2月12日(金)の酒場

港街ディングルにて


時刻は20時ころ、酒場に行こうと思い、街に出た。

出かけ際に宿のおばちゃん
『今日は週末だから、酒場(パブPub)に行けば音楽をやってるわよ』
と言ってたので、ワクワクしつつ街に出かける。

同時におばちゃんは、 『酒場で音楽をやるのは9時(21時)・・・』がどうのこうのと言ってた。 てっきり、 『音楽は21時ころまでしかやってないから楽しんでおいで。』 と思ってたのだが、実はこれは大きな勘違いだった。

夜、ディングルの街にて
とりあえず夕食を取りたい。街に食事に出ることにする。 20時ころ、何軒か酒場をのぞいてみるが、どこも静かでガラガラ。 「あれ? ホントに音楽やってるところなんて、あるのかなぁ?」 と思い、しばらくいろいろな店を探す。 宿の近所の丘の上の方の通りから、海辺まで下っては港の通りまで、 街のすみからすみまで探すも、 音楽をやってそうな気配のある、賑やかな酒場などどこにもない。 楽しみにしてたのに、もうがっかりである。

かなりがっかりして余計に腹も減った。 どこでもいいからせめて食事だけでも・・と思って 目の前にあったパブに2軒ほどに入って 『食事をしたいんだけど・・・』 と聞くが、 食べ物はおいてないらしい。 でも、2軒目のパブの兄ちゃんが、親切にレストランを何軒か教えてくれた。
どうやら、 そもそも酒場は、食事をするところではない。 らしい。

そんなわけで、向かいのレストランに入る。 「ライト・ディナー」というコースメニューを注文。 この店はちょっと高級感があってちょっと緊張するも、 ウェイターが優しそうなスマイルのおじさんで安心。 値段もまぁまぁお手ごろで、上品な田舎のレストランといったところ。 田舎は食べ物もおいしい。

パブ
食事を終えると 21時30分。 近くの酒場を覗くと、先ほどよりはだいぶにぎわってはきたものの、音楽の気配はなし。 もう音楽を演奏する時間は終わってしまった(と、勝手に思い込んでた)。 しょんぼりして・・・「もう帰って寝ようか・・・」と思った。

そのとき・・・

目の前の店の扉に、ギターケースを持った人が 店のなかに入って行った。 「これから始まるんだ!」 と、後を追うように店内へ。

宿のおばちゃんが言ってたのは、てっきり 『9時までがピークだから早めに行きなさい』 だと解釈してたのだが、まったく逆で、 『9時以降がにぎわう』 ということだったようだ。 アイルランドに来てから今までというもの、 時差ボケで早い時間に就寝してたからわからなかったのだが、 アイルランドのパブは夜9〜10時以降がピークということがこの日わかった。

とりあえずカウンターに行って、1杯2ポンドのギネス・ビールを手にする。

結構混んでいる。 店の奥のスペースでは、観光客を集めてちょっとしたダンス教室みたいなことをやっていた。

入り口のすぐ横では、左利きのギタリストと、ボタン式アコーディオン の2人組ミュージシャンがスタンバイ中。

奥のダンス教室をやってるエリアの一角のテーブルが開いていたので、同席させていただく。 相手はイングランドから観光で来たという、僕らより少し上くらいの夫婦。 例によってカタコトながら、ちょっと会話を交わす。

『あなたの英語は上手だわ』 と言われる。(あくまでカタコトの会話に対して・・・である)

『Realy? 』と苦笑。
・・・わざわざ英語がよいと誉められるってことは、 やっぱりまだまだダメな証拠だろう(^^;;

そうこうしていると、何やら向こうで音楽が始まった様子。 確かめに行くと、2人組ミュージシャンの演奏が始まった。 ギターが伴奏で、ボタン式アコーディオンが主メロ。

ずっと立ってるのもツラい。 ミュージシャンのすぐそばの席だけが開いていたので、 おそるおそる座る。至近距離で音楽を楽しむ。

言葉はわからなくても、音楽を楽しむのに問題はない。

典型的で伝統的なアイリッシュ・ミュージックらしい。 最初のうちは4分の4拍子でリズムを取って聴いていたのだが、 ふと気が付くと、その1拍1拍が 3連符のフレーズで構成される曲ばかりだった。
あとで日本に帰ってから確認したのだが、どうやらあれが 「ジグ」 っていうジャンルの音楽らしい。
ジグは8分の6拍子(速い3拍子)の音楽だ。

曲がかわってメロディーが違っても、曲の構成がお決まりっぽく、起承転結がはっきりしている。 様式美を感じた。

やがて、パブ内からダンサーを募って 2人×4組みのダンサーが集められる。地元の人か。 生演奏に合わせてのダンスが始まる。

最初に主旋律と同じ短いフレーズが8拍分、それがイントロらしくて、一斉にダンスが始まる。 あわただしいステップと、回転がめまぐるしいダンス。 3連符の1つ1つに対して、ステップを踏んでるので、相当速く見える。

聞いた話だが、ジグはタップダンスの原型だとか。 とにかく足の動きが激しい。 俗に「アイルランドのダンスは足で踊る。」 とも言われるそうだ。

曲が進んでしばらくすると、ちょっとメロディの感じが変わる。 起承転結の "転" か。ダンスもよりいっそう激しくパワフルになる。 すると、自然に観客から拍手、掛け声、声援が湧き起こる。

ふと床を見ると、この店の他の床は黒いのに、 ダンスをやっているあたりは、あきらかにハゲて色が白くなってる。
もう長いこと、この場所で踊られ続けられているんだろうなぁ・・・。

まだまだこの宴は続くようではあったが、 5〜6曲も楽しい音楽を聴くと十分満足して、 この日の宿に帰った。


関連記事
酒場(PUB)について


戻る

あきぼんのサイト