得能さんインタビュー vol.1



得能さんの事務所、Plum&Beansが世田谷産業フェアに出展、所属アーティストが産業フェアライブステージに出演するというのでお話を伺いにいってきました。




コメホカ:よろしくお願いします。
まずおうかがいしたいのは、得能さんの事務所の『Plum&Beans』はどういうことをする会社なのかということなのですが。

能:音をつくる会社です。音源制作会社とうたっていますが。音楽一般の制作をする会社で、プロダクションも兼ねてるし、一応何でもできるようにしてます。
正直な話、プロデュースってお金勘定までできないと。映画とかってそうじゃない?プロデュースって、予算がキチッと決まってて、そのなかで誰にやらせるとか、決めてゆく。俺が俺がって思っているようなやつは、プロデューサーってたぶん言えないと思うんだ。そういうことも勉強していかないといけないし、もっとできるようにならないといけないと思います。
だから、そういうことをしたいがために、いろんなことできるようになってます。今やっていることは、音源を制作する会社です。

コ:ギターのほうは、演奏なさらないんでしょうか?最近ステージでお目にかかる機会ってないんですが。

得:スタッフになっちゃったからね。どっちかっていうと、アレンジとかプロデュースとかが主になって表にでる機会っていうのがなくて。
現役を退いたつもりは全然なかったりするんですけどね。ずっとやり続けているやつは、表に出るの簡単だと思うんですけど、僕自身がやろうと思うと、結構まわりのスケジュール合わせが大変だったりするので。
でも、レコーディングの時は、うちで弾いてたりしてますよ。Olive Brach、SIGNALS、Private Passwordとかうちの子(所属アーティスト)たちにはギタリストがいたりするんであんまり弾いていないんですけど。外の仕事だったりすると、割とギターは弾いていますね。SORTITAっていうグループのCDの去年プロデュースして、そのなかではいっぱいギター弾いてます。 割とギターは弾いているんで。こいつら(Olive BrachやSIGNALS)のも「お前ら、そうじゃねえだろう」って。「お前、違うだろう」みたいな。だからうるさいですね。やっぱり。かなり泣いているんじゃないですかね。


コ:(笑)。


コ:プロデューサーになるきっかけは?

得:米米やめてちょっとしてから、SDMっていうところに入ったんですよ。Sound Development、新人開発っていうところで。だから僕自身はプロデュースとかしたいと思うようになったんだけど。ぼくらは44才になったわけで、10代の子と話す機会って、実はあんまりなかったりするでしょ?ありますか?

コ:(笑)ないです。

得:そこに入った時に、17,8才位から28才くらいの、真剣に音楽やりたいっていう子たちと話をしたんですね。話しているとやっぱりフラッシュバックする部分ってあるじゃないですか? しっかりした先輩かどうかわからないけど、先輩として自分の経験を話してあげられたり。やっぱり真剣に考えている子は真剣に聞いてきたりしするし。そこにいたおかげで、自分の中でひとつモードができたんで。当時はスタッフだっていう気持ちがすごくあったけど、今は逆に忘れちゃった何かを思い出せてくれたりするし、プロデュースの仕事ってすごくいいなと思ってます。
でもね、そうするとやっぱりやりたくなるんだよ。やっている方が絶対楽だと思う。


コ:(笑)

得:間違いなく、やってるほうが絶対楽。そういう意味で、自分が十何年間くらいやっていて気がつかなかったことに、今気がついてるのかな。だから、今からだったらね、もっといいアーティストになれるね(笑)。20年くらい時間を戻してくれれば(笑)。

コ:(笑)。戻さなくても、今からでも全然遅くないじゃないですか。

得:やりたいには、やりたいね、好きなことだけ。
ただ、うちの会社のポリシーは、ある部分「売れないと」というか、認知してもらえないと意味ないんじゃないのっていうのがあるんで。ホントに音楽が好きで音楽だけで身を立てたいっていう子だけじゃない、それプラス『ポップ』っていうのが必要だと思うんだな。
さっき(産業フェアのステージで)カントリーのおじ様たちがやっていて、むちゃくちゃ上手じゃない、そして楽しんで。あれが音楽だと思うんだけど、まだそこにはいけないかな。もし(自分が)ライブをやるんだったら、もうちょっと演出したっていうかそういうものにしたいね。プロになったときも、好きなことだけやったらいけないんだって、やっぱり思ったし。


コ:聞くほうとしては、本人たちが楽しそうにやっているのが一番楽しいんですけどね。

得:絶対そうだと思う。でも、楽しむポイントって、何から何まで一から十まで(本人たちが)楽しければ楽しく見えるかっていうと、そういうわけでもない。(演奏する本人たちが)一箇所でも楽しいものを持ってたら、(お客さんからも)楽しそうに見える、いや、実際楽しめるじゃない? 何かやるときでも。例えば野球やってても、守ってて全然球飛んでこない時は、やっぱりつまんないわけじゃない? でもそうじゃなくて、いざ飛んできたときに動けるから、練習も楽しいし。楽しいというか気持ちよくなれるというか。

コ:そうですよねぇ。本番の楽しみがあるから苦手な練習もするわけですもんね。

得:だから、楽しむことは絶対忘れてないと思うし。僕のところにいる子たちにも、仕事で出会う若い子たちにも、『やっぱり、楽しまないと音楽じゃないじゃん』って。学問の学でもないし、我苦しいじゃないし。

