波局、これは兄弟姉妹、ここに側近の二階堂行光を加えるとして、あとは三浦義村か。ここに安達景盛を加えるかどうか。まあ、やってみるしかない。来週はどういうわけか公用がぎっしりつまっている。今日は急に寒くなった。冷たい雨が降っている。しかし猛暑のトラウマがまだ残っていて、体が対応できない。暑さに対する恐怖で、いまもティーシャツだけで過ごしている。下半身はさすがに長ズボンになった。この季節に何を着ていたのか記憶がない。一気に冬になってしまえば長袖のシャツを着るのだが。

10/16/金
金曜日はFootballのテレビ中継がある日だが、疫病の感染者が出て日程が変更され本日の試合は月曜日に延期となった。チーフス対ビルズというカンファの首位争いに関わる好ゲームだったので残念。月曜に延期になると他の試合と同じ時間になるので多元中継の慌ただしい断片的な放送になる。しかもDAZNだけの中継で英語の解説しかない。まあ、Footballに関しては何を言っているかはわかるのだが。知人から電話があって御茶ノ水駅前の喫茶店で雑談。それで外出したことにして散歩には行かず。昨日夜中にメモを書いたぶんを入力しておきたい。2章の最後の部分なので気持があせっている。外は涼しいのだが日当たりが良すぎる我が家は暑い。扇風機で凌ぐ。

10/17/土
一日中雨。ようやく第2章が終わった。これでようやく半分か。頼家の死まで行かなかった。死の予告みたいなところで章を替えることにした。3章は実朝が主役となる。しかし実朝について実はよく知らない。資料を読み込まないといけない。

10/18/日
久し振りに後楽園の方まで散歩。遊園地はかなり密状態の混雑になっていた。夕方、ネットで日本歴史時代作家協会の理事会。というかネットの飲み会。ひたすら雑談。

10/19/月
早朝3時半に起きてDAZNでFootballを見る。この時間だとハーフタイムのかなり前から試合を見られる。どの試合も接戦。今シーズンは疫病の蔓延でどのチームも練習ができなかったようで、怪我人が多かったり、調子が上がらなかったり、というようすが見られたのだが、ここへ来て、ようやく選手たちの体が動くようになったようで、充実した試合が多くなった。ブレイディーのバッカニアーズが全勝のパッカーズに大勝したのは感動的だった。スティーラーズのロスリスバーガーも完全復活で全勝を守っている。夕方、SARTRASの会議。長い一日だった。

10/20/火
本日は6時に起きてチーフス対ビルズ戦を見る。順当にチーフスが勝った。カーディナルス対カウボーイズ戦はカーディナルズの圧勝。カウボーイズはQBのプレスコットが怪我で今期絶望。仕方がない。不忍池まで散歩。

10/21/水
妻と散歩に出かける。浅草。東武電車の線路沿いに遊歩道ができたというので行ってみた。まあ、あまりいいところではなかった。スカイツリーの下まで行く。今年の1月、孫5号がアイススケートをした場所。厳寒の中で孫が帰るというまでじっと待っていた懐かしい思い出。

10/22/木
内閣府で「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の審査委員会。千代田線国会議事堂前。ぼくがこの駅で下りるのは国立国会図書館の協議会と、年に一度のこの審査だけ。今年は国会図書館の会議はネットだったので、実に久し振りにこの駅で下りた。ここのエスカレーターは流れに乗って移動すると丸ノ内線ホームに誘導されてしまうので注意が必要。久々なのでうっかりしそうになった。人の流れから離れて奥のエスカレーターに乗らないといけない。ここに来る時は審査の対象となる候補作など荷物が多いのだが、雨天のことが多い。本日も曇天だったが雨は降らなかった。1時半から4時半までたっぷり3時間。ポスター2部門、作文4部門ある。ぼくは委員長で審査の議長も務めるので、しゃべり続けることになる。本日は久々に「労働」をしたという気がした。

10/23/金
本日は著団連の臨時総会。ネット会議なので和やかに談笑。終日の雨。傘の要らない隣接したスーパーでウィスキーと牛乳を買う。いまは『光と陰の紫式部』を読み返している。日本歴史時代作家協会のホームページに出だしの部分だけ掲示することにしたので、その部分を読み返したのだが、やはり時間を置いてから読み返すと修正点が目につく。それで全体を読み返すことにした。読み返しながら感じたのは、ヒロインの紫式部がよく動くことだ。陰陽師の超能力があるという設定なので空を飛んだり怨霊と対決したりする。そこでいま書いている『尼将軍』ももっと動きをつけないといけないと感じた。『紫式部』の読み返しが完了したら、『尼将軍』を最初から読み返さないといけない。

