神奈川月記9408b

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冠省
PS/V Vision買ったのは去年の暮れだぜ。その頃はWindows利用に充分なスペックと言われていたんだ。それが3箇月でRAMの増設・半年でHDの増設だい。やれやれだぜ。
現在おれのVisionはRAM16MB・HDは510MBである。それぞれ標準装備の2倍・3倍の容量だ,HDなぞギガ(0.5GB)で呼んでも良いくらい。それでも未だパワ不足を感じている。特にRAMはもっと欲しい。Visionは入門マシンの位置づけであるが,最大16MBは非力すぎる。この一点においておれはもうVisionを薦めない。
HD増設はいちおう成功した。しかし遥かなる紆余曲折を経てしかも茨の道,水戸街道じゃあないよ。コンピュータに好意も自負も無い一般ユーザならここで挫折するのもむべなるかなといったところだ。
Visionにもう1台内蔵させる空間は無く──内蔵HDを捨てて大容量のと換装する手はあるが──外づけHDを採る。HDの主な規格にはSCSIとIDEとあって,Visionに予め内蔵してあったのがIDEで増設する分はSCSIのほうである。何故にこのような切り分けがあるのかというと,自分で調べろ。
SCSI機器を繋げるためにはまずSCSIボウドが必要なんである。SCSIボウドはLSI満載の基盤にコネクタの付いた無防備きわまりないパーツであり,カードスロットルに差し込んでパソコン筐体背面の窓からコネクタだけ覗かせる恰好で装備する。
おれの買ったのはadaptecのAHA-1542で,これが3万2500円。肝心のHDはザコンで迷いに迷った結果,Logitecのh-miniとなった。340MBである。本当は540MBくらい奢りたかったのだけれど,そっちは未だ10万円近くする。h-miniでも6万6200円なのだ。更にケイブルと終端末を塞ぐコネクタが要るんで,最終的には11万円を越えた,きゃー。予算は6万円だったのに。
涙ぐみながら接続である。Visionの内臓を引きずり出してボウドを差し込むまでは前回RAMを増やして体験済み。スロットルはみっつあって既にSoundBlaster16がひとつ潰しており,したがって残りは1枚になる。TVチューナでおしまいかな。寂しい限りだが,SCSIボウドにはななつまでぞろぞろと連結できるからMOやHDの更なる増設は心配しなくて良い。
SCSIの接続はボウドを含めて全ての機器を直列に繋いでいく。これを雛菊繋ぎ(デイジイチェイン)という。ここ,試験に出るからね。両端の機器(内蔵のSCSI機器が無ければボウドが一方の端になる)の出口か入口かどちらかは繋げる物が無くて遊ぶわけだが,これもあたかも塞がっているかのように騙してやらないとSCSIは働けない。
おれの場合はボウドと増設HDのふたり連れだからそれぞれの一端がもう終端である。AHA-1542ボウドはディップスイッチかバンドルのソフトで設定できるが,h-miniには物理的なコネクタが必要だった。今後MOでも買ってくればh-miniからケイブルを介してMO接続,MOの空き端子側はh-miniを塞いでいたコネクタで閉じてやれば良い。
h-miniは90×45×144mm^3の驚異的な小ささでまさにパームトップ,モデムより小さい。丸みを強調した筐体に電源スイッチとパイロットランプ・アクセスランプ各1個のこの上ないシンプルさである。恐らくは170MBのディスクが2枚はいっており,手に取るとずしっとした感触を楽しめる。発熱量おおし。アクセスに行くと,カンッという木質の打撃音がする。クロの子猫の写真が大きくあしらわれたパケイジと言いネイミングと言いデザインと言い,コンピュータ商品の薄暗さを酷く嫌った造りである。女の子が買うとでも思ったのかな。
接続が終わったら設定である。BIOS・SCSI-ID・IRQ・I/O PORT ADRESS・DMA CHANNELと奇怪な呪文が鬼のようにあるが,みなボウドのDOSソフトで設定できるし工場出荷時のデフォルトで動くに決まっている。h-miniのSCSI-IDは最初のHDということで0に決まりだ,そういうSCSIのルールなのである。ボウド自身は7がデフォルトだ。
準備完了,スイッチョン。パソコンは本体に遠い所(周辺機器)からONにしていくのが原則で──切るときは何からでも良い──本体の後から上げたデヴァイスは認識してもらえないことがある。
しかしここからが長かった。どうしてもSCSIボウドを認識してくれない。立ち上がりで非常に考えた末にDOSが拒否している。またVisionの裏パネルを開けてボウドを差し直したり果てはケイブルを疑って交換さえしたのだが駄目。静電気でボウドがいかれたか百万分の一の確率で不良品を掴まされたか。でーい。こうなったらDOSもWindowsもインストールし直しじゃい。でも駄目。うーむ,こいつは手強いぜ。
結果から言うとポート アドレスの不正が原因だったのだが,そんなことに気が付くもんか。おれは3日間不安に泣いた。だいたいアドレスもソフトウェアで設定できるという触れ込みではないか。ソフトウェアで設定するためにはソフトウェアを立ち上げねばならずそのためにはボウドが認識されなければならないのだぞ。これではお金を儲けるにはお金が必要だからまずお金を儲けなさいと言っているようなものだ。OSの組み直しまでさせやがって。
アドレスの変更は結局ディップスイッチひとつで解決した。BIOS(基本入出力制御)はVisionのをそのまま使う。IRQ(割込)レヴェルとDMA(デイタ転送)チャネルはVisionのマニュアルを見て空きナンバを振れば良い。これで物理的にも論理的にも接続は完了である。あなめでたやな。
