神奈川月記9410

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冠省
大学時代にせっせとヒット パレイドを作っていた。FM放送(当時当地はNHKしか無かった)の番組ごと丸録りしたのから精選してカセットに落とす。マスタにしたのはメタルカセット,後にPCMプロセッサ。もちろんおれに対して「ヒット」した曲のオムニバスである,世間のメガヒットとは無関係。ま,誰が作ったってそうするか。
編集上いくつか原則がある。まず1巻についてひとり1曲,同じ人は二度と出てこない。洋楽と邦楽は積極的に混在させる。なるべく男女和洋を交代で唄わせ,似たタイプの曲を続けて入れない。音源はFM放送に限る。外の媒体で持っている曲を入れない。違う巻ならテイク違い・歌手違いの同曲も可。曲間4秒。要するに有線放送のあの雑多でエントロビイの低い配列を狙ったものである。
全594曲・33巻・延べ40時間に及ぶこのヒット パレイドをどうしてくれよう。決まっている,MDに移すのだ。ダビングすれば──もう孫世代になるだけに──極端に音質の劣化することは明白である。と雖もカセットやPCMではやれなかったシャフル再生ができるとあってはやらずにおれん。それに今となっては聴きたくない曲も少なくない。半減させるくらいのつもりで刈り込んで,スーパヒットパレイドを実現しよう。でもこういうことやるからおれのライブラリは歴史はあっても厚みがないんだよな。
年代でいうと80年後半から86年前半期である。松田聖子の全盛期に当たり,彼女の新曲は文句無く入ってきた。外に目に付くところでは大沢誉志幸・Culture Club・Thompson Twinsらが活躍している。
74分ディスクを20枚ついやして,やっと先が見えた。問題なのは最後の1枚で,何十分も余ってしまう。おれの性分からしてきっちり埋めねばならないのだが,上京してからというものFMのきれいに入った試しがない。AMは更に駄目だしTVから音声だけというのも何だかなあ。
それで今はまたSt. GIGAに期待している。開設当初のGIGAはそれはもう糞のような番組編成で,こんなん誰が聴くかーと貶したことがある。絶対失敗すると思っていたら案の定,最近の番組表を見るにすっかりFM化してやんのな。笑っちゃったよ。毎月曜日はノンスクランブルのお試しデイとなっているので,めぼしい時間帯をPCMぶん回しでチェックしてみたい。まともに曲を掛けているなら加入するのも吝かでないぞ。
レンタルCDの会員にもなっているのだが,とてもシングル10枚を借りてきて編集するような根気は無い。要らんB面(という言い方しかできないが)やカラオケパートが勿体ないしね。また放送音源でないとぐうぜん珍盤奇盤を入手する喜びを味わえないではないか。
甘木がずばり有線放送を個人で引いていて聴かせてもらったことがある。そりゃあ琥珀のような魅力があって羨ましかったのだけれども──特に落語チャンネルと懐かしポップスチャンネル──結局おれは入れなかった。まず月額聴取料が6000円と高い。それにあれを入れたらあればかり聴いてしまい,ヒットパレイドを作る意義は残るが意欲は失せる。居職になれば積極的に考えるがなあ。
やっぱり最後に余りを作るのは止めて,録音済みから更に間引いたあとへ分散してぶち込んだ。代わりに落ちた方方は残念でした。最終的には355曲・20枚・23時間である。St. GIGAの件は継続して検討するのよん,落語テイプの埋め草に未録のポップスは必要だから。


今回筆が進まないねえ。好きなこと書こう。
カタログを取り寄せたりなんぞをしておれの心の点火に成功しオペレイションK2は発効,くすぶって不完全燃焼しないようヴォルテイジの維持に努めている。ただしターゲットは揺れている。ここで決定してしまおう。作戦会議だ。
えー,昨今の構造不況・国際情勢・環境破壊など,われわれを取り巻く状況を鑑み,でも欲しくなったからモータサイクルを買い換えようとエスから提案が為されました。われわれ自我と致しましてはエスの欲求は一応は検討せざるを得ず,とうぜん本会議にも強度の圧力の掛かることと存じますが,経済的臨界は明確に提示し,朝三暮四・朝令暮改をモットーに,いつものように適当に片付けてしまいましょう。幸か不幸か昨今のバイク業界はリヴァイヴァルブームで,かつての名車のフォルムに最新のエンジンを載せての復刻版が人気でございます。一体どういうことでございましょうか。レイサレプリカの衰退と反動でネイキドが躍進,たちまちデザインに行き詰まって昔うれた意匠を引っぱり出して着せてみた,こんな印象を受けなくもありません。或るいは当時ヤンキーだったのが企画・開発の責任者となり憧れのマシンを再現せんとするものか。CB・XJR・インパルス・ZRXと後から出たバイクほど範を過去に求めており,まずいことにはどれも古臭いのでございます。今の小僧っ子の目にどう映るのかは解りませんが,有り体に申し上げて恰好悪いぞ。
オペレイションK2はもともと250カタナの買い戻し計画だったわけですが,一方でグース350の誘惑もあったのですね。ジェベ公と同じDR系の単気筒油冷エンジンで素性の良さは解っているし,モータサイクルで最も美しいブルーのペイントを纏っています。いっそグースをと考えていたら250ccと400ccの間の深くて黒い河が余り障碍にならないことが見えてきた。とならば400カタナが射程距離に入ってきます。250カタナの再購入よりは,何と言うか恰好が付きますね。では選定に入りましょう。きみ,スライド用意して。