10/24/土
『光と陰の紫式部』読み返し完了。読み返してよかった。エンディングの説明をかなりカットしてスッキリした。これで完全に手が離れた。まあ、しばらくこのままにしておく。書きかけの『尼将軍』も最初から読み返すことにした。どうも『紫式部』の方がおもしろい。『尼将軍』はスペクタクルに欠ける。紫式部は空を飛ぶ。尼将軍は馬に乗るくらいだ。それでもテンポより語れば何とかなる。人間関係が複雑なのでなるべくシンプルに展開させていく。昨日は雨だったが本日は晴天。不忍池を2周。といっても池の外周ではなく弁天島に行くだけなので半周が2回ということか。不忍池の外周の一周は不可能だ。北岸が動物園の敷地なので通れない。2周したので外周1周に匹敵するか。

10/25/日
このところ不忍池まで散歩することが多い。神田明神から湯島天神へ、丘の上を進んで、天神の裏から不忍池に向かうコースを通るのだが、時には秋葉原から下の道を行くこともある。秋葉原を歩くと、メイド喫茶の女の子の呼び込みがやたらと増えている。コロナ禍の前よりも遙かに多くなっていて、街が活気づいているのかと思ったのだが、どうやら、ぼったくりの店が急速に増えているようだ。歌舞伎町に人が行かなくなったので、にわかに秋葉原に移転した店が多いらしい。恐ろしいことだ。ざんねんながら高齢者のぼくのところに来る女の子はいないのだが。本日は雑文を片づける日。短いものを4本書いた。雑文を書いているとまるで作家になったような気がする。

10/26/月
5時に起きたので2時からの試合はすべて終わっていた。4時くらいに起きないと楽しめない。チーフスは快勝。シーホークス対カーディナルスがおもしろかった。去年のドラ1QBマレーが調子が出てきた。全勝のシーホークスに10点差を追いつき、延長戦で勝った。昨日書いた短い原稿を送付。届いたという返信があったのでこれで雑用がすべて片付いた。妻のショッピングモールに出かけた。『尼将軍』を読み返さないといけないのだが、Footballを見た日は気分がふわふわしている。まあ、急ぐ仕事ではない。

10/27/火
今日はテレビ中継がある。ベアーズのニック・フォールズに期待したがラムズのディフェンスが強く完敗だった。ラムズは一昨年のカンファのチャンピオンで昨年は不振だったが今年は全体にチーム力が上がっている。10月もあとわずか。『尼将軍』は最初から読み返すことにしたので、まったく前進していないが、あせることはないと思っている。ベストの作品を書くというのが目標だから、急ぐ必要はないのだ。最初から一気にベストの作品が書ければいいのだが、歴史小説の場合は資料を読み込む必要がある。頼朝の旗揚げに関してはこれまでも『夢将軍頼朝』、『西行月に恋する』、『阿修羅の西行』などで書いてきた。後鳥羽院は『親鸞』に登場した。まったく未知の領域だったのは実朝暗殺と承久の乱で、これをどう解釈するかでプロットも変わってくる。ようやくある程度の資料を読み込んだので、流れは把握できたが、ヒロインをどこまで関わらせるか、まだ決めていない。書き進むうちに自然な展開でイメージが決まっていくだろう。そのためには最初から読み返して修正する必要がある。要するにどこかで決めなければならないのは、「一番悪い奴は誰か」ということだ。北条政子、義時、三浦義村のどれかだろう。大江広元という考え方もできる。昔、岸田森という俳優が大江広元を演じているのを見て、広元はいい人だという先入観をもっている。文官にはさほどの力はない。女性の尼将軍も軍事力はもっていない。義時と義村。どっちだ。まあ、タイトルが『尼将軍』だから、ヒロインが活躍しないとおもしろくないのだが、実朝暗殺事件に関しては自分の産みの子を殺すことになるので、ものすごい悪女ということになってしまう。それでもいいか、とは思うものの、ぼくは悪女というものは好きではないので、どこかに救いを設定したい気もする。ということで、最初から読み返して、義時のイメージを少し深めていければと思っている。

10/28/水
朝8時に起きて文藝家協会へ。Footballのある日は5時前に起きたりするので朝起きることに関しては苦にはならない。内閣府の公益認定委員会による公益社団法人の監査。細かい作業は事務局が担当するのだが、冒頭に協会の概容と公益事業についての説明をすることになっていて、著作権管理業務などについて説明。来年度からSARTRASの補償金分配の事業も始まるのでその公益性についても説明をしておいた。必要ならば定款の変更も検討すべきだが、とりあえずSARTRASの事業の公益性についてはご理解をいただけた。文藝家協会はとくに怪しい事業は実施していないので問題はまったくない。午後は出久根さんが担当するので昼食の弁当を食べて帰ってきた。午後は『尼将軍』の読み返しの作業。必要な箇所を書き換えていく。後半に出番の多い小四郎義時と阿波局のイメージを定着させるため前半でも機会を設けて出番を増やしていくこととする。

