神奈川月記9205

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冠省
5月1日にコダチを駆って大森まで出向き,西友のテナントで眼鏡を作った。手持ちのだて眼鏡のフレイムにレンズだけ買って嵌め込むのである。何故にわざわざ大森かと言ふに,だて眼鏡をその店で誂へ,ここがいちばん話が早い。コンタクトレンズ装用の打ち切りである。
1年間やってみたんだから判断が早急と云ふことはないだらう。オペレイションCは失敗だったと断ぜざるを得ない。僕の華麗なる消費生活の中でも万単位の失敗は4年前のハンディ_コピイ機以来である。実際いくら注ぎ込んだかは恐ろしいので勘定しないことにする。

コンタクトを着けてゐていちばん閉口したのは埃である。殆ど毎日のように埃が飛び込んで痛い思ひをした。忽ちメマッカーに変身する。眼を擦ることができないのは辛い。僕の目は大きめに開いてゐるようだけど,別にメーテルやオスカルみたいに顔から食み出す程ぢゃあない,眼鏡ないし裸眼の時と埃の這入る確率は変はるまいからコンタクトの副作用と言って良からう。
埃のせいぢゃなくたってメマッカーにはなる。コダチで走り回った後・厨房が見渡せる食堂に這入った時・髪が伸びてる間なんかもそうだ。他のユーザはどうしてるんだ,厭になったりしないのかしらん。

充血はユーザが不精するからだと言ふね,レンズが汚れたまんま装着するからだと。あ・あ・解ってくれとは言はないが,そんなに俺が悪いのか。おらぁちゃんと癇性なくらい磨いて使ってるよ。蛋白除去の頻度だって増やした。でも駄目だ。また例へ日常の手入れが完璧であっても先述の埃の件がある限り満月を見た狼男である。

レンズを新調するのは3年9箇月ぶりだ。レノン眼鏡からコガタナ眼鏡にスイッチして以来であり,当時のどたばたは東京月記に詳しく残ってゐる。
それに拠るとコガタナ眼鏡は右が7.25D(ジオプトリ)・左は7.00Dで,超高屈折ガラスレンズを採用・税込み1万8020円となってゐる。今回視力を測定し直したところ,右7.00D・左6.50Dとやや軽い矯正率に収まった。因みにジオプトリとはレンズの焦点距離の逆数を指す,勉強になるなあ。

眼鏡はなるべくレンズ径を小さくしたい。軽くするのが主眼であるがデザイン上の好みにも合致する。周縁に近付くほど厚くなる近眼レンズを見掛け上うすくする目的もある。とうぜん超高屈折に分がある。
しかし今回(便宜上コダチ眼鏡と呼ばう)は高屈折に止どめておいた。コダチ眼鏡のレンズ径(最大長47mm)では通常・高屈折・超高屈折の順に4.4mm・3.9mm・3.5mmのレンズ厚となり,高と超高との差は無いに等しいからである。薄いぶん軽いのならまだしも,薄さで稼いだ重量は比重の増加(屈折率は密度に比例する)で相殺されるのだった。
一番の違ひは恥づかしながら値段である。超高を採れば6000円なのだ。

軽さに絞ればプラスティック_レンズに決まりなのだが,あんなものはおもちゃである。だて眼鏡にプラレンズを入れてみてよく判った。ガラスとは透明度がまるで違ふ。僅か2mm半でもプラを通すとお日様に雲が掛かったように照度が落ちる。ただし度を付けたら集光率は上がるのかもしれない。
それからもうひとつ,傷に頗る弱い。何かにぶつけたりと云った事故よりもむしろレンズを拭く時に付く傷の方が多いのではなからうか。マルチコートも傷には無力だ。屈折率の低さからしても強度近眼者には縁の無い代物である。

さてでき上がった眼鏡を掛けて見る。おおっ,明るい。極めてシャープにソリッドに結像し,ライトの滲みもゼロである。そして何より目玉に息苦しさが全く無い。
これはどう云ふことなのだ,コンタクトレンズのメリットとはいったい何なのだ。僕は大枚を投じて眼鏡の優位性を確認しただけなのか。
総重量は31g・43×124×136mm3はかなり小振りだ。リム径が2mmあって,レンズ厚は気にならない。フレイムには珍しい小豆色,おかしくないけど塗り直すときは──3年くらゐでぼろぼろになる──黒にする。

