神奈川月記9412

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冠省
前回たばこをネタに書いていて早早に終わってしまい,はて何でおれはこんなことを記したのかしらん,つらつら思うに空気清浄機へ話を持っていきたかったのだった。マクラを振った所で忘れてた。
おれは本棚から本を取り出して読んでしまったあとまた本棚に戻す,ただそれだけのことができんたわけである。床に放り出された本は次に読む機会の生じるまで百万年でもそこに静止している。埃の堆積がその厚みに達しようとも出番が無ければそのままだ。
おれは猫が好きで来世は深窓の令嬢に飼われる猫になりたいと願うほどだが──こう書くと「深窓の令嬢」に比重が掛かるみたいだが違うぞ──現世において飼うことはできない。賃貸契約にあるペット禁止条項以上に,猫の毛がアレルゲンで一週間も同居すると喘息が出るからだ。まめに掃除をすれば行けるのだろうが前段のとおり日常生活破綻者である。よほど気の張るお客でもなければ金輪際かたづけなどしない。大晦日の大掃除だっておれのカレンダには載っていないのだ。
掃除をすると必然的に埃が舞い上がる。実はハウス ダストもアレルゲンであって,しょーことなしに掃除をすればくしゃみと鼻水とが空と海とを入れ替えるくらい出るのである。まめに掃除をすれば行けるのだろうが前前段のとおり日常生活破綻者でかつ虚弱体質なのだった。前門の虎・後門の狼,進退ここに窮まれり。
さらにおれはヘヴィ スモウカなのである。喉の弱いくせにたばこを吸うのは自殺行為ではないか。前門の虎・後門の狼・上からアナコンダ。しかしたばこはうまい。アレルゲンでもない。たばこは百害あるのかもしれないが──肺癌はともかく狭心症の引き金にはなりそうだ──確実に一利はある。一利のために百害を呑むのは人間の活動に普遍のものだ。ランナズハイを味わったアスリートが如何に体に悪くともジョギングを止めないのと同じである。
さて,おれの悪癖に効果のある妙法が無いではない。部屋の空気そのものを汚れる端から浄化してやることだ。部屋の冷暖房はエアコンひとつに頼っており,二重構造のフィルタがその役割を果たす筈だったが十全には投資に報いていない。何と言っても空気の流通量を犠牲にはできず,あまり細かな濾過装置は付けられないようだ。牛馬に二役を与えずの譬え,どうやら素直に専用品を宛った方が好結果を得られそうである。
空気清浄機にはファン式とイオン式とがある。ファン式は扇風機をタオルでくるんだような物で非常に解りやすい。しかし効果のほどは疑問だ。小さなファンで空気を掻いても全量は高が知れており,もとよりエアコン以上のフィルタ効果は期待できぬ。当然ながら網の目以下の塵は素通りだ。
莫迦にできないのがファンを回すモータの騒音である。パソコン背後のクーリングファンでも耳についてやかましいのに,これ以上暗騒音が増えては堪らない。おれは仮面ライダーじゃないのよん,年ぢゅう風の吹いている必要は無いのである。
ではイオン式だ。イオン式とは何ぞや。商品解説に拠るとこうだ。本体からばら蒔かれた陰イオンが空気中の埃や匂いの分子に飛びついて帯電させ,同じく本体の陽帯電吸着部に引き寄せる。空気を動かさないで集塵するのだと。
うーん,なるほど,感心も得心も行くなあ。と言うのは嘘で,疑惑が群雲のように湧き出づる。まずイオンというのは正か負に帯電した原子または原子団を指す言葉であって,イオンという元素があるのではない。いったい何をイオン化するのか,酸素か窒素かアルゴンかはたまた鉄かアルミかクリプトン。また陰イオンをどうやって飛ばすのか。飛び出した陰イオンは正電荷の埃(静電気で簡単に発生するのでは?)に選択的にぶつかってしまい本体吸着部に帰ってこられないのではないか。そもそも陰イオンはすぐ側の吸着部に,飛び出した一瞬後に捕獲されるのではあるまいか。
疑惑はさて措きTV画面の静電気に埃が吸い寄せられる事実が厳としてある。あれの強力な奴であると納得してみよう。
ところでイオンがおれに衝突しても害は無いんだろうな。まさかおれの電子を奪い取ってくんじゃ。
買ってみました。
かねて贔屓の『通販生活』にあった「イオン フレッシュ」である。これを見たから空気清浄機を入れる気になったんだけどね。
240×167×420mm^3・1.9kg。またしてもガンメタ。消費電力は6.3Wで電気代は年間800円にしかならない。放電圧+-7500Vとあるのは,だから何なのという感じだ。かなりでかい図体はジャイアントロボの人差し指第一関節を切断して立てたようなデザインである。頭頂に感光センサ仕込みの常夜灯があるが無用の長物だ,カットする。
電源を入れてみよう。途端にジリジリジリと盛大にノイズが発生した。何だ何だ,無騒音方式じゃなかったのか。如何にも電磁系のノイズであり,イオンの発生音なのか埃を捕まえた音なのか陽極板に衝突した音なのか見当が付かない。ラジオにも凄い輻射ノイズが入る。
底面のフィルタ センサ ヴォリウムを初期セットしたら他にやることは無い。たばこの煙を吹きかけたら雲散霧消するというものではないから,数週間たってフィルタの汚れを見るまで浄化能力を検証できないのである。
このイオン フレッシュが他を圧して優れているのは,フィルタに市販のペイパタオルを使うことだ。この一点で採用を決めさせる。こうした消耗品に莫迦たかい専用カセットなんかを買わせるのは下の下のやり方であって,目の肥えた不精者の支持は得られない。実は二重構造と書いたエアコンのマイクロフィルタ側はとっくに腐って捨てたままなのである。わざわざ電器屋まで代わりのカセットを買いに行くわけが無い。このへん白くまくんは考え直した方が良い。ティシューやキチンタオルを張らせればエコマークだって夢じゃないぞ。
非常に簡素なマニュアルは原理的な説明が一切なく,各部の名称と実際的な手入れのやり方が書いてあるばかり。ここで不安なのはオゾンの発生を示唆する記述がある点だ。や,オゾンは有害なはずだぞ。森林浴でオゾンを吸おうなどと言う莫迦が居るが,対流圏においては一酸化炭素クラスの危険分子である。大丈夫なんだろな。


