神奈川月記9407

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冠省
これはちょっと特筆すべき事態であろう。後世に残す価値がある。
おれの常用たばこは今のところキャメル マイルドであり,4年来不動の地位を保つ。その前はラッキーストライクでもひとつ前はラークだった。合州国は嫌いなんだけど,たばことチョコレイトだけはうまいんだよな。因みに国産のベストはショートホープ,「束の間の希望」とは何てペシミスト。
上の銘柄で行くと入手しやすさの順はラーク>ラキスト>ショッポ>キャメルかな。キャメルは自販機のみならずタバコロードでセクシーばあちゃんを訪ねてもなかなか置かれていない。勢い切らしがちで,しばしば貰いたばこをする。おれはヘヴィ&チェインそして幸いスクランブルスモウカであってベスト4でなくたって大丈夫。人間,好き嫌いを言っていては大成しない。とは言うもののおれの周りは妙なものばかり吸うので困るよ,ったく。無いよりゃうまいから戴くけどサ。
キャメルにはオリジナルのFiltersとMildsと,もうひとつLightsもある。Lightsは2個パックでライタを付けたり財布を付けたりと拡販にこれ努めているのに,Mildsはまるきり放ったらかしで充分に売れているのか諦められているのか判断に迷うところだった。嘘つけ。だからこの春はじまったMildsのキャンペインは唐突でかなり異例のことである。
キャンペインはひと箱に1枚ついてくるカードを5枚あつめて豪華景品を当てよう!というもの。カードに"C""A""M""E""L"の内ひと文字を振って5種類,これでポーカ擬きの役を作る。1ペア・2ペア・フルハウス・4カード・ストレイト,何だ,よく考えたら5枚ありさえすれば必ずどれかの役ができるわけだ。
でも景品が違う。1ペアはテレカ・2ペアは帽子(キャップ)・以下マグカップ・ボールペンと続き最高位は特製ジッポライタだ。おれは帽子が欲しかったので──禿げ隠しの意図なし──2ペア狙い。おれの喫煙量ならあっと言う間に揃うぞ。
あっと言う間も無く揃ってしかも余る。ひとまず2ペアを2ペア出したらふた口とも当たってしまった。おおう,おれしか応募しなかったのかしらん。みっつも同じ帽子は要らんから──ふたつも要らんのだが──ボールペンでも貰おうかと軽く出したら,や,当たってしまった。これは何かの陰謀か,訝っていると追い打ちを掛けるように発売元から,好評に就き1箇月延期との通知が入った。ほ・ほんとに好評なのか,おれ以外にも。調子に乗ってマグカップもくれくれタコラ。何だ何だ何だ,今日マグカップが届いたのであった。マグカップについては2度だしているので,成績は5打席4安打・打率8割である。おれはドカベンか。
図らずもキャメル マイルドのマーケティング リサーチをパーフェクトに捉える結果となった。日本でキャメルマイルドを吸っているのはおれだけである。ときどき間違って買う奴は居るのだろうが,少なくとも流通量の80%はおれが灰にしている。Reynolds社もこの結果には仰天だろう,まさか日本市場が1個人のためのものになっていようとは。
帽子はちょっと安っぽくて残念賞だった。ボールペンはキンキラで下品だった。しかしいちばん期待していなかったマグカップが望外の逸品である。18-8ステインレスは2重壁断熱構造・取っ手はビス留め。くそう,こいつに全弾つぎこみゃ良かった。


