神奈川月記9401

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冠省
You wondering who am I, machine or mannequin with parts made in Japan. I am the modern man. I've got a secret. I've been hiding under my skin.My heart is human. My blood is boiling. てな次第でおれの電脳はIBM製(My brain's IBM)になった。

電脳は"PS/V Vision 2408"とか抜かすガキで,本体ユニット・ディスプレイ・CD−ROMがひとつの筐体に収められている。IBM版のクラシックかタウンズと言ったところ。
画面はわずか13in.だが,実効面積は14in.と同等である。ドット_ピッチは0.28mmの高精細,残念ながらトリニトロン管ではない。

おれがトリニトロンにこだわるのは,これだけがブラウン管の造りを異にするからである。
電子ビームはブラウン管中を飛行するうち僅かでも拡散するので蛍光面に到達する直前で補正してやる必要がある。普通はパンチングネットみたいなシャドウ_マスクの孔を通して拡散分を削るのだけれど,トリニトロンでは電子銃の配置から違って単なるスリットで済む。縦方向での制約が少ないぶん鮮明な絵を出せるのだ。またブラウン管表面が円筒形(他社のは球面)であって4隅の像の歪みが小さい。
今後グラフィックの表示が多くなればディスプレイだけでもソニーのに換えたい。

フロント_パネルとキイボードは白でモルタル風・もちろんプラスティックである。筐体は濃いグレイで,とんでもなく奥行きがある。横幅32cmにして深さ45cmだ。プリンタ_ケイブルを繋ぐんで更に10cm後ろを空けなければならない。
パソコンCRTは生活道具としての努力を放棄しているのではないか。1mmでも薄くたらんとするテレビを見習え。

画面下に輝度とコントラストとを調整するプッシュ_ボタンがよっつ・電源スイッチと通電ランプ・HDアクセス_ランプ,それにCD−ROMのトレイが置かれ,プッシュ_オウプンのドアを開ければ内蔵スピーカとCD−ROMのヘッドフォン_ジャック・音声ヴォリウム(せこい)がふた組・CD−ROMアクセス_ランプ・3.5in.FDドライヴァ1機が現われる。おや,シリアル_ナンバのプレイトがあるぞ,'Type 2408-WMB S/N 9720082'だってさ。
ドア表面にはIBMのロゴとVisionのスペックを記したシールが貼り付けられている。

キイボードは変換キイの付いたいわゆる106ボードだ。[CapsLock]が[英数]と兼用でいちいち+[Shift]せにゃならんのが気にくわん。
キイ_タッチはまずまず,ちょっぴり粘る。10キイは[NumLock]でカーソル_キイに切り替えられる。
マウスは一般的な2ボタンで,頻度の高い左側が大きく作られている。総じてただいかにも金の掛かっていない感じで,ボールも単なるプラ玉だ。
マウス_ボールは日立のが絶品で,鉄の玉をゴムでコーティングしてある。しっとりと,持ち重りがして,どこかエロティックな感触を悦しめる。廉価版パソコンを業務用ワークステイションと比べてはいかんが,このマウスにはちとがっかり。
操作感は,こんなもんでしょ。しかしWindowsがマウスの使用を大前提とする環境ソフトであるところから,こんなもんでしょでは頼りない。ま,直に壊れそうなんで,そうなったらマイクロソフトのと交換する。

DOS/V(IBM DOS J5.0/V)とWindows(日本語MS-Windows V3.1)はインストール済みである。電源ONでまず初期診断をやったあと自動的にDOSが立ち上がり,更にWindowsが勝手に起動される。
すべて準備完となるにはちょうど1分かかり,後述のワープロ_ソフトをピックして実際に書きだせるようになるにはもう30秒ほど必要だ。キャノワードに比べて5倍近くの時間が掛かる。阿呆である。
尤もワークステイションならウルトラマンがひと仕事できるくらい待たされ,高性能の代償と言って言えないことはない。

