1997/02/17(MON)

1997/02/17(MON)



最近、比較的よく眠れるようになった。まず、体を横にすることに対するあの強迫観念がほとんどなくなったのに加えて、割合気楽に機会をみては寝ることができるようになっている。つい数カ月前までは、そんなことを考えただけでも体を強ばらせていたのだから、隔世の感がある。だが、眠れるようになって、メリットが沢山できたかというと、そうでもないのだ。まあ、体が少しは楽になったくらいで、他にはこれといって何もない。
それにしても、体を横にするのが恐いといった強迫観念は、いったい何だったのだろう?これが癒されたのはナーダが添い寝をしてくれたためである。この添い寝がきっかけで、比較的楽な気分で横になることができるようになった。いまでは、ナーダの添い寝なしでも、つまり一人で、いつでも体を横にすることができる。そして、安眠することもできるようになった。

藤沢市の湘南台文化センターで開催される、「日本を代表する」女性ダンサー四人の公演、『3600秒の光』のチラシが届いている。ナーダはこれをどんな思いで見たのだろうか。ここに名を連ねている四人は、いずれもナーダのライバルであり、よき刺激剤になってきたダンサーたちだ。明らかにここに、もう一人、ナーダ夏際が加わっていても、決して不自然ではない。しかし、ナーダは、この道をいわば擲って、わたしの世話にすべてをかけている。この事態をいったい、どう受け取るべきか。
悔しくはないのだろうか。しかし、考えてみれば、他に道はないのだ。わたしのことは彼女がする以外にない。この選択しかなかったのだ。これが、覚めた判断というものなのだろう。
あと、もう一つ、大事な問題がある。
もしわたしのことがなくても、彼女は一人で、この公演に臨んでいたかどうか。
この四人に伍して、「日本を代表する」ダンサーの一人として、堂々自分の世界を、打ち出していくことができたかどうか。
彼女は、十五年間の公演活動を通じて、ひたすらわたしを頼り、わたしがいたから、自分も走れたと思っているだろうし、実際にそうであったかもしれないが、わたしは、いよいよという時は、彼女は一人でやってみせる女性であると信じたい。ここに名を連ねた四人と立派に渡り合っていくダンサーであると信じたい。いや、信じている。
だとすれば、わたしのことで、彼女の活動が停止しているのは、やはり、残念というしかない。

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夏際敏生日記 [1997/01/21-1997/02/22] 目次| 前頁(1997/02/16(SUN))| 次頁(1997/02/18(TUE))|