神奈川月記9211

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冠省
吾輩は人である。名前は五つある。

  1. ****(******)
  2. **三四郎(**さんしろう)
  3. 三輪山艶之進(みわやまあでのしん)
  4. 紅羅坊仁哉(べにらぼうじんさい)
  5. 糸井総研(いといそうけん)

1.は本名であって,公私ともに最も使用頻度が高い。が,あんまり好きじゃあない。まぁ変名を付けるような奴は総じて本名が気に食わないからそうするのだ。大橋巨泉の如く親しさを誇示せんと他人の実名を暴くような真似は慎むべきである。
会話の継ぎ穂に好い加減に名を訊かれたときたまに口にするのが2.である。単なる語呂合わせだな。如何にもお座なりで,本気にした人は嘗て無い。
3.は作詞その他の創作活動に付ける筆名だ。仕事でプログラムの単体テスト用に作り置きするデイタに紛れ込ませる事もある。由来は,高校の生物の時間に出てきたアデノシン3燐酸(ATP)のもじりである。従って非常にくたびれているときは二輪山(ADP)と活用する。さてこそ生命体最重要根源不可欠渇望リサイクル的人名な訳で,非常に気に入っている。
雅名が欲しくて捻り出した4.,その内「仁哉」だけ取り出せば俳名である。

雪隠に水面を揺らす放屁かな      仁哉

5.はクリーニング屋とかDPE屋とか一過性の名前を必要とする交渉に用いる。懸賞の応募や本の取り寄せなんかでも遣う。正式には「糸井総合研究所」。以前は松本隆にあやかって松本姓を多く名乗ったものが,彼は最近下らん詞ばかり書くので破門した。**姓は『特ダネ登場?!』クラスではないにせよ難読なのは確か。物識りふうの人がよく「ひとい」と誤読するんでこれを訛化してみたのだ。

さて上で「紅羅坊」だけは借り物である。「仁哉」にふさわしい名字を考えたが思いつかず,苦し紛れに『天災』という噺に出てくる心学の先生から拝借したん。
心学てのは端的に言って分を弁えて暮らせと諭す消極的な教えなのね。
親にも手を掛けるような乱暴を諫めるために大家が心学者の所へ熊五郎を遣る,むろん行かないと溜まった家賃を取り立てると恫喝した上でのお節介である。長谷川町三光新道の紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)先生を訪ねろと言われて不承不承やって来た熊五郎開口一番,べらぼうに怠けるてえなぁおめえさんかい
これでは何かを暗示するようなので,変えないと世間体が悪い。
で,今年の6月11日にきらりーんと閃いたのがこれだ。

「燠保庵仁哉(おきほあんじんさい)」。

炭火の絶えない庵の意。誠に豊かで風流な名前と言えよう。どこから引っ張り出したかと言うと,ナニ,「**(*******)」のいちばん単純なアナグラムである。今まで思いつかなかったのが不思議なくらいの産物だ。


えー,私がここに来たのは87年のお正月からですから,もう5年と10箇月になります。********の最初のプログラマとして這入ったのですが,えー,5人はいってみな新人だった。私も,前は**ビルでちょこちょこバッチのシステムをやってはいましたが,新人同然で,ここでCOBOLもオンラインも初めて憶えました,自社の研修の間はずっと居眠りをしてましたんでね。すぐにプログラムを組むように言われていたのですけれど,当時は仕様書の方が遅れておりまして初めの内はすることが無いん。それで**さんの方で教育と言うか,演習問題を作っていただいたりして準備期間が充分にありましたから,あー,今ぽっと配属される新人の皆さんと比べてたいへん有利な,いや,ラッキイなスタートだったと思います。この********は,他のシステムをやってる人に聞いたりしますと,一種別世界の感があって,良く言えば自由・悪く言うとルースな部分がありまして,こうも豊富な端末と,莫大な資源と,それに一騎当千と言うか百戦錬磨と言うか,海千山千,あ,の先輩方がたくさんいらっしゃいますし,うん,ここに配属になった特に新人の方は大変な僥倖だと思って間違いありません。どうぞ 今の内に勉強なさってください。次は私は,目黒の方で********の仕事をやるように聞いています。********で学んだ事を活かして行きたいと思います。ところで僕をここに送り込んだのは,知る人ぞ知る**さんと云う人で,ここが超絶に忙しくなるから**さんは僕を苛めようと思って入れたんです,僕は*の字に逆らってばかりいましたので。それが大違い,僕は非常に楽をしました。当てが外れて*の字も草葉の陰で泣いているでしょう,まだ生きてるらしいですけど。さて,本当に長い間ありがとうございました。お世話になりました。でも本当のことを言うと,てめえらなんか大っ嫌いだったんだ。ったくおもしろくもねえ。ここでいつまでもぐずぐずして座りしょんべんでもして莫迦になってろ。あばよ。


