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神奈川月記9511

冠省
国勢調査だと。何じゃそりゃ。人口調査かえ。んなもん区役所いって住民票かぞえりゃええやんけ。自分でやれ。調査員がおうかがいしますだと,来んでええ鬱陶しい。宅配便の受け取りにも難渋しとるんに,来たって大概おれへんで。
ある日ドアの隙間にメモ紙が挟んであった。n日・(n+1)日・(n+2)日と来たのに居ない,ここへ電話してくれという意味のことが書いてある。知るか。無視していたら2日後ドアにA4紙で貼り紙しやがった。わあっ。大大的に留守を宣伝しおって,これ幸いと空き巣が入ったらどうしてくれるのだ。怒り目長介と化して放っておくと,また電話しろとのメモが入る。おりゃ電話きらいなんだよ。
調査員が公務員なのか嘱託なのか失業対策の成果なのかは知らないが,ここに至ってうちの担当が同じ建屋の住人であることに気が付いた。ふん,電話に依らない連絡が楽に付くのであればコンタクトを取るのに吝かでない。どうせマークシートだろうから水道計の収納庫に入れといてちょという意味のことを伝言に書いてポストした。翌翌日入手。
何だかなあ。蒸発する人は年に何万人も出ていると思ったが,彼らはどうするのだろう。尤もらしくでたらめを記入するのか旅行でもして避けるのか。国勢調査は浮浪者も追っかけまわして書かせるんだなんて甘木が言うのは本当か。追うほうはともかく追われて協力する人なんてあるのかしらん。故あって過去を棄てた者にとってはかなりのプレシャになるだろう。そういう人を炙りだす効果も狙っているのかもしれん。
電話番号や勤め先の名称などいくつか書くのを忘れた項目があったんだけど,「統計をつくるためだけに使うもので,その他の目的に使われることはありません」とのことだから問題なかろ。この「統計」の結果はひとりひとりに配ってもらえるんだろうな。
ところでいま世界の人口はどのくらいなんでしょか。おれが小学校で初めて習った頃は36億人だったん。『48億の妄想』を読もうとしたとき,こりゃ多すぎると思ったものだ。75年頃のアシモフ博士の計算式によればもう50億突破といったところではないかいな。
子供を3人以上つくるのはもはや犯罪に近いと思うが──あ,けっこう敵を作ってしまったかな──昨今怒涛の出産ラッシュだそうだ。せっかくの景気停滞ムウドなんだから,なるべく増やさないでおけば良かろうに。


甘木がMacを買って,お絵かきしたのを見せてくれると言うので俄然画像処理がおれのマシンのテーマに浮上してきた。
おれのはMC/ATじゃなかったPC/ATでOS/2とDOSのツィンOS・反Win95体制である。いろんな拡張子の静止画を覗けるヴューワがいくつか放り込んであるけれども,Macの標準的な画像ファイルが何で何して何とやら。ふだん画像を見ると言えば『DOS/V USER』誌の付録CDだけだったりする。
まぁMacとの間で画像を遣り取りするのはどうとでもなるに決まっている。欲しくなったのは写真の電子化の手段だ。むかーしソニーのマビカを危うく買いそうになった身の上であり──あのデイタはパソコンには載らないんだろうな──勢い慎重たらざるを得ない。
リーズナブルなメカはふたつある。電子カメラにカシオのQV-10・現像済みフィルムを読みとるのにフジのFV-10(FOTOVISION)。どっちでも良いのだが,普通の光学カメラに京セラ(なんか懐かしいな)のズームテック60というのを持っているからQVは機能が被る。どうせなら融通の利くFVのほうが良いね。こいつはネガもポジも読める上に小物の接写さえできる。解像度は大したことないだろうが,ヴューワでの補正を頑張れば年賀状を飾る程度の実用には堪えるはずだ。
問題なのはただFVを買っただけではテレビに繋ぐことしかできない点である。パソコンに画像を取り込みたければ別途ビデオキャプチャボードが要る。これがなかなか高くて,FVと合わせて10万円は覚悟しないといけない。


