神奈川月記9109b

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冠省
NHK総合・同教育日テレTBSフジテレ朝東京TVK放送大学・NHK衛星第一・同第二・JSBとTVが12局はいる。正規のサーヴィス_エリアでブースタ無しに映る局数としては恐らく世界一だらう。

とは言ふものの積極的に観てゐる番組はさう多くない。
月曜日は『鶴瓶・上岡パペポTV(日テレ)』『19××(フジ)』『落語特選会(TBS・月一)』・火曜日の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで(日テレ)』・水曜日なし・木曜も無し・金曜に『日本の話芸(教育)』『北野ファンクラブ(フジ)』・土曜の『生活笑百科(総合)』『やっぱり猫が好き(フジ)』・日曜日が『スーパージョッキー(日テレ)』,えーっと,ここのつか。唯一のペイTV_JSB(ワウワウ)で観るのはメジャ合州国映画(『インディアナ_ジョーンズ』3連発には驚いた)と2輪レイスが殆ど。
何にせよお笑ひが中心で──NHKの演芸番組がたうとう教育へ行っちまった。いよいよ落語は能と同じ,TVに依る保護指定を受けるやうになったと見える──ドラマ・ニューズ・天気予報・ドキュメント・対談・クイズ,殆ど全滅である。
勿論イレギュラで良いのがあれば録画ないし捨て観に掛かるのでTV雑誌でのチェックは欠かさない。このところの『NHKスペシャル・電子立国日本の自叙伝』は誠に興味深いシリーズで,日本のハイテクが合州国技術者のほんの厚意に端を発してゐるのがよく判った。全く彼の国の今の苛立ちもむべなるかなと思ふよ。

はやりのドラマを1本1話たりとも観ないのでその手の話題になると蚊帳の外である。甘木が観ろ観ろとうるさくて1度『もう誰も愛さない』とか云ふのにチャンネルを合はせたけれど,出だし1分でひっくり返って10カウント,堪へ切れずに消してしまった。だあああああ。
その代はりお笑ひに関しては僕の独壇場である。ただ独壇場と言ふだけあって誰ひとり僕に付いて来られない。けっきょく変はり者の風評を強くするばかりだ。

さて出色は破滅的な面白さを誇る『北野ファンクラブ』である。毎金25時半からの1時間物で,パイロット的な特番から今春レギュラに昇格した。ビートたけしと高田文夫の番組と来りゃあ観ない方がをかしい。『亀有ブラザーズ』や『海パン刑事』はともかく,圧巻は何と言ってもたけしと高田のフリートークである。往年の『オールナイトニッポン』再現のTV版だ。『パペポ』で上岡龍太郎が多用する放送禁止ネタよりも『ガキの使い』で松本人志が浜田のツッコミとセットで落とすギャグよりも切れ味・破壊力ともども数段うへと言へよう。
ただしカメラが回ってゐる為ラジオの時ほどの突っ込みは見せない。たけしは後で問題になるやうな踏み外し方は決してしないのである。それでも他の誰よりも笑はせてくれるのは確かだ。
をかしいのは「ファンクラブ」を掲げながらそして毎週なんやかんや募集してゐながら視聴者の参加(投稿のコト)を殆ど黙殺してゐる事だ。『オールナイト』の方がずっとはがき職人を優遇してゐた。でもこれは解る気がするね。ラジオの聴取者に比してTVの視聴者はレヴェルが低い,と言ふのは嘘で,素人の面白さは大半が遠慮の無さに基づくからタブーの多いTVにはとても掛けられないのである。

TVをろくに観ないのにBSシステムを入れワウワウにも這入ってゐるのでちょくちょく録画の依頼があったりワウワウの契約手順を訊かれたりする。煩い。まぁ有料放送開始以前にデコーダを手に入れ,これを持ってゐるのはまだ全国に7万人しか居ないぜ等とメンバーズ_カードを見せびらかした報ひだから止むを得ない。