けっして速いとは言えないCPUチップはIBMの486SLC2/50MHz,恐らく台湾製。したがって"intel inside"ではない。前に解説したインテルの486SX/25MHzに相当し,既にクロックを逓倍してあるからこれ以上はやくすることはできない。またクロックを高めても効果のあるのはCPU内部の話であって,外部デヴァイス(プリンタやモデムなんかね)に対しての動作はやっぱり25MHzなのである。
回路基盤単位・チップ単位でグレイド_アップできるのがDOS/Vの特長であるが,遺憾ながらVisionはそういう造りになっていないようだ。
FDDは1.44MB・1.2MB・720KBの3モードに全て対応している。おれはFDといえば皆1MBかと思ってた。キャノワードの文書をDOS変換するときマニュアル(キャノワードの方)をよく見たら,720KBでフォーマットした奴を使えと書いてあった。知らなんだ。
昔はいざ知らず今のIBMだと標準が1.44MBで,FDは2HDでないと駄目だ。そういえばキャノワードのシステムFDは2DDだった。おれ職場からかっぱらってきたのばかり使っているので,あんまり意識してなかったんよね。1.2MBとはどうも98シリーズのFDらしい。
ところで時折り目にする「ディスケット」という用語はIBMの登録商標である。FDのことだ。マニュアルで(Visionの方)ディスケットディスケットと頑固に言い張っている。
「パトレイバー」でも起動用ディスク(透明カヴァ封入の光ディスクだ)をディスケットと呼んでたな。レイバーのオリジナルOSはIBM製か。

Visionの特長の最たる部分はこの値段にしてCD−ROM内蔵というところにあるのだろう。しかしお負けに付いているソフトはちっともおもしろくない。これでは逆効果ではないか。
しようがないので今は普通のCDを放りこんで鳴らしているが,なんてかひってかひ,ひでえ音だ,ラジカセ以下。一応ステレオらしいが,あまりにプアでとても「音楽」を聴こうという気にはならん。Sound Blaster 16いやさマルチメディアが泣くってもんでさ。
そうそう,Visionにはマイクまで付いている。いったい何に使えと言うのか。カラオケソフトでもあるのかな。あっ,確かファミコンにもマイクが付いてたぞ。


この神奈川日記第47号も書きはじめて随分たってしまった。超絶に忙しいこともあるが,何と言っても一所に導入したワープロ_ソフトがキング_オヴ_おばかであるせいだ。
その莫迦の名は「ワードパーフェクト」。欧米でベスト_セラの同ソフトを日本語版に翻訳したもので,ヴァージョンは5.2Jである。Windows向けのワープロ_ソフトには「MSワード」や「アミプロ」といった定番があるのだけれど,敢えて新参者を採用してみた。
理由はみっつ。まず日本語ワープロとして初めて画面上で縦書き編集できること(WYSWYGてえやつですな),お披露め価格で安かったこと(定価58000円が25000円しかもラオックス価格19000円),「MSワード」のようなメジャ_ソフトはどっかからコピって来られそうだったこと。

いけません,いけませんよあーた,操作はやたら面倒臭いは何かというとハングするは画面はすぐにぶっ壊れるは,能率悪いこと夥しい。表作成も莫迦まるだしである。縦書き表示にしたら画面に収まりきらないしよ。これでは使い物にならない。パソコンを買うとき,超高級ワープロにしかならないのではないかと危惧していたのだが,畢竟なにものにもなっていない。
ひっじょーに腹が立ったので「ワード」に乗り換えるつもりだが,かのソフトは来夏ヴァージョン_アップが予定されている。てめえの命はそれまでだ。むかむかぷん
まあ,Windowsにせよワードパーフェクトにせよおれがまだ乗りこなせていないというのが本当のところだろう。おれ,なんかファイル_マネジャを覗いてるときにWindowsのファイルを消したか移動させたかしたような気がするんよね。百万もあるパラメタをおいそれと使い分けられる訳も無し,ゆっくり付き合うしかあるまい。かなり金を掛けてものにしないと,それこそ無駄遣いになってしまう。

ワープロ_ソフトは味噌を付けたが,想定では他に通信ソフトがある。FAXモデムを繋いでパソコンは点けっぱなし,アサヒネットに入って筒井康隆を叱ってやる。それから一応お仕事にも使う気ではいる。仕事熱心というよりも,楽をしたいからだ。DOS文書の互換が最低線で,Visual BasicやCのエディタとコンパイラがあれば更に良し。

ふふふ,今年のおれはいつもと同じだぜ。

草草

1994年1月1日


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You wondering who am I…
 Styx『MR.ROBOT』の一節。片平まさゆきの『ぎゅわんぶらぁ自己中心派』がこの歌をネタにしたことがあって,いやー爆笑したなあ。

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むかむかぷん
 NHKの教育番組だったか『にこにこぷん』の捩り。WORDの莫迦さ加減がWordPerfectの比ではないことが解り,結局のりかえなかったのだ(98年11月記)。W.Perfectのその後の数奇な運命には涙を誘うものがある。

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筒井康隆を叱ってやる
 不遜なこと言ってごめんよう。当時は断筆中だったのだ(筒井が)。

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written by nii.n