10/29/木
本日は何事もなし。不忍池2周。『尼将軍』の読み返し。説明がくどいところをカットしていく。源平合戦みたいな情報は不要だ。ヒロインが生きている狭い領域だけを描いていかないと大長篇になってしまう。

10/30/金
午前中はスカパーでFootballを見る。DAZNでも見られるのだが午後からネット会議があるのでiPadの電池を減らしたくない。スカパーはリビングルームの大きなテレビでないと見られない。カードを入れ換えれば仕事机の前の小さなテレビで見られるはずだがめんどくさい。パソコンでの作業ができないので、『尼将軍』の2章の終わりまでをプリントすることにした。これまではパソコンの画面で読み返していたのだが、プリントすると展開の遅いところが目についた。ということで最初から読み返して赤字を入れていく。やっぱり紙にタテガキになっているのを見た方が、修正点が浮き彫りになってくる。午後から会議。このところ会議が多い。でもプリントしたものがあれば会議中に内職できる。ついでに旺文社のコンクールの詩の原稿も見た。これは締切はまだ先出し、予備選考の方が選評を書いてくださっているので、こちらはOKを出すだけでいい。

11/31/土
妻が早朝に名古屋に行った。嫁さんが次男を連れて大阪に行くので、次男と父親(ぼくたちの次男)の世話。ぼくが起きた時にはもう妻はもういなかった。朝から一人でのんびり仕事。散歩の前に書庫に借りている部屋に行く。ぼくの作品をほぼ読んでいる知人から、『考えるウォークマン』だけ読んでいない、とメールが来たので、捜しにいった。若い頃に書いた哲学的断片みたいな本。誰にも理解されない、読者のいない作品だと思っていた。その知人はぼくの本を読み込んでくれているので、もしかしたらただ一人の読者になるかもしれないと思い、念を入れて捜したら、ようやく1冊だけ見つかった。自宅に帰って読んでみた。何が書いてあるか自分もすっかり忘れていた。書けなくなった小説家の話だが、当時の自分の状況を一種のファンタジーとして書いたものだ。書けない、どう書いたらいいかわからない、何を書くべきかわからない、ということで悩んでいる主人公がいる。それから35年以上が経過していまの自分がいるのだが、すでに多くの作品を書き、『続カラマーゾフの兄弟』みたいな途方もない作品を書き、いまも元気よく作品を書いている。どこかで転機があったのだと思う。思い悩んでいたのが、急に書けるようになった。『空海』かもしれない。これは思想小説の試みだが、理屈だけでは小説にならない。『空海』の場合は司馬遼太郎さんの創作ノートともいえる『空海の風景』があって、ディテイルのイメージをそっくり取り込むことができた。これで楽をしたわけだが、それ以後は資料をしっかり読み込んでディテイルを頭の中に叩き込んでから書く、という書き方がわかってきた。そのかわりにオリジナルの現代小説をほとんど書かなくなった。『空海』の一年後に書いた『永遠の放課後』だけかな。去年から今年にかけて『文芸思潮』に連載した『遠き春の日々』は現代の話だが、自分の高校時代を描いたもので自伝だし、五十年前のことだからもはや歴史小説かもしれない。さて、今月も月末だ。何か、『尼将軍』は停滞してしまった。『光と陰の紫式部』を読み返したせいで、この作品のオープニングに比べたら、『尼将軍』は弱いと感じた。どうしたらいいかはまだわからない。実は今日、物置の部屋に行って『考えるウォークマン』を捜したついでに『続カラマーゾフの兄弟』も自宅に持って帰ったら、ちょっと読み出したら止まらなくなった。こんなおもしろい小説は他にないだろうと自画自賛したりする。『考えるウォークマン』も誰も理解できないだろうけれど、自分にとってはおもしろかった。自分がおもしろいと思える作品を書くというのは、作家にとっては最も重要なことだ。先日、☆評価のあるイタリア料理店のオーナーシェフがサイゼリアでアルバイトした話を何かで読んだ。そこでわかったことは、料理人も作家と同様、とりあえず自分で自信のもてる料理を出すことを目指し、それが実現できれば自分なりに満足できる。しかし、それではダメなのだと彼は言う。サイゼリアは客のことしか考えない。料理人の満足度ではなく、安いコストでそこそこの味の料理を提供して客に喜んでもらう。そのためにな血のにじむような合理化とコストカットを実施してぎりぎりまで値段を下げている。これ、小説でいえば、キャッチーなテーマでリーダブルな作品を書くということだろう。そんなことは、ぼくにはできないよ、と思っている自分がいる。とはいえ、可能な限りリーダブルに書くというのは大切なことだ。さて、来月も引き続き『尼将軍』の修正に挑みたいと思う。



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