それにしても誤解と云ふのは何処までも誤解できるものだと感心するね。NHKもワウワウも,衛星放送についてのPRがまだまだ足らんよ。
良いかね。衛星放送ってのは衛星から直接電波を受信して観るものだ,衛星中継放送とは違ふんですぞ。壁のアンテナ端子から採ったって何にも映らん。衛星放送対応はアパート・マンションの強力な売り文句だから,そうと聞いてなきゃ自分でアンテナを立てる他は無い。勿論チューナも別途必要だ。チューナは単品がベストだが,内蔵型ならVCRの方が何かと好都合だらう。肝心なのはアンテナだな,チューナより金を掛けても良いくらゐ。室内アンテナは論外,普通のパラボラは止めて平面型かセンタ_フィードにしなさい。風・雪・雀の被害を避ける為にも50cm以下級で充分である。あ,13時半頃に直射日光の当たる場所から部屋にケイブルを引き込めないと言ふ人は手を挙げなさい。帰れ! ケイブルは極力5C2Vを使ふコト。引き回しは最短に,5m違ふとかなりの差が付く。莫迦者,いきなりTVに繋ぐ奴があるか,まづVCRに喰はせるのぢゃ。VHFやUHFもVCR先でTVとは直列に接続するのぢゃ。分配器なんか捨ててしまへ,阿呆んだら。TVのチューナを使ふのは録画中に裏番組をリアルタイムで観る時だけぢゃ。できたか。できたらいよいよワウワウとの契約ぢゃ。ナニ,N HKの受信料だと。酔狂な奴だな。好きにしろ。むしろ払はん方が世のため人の為だとわしは思ふぞ。ワウワウは正式に契約して受信料を前払ひしないと絶対に観られん,スクランブルが掛かってをるからの。スクランブル破りの器械があるさうぢゃが,それは完璧な陰痴気商品ぢゃ。契約書類は電器屋に必ずあるから貰って来さらせ。契約料は2万7000円で受信料は最低3箇月の前払ひぢゃ。手続が完了すればデスクランブル用のデコーダを宅配便でワウワウが送って来る。このデコーダはタダぢゃからもしワウワウを観るのを止めても返さなくて良ろしい。早い話が2万7000円でデコーダを買ふのぢゃな。デコーダとBSチューナとはお馴染みの映像・音声右左の他にビット_ストリームの遣り取りがある。S端子は無い。白痴でなければ接続は簡単ぢゃが,どうしてもできんと言ふ輩を対象に有償の取り付けサーヴィスもやってをる。4000円ぢゃ。気になる受信料は月額2000円ぢゃが,映画が好きな人なら文句無く安い。メジャ系ヒット作がぽんぽん出てくるしマイナ・げてもの・ポーノ紛ひも少なくない。殆ど全部ステレオ字幕・ノウカットであって,細切れ・寸足らずの民放地上波映画なんか莫迦莫迦し くて観る気がしなくなること請け合ひぢゃ。音楽物はライヴ中継あり市販ソフトあり,スポーツでは何故か2輪のロウド_レイス・スーパ_クロスが多くて,プロレス・ボクシング・ホッケーと云った格闘技もちらほらとある。プロ野球中継の無いのは地上波との差別化を意識しとるのぢゃらう。とにかくわしのやうな観方でも安い。それに毎月番組表を送ってくれる。それだって市販すりゃ400円くらゐの代物なのぢゃ。さうさう,音声のみのSt.ギガもあったの。まぁTV電波でFMラジオ放送をやっとると思ふて間違ひ無いが,これはワウワウとは別会社で別契約ぢゃ。月額600円。しかしてワウワウのデコーダが無いと受信できんからギガだけ聞く事は不可能ぢゃ。PCM24時間ノンストップで未発売CDも先行放送すると言ふから期待しとったのに何かと言ふと波の音・鳥の声ぢゃ,しかも演奏に被っとる。それもくだらん環境音楽が殆どで頗る退屈なものぢゃ。なーにが「ロウ_タイド」ぢゃ,莫迦垂れが。曲目を一切発表せんから当たりも付けられん。あんなものは聴かんで良ろしいぞ。