わたたた,前回WordPerfect(以下WP.)にやる気が無いと悪口を書いたら,その翌日に届いた『日経パソコン』誌にVer 6.0のリリース予告が載っていた。加えて一太郎6発売延期のお知らせ。うむ,パソコンの神はおれの改宗を非と戒めておいでだ。しかしおれは正規ユーザだぞ。WP.は何故にヴァージョンナップ案内を寄越さない,普段くだらん冊子を送りつけているくせに。
今度のWP.はSIX.0とすかした言い方をするらしい。グラフや作図の機能をサポートしたのがご自慢の様子だ。WORDAmiproもそうなんだけど,単体ワープロ機じゃあるまいしワープロソフトはワープロの機能さえしっかりしてりゃ良いんだよ。ちょっとずつせこい関連機能を付けるんじゃねえ。ったくどのソフトにも同じようなお負けが付くから専用アプリが泣いてるじゃねーか。
おれがWP.に期待しているのは縦書きモウド時の処理速度アップだ。現ヴァージョンは不満だらけなんで盲目的に移行する予定だが,SIX.0が滓だったらほんとに殺すぞ。


PARADOXヴァージョンナップやら筆まめの導入やら週刊金曜日の継続やらでちょくちょく万単位の出費が入りWordPerfectも割り込みそうだ。ボーナスで買うつもりだった電動エアガンのアーマライト(M-16A)が怪しくなってきた。
アーマライトは渋谷のさくらやで安売りしているのがもう一箇月心に引っかかりっぱなしである。数あるエアガンのうち現在のトップセラは東京マルイのM16A1ベトナムタイプであるらしい。ただ「ベトナム」とモデルをつまびらかにされると非常に生臭くなってしまうので,おれのターゲットはそのベイスとなった通常タイプのM16A1である。
後発の「ベトナム」の方が品質は高いのだろうがお値段も高い。バッテリとチャージャ込みのフルセットに多量のBB弾と連射マガジン・ローダ・サイトスコウプも付けるとなると,総計は4万円ちかくになるはずだ。本体価格で1万円の差は大きい。
こんな物を買って何を撃とうと言うのか。もちろん人に銃口を向けるのは御法度だしぶち殺したろかと思う奴はそう多くない。雀でも撃つかな。でも本当に狙撃して落ちでもしたら,かなり深いブルー入るに違いない。止めとこう。それにベランダから雀を狙う姿をご近所に見られでもしたら警察に通報されてしまいそうだ。
おれは基本的に収入を物品に換える方針であり──旅行や食事に贅沢しない──物に囲まれているのが好きな質である。とは言い条そろそろ歯止めを掛けないとおれの華麗なる消費生活が憂いある浪費生活に堕してしまう。
それで預金の93%を定期に回して凍結することにした。ナニ,普通口座をオウヴァランしたら定期から借入できる総合口座って奴だ。早くからやってりゃ利息が数万円ちがっていたらしいのだけれど,面倒くさいので放っておいた。3年後からはコテツの車検代を捻出する必要がある。定期の複利を足しにしないと破産する恐れが出てきた。


わたたた,WordPerfectからヴァージョンナップのお知らせが届いた。な・なんてタイミングの悪い奴。
SIX.0は宣伝の美辞麗句を割り引いても非常に魅力的な内容だ。ヴァージョンナップと言うより新しいプログラムだなどと自画自賛。おれなどこんなことを聞くと,お莫迦なまま前の版を販売したなと恨みを含むが,まぁ1年前にWP.が出てなきゃWORDを買っていたところだ。良しとしようか。

不一

1994年12月2日


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仮面ライダー
 石ノ森章太郎。大ブームの渦中にあってTVシリーズぜんぜん観なかった。なんでかな,裏で何かやってたかなあ。それにしてもショッカー,人体改造できるくらいの医療技術があれば世界征服なんかせんでもみんな認めてくれるって。

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通販生活
 カタログハウス社の基本的には宅配の季刊誌。オウディオのようなマニアックな機材の記事を読むとちょっと理解の浅い感じはするけど,白物や収納関係はおもしろいっす。おれ,お得意さん。

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ジャイアント ロボ
 横山光輝。ああいう巨大ロボってろくにテストしてないはずなのにバグが出ないね。ロボの言語解析辞書は何箇国語プリセットされてたのかな,日本語が入ってたのは僥倖だった。

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白くまくん
 日立のエアコンのペット ネイム。これを買うときは三菱のビーバーとどっちにするか悩んだ。

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週刊金曜日
 もちろん萩本欽一の莫迦番組ではなくて,本多勝一・井上ひさし・椎名誠ら編集の史上最硬派週刊誌。広告タブーを排するためほぼ無広告の通販宅配だった。おれが取ってた頃は500円だったけど,まだ存続してるのかなあ。

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コテツ
 おれが以前のっていたバイクGSX400S KATANAの名前。

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written by nii. n