小学5年生の時分にシャーペンが初登場,ぎゃっと言っておれはのけぞった。
鉛筆をばらして取った芯をチャキングして使うのはあったけれど,0.9mmの極細芯を食わせて線幅一定・どんなに書いても太くならないのは衝撃的な快感である。残念ながら値段は憶えていない。小学生には荷の重い価格だった,ような気はする。
翌年0.7mmの超細芯が出て,すぐに0.5mmの超超細芯が一世を風靡しておれも鉛筆とは縁が切れた。技術家庭科で製図のイロハを習う際FだのBだのの鉛筆を箆状に削るのがかったるかった覚えがあるんで,中学に上がる時分にはもうシャーペンしか使ってなかったと思う。どこまで芯が細くなるのか興味津津だったが,高校の手前くらいで0.3mmまで行ったかと思うと.2歩もどって現在に至る。
赤鉛筆の芯や金メッキの芯が出たり,40本入りのが200円から150円になり100円になり,シャーボが出たり消しゴムで消せるボールペンが出たり,あの頃はダイナミックでおもしろかったわい,ごほごほ。
シャーペンという響きは耳障りなので余り遣いたくないのだけれど,メカペン(MECHAnical PENcil)では何だか判らなくなるからしかたがない。ところでシャープが作ったからシャーペンてのは本当かね。
大学に入って最初のバイト代(3日で1万円。旅館の大掃除だった)で万年筆を買いました。これは今でも持っている。パイロットの#3770(富士山の標高ですな。日本一の意を含ませる)は14金でござる。でもこいつは2日も使わないと目詰まりするんで,手紙なんかは専らGペンに製図用インクか墨汁で書いていた。別にマンガ家志望だったわけではない。よくインク壷をひっくり返して炬燵布団を黒く塗りつぶしていたぞ。
大学の4年か5年の時にブラザーからピコワードが出ておれの筆記具はディジタルになった。この先は月記で何度も書いたから端折るとして,ピコワード・PEN24・α10・α5super・N3・WordPerfectと進化し続けるあいだ肉筆の為のペンは全て使いきりの安物しか買っていない。一旦ワープロに染まると手で長文を一気呵成に書くなどとてもじゃないがやれなくなる。この月記だって幾重もの推敲の結果なのである(ちょっと嘘)。ペンは電子に限る。
しかし電子ペンにも優劣はある。ペン先の柔らかさはキイボードのタッチに・滑らかさは日本語の変換効率に準えることができよう。筆跡はフォントに当たるか。
筆跡は金さえ出せば無限であるが,滑らかな書き味はなかなか得られるものでない。どうも付属辞書の語彙数はさして関係ない様子で,現用WordPerfect(以下WP.)の電子ペンは機能てんこ盛りのくせに変換効率の点で先代Canoword N3に遠く及ばないのである。
電子ペンというと何だかソニーの作ったボールペンみたいだから正式な呼称を遣おう。ワープロソフトの日本語入力処理部分は'Front End Processor'略してFEPと呼ばれる。
WP.を入れてからおれは当然のようにそのFEPを遣ってきたが,WindowsもPC DOSもそれぞれのFEPを持っている。そしてWindowsは複数のFEPを管理でき,しかもいつでも自由に切り替えられるのだ。何もWP.謹製に拘泥することはない。世間には単体のFEPソフトだってごろごろしているのである。
買ってみました。
ATOK8はかの一太郎のFEPである。一太郎は累計200万本を出荷したトップ セラであり,確かにすばらしい出来映え,らしい。Microsoftの寡占化に抗してひとり気を吐くジャストシステムの力作だ。あんまり評判が良いのでとうとう単体発売に踏み切った。ジャストシステムにしてみれば一太郎への誘い水であり,おれのような頑固なマイナつかみにとっては一太郎を使わざるを得ない状況において障壁の低くなるメリットがある。
WP.のFEPでいちばん気に入らなかったのは頻度学習の効果が今一だったことだ。変換候補を表示させた時の最初の1列(5語程度)の中でしか学習しない。怠け者である。助詞を見て前に来る語の変換候補を絞るといったこともやっていなかった。
どういうことかと言うと,有名なワープロ苛め文「貴社の記者は汽車で帰社した」を「汽車の汽車は汽車で汽車した」とやってしまうのだな。お莫迦と罵りながら正しく直したあと同じ文を書けば「帰社の帰社は帰社で帰社した」となる。阿呆である。それをATOK8は1発で極める。こうした「AI変換」を謳うFEPは少なくないのだが,ATOK8の識別力は段トツで,百発90中くらい行く。
おもしろくない点も書いておこう。SJIS以外の特殊文字も豊富に持っているのだけれど,それらは一太郎でしか遣えない。なまじマニュアルに出ているものだから悔しさがこみ上げてくる。発音記号なんか特に悔しい。WP.は横文字ならヘブライ文字やキリール文字は疎か欧米の国語辞典にある発音記号すら完全収録のくせに,日本の外語辞典が遣う発音記号だけはフォロウしていないのだ,尤もこれは特殊すぎる発音記号に固執する日本の出版社の方に問題があるのだが。
バグも発見した。縦書きモウドでの編集だと確定中文字列の先頭1文字しか表示できない。隠れている部分もちゃんと動いているのは,決定すれば画面に正しく現れてくることから判る。ヴァージョンナップしたばかりの一太郎にも縦書き編集はあったはずでうまく動くんだろうから,単体化に際しての確認不足だ。全角/半角きりかえに[半角/全角]キイじゃなくて[変換]を使わせるのも厭だな。
月記は基本的に縦書きで行きたい。WP.は豊富な欧文文字セットもさることながらWindows対応ワープロ初の縦書きWYSIWYGだったんで導入したのだが──信じてくれ,安かったからばかりじゃないんだ──実際に縦書きモウドにしてみるととろくてとろくて話にならない。ひと文字処理する度にいちいち画面を書き替えているからだ(どういうことか解らなかったら買ってみなさい)。けっきょく最終稿まで横書きで書いて印刷直前に立てるのが最善だった。
でもこれじゃWORDと変わりゃせず,他機能はWORDに遥かに分がある。それでも最後の最後にちょいちょい直すのは縦書きのままでやっており,ここでATOK8が働かなけりゃWP.のFEPを遣わんければならず従って外してしまうこともままならず,何だかなあという状況だ。


