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神奈川月記9501b

冠省
何だかよく解んねえなあ。
昨晩3時ごろ胃袋にどかんと衝撃が来て目が覚めた。強烈に痛い。周期も強弱も脈動も無く一本調子にずぅっと痛い。こんな痛みの感覚は初めてだ。しかしながら幸いと言うべきであろう,重篤の兆候とは思われず,単にいつもの腹痛の酷いのといった印象である。これが胃痙攣という奴ではないか。もう抜けないかと思った。
正露丸を飲んで寝てしまい翌朝仕事場に午前年休を取る旨つたえて(もう休んでやんの)うとうとしていると,宅配便が届いた。WordPerfect SIX.0(以下WP.)の到着である。
よく解らんのはこいつだ。著しく改良されておるのだが,使い勝手に後退した部分も無くはない。最も困ったのはボタンバー(編集機能などをアイコン化したスイッチボタン)にルビ振りやコメント付け(日付を隠して入れたいのね)を割り付けられなくなったことだ。5.2版だとプルダウンメニュにあるコマンドはすべてボタンバーにできた。マクロでやっても良いけれど,それもアイコン化はできないようである。いちいちメニュを開くのがかったるい。ま,それでも前ヴァージョンに戻る気は起きんがね。
縦書きモウドでの表示速度は格段の進歩を見せた。しかしATOK8のインライン変換表示はやはり先頭ひと文字だけで,不具合が解消されていない。ATOK側の問題なのかな。一太郎の6版ではATOKも9になる。ぜひWin単体版もヴァージョンナップしてね。
For Win二大ワープロが乏しいHDにのさばっている。市場評価はどうせWORDのほうが圧倒的に高いのだろうけれど──おっとここでマクロのボタンバーへの割り付け法発見,ルビと隠し日付をマクロ化したぞ──要は習熟しているかどうかだ。WORDは初お目見えでWP.はかなり表情を変えての再登場,どっちがより優秀かはこれからおれが裁く。ドーン。でもWinワープロとはこういうものというおれへの刷り込みが終わったWP.に有利であるな。


寒風ふき荒ぶ石畳をしかめ面で歩く。もう15日も雨が降っていない。エレヴェイタはリノリウムの床とアルミの壁が台車の傷で白けている。純珪素と無酸素銅のハーニスが見えない向こうに張り巡らされている。絨毯を敷き詰めた長い長い長い廊下を通って,やっと部屋の前に着いた。ドアノブに触れたとたんバチッという電撃。
正しく電撃であって,お馴染みの静電作用だ。でもこれ,おれにとっては比較的最近あらわれた現象なのである。クルマのドアや水道の蛇口にすら放電するケイスを知識として持ってはいたものの山口時代・広島時代へ遡ってそんな体験はありゃしない。
一所に歩いていた甘木(瀬戸内出身)がいきなりぎゃっと言って飛び退く。指先がおれの体のどこかに触れたらしい。火花も散るそうだが,おれのほうは単に手の当たった感触を得るばかりである。何の同情もできない。おもしろがって笑っていたら,甘木はパチパチくんを養殖していたと見え,やがておれにも来るようになった。静電体質が移ってしまったのである。いまだに来る。夏にだってちょいちょいあるぞ。
静電気って増えたのかねえ,奇妙な言い方だが。あれって人体のほうに溜まってるの,それともドアのほう? 人体だよね。
カーペットが30cm角のタイル式に進化して,部分的に矧がせるようになった。床下の配線や通風の点検をするために以前は敷物禁止だったオフィスやマシン室にまで起毛材がびっしりである。これでメタルのドアノブだったりすると,毎回ほぼ確実に痛い思いをする。猫パンチを食らわしてからでないとノブを握れない。
もともと漏電体質だったおれでさえこの体たらく,静電気を溜めない衣装を作れば結構いい商売になるんじゃないでしょか。なに,そういうストッキングがもうある。それは静電気を発生しにくいてえ奴でしょ,おれの言っているのは通電性があってアースできる繊維だ。ズボンから靴下またはストッキングを通して常に接地し続ける。とうぜん靴底まで導体である。はて,雨の日雷が落ちたらみな感電して死ぬのかねえ。


あっ,何ということだ。甘木のマシンのWordPerfectでATOK8を縦書きモウドにしてみたら,変換確定前文字列がきちんと表示されるではないか。
これでおれのWP.とATOK8,どちらか(または両方に)にバグのあることがはっきりした。明らかに彼我の差のあるのはATOKのほうである。購入時期が半年近く違い,おれのがFD媒体の単体版なのに対して甘木のは1太郎同梱しかもCD−ROM版だ。
とって返して調べてみるに,果たして実行ファイルのサイズが違ってた。甘木のが若干おおきい。JUSTSYSTEMの奴等,こっそり直してやがったな。こらーっ,修正ファイル寄越せー。チキショー!