と云ふ訳でコンタクトレンズは無期停止,付帯備品もお蔵入りである。あーあ,ビッグ_オペレイションだったのに全面撤退だ。さあ,コンタクトに再び光の当たる日は来るか。


5月の連休(7連休だった)の最終ふつ日はかなり暇だったのでプラモデルをこさへてゐた。アンフィニRX−7が2台にスズキRG250Γ・シャフト_ヨーロッパ_ファントム_レイバーである。
長い休みの時はたいてい買ひ込み,いま部屋にはスズキ1100カタナ2台と750カタナ(リトラクタブル_ライトの偽カタナ)・エポ・RM250がありホンダVFR750R・ヤマハSRX6がありシャフト_ジャパンのグリフォン_レイバー・篠原重工イングラムがあり連邦軍のガンダムΖΖがありイスラエル空軍仕様のバトロイド_バルキリーがあり合州国強行偵察機ブラックバードがありスミス&ウエッソンの3.5in.マグナム_ガヴァメントがある。
これらは全て***に越してから製作された物で,***時代に作ったのはみな廃棄して来た。***でも気に入らなくて燃えないごみと化したのが何台もある。

プラモデルにはガキの頃からそこそこ馴染みがある。一番ふるいのは,何だらう,サンダーバード4号かなあ。追跡戦闘車・スティングレイ,あの辺りである。和物だとウルトラマン・ウルトラホーク1号・シュピーゲル号・流星号かね。尤も小学校の低学年までは叔父さんに作ってもらってた。自作の第1号となるとマッハ号・マイティジャック,時代が前後してよく判らん。
5年生くらゐで突如お城シリーズ名古屋城・江戸城・姫路城・松本城を立て続けに建設し,兵器シリーズ大和・武蔵・信濃・赤城・零戦・四式戦・鐘馗・イーグル・タイガー・74式・ゲバルトと立て続けに建造した。

プラモデルの組み立てなんて,まぁ半日でできてしまふ。本当は改造してパテ盛りをして塗装をしてウエザリングをしてと,後の作業に時間を費やすのが真の模型マニアと云ふことになってゐるのだが僕はそんな面倒なことはしたくない。だから道具はニッパ(ランナからパーツを切り離す)とNTカッタ(バリを削り取る)・瞬間接着剤(アロンアルフアのスタンダード,これがいちばん使ひやすい。この頃は附いてないのが多いけどお負けのチューブ入りのは不可)だけで,作ってデカールを貼っておしまひである。塗装を始めると塗料の余りとプラモの購入と鼬ごっこになってしまひ際限が無くなるのだ,筆と溶剤の扱ひにも困るし。
大和(ヤマトも入れて5・6艦進水させたなあ)の吃水下をだっと塗った他,徹底的に塗装したのは高校時分のF14トムキャット1機のみである。1/14スケイル主翼可動モデルの,上半分を深緑・下半分を灰白色に染め翼端と機種は黄色と云ふ旧日本帝国軍ふうである。単に零戦の配色をイメイジしたのであって,別に帝国軍の復活を願ったのではない。これはすばらしい出来映えだったが,いつしか捨ててしまった。
ペイントせずに組みっ放しで行けるモデルとなると種類が限られてくる。モータサイクルやモビルスーツが最適で,飛行機やヘリ・自動車なんかのフルカヴァード物では塗装しないと余りに安っぽくて見られない。バイクでもフルカウルのレーサ_レプリカは辛いものがある。

実は好きなのはもう作り盡くした感があって,今後を憂慮してゐるところだ。何十体となく作り飛ばしてきたプラモ群,最期はどうなったんだらうか。これがよく憶えてゐないんだな。と云ったところで紙数が盡きた。以下,次号。

不一

1992年5月10日


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メーテルやオスカル
 松本零士『銀河鉄道999』と池田理代子『ベルサイユの薔薇』のヒロイン。ん,オスカルはヒロインだっけ。

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コダチ・コガタナ
 筆者の当時の単車。コダチは GSX250S KATANA・コガタナ GSX250E。

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あ・あ・解ってくれとは言はないが,そんなに俺が悪いのか。
 チェッカーズ『ギザギザハートの子守り歌』の1節。

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シャフト
 ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー』に出てくる超多国籍超多業種企業。傍若無人でMicrosoftSony的。

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篠原重工
 ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー』に出てくる国産重機メイカ。去年(98年)イングラムをリリースしてないといかんのだが。

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written by nii.n