この冬のボーナスの遣い道を考える,とは長期的な不況のさなか豪気な話で,よその会社の人の噂を小耳に挟むに「ボーナス,無しよ」が結構あるよ。
ソフトハウスには社長が40代・30代・へたすりゃ20代なんてのが少なくなく,そういうのは好景気に乗って会社を飛び出して拵えた雨後の筍会社であってつまり最初の試練だ。ところが経営手腕が未熟で蓄えなんぞありゃあしないもんだからあっと言う間に瓦解倒壊,チフスかコレラのようにばたばたと倒れている。
辛うじて倒れない所も延命策に汲汲としており,何とただでソフト製作を請け負う例が散見される。仕事の切れ目が縁の切れ目,赤字を出しても今は顧客にしがみ付いておくのが最良の選択なのだ。正に蛸が自らの足を喰って飢えを凌ぐの図である。

はて,ソフト開発はこれからのコンピュータ社会を支える成長産業で不況知らず・体力いらずの高給エキスパート職種だった筈である。そう喧伝して若い連中を大量に抱え込んだのではなかったか。
それで糞高い授業料を専門学校に払って就職してみたら超超過労働+高ストレスで視力と神経はぼろぼろ・お負けに大したことない収入だった。そうして無盡蔵に見えた仕事は一夜にして消滅した。全く浮かばれないねえ。

本当はこの国にコンピュータなんか必要なかったのねと思うくらい一般企業の業務の電算化は撤回され中断され後回しにされている。
残るお旦は親方日の丸だけだ。この人たちは仕事の能率の上がるのを良しとしないが,何しろ金があって浪費を好む。ソフト屋を飼うのに何の痛痒も感じまい。

おっと,つい話が反れたぜ。今冬予定の立っているのはふたつ,チューナとスーパーファミコンだ。
現用のパイオニアF-120はおよそ10年前の中級シンセサイザ_チューナで,4連・5連と高級志向で生き残っていたバリコン_チューナ(懐かしいね)に止どめを刺した,結構エポック_メイクな奴だ。取り立てて不満は無いけれど,例のAMステレオ対応コンポがやっと出て来たので換える気になった。
交換予定はソニーのST-S500だがこれが2万4800円。未だ数少ないAMステレオ機で,と言うは疎かシスコンとしても最廉価である。120番が4万5000円だったのを思うと信じられないくらい安い。たぶん中身は手のひらサイズの基板1枚だろう。
尤も今時ラジオ電波を HiFiソースにしようなどと誰も考えていない,これで良いのだ。

極悪4人打ち麻雀に天誅を下して以来TVゲイムの類には一切手を出していない,と言うのは嘘でワープロ版の4人打ち麻雀を断続的にやっている(懲りんやっちゃな,コリンハート)。それで充分で且つファミコンのソフトを死蔵しておきながら更にスーパーファミコンとは何事だ。それはだって。

うおおおん,『ジョジョの奇妙な冒険』がスーパー版のゲイムになるからである。しかも第3部スタンド篇。ここはどうあってもディオを倒しにエジプトへ行ぱねばの娘なのだった。
『ジョジョ』はゲイムになるはCDになるはで奇妙に盛り上がっており,僕はこれをアニメ化への布石と見ている。楽しみだなあ。

不一

1992年11月14日


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大橋巨泉の如く…
 これは巨泉が石坂浩二のことを「兵ちゃん」と呼んでいたことを指す。

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特ダネ登場?!
 東芝提供だったかな,押坂忍司会でこういう番組があったのだ。中に珍名・奇名なヒトを呼んで笑うワルいコーナがあった。

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行ぱねばの娘
 言うまでもなく名曲『イパネマの娘』の駄ジャレで,これ皆がやりたがるのであるが,おれ普段から苦にがしく思っていることがある。こういうポピュラな洒落を「書かねばの娘」だの「選ばねばの娘」だののレヴェルで遣ってはダメである。「ねば」だけでなく「xIxA-NEBA」と先頭2音の母音まで揃えろと声を大にして言う。

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アニメ化への布石
 実際94年12月からほぼ1年を掛けて第3部のエジプト決戦がLD化(6枚)されている。週刊誌連載のほうは99年3月に第5部が終わったまま。残念ながらこのスーファミ版「ジョジョ」は「クソゲー」の範疇と言って良いだろう(99年5月記)。

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written by nii.n