ひとり暮らしを始めるさい無自覚に買ってしまったのであるが,生活道具も同居するとき机が6畳間で一体どういう振る舞いをするのか解っていなかった。まして炬燵があると冬場はほとんど昼行灯と化す。
それで大学3年の後期試験を最後に,引っ越しを機に処分して爾来机は置いていない。勉強を止めてしまったのだから不都合も無く,月記を書くのにワープロを叩くくらいは卓袱台兼用のテイブルでたくさんだ。
年末年始などなーんもするコトが無いときはそのために用意した大作プラモを組み上げる。今年は1/8スケイルのカタナを作った。専用のニッパでランナから切り取り部品のバリをNTカッタで丁寧に削り最普及品のアロンアルフアでくっつけ,基本的に無塗装だがフェルトペンタイプの黒ペイントをアクセントに遣う。デカールだって透明な縁取りをきれいにカットしてから貼るのだ。
全高28cmの安物パーチクル テイブルを占拠するパソコンのキイボードを片しての組み立てはけっこう根を詰める作業となり,2日で腰が痛くなる。そう言えばパソコンも肩の凝る趣味であって,キャノワードのように単純簡便な仕事ではなくなっている。ちゃんとした机と気持ちの良い椅子が欲しいなあ。
机と椅子の復活はおれのインテリア レイアウト史において許されざる退行であるか。机を廃止した背景をもういちど整理してみよう。

  1. 継続的な事務作業は無い。
  2. 机の機能は炬燵で間に合う。炬燵は暖房器具として必須である。
  3. 邪魔っけだ。

エアコンの導入でむしろ炬燵が邪魔になり,と言うか場所っ塞げな炬燵を廃止したくてエアコンを入れ,II.はもはや問題ではなくなっている。今でもIII.には抵触しそうだが,今やパソコン置き場の確保は不可欠であって引き出し付きの机は空間活用に有効な手段である。I.についてはパソコンの使用を無理でも充てよう。
入れても良さそうですね。何も黒檀ムク板の上物でなくとも良いんで,逆に軽量おりたたみタイプが望ましい。ただパソコンを置いてかつキイボード手前にパームレストを欲張ると80cm程度の奥行きが要る。ま,後端を壁から離して置けばバーゲイン机で事は足りるかな。
問題は椅子のほうである。机を使いたいのは腰痛回避が動機であるからだ。


ちょっと割り込み。
PCMプロセッサ(PCM-501ES)を修理に出そうと思い,しかし成人の日に開いているのか不安になってサーヴィスステイションに電話を入れてみた。案の定わしら今日やすみじゃけん出直してくるようにとの留守電メセイジ,まったく消費者を舐めている。
区役所・役場に郵便局,それから銀行・電話局,苟くも公共性を謳う機関の窓口に休日があっては相ならん。修理受付のようなイマージャンシィな施設も同様だ。実際に修繕はやらなくても預かるだけは預かれ。経費が掛かるのなら遠慮無く有償にしろ(これは営利企業よ。公務員は別)。
翌日も振り替えで休日である。も一度電話しようと思ったら,危難を察したか今日はまともに動いた。日によって調子が違う,こういう人間くさい壊れ方は故障と言うより寿命ではないか。
おれのプロセッサは84年8月14日の購入で,償却(オウディオ関係は100円/日の定額式)は済んでいる。リタイアさせるか。前回の月記で気にした長時間番組の録りはベータHiFiで乗り切ろう。機器の接続を練り直さないといけないけれど,それは楽しい作業だ。
考えてみればおれのオウディオ機器,みな学生んときにバイト代できゅうきゅう言いながら揃えた物である。カセットとアンプも危ないなあ。


当時の椅子はキャスタ付きの十字脚から1本の支柱が伸びた旧式の事務用品で,背もたれもあった。しかし今度かうのにこんなのは厭だ。職場で宛われたのがこれだったら,こんなのでは仕事がでけんとごねても良い。
80年代半ばにOA革命とか言ってワープロやファクス・コピイ機なんかがどっとフロアに入ってきた。渡りに船とばかりに事務屋も売り込みを図る。お陰で机と椅子がぐんと良くなった。取り分け背もたれと座面が連動して動く「OAチェア」の座り心地は感動的で,VDTはあれにふんぞり返ってほとんど仰向けの姿勢で叩くのがいちばん具合が良ろしい。へたに背筋を伸ばすとくたびれる。自分で買うのもああいうのが欲しいものだ。