CDを聴くのにステレオ アンプとCD/LDコンパチ プレイヤの電源を入れて30cmトレイにセットしてヴォリウムを調整してパソコンの前まで戻るのは面倒臭い。安直にパソコンで済ませることが多くなった。
しかしこの音質は非常に不満だ。と言って不満より面倒の勝ってしまうのが情けないけれど,もうちょっと何とかならんか。何を聴いても低音皆無腰高シャンシャンうんこちんちんの小室サウンドは「マルチメディア」パソコン御用達の超軽量貧弱スピーカにあると断定し,交換を考える(もちサウンドボードも共同正犯なのだがここはわざと泳がせる)。当然アンプ付きが対象だ。面倒を厭いつつ強化するのだから電源スイッチのあるのは駄目で,入力信号の有無を検知して自動的にON/OFFされるのが望ましい。ヴォリウムも不要,でもバスブーストはあったほうが良さそうだな。
その線で捜したところ,そういう仕様の製品は見つからない。
うちのテレビは87年製のPROFEEL BASIC KV-19HT1(画質絶好調,ついでながらおれは「ワイド」テレビを憎む),チューナを内蔵しながらアンプとスピーカは無しというモニタとテレビの鬼子である。このオプションスピーカが前前段の仕様でこれを当たり前と思っていたから,最近のカタログを見てがっかりした。どれもこれもパソコンのと代わりばえがしない。駄目だこりゃ
んじゃあウクラーラ(SRS-N100)にするか。この如何にもソニーのはぐれ設計者が作ったような変わり種スピーカは,ウーファとアンプを収めた23cm角のキャビからナメゴンの眼角様にフルレンジが1対のび上がっている。センタウーファの一体型だから使い勝手は頗る良くない。肝心の音は多分,理論上は正しいのだが聴いてみるとイマイチのタイプだろう。窮余の策には違いないけれど,明日にもカタログから落ちそうな雰囲気に情が移ってしまった。5kgで5万円。


冬のボーナスはメモリに多く割くつもりでいた。おれのマシンの最大容量128MBは当たり前と言うかそんなもんなのという感じになってきている今日この頃であるが,実際に128MB積むのは経済的に至難の業だ。とりあえず今16MBあるのを32MBにしたく,これでもざっと8万かかる。困るのはRAMソケットがよっつしかなくて,既にふたつ塞がっているという器量の狭さだ。2枚1組でないと機能しないタイプであって,32MBにするのに8MBのを2枚かってきて差し込んじゃうともう後がない。更に増設したくなったら既設分を捨てにゃならん。将来に渡って極力ムダを省くべく32MBのを2枚いれてやれば,80MBの超潤沢環境にはなるもののボーナスは完全に吹っ飛ぶ。神戸福岡(不幸じゃ)年末はメモリ不足で欲しくても手に入らないらしい。品薄で売価は上昇気味ということであるし,おれの気持ちを宥めるのには理由が立つ。それに載っけてるSCSIボウドがバスマスタのAHA-1542Cなもんで,16MB以上のRAMがRAMとしては遣われないというハード上の制約がある。外付けHDに関してはRAMを奢っても芳しい結果は出ないのかもしれない。ま,いちお目標は32MB化。


ある意味メモリより急を要しているのが大容量のリムーヴァブルな記憶媒体だ。1GBのHDはまだ3分の1ほど空いているけれど,パーティションの都合でブランクが偏っている。わー,いまWarpからスワップを採れんぞ何とかしろデイタの保証しねえぞと警告メセイジが出た。彼の居るDドライヴ,いっぱいいっぱいなんよね。
ポストFD・プレDVDの媒体は星の数ほど生まれており,どれも将来性が疑わしい。『日経パソコン』誌のリムーヴァブル媒体味くらべの特集を読んだら,ますますどれにしたら良いか判らなくなった。仮本命だったPDが今一ということだけは解ってしまい,かと言って外のも今一なのだった。ざっと100枚のFDを統合したいのとバックアップを取りたいのとは自然な欲求なのだけれど,主眼はHDの代わりである。されば転送速度を重視せんければならず,ほぼ比例して装置が高価になる。高価な装置を買ってそのフォーマットが尻すぼみに消滅しては堪らん。この悩み,同情してくれるパソコンユーザは多かろう。この件むずかしすぎるので次回かんがえる。


とても1回のボーナスに収まりそうもない。いいかげんスーツを買わんといかんのに,もう何年も新調してないぞ。さてどれが実現するか。

不一

1995年11月15日


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48億の妄想
 筒井康隆。

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アシモフ博士の計算式
 Isaac Asimov『幾何級数の威力』。x=156(logy-9.54) xは世界人口がy人になるまでの年数。増加率そのものは一定とした楽観的なもの。

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駄目だこりゃ
 いかりや長介の極め台詞。あっ,本文第2段落の「怒り目長介」はこのお名前の捩りです。

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ナメゴン
 TBS『ウルトラQ』のスター怪獣。リアルタイムで観たような観んような。この回,退治できたのは1体だけで,番組ラストは生き残りのナメゴンが窓から部屋を覗きこんでいるシーンで終わっていた(はず)。幼心に物凄い恐怖を感じた。

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written by nii. n