しかして接続が終わったらHDのフォーマットである。かようにコンピュータの下拵えはめんどうくさい。元元の170MBはIDEの別もんだしそのままの塊で使おう。増設分は255MBと64MBとに割ってしまう。順にC・D・Eとドライヴが分かれることとなり,DだったCD-ROMドライヴァは自動的にFへ繰り下がる。ついでながらFDはAドライヴ。Bが遊んでいるのはツインFDではないからだ。
どうしてせっかくの大容量HDを割るのかと言うと──これを「パーティションを切る」と言う。試験には出ない──DOSファイル管理の癖を利用するためである。あるファイルをファイルとして認識するには,例え実デイタが1文字であっても一定容量が確保される。クラスタサイズという奴だ。それがパーティションサイズによって変化するのである,11MBから64MBのばあい2KB・65KBから255MBの場合で4KBというふうにね。その上は511MBまでで8KBだ。したがって上のように切ればDドライヴに最大6万3750個・Eドライヴに同じく3万2000個・計9万5750個のファイルを格納できるのに対し,320MBまるごと遣えば4万個にしかならない。この月記は30KBくらいあって関係ないてなもんだけど,システムファイルなんかは数KB足らずのものが多い。気にするだけの成果はあるようだ。
パーティション毎にアプリの区分けを考えた。CでDOSとWindows及びWordPerfect並びにParadoxを継続使用・Eに数少ないDOSのアプリ(ELFISH復活!)を突っ込み,最も肥沃なDドライヴにその他なんでもかんでもということにする。Cに入っていた頻度の低い大型ソフトは消し去り,DかEに再インストールするのよん。
ここで困ったことにアプリを削除するとき完全な除去はほとんど不可能なのである。そのアプリが生成したディレクトリとアイコンを消すのはたやすい。ただ多くのアプリはWindowsアプリが共通に利用するファイルを(己が動きやすいように)どんどん書き替えてしまうし,初期化用iniファイルなどは自ディレクトリから離れて作ることさえある。これらは開けて見てもどのアプリのものか判らなくて手を付けられない。ごみと疑いつつも残しておくことになる。
これではいかんというので,今はソフトのアンインストール モジュールが熱望されている。共通ファイルの変更部分と自分自身とを消去するプログラムである。MicrosoftはWORDの6.0からを添付を始めた。いずれ慣習的に義務化するのだろうな。
おりゃおりゃーと言いつつ主だった連中をDやEにインストール。新顔は『ぺーじれいあう太2』,実用になる最廉価のDTPソフトである。WordやEXCELも遠慮無くフルインストールだ。そうしてマシンを立ち上げてみると,あや,途中でBEEPを出して止まってしまった。おれはもう真っ青である。config.sysとautoexec.batがぶっ壊れているのだ。誰だ,壊したのは。
おれは4日間不安に泣いた。この回復は或る隠しコマンドを知らないと不可能である。ただし隠しコマンドはconfig.sysを修復するものではなく,config.sysを1行づつ実行してどこが悪いか調べるためのものであるから念のため。最高チューンドのconfig.sysとautoexec.batだけは是非バックアップを取っておくことをお勧めする。
HD増設の波瀾万丈はこれにて一件落着である。ふう。でもこのあいだゴジラのスクリーンセイヴァをDドライヴに入れたらまたautoexecが壊れた。どうもパーティションを違えてインストールすると壊れやすいようである。
おっと,コプロのことを忘れていた。コプロとは数値演算専用のプロセッサである。でっかい表計算やCG描画のときに威力を発揮するが,ワープロなんかじゃあんまり関係ない。コプロを省略するとどかんとコストが下がるんで,各社パソコンのボトムモデルに好んで使われる。
VisionのCPUはIBM謹製の486SLC2(50MHz)で,これはintelのi486SX2(50MHz)に相当する。型番からコプロなし・クロック25MHZを逓倍してあると判る。DOSはintelのチップで動くようにMicrosoftが設計しており,DOSと互換性のあるDOS/Vをintel製と互換性のあるチップでパソコン本家IBMが稼働するという,よく判らん芸能人相姦図状態だ。現テレパソVisionはグレイドアップされてIBM 486SLC2(66MHz)である,くそ。
PC/ATの面目躍如と言った部分だが,実はコプロだけ後から追加できるのである。Visionにもそれ用のソケットだけは用意されている。おれももっと速く反応してくれえと願っているので,コプロを装備したい。おれの使途では効果は薄いのかもしれないが,あったほうが絶対的に速いのだ。でも高いんだろうな,10万くらいするかな。
SCSIボウドを買いに行った際たずねてみた。Visionにコプロは付きますか。付きません。や,だってソケットが出てる。IBMは付くとは言っていません。付けても良いけど保証しないってこと? そうです。
相手の許しを得ずにむりやり押し込むほど子供ではないしその責任を取れるほどおとなではない。諦めよう。残念ながらVisionはこれ以上金輪際はやくならない。オペレイションP2はノウトパソコンのためのものだが,次期デスクトップマシン調達計画に変わるかもしれない。
うーん,磁気コーティングしても駄目かなあ。