GSX250S KATANA GSX400S KATANA CB400 SF
サイズ(mm) 2,060×685×1,160 2,060×700×1,150 2,085×735×1,080
軸距(mm) 1,435
1,430
1,455
キャスタ(度) 25:40 25:40 ?
トレイル(mm) 99 101 ?
舵角(度) 33 32 ?
乾燥重量(kg) 160.0 182.0 172.0
排気量(cc) 248 399 399
最高出力(ps/rpm) 40/13,500 53/10,500 53/11.,000
最大トルク(kgm/rpm) 2.7/10,000 3.8/9,500 3.7/10,000
パワ/重量(kg/ps) 4.00 3.43 3.24
トルク/重量(kg/kgm) 59.25 47.89 46.48
燃費(km/l) 43.5 36.0 34.7
ウイール(inch) 17×17 18×17 17×17
車輌価格(円) 565,000 659,000 589,000

えー,表は前の愛車250カタナと今回ターゲットの400カタナ・ついでにカタナの伝統的なライヴァル,巨人阪神戦みたいなもんですね,CBの諸元表でございます。何だ,CBが一番スペック良いぞ。いやCBを買うくらいならグースにしましょう,どうもホンダ車って人気のある先生みたいでおもしろみが足りんのですわ。ヤマハは? 何かガキんちょ好みなんだよなー。カワサキ? よく「男のバイク」なんつってるもんね,やだね,そんなのが売りかよ。おや,400カタナの方が250より小さいですね,ほんの僅かですけど。フロント18in.でトレイルも400のが大きいのに。それでいて重量22kg増しとは。外装はどうやら250と共用みたいだし,エンジンとフレイムだけでそんなに増えるものでしょうか。CBと比較しても10kgの差があるぞ,艤装としてはカウルくらいしか違わないだろ。あー,重量増は高速安定性に貢献するファクタですから,必ずしも悪ではございません。おれ,倒立サスのグースに乗りたい,エキパイがステインレスだし。あの,一応カタナ購入計 画ですから。だいたい何で今更カタナなんだ,ジェベルに不満があんのか。全くございません。それに400ったら車検があるんだぞ,2年毎に10万も出せるか。辛いです,しかし自動二輪の区分改訂の際に車検制度も変わって400は車検無しになるという噂が。噂だろ,ちょっとエスを呼べ。エスに訊きますか。「カタナ欲しいっす」ジェベルで良いじゃねえか,250カタナ売ったくせに。「カタナもジェベルも欲しいっす」じゃ間を採ってグースを,ちょっとは安いし。「カタナもジェベルもグースも欲しいっす」や,それはいくら何でも。破滅型人生はいけません,どれかひとつに。「400カタナ欲しいっす」250のが人気あるみたいですよ。「250はもう乗った。400カタナでないと暴れる。自律神経失調おこしてやる。出社拒否する」わぁっ,お開きお開き。
例によって強大なエスに押し切られ,オペレイションK2は400カタナの購入計画に変更された。


どっかいじると必ずどっか壊れるなあ。
ぺーじれいあう太2」で作った処理フロウを印刷しようとしたらBJプリンタの野郎,がたんと止まってハイそれまでよ。バグかな,しかしこんなあからさまなバグの出るはずが無い。それで実績のあるWordPerfect文書を印字してみるに,1行だけ譫言のような文句を書き散らして何十枚となく排紙するばかりだった。これで原因はプリンタドライヴァと知れる。プリンタマネジャやポート設定に異状は見られないから,たぶん立ち上がりに失敗してドライヴァがロウディングされていないのだ。またCONFIG.SYSかAUTOEXEC.BATの誤謬だろう。好い加減にして貰いたいなあ。
ところが今回両者はシロだった。こうなるとお手上げだ。一応DOSとWinの再インストールをやってみたが──ったく,何度目だ──けっきょく迷宮入りである。
まあ壊れてるったって物理的に損壊しているわけじゃあない。マスタ ディスクのある以上復活の呪文がいつかは効く。慌てない慌てない。ひと休みひと休み。

草草

1994年10月6日


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開設当初のGIGAはそれはもう糞のような番組編成で
 えっと,当時はくだらん環境音楽ばかりでしかもクロス フェイドするは波の音や下品なナレイションを被せるはで,狼藉の限りを盡くしていたのだ。

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深くて黒い河
 男と女の間には深くて黒い河がある,と野坂昭如が唄うてました。

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自動二輪の区分改訂の際に車検制度も変わって400は車検無しになるという噂
 デマだった。しかし実現せんものかね。

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がたんと止まってハイそれまでよ
 クレイジィ キャッツ『ハイそれまでよ』の1節。青島"都知事"幸男の作詞。キャッツの紅白歌合戦曲だったらしい。

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譫言のような文句
 この月記が印字されたわけではない。

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慌てない慌てない。ひと休みひと休み。
 テレビ局わすれた『一休さん』の締め台詞。劇中わすれられない台詞に,愛娘が失恋か何かでブルー入った折りに庄屋の言った「よっぽどショックだったんでしょうなあ」がある。室町時代に「ショック」て。

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written by nii. n