コ:(笑)いえる、いえる。

得:一時、あったから、我苦しい時。

コ:まあ仕事にしていくのは、何にしろそういう部分があるんでしょうけどね。

得:夢っていうか、ライブ見てもらったり、聴いてもらったりする時っていうのは、普通だったらいけないんじゃないかなと思うし。ただのオヤジだったらダメなんじゃないかって思うし。

コ:ただのオヤジが見え隠れするのはいいんですけど(笑)。

得:去年、中国の楽器をやる人たちと出会う機会があって、一緒にやりたいなって言ってたんだけど、まわりのいろんな人に言ったんだけど、ダメだよって言われてて。そしたら女子十二楽坊ができたじゃない?もっと前にやってれば…。まあ、やりたいのは全然違ったけどね。癒し系じゃなくて、どっちかっていうとエグイ系だったんだけど。

コ:(笑)。

得:やらせてくれてればなぁ、とかね、いろいろあります(笑)。

コ:形にならないもののほうが多いでしょうね。特にプロデュースっていう場合は。

得:そうだよね。名曲っていっぱいあると思う。毎日、生まれていると思うんだけど、人に聞いてもらって、認知してもらって初めて、名曲って成立する。人に聞いてもらって初めて『いい曲だね』って言われる。それとおんなじだと思う。思いつきはね、しょせん思いつきなのかも。

コ:でも、思いつきで始まらないと、新しいことはできていかないですよね。

得:そうだよ。思いつきの方が、ずっと続けていけると思うんだ。

得:うちは、会社興してもうすぐ2年、この(2001年の)10月の終わりにつくったと思うので、もうすぐ2年になるのだけど、ダメだまだ2年じゃ。
だから、こういうの(世田谷産業フェア)に出たの。異種格闘技っていうわけじゃなく、新人ってこれから結果がどういうふうになるかわからないじゃない。(音楽業界が)これからどういう形態になっていくかわからないと思うんですよ。CDを売るっていうこと自体が、音楽をやっていく、売っていく手段じゃなくなってくる気がするし、みんな言っているし。
ほかの業界からみると、音楽業界ってかなり敷居が高くみえたり、映画の人と話をすると、僕らからすると映画の人たち方が敷居が高く思えたりするんだけど。その違いをうまくぶっ壊せるっていうか、やっていけたらいいなと思っていて。いろんなことやり始めなきゃいけないなと思って、これ(産業フェアでのライブ)もやったんだけど。
実は、この会社つくるにあたって、彼女ら(Olive Branch)、プロモーションビデオ撮ったのね。そのプロモーションビデオは、映像集団がいて。映像集団もこのご時世あんまりよくなかったりするのね。フリーの人たちって結構、大変。フリーの人たちにやらせたいっていうのがあって、『プロモーションビデオが作りたいです』って話をして。ちょうど、彼女ら、やる瞬間だったので、『どうですか?』って言ったら、『撮らせてください』っていうことになって。
で、やっぱり話を聞くと、自宅でも、業務レベルに近くなって、かなりハイクオリティのものができるようになったきたと言って。それでもやっぱり、音とは一桁違うみたいだから。でもすごいなと思って。もっとわかりやすく、いろんな部分でわかりやすくハイクオリティのものができていければいいなと思います。



コ:今日、世田谷産業フェアでOlive Branchのライブを見させていただきました。(ライブレポートはこちら

得:Olive Branchは、もともと大阪でやってたんだけど、大阪でやっている時は、バンドで、ドラムとベースがちゃんといて、バンド形態だったの。だけど、東京出てくるにあたって、二人は出てこなかった。それで、東京出てくるって相談を受けた時に、『東京出てドラムとベースを探したい。やっていること変えずにやりたい』と言ってたんだけど。でもないものねだりじゃない、結局。『たまたまよい出会いがあったりとかして見つかったらいいけど、そうじゃないんだったら3人でできること考えなよ』って言って。そしたら、形態的にさっき見てもらったように(Vo,G,Key)、どっちかっていうとテクノよりに。もう、できることはコレ、みたいな。

コ:今日ライブ見させていただいて、マニュピュレータってリズムだけじゃなくて、全部こういうふうにできちゃうんだ、って思いました。

得:米米の時は、シーケンサーと音源をいっぱい持ってきてやるしかなかったのが、今は、iBookで、そんなにむちゃくちゃいいやつじゃないのに、できてしまう。昔を思い出すと今、天国みたいだものね。

コ:こんなのでできちゃうんだって、不思議に思いましたけど。

得:昔はちゃんとした音で録りたいとか、ちゃんとした音をつくりたいって思ったけど。今、そういう生を使わなくても、ちゃんとした音ができたりとかして。だからなおさら生が楽しいんだな。ないものねだりなんだね、人間てね。

コ:人間の奏でる音とちょっと違いますね。

得:全然違う。それは相手を意識した会話と似てるんだと思うんだ。相手いないで会話してても、やっぱり会話は成立しない。だけどそれを道具としてちゃんと使えればいいと思うし、もっともっと使えるようになりたい。若い子たちとやったおかげなのかもしれないけど、まだ進化しているつもり。

コ:いいですよね。

得:機械もどんどん進歩して。でも、基本的なところをちゃんと押さえて、上手に使っていければ、もっともっといいものができるんじゃないかなと思う。いろんな意味でエンターテイメントができると思う。もうちょっと映像のほうもやってみたら面白いのかなと思いますね。



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