おれは進化と退化の間にあって親不知は下顎2本が生えてきた。上顎には根も葉も無いそうで,火の無い所に煙は立たず。乳歯以外の抜歯も差し歯も未経験であって,自前の30本でこの世の酸いも甘いも噛み分けてきたのだ(嘘)。
大学生のとき(つまり生えてきたとき)に右の親不知は抜いている。ぐいぐいと成長して第2臼歯を圧迫,くくくこの痛み耐え難し,してお使者の御口上は,屋敷を出る折り聞かずに参った。てなこと言いつつ今おもうに術後麻酔が切れてからの方が数倍いたかった。薮だったのかな。
こうして話題にしたからには残った左がいかれてきたということだ。今回は虫歯である。ただ虫歯が直接いたむのではなく,溶出して半欠けになった親不知が頬を噛んで痛い。年年突出してきたのがちょうど噛む長さになったのでもあろう。おれの顎はKyon^2のと同じ大きさなので親不知を飼っておく余裕は無い,良い機会だからこっちも抜いてしまえ。
ひょっとしたら通う羽目になるかもしれないから仕事場の近所にする。リストを貰って最も近い内から最も恰好いい名前の歯医者にGO GO!
お客さん,本当に良いんですかい。おうっ,すっぱりやっつくんねい。あっしゃあこんな見事な親不知は見たことがねえ,勿体のうがすよ。良いんだよう,親が生きてる内に出てくるような奴は親不知じゃねえんだ,後でぐずぐず言うようなこたぁねえからよ。
歯は回収してきた。歯科医の言うには極めて強固に根を下ろしており,抜くのに難渋しておった。2度しきり直してやっと取れた歯は治具で露出部が破壊され,新型シリンダヘッド断面模型のように歯髄を晒している。全長18mmのうち露出部4mm・最大径8mm・重量は計測不能。積年の不手入れで大変きたない。虫歯は象牙質・エナメル質ともに貫通しており,虫歯菌としては突貫工事の末やっと前夜祭まで漕ぎ着けたのに先に抜かれてしまって悔しい,歯噛みしていることだろう。
治療費は960円,麻酔はおれが痛がったので1本追加して3本つかった。レントゲンは撮らなかったぞ。そんな設備も無いみたいだった。
外に既に冒されている歯があるそうで,早晩せわになるだろう。はやらない爺っちゃん先生だったが気に入ったので次回もここにするつもりだ。

草草

1994年8月25日


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SCSI
 通常「スカジー」と読む。別に糞尿嗜好とは関係ない。Small Computer System Interfaceの略である。これとて最早SCSI-2が主流である。PC/ATの規格であるIDEと違って機種依存しないから,例えばMacintoshから乗り換えてもSCSI機器は無駄にならない。

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SCSI-2
 なんつって書いたのが94年の秋であって,もうSCSI-3っすね。

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11万円を越えた
 いやしかしめちゃめちゃ高いね。今(97/10/17)からはちょっと信じ難いくらい。

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この月記は30KBくらいあって
 WordPerfect形式で保存した場合の1ファイル容量である。プレイン テキストなら7・8KBかな。HTML版で10KB前後。

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config.sysとautoexec.bat
 出たーっと言うくらいDOSを語る上で欠かせない2巨頭である。通常「コンフィギュシス」と「オートイグゼック バット」と読む。config.SYSはDOSの遣うバッファのサイズやデヴァイスドライヴァのメモリ配置を決めるシステムファイルであり,autoexec.BATはアプリのパス指定やルーティン実行を指定するバッチファイルである。DOSは自身の立ち上がる最中にconfigを読み,立ち上がったあと最初にautoexecを読む。電源を入れたらWindowsが立ち上がってスタンバイというようなマシンはautoexecの最終行に"set win$=c:\windows win"と記述してあるのだ。この2ファイルが破壊されてマシンが立ち往生すれば,壊れたファイルを修正するエディタさえ開かない。本文で筆者が真っ青になったのはこのためである。

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もっと速く反応してくれえ
 1stガンダムはアムロの台詞。テキサスでシャアに襲われた時ですな。で,磁気コーティングしたいと。機械的な摩擦をキャンセルできるほど強力な磁力がガンダムの電子回路に干渉しないはずはないのだが。

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根も葉も無い
 この慣用句を遣って短文を作れという課題に筆者の友人は「この植物には根も葉も無い」とやった。彼の名誉のために言うがツクリの回答である。

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くくくこの痛み耐え難し。してお使者の御口上は。屋敷を出る折り聞かずに参った
 落語『粗忽の使者』のサゲ。おれの聴いた中ではやはり小さんがベスト。

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written by nii. n