神奈川月記9411

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冠省
百の冷笑と十の微笑に迎えられ,おれはカタナに還ってきた。カタナ乗りはカタナに乗りたくてカタナを手に入れるのである。カタナにしか乗りたくないと言うのじゃないのよん。
どうもコテツは思い出のコダチと風貌が異なる。寸法の違いは数mmのオーダなのにだ。動物に例えるとどちらも鮫以外の何者でもないが,コダチがホオジロ(ジョーズ)ならコテツはもう少し深海を遊弋するジンベエなのである。シェイプアップして瞬発力を獲得するよりもビルドアップして持久力を付けることを選んだ陸上選手といった趣がある。
カタナの造形は極めて独創的かつグラフィックであり,模写する誘惑は断ちがたいと見えてたくさんのマンガ家が作品に登場させている。『バリ伝』でヒデヨシが乗り『ララバイ』でキングが乗り,キリンはポルシェを追い回しクリスは逃走中クラッシュした。『あいしてる』で花子が愛用しているな。白バイ仕様にした交機隊員も居る。ちょい乗りしたマンガとなれば数しれぬ。
興味深いことに暴走族はひとりも居ないのである。基本的にソロ ライダで旧式となった機体でありながら異様に速いというシチュエイションが多い。現実にもカタナに乗ったゾクというのは想像しにくい。多分いないだろう。
カタナのサイドカヴァにはシートに面した側に松本零士ふうのアクセントが付けられている。実車では黒いゴム片が貼り付けられているだけであるが,本来のムートのデザインでは後付けする電装品のスイッチパネルなのだそうだ。や,恰好いい。減光とハザードのん付けようかな。
2回目の燃費計測ができた。前回計測から254.3km(累積503km)の時点で13.5lの消費,18.8km/lである。も・もう落ちてる。今タームは昼間走行が主体で莫迦者に悩まされ,わしまだ慣らし運転じゃけんねなどと言っていられない状況が多かった。チクショー。
燃費計測3回目。累計751.5kmにおいて18.8km/lだ。おお,安定しているぞ。
距離を延ばすにつれてエンジンががさついてきた。慣らし失敗か。しかしどんなへぼな乗り方をしたとて800kmやそこらでいかれるわけがない。こういうエンジンなのだろう。
400カタナのエンジンはレーサ レプリカGSX-Rのをおとなしく調教した物である。これは水冷なのだがオリジナルのカタナが空冷なもんで,わざわざ冷却フィンを切って擬態を施しラジエタもなるべく目立たないよう腐心している。そんなことをするくらいなら出力が落ちても空冷か油冷(おれ好き)にしとけば良さそうなもんだが,今スズキに400cc4気筒は水冷の物しかない。新たにエンジンを起こしたりしたら死ぬほど高く付く。おれとしてはGS400Eの空冷2気筒でも良いのだけれど,直列4気筒の巨大さがカタナの属性のひとつとあらば止むを得まい。
ヒットしても月に1000台くらいしか売れないバイクにこれだけのヴァリエイションがあるのは驚異であるが,よく見るとウィール・フォーク・ハンドルなど個個のコンポーネントは数種のパーツを使い回しているのが判る。インパルスに至ってはエンジンは疎かフレイムまでカタナと共通なのである。或る機種をその機種たらしめているのは実にカウルとタンクとシートなのだった。
おれはどうも400カタナのデッドコピイぶりに抵抗があり,この夏とうとう1100カタナまで復刻されるに及んでますますその意を強くする。理想を言えば油冷エンジンを載せてカウル下にオイルクーラを抱かせたかったし,リアはDRのアルミ締結アームを穿かせたかった,モノサスになっても良いや。せめてフロントを倒立サスに換えるくらいはやってもらいたかったぞ,フェンダなんか変形したって構うもんか。
倒立サスはあっと言う間にはやらなくなってしまったが,ビモータはテージ1のようなフロント懸架(ヤマハのより恰好いい)だったらおもしろいカタナができただろうなあ。おれに買える値段に収まるとはとうてい思えないけどさ。
燃費計測4回目。やや持ち直して19.4km/lである。や,4回目と言うことは1000km突破ではないか,しかも1箇月点検前である。かつて無いハイペイスだ。コダチなぞこのとき200kmと走っていなかったのである。ひたすらおれが慣らし運転を重ねてきたからであるが,言わば走るために走ることを退屈させない力がコテツにあるということだ。
同じ車格・同じ速度で走りながら正直言ってコダチとコテツにこれだけ質的な差があるとは思わなかった。排気量の違いをおれは見くびっていたのである。
正確にはトルクの違いであろう。コダチは250ccにして2.7kg-m,コテツは400ccにして3.8kg-mである。モータサイクルは常に駆動力(トラクション)が掛かっていないと安定しない厄介な乗り物であり,逆に言えば駆動力を与えるほど外乱に強くなる。おれは排気量の恩恵がやっと解ったよ。街乗りに使う分には250ccで必要充分ではあるが,400ccなら安全の確保により有利なのだな。
いちおう規定の慣らしは終了した。ただコテツはもう少し慎重に行こう。最大トルクは毎分9500回転・最高出力は1万500回転で発生する。因みにレッドゾーンは1万2500回転からフルスケイルの1万4000回転まで。今後は100km走行毎に上限を1000回転づつ上げていく。1700km走行時に1万2000回転に達するわけだが,まぁそんなに回す機会は無いだろう。実のところ毎時100kmのスピードが怖くて出せないおれに6000回転以上は不要なのである。
ただコテツの性能曲線に拠ると燃料消費量のディップが7000回転付近にあり,ここを遣うのが賢者の証と言える,それでは能力半開なのだが。


