神奈川月記9210

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冠省
マニュアルを失ったせいで古来コガタナの諸元値は謎とされており,コダチとの比較も儘ならむ有為の奥山けふ越えてだった。それが屋台の古本屋に86年版のバイク年鑑を見つけたからさあ大変,黄変の進んだ古文書だったが200円ということもあって買ってみました。勿論コガタナが載っている。

コダチに初めて跨がった時の印象を裏切り,コガタナの方がほんの僅か大きいんだな。でもまぁ全く同格と言って良かろう。パワが29馬力もあったとは正直おどろいた。充分ではないか。
250ccで一番ヴァランスの良いのは,コストを含めてトウタルに考えるとやはり2気筒てところではないのかしらん。

エポポ コガタナ コダチ
型式 PV50 Limited GSX250E GSX250S KATANA
サイズ(mm) 1,415×690×915 2,100×755×1,080 2,060×685×1,160
乾燥重量(kg) 70.0 157.3 160.0
軸間距離(mm) 960 1,410 1,435
燃料容量(L) 3.5 16.0 17.0
エンジン 空冷2ストOHC単気筒 空冷4ストDOHC2気筒 水冷4ストDOHC4気筒
総排気量(cc) 49 249 248
タイヤ_サイズ(in.) 8×8 18×18 17×17
最高出力(PS/rpm) 3.8/6,000 29.0/10,000 40.0/13,500
最大トルク(kg-m/rpm) 0.45/5,500 2.20/8,000 2.70/10,000
車輌価格(円) 125,000 365,000 565,000
PV50 EPO GSX250E GSX250S KATANA

86年というと僕が就職した年である。エポは既に消えカタナはリトラクタブルの贋になりΓやNSRといった2ストレプリカが人気で,サリアン・ジェンマ・イブなんてのが売れてた頃だ。
ぱらぱらとペイジを繰ると,どれもこれも古臭いデザインで恰好悪い。自動車もそうだけど,どんなに憧れ痺れたデザインであっても5年10年たって見たらばむちゃくちゃにダサい。一体どうした神経交換作用であろうか。

ここで都市における理想のモータサイクルを考えてみる。

  1. ド鋭いスタートダッシュ(信号グランプリで車を完全に置いて行ける)
  2. 強力なブレーキ(急制動の為)
  3. スリムな車体(擦り抜けして前に出る)
  4. 低いシート高(足で漕いで進む)
  5. セル始動(エンストしたとき素早く再スタートする)
  6. 大きな舵角(取り回しを楽にする)
  7. 手前に伸びたハンドル(姿勢を立てて視界を確保する)

こうして見ると,何のコトは無い,全て渋滞対策である事が解る。
1.2.を実現するにはどうしても200から250ccのエンジンが必要だ。逆にこれ以上は必要でない。125ccの2ストでも1.は行けるが2.が弱い。原付は論外である。
バイク乗りの間では半ば常識とされているのだが,大都会で走りやすいのは実はオフロウド車である。この頃の売れ筋は250クラスの2スト・モトクロッサレプリカ(「スーパークロス」でピョンピョン跳ねてるバッタみたいな奴)で,これだと1.3.6.7.をクリアできる。
ただ3.はちょっと問題があって,なるほど単気筒だけに車体はコンパクトなんだけどハンドルがぐっと張り出して全幅を稼ぎ,しかも一本バーだから絞る事もできない。擦り抜けの成否は畢竟バックミラを含めたハンドル幅で決まるから,大抵は車のウインドウ部で広くなった所を通れるが最悪の場合ドアミラと高さが揃って立ち往生する羽目になるのだ。なお4.はぜんぜん駄目。
コダチはどうか。1.2.4.5.は合格,3.6.もまぁOK,7.は僕の身長でカヴァして,あ,満点ではないか。
尤もコダチはオウヴァ_クオリティ・高価格の感が無きにしも非ずで,パワやデザインは落としてもより安く・そして楽な姿勢をと望むなら具体像はある。2灯・2気筒にしてタンク容量を倍増し,もう少しツーリングに振った設定のDR250SHEだ。
単気筒はあんまり好きじゃないし,対人恐怖症なもんでなるべくGSにも寄りたくないのよ。こいつのハンドルを8cm詰めると1.2.3.4.5.6.7.文句無しの成績に加えて僕好みのハイテクてんこ盛りマシンとなり,それで50万円しなきゃ買う気があるぜ。


