2023.09.21

BS松竹東急で1996年の映画『宮沢賢治ーその愛』を放映していたので鑑賞した。

ここでいう「愛」というのは多分、思いを打ち明けられたのに禁欲を貫いて拒絶した3人の女性たちの事だけではなく、妹や父親等への愛も、農民たちへの愛も含まれているのであろう。いずれにせよ、彼は全ての愛に対して答えられず、何もできず、自己嫌悪に陥って結核で死んでしまった。育ちが良すぎたというか、純粋過ぎたというか、仏様のように生きようと急ぐあまり、失敗してしまったというか、まあとにかく彼を取り巻く人達にしてみれば(愛すべき)大変な厄介者ではあった。しかし、彼はそのことを十分すぎる程自覚していたが故に、沢山の詩や童話を残し、彼の為そうとしたことではなく、その書いたものによって人々の記憶に残り、多くの人々を勇気づけることになった。

彼自身にとって皮肉といえば皮肉ではあるが、多分知識人たるものはこうあるべきなのだろうと思う。つまり、真摯に現実と向き合うことによってしか、知的営為の意味は無いのである。

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