10歳まで小児喘息に苛まれ17歳で自然気胸を患い22歳に急性気管支炎で入院している。病死するとしたらまず間違いなく呼吸器系統の疾患であろう。そんなおれがたばこ好きなのだから人生っておもしろい。おもしろかねえやい。
たばこの害については諸説あるが,肺癌の直接原因というのはどうも怪しい。副煙流のせいで周りの人が発癌するというのはもっと怪しい。煙を吸う以上まったく影響しないとは言わないが,飲酒よりは罪が軽い。たばこよりゃ大気汚染の方が問題だと思うよ。室内勤務の喫煙者と職業ドライヴァの非喫煙者とを比べたら後者の方が発病率は高いんじゃないか。統計というのはサンプル母数の大きいほど利用者の期待する結果を導きやすくなるから,どんな数字を持ってこられても鵜呑みにはできぬ。
しかしながら吸いすぎは確かによろしくない。ストレスがおれを駄目に掛かるので本数が増え,最近は1日に30本から40本を灰にしている。気管支炎も慢性化寸前だ。たばこを止めてしまう気は無いが,喉への負担を軽くしてやりたい。
CAMEL MILDは今夏プレゼントを乱れ撃ちして義理を果たしたことだし,レギュラ交替しても良い。ちょうどKENT1が出てキャンペインを盛んにやっており,ハンディ液晶テレビが欲しくて7箱ばかり吸ってみたもののこれはペケだった。KENTはやたらと種類があるが,どうもおれには合わない。連用すると気持ちが悪くなる。残念ながらキャメル1というのは無く,2歩も3歩も下がってLARKのスーパーライトをお試し期間中だ。ニコチン・タールはほぼ半減である。
ご存じのように箱の脇にはタールとニコチンの含有量がmg単位で記載されており,その比べっこでけっこう座が持ったりもするのであるが,あれ,1本あたりのものだかひと箱あたりのものだか1gあたりのものだかはたまた100gあたりのものだか皆目わからない。それでも誰も気にした人は無いのである。正確に見せて実はずぼらで好い加減,まことに好ましいと思うぞ。


パソコンを入れて1年たちました。しかしパソコンについて何か解ったかというと,こういう成果がありましたなどと誰に申し述べることもできないのであった。この1年だけを取り出しても激震の連続,津波のあまりの速さにおれなぞとうてい追いつけない。いつ買っても早すぎ,いつ買っても遅きに失する状況はまだまだ続きそうである。
春にはWINDOWS95が控えており,そうなるとこのマシンじゃ満足に動かないんだろうなあ。一太郎がVer.6にのし上がり,我がWordPerfectを完全に凌駕してしまった。縦書き編集と付属ユーティリティに辛うじて得ていたアドヴァンテイジを失ったにも拘わらずWP.はヴァージョンアップしそうにないし,乗り換えを検討している。キャンペイン価格は2万円だ。何よりATOK9が魅力的なのである。
WP.にしたところで御披露目価格とは言え2万5000円もしたのだ。1年やそこらで捨ててしまって良いのか。おれは何か強大な意思に操られているのではないか。ちょっとは考えなさいよ。今年はやりすぎだったんじゃないの。

草草

1994年11月12日


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コテツ・コダチ
 コテツはGSX400S KATANAに付けた名前。コダチはGSX250S KATANAでした。

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バリ伝・ララバイ・キリン・クリス・あいしてる・白バイ仕様
 順にしげの"バリバリ伝説"秀一・楠"あいつとララバイ"みちはる・東本"キリン"昌平・秋本"Mr.Clice"治・守村"あいしてる"大,うーんとうーんと,忘れた。白バイ仕様のは確か「週刊モーニング」でやってました。

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written by nii. n