新潮カセット文庫に故三遊亭圓生の『真景累淵』『双蝶蝶』『牡丹燈籠』と圓朝作三大怪談噺が揃っており,順に買って来た。並の市販ソフトと違ってこういう書店の企画物は気取った化粧箱に這入っており,僕の引き出し式キャビネットには収まらない。タイトル部を残して外箱をひっちゃぶり普通のカセットケイスに詰め替える訳だが,もう手持ちのケイスが無いんだな。

しようがないから大森のカメラのドイへ買いに行くと,あら,ありませんよ。西友に無く,プリモにも無い。うぬ。大森界隈に段段と手を広げたものの,レコード屋・カメラ屋・電気屋・文具屋・蕎麦屋,CDのケイスは8in.・12in.揃えておきながらカセットのそれは仕入れてもいないのだ。この大莫迦野郎。
その後の調査で大森を始め川崎・横浜・鶴見,完全に姿を消していることが判明した。あとハンズに無かったらもう絶望的である。そうなると投げ売りのカセットを買って中身を捨てるより術は無いが,無論そんな事はしたくない。おれ今年みたんだけどなあ,どこだったかなあ。


『ゴジラ対キングギドラ』以来の映画鑑賞である。『エイリアン3』を観て来た。
『エイリアン』は続篇が正篇を凌ぐ稀有な例で『エイリアン』はホラー・『エイリアンズ』はアクションと,ジャンルの違うような気もするが新篇には期待が掛かる。前売り券を持って川崎シネチッタ,1400円である。
実は封切り3週間後に相鉄ムービル(『ゴジキン』を観たとこ)へ出向いて一度失敗している。4セット目の30分前というのに行列がエイリアンの尻尾の如く4階から1階まで階段を伸びきってやんの。うんざりして帰ったんだけど,今度はどうだ。
シネチッタは各階映画館の中層ビルで,土地柄のせいか設備の割りには混まない穴場らしい。確かに日曜の昼食時のセットは半分くらいしか埋まらなかった。椅子の大きさとクッションは申し分ないが列間が狭くて脚を組めない。フルサイズのスクリーンを観るまんまん中は通路になっていて,ベスト_ポジションは最初から得られない造りである。多分ドルサラと思うが,次回上映の予告篇なんかは銀幕を食み出した真上から音声が聞こえてきた。スピーカが分けてあると見える。

冒頭のクレジットに「共同制作(CO-PRODUCER)シガニーウィーバー」とあって厭な予感がしたら,案の定つまらなかった。ストーリも舞台設定も無理遣りで,どうもウィーバーがラストシーンだけを撮りたくてでっち上げたような映画である。そのラストがエイリアン退治からエンディングまで『T2』を想起せずにいられないものだったのでどっちが早いかはさて措き僕は『T2』を先に観ちまったんだな残念ながら低い評価となった。パート4を撮らせないようウィーバーが仕向けたのだとせめて好意的に解釈しよう。
ところでリプリーを雇ったWY社は日系企業という事だ。工場跡のセットに「鉄」「頭上注意」「株式会社」などと漢字がばんばん出てくる,鉄の字は金偏の横棒が1本足りなかったけれど。そう言えば『エイリアン』で科学部長がリプリーを襲うのに使った雑誌が『平凡パンチ』だった。
劇中コンピュータ端末にディスプレイされた文章から「WY」はWILSON-YASIMA か何か(いったん憶えたけど忘れた)の頭文字と知れる。でもこの日系企業は徹頭徹尾悪役に描かれている。意図的なものかな。

さて『エイリアン』シリーズ,一番こわいのは『エイリアン』・一番おもしろいのは『エイリアンズ』,『エイリアン3』は味噌を付けたねえ。

しかしてこの映画で何よりいかんのは,僕が小銭入れを無くしたことだ。館内に持ち込んだのは確かだが,出て買い物をしようとした時には失せていた。ふ・不思議だ。
損害は800円くらいでもあれには部屋の鍵が付けてある。猫糞した奴が川崎を振り出しにあらゆるアパート・マンションを試し回りやがて***に達して遂に僕の部屋を発見,家財道具一切合切を持ち出してしまい,ナニ,そんなコトはありえん(Alien)。

不一

1992年10月13日


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 おれのバイクの名前。順に GSX250E・GSX250S KATANA・PV50 EPO。

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written by nii.n