道・鎌倉街道探索日記

◆◆◆◆◆◆ 川越・大袋新田遺構  ◆◆◆◆◆◆

川越市大袋新田の掘割状遺構

下の写真は一見どこにでもある雑木林を撮影したものに思われることでしょう。ただ写真の地形をよく観察して頂くと、写真の中央から両側に土手のように土が盛り上がっているのが確認できると思います。写真の場所は川越市大袋新田にある雑木林内です。写真に写っている物は、樹木と地面に積もった枯れ葉だけです。しかしこれは鎌倉街道上道の写真の中でも、貴重なものだと考えます。この写真は堀兼道の延長線状にある掘割状遺構の写真で、鎌倉街道跡と伝えられていたところなのです。

川越市大袋新田の山林の中の掘割状遺構

鎌倉街道の堀兼道は、堀兼神社の堀兼の井戸を過ぎた後、不老川を権現橋で渡り、更に進んで県道川越入間線と交差した北側の林の中で掘割状遺構を確認することができます。そこから北へ進み、堀兼中の西から青柳と加佐志の境の道を通りますが、その付近でも現在の道の西側に並行する道路遺構を確認できます。更に北へ向かい、県道中新田入間川線を交差した後は川越狭山工業団地で遮られて無くなります。工業団地の先は、そこまでのルートの延長線を地図に引いて書き込んで見ると、国道16号線の北は川越市大袋新田、藤倉辺りであることが確認できます。延長ラインは大袋新田では郵便局とゴルフ練習場の間辺りを通るようです。写真の雑木林はまさに、郵便局とゴルフ練習場の間にあります。

掘割状遺構

埼玉県教育委員会の歴史の道調査は、昭和56年から58年に掛けて行われています。それ以来17~18年経ちますが、その後、私の調べたところでは県内全域にわたる鎌倉街道の調査は行われていないようでした。昭和56年から58年に掛けての歴史の道調査が行われた時に、新たに確認されたのが、川越市大袋新田の掘割状遺構です。しかしその後はこの遺構はしだいに忘れさられ、川越市の歴史の道調査書にも、「藤倉の林の中にあるといわれる街道の跡は確認できなかった。」とあり、私自身も今では無くなってしまった遺構と思っていたのです。付近の人に尋ねてもわからないようで、私も探すのを諦め掛けていました。しかし、ひとつだけ大袋新田の氷川神社から北へ坂を下りた所の西側に雑木林があるのを前々から知っていて、その中は大変深い藪に覆われているので入れない場所だったのです。

掘割状遺構

歴史の道調査報告書に次のようにあります。「さらにこの道で注目されるのは、藤倉の南、川越・八王子間の旧道(大山道ともいう)を横切りやや北に行った山林内に長さ80メートルほどの掘割状の遺構を残していることである。この地点もやはり台地が入間川の低地に傾斜して行く箇所にあり、現在は深い藪に被われているが、北方低地に向かって口を開いた付近で上幅8メートル、下幅3メートル、深さ1.5メートルほどの規模を持ち、南方台地上の部分で上幅6.5メートル、下幅2.5メートル、深さ1.3メートルを計った。この遺構の存在はあまり広く知られていないが、地元では古くから鎌倉街道の跡と呼んでいたといい、われわれも予期しない地点でこうした遺構の存在を知り、大いに驚いた次第であった。」とあります。

掘割状遺構

下の写真は藤倉から見た、掘割状遺構がある雑木林です。平成12年の3月初めに、どうしても気になっていた、この林の中を強行突破で入って見ました。暖かくなる前でないと藪には入れなくなります。坂を下りた辺りから藪に入り、100メートルほど西に行ったところで、突然掘り状の溝が南北にあるのを見つけました。何枚も写真を撮りましたが、暗くてちゃんと移っているか不安でした。現像してみると掘割状遺構の写真は見事に撮影されていました。(上の4枚の写真は初めて掘割状遺構を確認してから2年後に訪れたときのものです。)
ただこれらの写真が上で説明する歴史の道調査報告書のものかどうかは、確認するてだては、今のところありません。
この遺構のある雑木林に入って見たいと思われた方は相当な覚悟が必要です。何があっても私は責任はとりません。ご了承を。

掘割状遺構のある山林を見る

追記・・・・
平成27年にホームページを作り替えています。その時点ではここで紹介している川越市大袋新田の掘割状遺構は住宅造成により雑木林もろごと消滅してしまっています。遺跡指定をされていれば土地開発前に必ず調査が行われるのですが、ホームページの作者には、住宅造成時のことは何もわかりません。貴重な鎌倉街道跡が知らぬ間に消滅したことは、正直なところショックで言葉もありませんでした。せめてのものとして写真だけはあり、鎌倉街道跡の可能性が残る場所を伝えることはできました。

 

オリジナルを重視するため、鎌倉街道上道(埼玉編)の作成当初の市町村銘そのままにしています。 平成27年の鎌倉街道上道が通る市町村は、以下のとおり変更(合併)されています。

花園町→深谷市  川本町→深谷市  児玉町→本庄市

PAGE TOP