HDがいよいよいけない状況になってきた。あと13MBしかない。消せるものはみんな消し,月記なんぞわざわざFDベイスで読み書きしている次第で,もう通常の努力では如何ともしがたい。いったい何がHDを食っているのか,順にインストウルしたソフトを挙げてみよう。
まずはPC DOS J6.3/VとMS Windows 3.10Bだな。PC DOSはPS/V VisionにプリインストされてたJ5.0/Vと6.3Jとではヴォリウム差が倍近い。Windowsの"0B"てのはバグ潰し後の差分ファイルで更新したことを示す。94年になってWinを入れた場合はこのヴァージョンの筈だが,前年からのユーザは注意すべし。小汚いことにMicrosoftは差分ファイルのあるのをあんまり熱心に広報していない。
外にでかいアプリはWordPerfect 5.2J・Paradox 1.0J・WORD 5.0・EXCEL 4.0・ATOK8てなところ。それからモデムに付いてたStarFaxてえ奴。DOS用のだとC言語独習用ソフトが入っている。熱帯魚鑑賞交配ソフトELFISH(ついこないだ日本語版が出た。ちくしょう)は余りにでかいんで外したままだ。
あや,もう終わりか。以下,次号。

草草

1994年7月17日


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ラッキーストライク
 これよく考えたら「まぐれ当たり」と言っているのではないか。たばこ会社もweb作ってないね。よもや広告禁止の拡大適用なのでは。

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タバコロードでセクシーばあちゃん
 SouthernAllStars初期の佳曲。

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くれくれタコラ
 これ知ってる人いるのかね。20年以上前は18時54分くらいからTV各局が子供向けナンセンス番組をスポットでやっていたもので,これは蛸(強欲)と南京豆の掛け合いコントがメインだった。『たまねぎタマちゃん』の系統かな。

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ドカベン
 水島新司『ドカベン』主人公・山田太郎の公式打率(高校野球時代)が8割近かった。関係ないけど「土方」が放送禁止用語で「ドカベン(土方の弁当)」がOKというのは理不盡である。『釣りキチ三平』もそうだけど。

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黒く塗り潰して
 Rolling Stones "Paint It Black"の捩り。矢沢永吉も似たのをやってたな。

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月記は基本的に縦書き
 月記は知人に宛てた近況報告的手紙文(B5紙5枚程度に印刷)が原型である。だからweb主体になるまで「冠省」や「不一」「草草」がくっついていたのだ。

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written by nii. n