僕の場合。
BSアンテナがTDKの BS-TA382 でこれからマスプロのBS用5C2V同軸を4m引いてソニーのBSチューナ SAT-100GRX に喰はせる。
チューナからはアンテナ信号系がソニーEDβ EDV-7000・同SHBβ SL-2100と来てソニーのプロフィール_ベイシックKV-19HT1まで直列に,ライン信号系はワウワウ_デコーダ(松下製?)DN-101を経てGRXに戻り7000番と2100番へ2分配され2100番の側からプロフィールに這入る。7000番と2100番の相互リンクは言はずもがな。
2100番からは更に音声がNECのオウディオ_アンプA−10に延び加へてソニーのPCMプロセッサPCM-501ES がぶら下がってゐる。
S端子およびディジタル入出力(同軸・光とも)は一切つかってゐない。

BSを導入する前に僕も落語の特番や『ウルトラQ』なんぞを録ってもらった事もあって,エアチェック依頼に寛容である。ただし手持ちのVCRは皆βと云ふ完全に世間に背を向けた構成であり,大抵の人はさうと知って諦める。が,中にはめげないのも居るしBSと限らずCD・LD・LP・カセット・何でもござれとあって結構お客がある。づうづうしくもVHSのデッキを買へと圧力が掛かってゐるが,それは自分でβを買ふかもしくは僕にVHSを買ってくれると云ふのが筋と云ふものであらう。

ワウワウは前述の通り番組ガイドを送ってよこすから重宝するが,新聞を採ってゐなくて他は市販情報誌に頼らざるを得ない。明治相互生命のおばちゃんが隔週に『テレビガイド』を持ってきてくれるけれど──それが目当てで保険に這入る信じ難い人も居る──あれは気に入らなくて自分で『TVブロス』を買ってゐる。隔週刊の標準サイズでありながら160円と極めて安く,番組表を除いて皆コラムと云ふ変な雑誌だ。誤解を恐れず言へば古き良き『宝島』に近い。
ただ僕がこれを選ぶのは値段やコラム読みたさでなく,とり・みきのサイレント漫画『遠くへ行きたい』が載ってゐるせゐだ。スクラップしてある。『遠くへ』が終はれば『テレビガイド』でたくさんだ。
よほどの突発事件でTVそのものがおたおたするやうな状況でない限り2週間先どりの情報で充分コト足りる。仮に新聞がその日の番組改編をフォロウできたところで,あさ読んでVTR予約を差し替へてからでかけるなんて時間は無いのが普通だから即時性はさほど有効でない。TV局発表のタイムテイブルが正確無比なのを素直に称へ,世の中の平穏と息災を敬虔に祈らう。

その正確な『ブロス』を見てゐたら,何と『19××』も『猫が好き』も『ガキの使い』も最終回だと。うーん,せっかく誉めたのに。誉めてないか。
尤も『ガキ』は一巻の終はりに過ぎず深夜枠からゴウルデンタイムへの移行と云ふ事である。ひゃー,火曜25時半からの関東ロウカル番組が日曜22時半の全国ネット化とは大変な出世だ。そんなに視聴率が良かったのかしらん。
しかし『ガキ』は言ってみればダウンタウンにとっての『オールナイトニッポン』である。一般向けの時間帯に移ってあの面白さを維持できるのか。今までは先鋭化した部分で2・3%の人を突つけば良かったのに今度はその10倍の人を相手にしなければならない。勢ひ切っ先の面積を10倍に広げる事になり,それが即ちナマると云ふ事なのだ。
さう言へば『猫』も深夜からゴウルデンへの移籍組だった。『猫』のヴォルテイジ_ダウンは衆目(夜更かし野郎)の一致するところである。ちょっと心配だ。

不一

1991年9月18日


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written by nii.n