また割り込み。何とびっくり,マウスが壊れてしまった。
本屋で売ってたDOS版のバックギャモンをせっせとやっていたら,カチカチいうマウスの左ボタンが急に無口になって仕事をしない。一縷の望みを懸けてばらしてみるに,やっぱりマイクロスイッチからして莫迦になっていた。手の付けようがない。交換だな。
取り敢えずはもともとPS/V VISIONに付いてたIBMのを使うとして,本命はMicrosoftの奴かね。あれ,高いけど気持ち良さそうだもんね。ちっ,余計な出費だぜ。


でもうちでOAチェアを使うというのももひとつだね。ひと捻り欲しい。
机も邪魔だが椅子もそうとう邪魔だ。まっとうな椅子は絶対ひっくり返らないように脚の「腕」が5本になっており,張り出しも大きい。そんなのを入れた日にゃあ部屋の横断すらままならず,ここは座り心地を落としても──や,初心を忘れているぞ──べくなるコンパクトな奴にしたい。
性能より占有面積を採った以上ただ小振りな椅子を買ったりしたんじゃあ気持ちの収まりが付かない。せめて珍奇なデザインでヴァランスを取らなければ。


使いたいときにぐずっていることのほうが多くなったPCMプロセサ,とうとうオウディオシステムから外してしまった。安らかに眠れ。と言いたいがこいつを捨てるのは惜しい。修理に出せば蘇ることが判っているし,コレクタズアイテムとしての価値は充分にある。だから欲しい人があれば差し上げる。
ブツはSonyのPCM-501ESで10年ちょい前の製品だ。430×80×350mm^3・6kg,消費電力は27W。箱・取説つき,保証書なし。傷・汚れあり。宅配便を着払いで受け取ってくれる方に限る。先着1名様。
不調の様子はと言うと,録音・再生時ともひっきりなしにブツブツザラザラとノイズが入る。内容を聞き取れないことはないのだが,非常に不愉快な変調で堪えがたい。これはビデオデッキが替わったりしてトラッキングのずれたテイプを再生した場合に出る症状と同じだ。プロセサが正常ならビデオデッキのトラッキングを調整してやれば回復するし──最近のはみな自動調整だな──プロセサ側にもトラッキング摘みとメイタが付いている。
本機を貰ってやろうと言う人には釈迦に説法であるが,いちおう解説したほうが良いのかな。PCM(Pulse Code Moduration)プロセサは80年代前半に登場した録音機で,民生品初のディジタル録音システムである。プロセサというだけあって単体では漬物石にしかならず,ビデオデッキとのコンビネイションが大前提だ。
アナログ入力の音声からディジタル符号にサンプリングしたのをNTSC信号で記録するものであるから相方はビデオでなければならない。カセットやDATのデッキは不可。ビデオテイプの映像トラックに記録する(音声トラックは完全に遊ぶわけだ)。
国内向けのビデオデッキであれば,ベータ・EDベータ・8mm・Hi8・VHS・S-VHS,何でも良ろしい。またそのビデオデッキをPCMが専有するものでなく,映像入力と出力と,端子をひとつづつ使うだけである。入力ライン切り替えによってPCM録音機になり通常のビデオデッキになりといった案配で,テレビ録画の機能も奪いはしない。
前面はピーク メイタと録音ヴォリウムだけ,一見して何の機械だか判らない。強いて言えばdbxかadresのユニットみたいだが,ここ読んで笑った人はもうオジイである。
くどいようだが録音機だ。プロセサにはもうひとつディジタル出力端子があるから,ビデオを2台つないでのダビングができる。SCMS以前の製品なので無制限にディジタルコピイが可能。ただしDATやMDとのディジタルダイレクトは駄目である。
音質はCDと同等,カセット・MD・dccなぞは鎧袖一触,しかしスペック上DATには負ける。
もう一度いうよ。このPCMプロセサは壊れています。要修理(5000円くらい掛かるかな)。使うにはビデオデッキが必要で,差し上げるのはプロセサだけ。
もうひとつ。ひょっとして本機自体寿命なのかもしれないが,PCMシステムそのものにも将来性はありません。もちろん引き渡し後トラブルがあっても一切おれは責任を負わないからね。悪しからず。

不一

1995年1月24日


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正露丸
大幸薬品に限らず数多の製薬会社が同工異曲の正露丸を販売している。登録商標の喧しくなる以前から止瀉薬の代名詞だったのを各社が名乗りあっていたのだろう。オリジナルは「征露」丸であって,日露戦争を言祝いでの命名だったらしい。

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ボタン バーにルビ振りやコメント付けを割り付けられなくなった
これはおれの早とちりで,すべて割り付け可能である。(97/07/24記)

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written by nii. n